ヴェルディ、代表、二次元、女子バレー 他
中国”現代劇”系ドラマの概況
2019年03月20日 (水) | 編集 |
史劇系ドラマについては、こちらこちら

"中国ドラマ"プロパー的にも地味な話題で本来こちらのブログに書くような内容でもないんですが、話の連続性の問題としてついでに書いておきます。

100本越え('19.3.20現在117本)の「史劇」「時代劇」系の作品に対して、こちらは現在25本。データとしては少し覚束ないところはありますが、それでもまあ見ている方でしょうし、とにかく一回整理してみたくなったので。
前回は「年表」→「ジャンル分け」の順番でやりましたが、今回は数も少ないですしいきなりジャンル分けで。見れば分かりますが、それがそのまま"年表"にもほぼなる構造になっていますし。


無印

絶対権力(2003)
中国式離婚(2004)
五星大飯店 Five Star Hotel[五星飯店](2007)
大いなる愛 相思樹の奇跡[相思樹](2008)
メコン川大事件[湄公河大案](2014)


特に"傾向"はなく、純粋に「良いTVドラマ」を作ろうと模索していた時期の主に作品。
基本民間制作で、特に後述する"トレンディドラマ"タイプのものが主流化する「以前」の作品と、そう位置付けておくと分かり易いかなと。

・『絶対権力』 中国の地方行政の内幕とそれをめぐる権力闘争を描いたドラマ。
・『中国式離婚』 勤務医と教師の中流中年夫婦の夫婦関係の危機を描いたドラマ。
・『五星大飯店』 一流ホテルマンとダンサー、それぞれの夢を追う男女の恋愛ドラマ。
・『相思樹の奇跡』 都市に出て来た農村部出身の若者の苦悩と愛。
・『メコン川大事件』 メコン川流域での国際的麻薬組織と中国治安組織との激闘。


内容的にもこのようにバラバラですが、比較的硬派というか"骨太"な作品が多いのは分かると思います。


中国中央電視台(CCTV大富)制作の人情喜劇・メロドラマ

先に結婚後から恋愛[先结婚后恋爱](2012)
独り身の男[大男当婚](2012)
ビッグファミリー[好大一个家](2013)
ママ、頑張って[媽媽向前冲](2014)


中国国営テレビ局中央電視台(CCTV)の、恐らくは内部制作によるドラマ。日本ではそれを日本用に編成した衛星局"CCTV大富"(スカパー)で見ることが出来ます。僕が見るようになったのが最近なだけで、実際にはもっと前、少なくとも上の"無印"ドラマと同時期には放送自体は始まっていたはず。
ただ今のところ確認出来ているのは最近の上の作品だけで、そこに内容的にも共通性が見られるのでこういうカテゴリーにしました。ちなみに他のカテゴリーと違って基本的にDVD化等はされないので、その時放送されているものとたまたまオンデマンド化されているものを見るしかないです。(少なくとも日本語では)

・『先に結婚後から恋愛』 冴えない中年男と美人OLの偽装結婚から始まる一族郎党巻き込んでの大騒動。
・『独り身の男』 40才を前に結婚を焦る行き遅れ男が辿るあれよあれよの意外な恋愛遍歴。(らしい)
・『ビッグファミリー』 中国都市部の深刻な住宅不足を背景に複数組の中年カップルが繰り広げる珍騒動。
・『ママ、頑張って』 不倫ものの昼ドラ。


対象年齢層高めないし家族向けの職人的なドラマですね。人情・喜劇・メロドラマ。昔の"松竹"映画っぽいというか。出演俳優もかなり重なっていて、"一座"感あります。(笑)


所謂"トレンディドラマ"タイプのドラマ

ラブ・アクチュアリー 君と僕の恋レシピ[愛的蜜方](2012)
今宵天使が舞い降りる[今宵天使降臨/Angel Cometh Tonight](2013)
続・宮廷女官 若曦(ジャクギ) 輪廻の恋[歩歩驚情](2014)
星に誓う恋[戀戀不忘/Unforgettable Love](2014)
ダイヤモンドの恋人[克拉恋人](2015)
マイ・サンシャイン 何以笙簫默(2015)
最高の元カレ[最佳前男友/My Best Ex Boy-friend](2015)
私のキライな翻訳官[亲爱的翻译官](2016)
記憶の森のシンデレラ STAY WITH ME[放弃我,抓我](2016)
あの星空、あの海。人魚王の伝説[那片星空那片海](2017)
君は僕の談判官[談判官/Negotiator](2018)
2度目のロマンス[温暖的弦/Here to Heart](2018)


今更"トレンディ"も何も無いもんなんですけど(笑)、結局この言い方が一番分かり易いだろうと思うので。
日本で言えば1980年代後半のバブル期以降に作られ始めたとされる(Wiki)、おしゃれなオフィスやおしゃれなマンションを舞台に、おしゃれな男女がおしゃれな何かをおしゃれにごにょごにょする様を描く専ら社会人女子向けのドラマ。
狭義のブームが去った後も基本的に日本の民放ドラマはこの路線というかこのタイプのドラマが確立したフォーマットをベースに作られていると思いますが、中国でもやはり一つの王道であるらしいこのジャンルの直接的な手本は、台湾を別にすれば日本ではなく、韓国・韓流ドラマのようです。

『ルームメイト 白領公寓』(2002,韓国人俳優アン・ジェウク主演)
『美麗心霊 Beautiful Heart』(2003,韓国人俳優イ・ジョンヒョン主演)
『北京My Love』(2004,中韓合作)
『マジック・オブ・ラブ 魔術奇縁』(2005,韓国人俳優カンタ主演)

と、早い時期にバンバン韓国の血が入って来ていて、しまいには日本の『101回目のプロポーズ』のリメイク(2004)までわざわざチェ・ジウを使ってやるって、どういうことやねんという感じですが。ややこしいわ。そこはむしろ中国で固めろよ。(笑)

こうして初期の韓国系の見るからに"トレンディ"タイプの作品の年代を見てみると、つまりは韓国を手本に始まった初期の民放ドラマの流れに対して、いやいや中国には中国のドラマの作り方があるだろうと、反逆的に作られたのが、僕が冒頭「無印」として挙げたような"硬派"ドラマたちなのかなという感じがしますね。そういう風景が見えるというか。
ただそうした努力にも関わらず今でも明らかに主流が"トレンディ"系で占められているのは、結局はこうしたものが"TVドラマ"についての特に女性視聴者の需要の、動かし難い「ド真ん中」だからでしょうね。


二次元・ヲタカル感溢れる新感覚ドラマ

ときめき旋風ガール[旋風少女](2015)
サンセットストリート 煙袋斜街10号(2016)
私の妖怪彼氏[我的奇妙男友/My Amazing Boyfriend](2016)
シンデレラはオンライン中![微微一笑很傾城](2016)
私のツンデレ師匠様![旋風少女2](2016)


上記"トレンディ"系の基本的には同じ流れの中にありつつも、そこから少年少女的感性漫画・アニメからの影響を取り込んで少し違う流れを形成しつつあるように見えるドラマ群。対象年齢もやや低めか。

・『ときめき旋風ガール』 "元武道"という架空の国民的武術に青春を捧げる少年少女たちのドラマ。
・『サンセットストリート』 ゲイと(その時点までは)ノンケの二人の美青年による模索的BL。
・『私の妖怪彼氏』 現代に目覚めた不老不死の吸血鬼の男とオタク系アイドルの女の子の恋。
・『シンデレラはオンライン中!』 オンラインゲームに熱中する天才理系美少女の、虚実入り混じる恋。
・『私のツンデレ師匠様!』 『旋風ガール』の続編ですが、主要スタッフ入れ替わって少々劣化。


僕の感性に合うというのもあるんでしょうけど、なかなかいい作品が揃った今後有望なジャンルかと。
『旋風ガール』は"二次元"感爆発の、そのくせ格闘描写は痛々しいくらい本格的な面白い作品。『サンセットストリート』はBL趣味が無い僕でも、楽しく興味深く見られました。『シンデレラはオンライン中!』も、オンとオフのリアリティを上手く地続きに捉えている今風の作品で良いです。
このジャンルは多分、男や日本人にも見易い共感し易い要素が揃っているのが、一ついいところでしょうね。ちなみに『サンセットストリート』で飼われているうさぎの名前は、"サヨ"と"一休"です。(笑)


以上がこれまで僕が見た中国の「現代」を舞台にしたドラマの、だいたいの種類・位置付けです。
それらの演出や脚本の、史劇系や日米英のドラマと比較しての特徴なんかも書こうかなと思っていたんですが・・・今回はやめます。いずれもう少し大きな枠組みで、改めて。更に見てみる予定もありますし。
とりあえず最近の僕は、CCTVの人情喜劇(笑)の職人芸・脚本の冴えに、うならされることしきりな日々を送っています。フォーマットは保守的ですが、技術的にはアメドラの脚本に遜色ないレベルかと。
最後の"二次元"系ドラマも、機会があったらもっと見てみたいですね。"トレンディ"系も見ればそれなりに優れた作品はありますが、あえて見たいとはなかなか思えない。これで結構男子なもので。(笑)

ではまた。


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テーマ:中国ドラマ
ジャンル:テレビ・ラジオ
"ファンタジー史劇"ということの本当の意味
2019年02月21日 (木) | 編集 |
前回書こうと思っていて書き切れなかったこと。


振り返ればそこにファンタジー史劇

この前の記事で、だいたい2010年くらいからの中国ドラマの大きな潮流として「ファンタジー史劇」(時代劇)というものがあって、それがどのような特徴を持っていてまたどのような種類があると考えられるのかという話をしました。
定義としては、「史劇/時代劇のスタイル・ストーリーを基本としながらも、設定や人物の表現等に顕著な"ファンタジー"要素を持つもの」というあたりで、まあいいと思いますが。

しかしこれは定義を広くあるいはより本質的に採れば、別に「最近の中国ドラマ」についてに限った話でも中国ドラマの専売特許でも特殊ジャンルでもなくて、実は我々も既によく知っているお馴染みの"ドラマ"スタイルだと言えると思います。
知らないって?いえ知ってますよ。
"代表的"なファンタジー史劇と言えば、例えば・・・『ベルサイユのばら』



フランス革命の時代を舞台に、架空のスーパーヒロイン"オスカル"が大活躍する、華麗かつ骨太なファンタジー史劇です。

ベルばらでは古過ぎるというなら新し目の作品で行きましょうか。では2011年開始で現在も新シーズンが全世界から待望されている、『ゲーム・オブ・スローンズ』



ゾンビやドラゴンや巨人がぞろぞろ出て来る大"ファンタジー"でありながら、グレートブリテン島とヨーロッパ大陸の歴史と地理を巧みに重ね合わせた舞台設定の元、神話的かつ現代的な超本格的人間ドラマを描き出している、これなんかはむしろファンタジー史劇の"典型"的作品とすら言えると思います。

典型の次は"変則"に目を向けると、まだありますね超有名作品が。かの『スター・ウォーズ』シリーズ。



一応は"SF"ということになるんでしょうが、黒澤明『隠し砦の三悪人』を下敷きにした一種の"宇宙時代劇"的性格を出発点として持っている作品だというのは、有名な話ですね。"SF"としての本格性よりも説話的ストーリーの典型性の方を優先させた、"ファンタジー"に近い作品だというのも明らかですし。

というわけで、実はみんな大好き"ファンタジー史劇"という、そういうお話(笑)です。


されどファンタジー史劇

このように挙げて行くと、"ファンタジー史劇"と中国(アジア)ドラマをめぐって改めて言われるようになったドラマスタイルが、一般的・・・かどうかはともかくこうした金字塔的なカリスマ作品を各ジャンルで生み出すような、少なくとも"面白"さのポテンシャルの非常に高い形式だということは、言えそうに思います。

ただ"カリスマ"だということは逆の可能性もあって、つまりこれらが稀少な作品でもあるということ。
例えば『ベルばら』は少女漫画(アニメ)の代表的作品ではありますが、では似たような作品が沢山あるか"オスカル"が沢山いるかというとそんなことはなくて、作者池田理代子さんの資質や教養、実は「男の軍人が描けないから女にした」(LaLaTVインタビューより)という"偶然"なども含めて、色々なものがぴたりとはまって、ああいう性別やジャンルや世代を越えた"空前絶後"に近い作品になったように見えます。
あるいはヨーロッパ中世(古代)の王族貴族や戦乱を描いた(多くは陰鬱で残酷な)史劇ドラマ・映画は欧米に少なからずありますし、同様に剣と魔法とドラゴンのファンタジー作品も枚挙にいとまがない程あるわけですが、一見それらをくっ付けただけにも見える『ゲーム・オブ・スローンズ』のクオリティや人気に、匹敵どころか近い作品も、ほとんど見当たらない気がします。

『スター・ウォーズ』に関しては、"スペース・オペラ"という意味でのジャンル自体は比較的ありふれたものですし、内容的に(前二者のような)特別深いものもユニークなものも作品としては無いと思いますが、ただ第一作が公開された1977年当時の特撮技術(まだSFXとかいう言葉は無い(笑))も含めて、あれだけのスケール感やメジャー感、"みんなが思う理想的なスペースオペラ"をともかくもまとまった形で「実現」した、そのことに作品の基本的な価値はある(あった)のだと思います。部分的にスター・ウォーズより面白いスペース・オペラもSFも多分沢山あるけれど、ジャンルの存在自体を全世界的に体現して、"旗"を掲げて立っている、公的かつ唯一的な存在感。それは同時に、寡占的排他的存在感とも言える。

まとめると、"面白さ"のポテンシャル自体はとても高い、当たると大きいファンタジー史劇ではあるけれど、その"大きさ"(あからさまさ)のゆえか意外と当て難い作り難い、特権的な成功例とその他有象無象みたいになりがちという、そういう構造があるように思います。
そしてそうした状況下での昨今の中国ドラマ界、"ファンタジー史劇"界の大きな特徴は、その"難しい"はずの量産が意外と利いている、一定レベル以上の"成功"したファンタジー史劇が次々に出て来るので驚かされる、そういうところにあると思います。


『ゲーム・オブ・スローンズ』と中国ドラマ

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テーマ:中国ドラマ
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ともかく100本見てみた中国ドラマを色々整理してみる試み
2019年02月13日 (水) | 編集 |
『大秦帝国 縦横』中国ドラマの面白さに気付いてから約10ヶ月。

正確には中国製の"史劇"系ドラマを100本、最近では現代劇も結構見るようになりましたが、それはまた別の機会に。
史劇系ドラマ自体も実際には今日の時点で100本は既に越えてしまっているので、改めてもう言い直すとこれまでに見た中国史劇系ドラマ100本強となりますが(語呂が悪い(笑))、とにかくそれらを色々整理してみる試みです。
ただし"100本"と言っても平均して各々4~50話前後ある中国のドラマシリーズを100シリーズ見通しているわけではさすがに無くて、フルに見たor見ている最中なのは4分の1くらい、後は概ねお試しで最初の数話のみ見たか、途中で挫折したもの。まだまだ見ていないものも沢山ありますが、ある時期以降は数を稼ぐ為に無料ないし追加料金なしで見られるものは選り好みせずに全部見ているので、サンプリングとしてはそれなりに不作為で公平なものになっていると思います。

ともかくジャンルとして今こんな感じなんだそんな(に)作品があるんだと知ってもらって、少しでも興味を共有したいなというそういう企画です。(あと自分の頭の整理)
なお理由については今回は割愛しますが、僕は中国本土発のTVドラマのみに、見るべき特有の面白みを見出しているので、ジャンルの歴史的には先行する香港台湾のドラマ、及びそれらとの合作系の作品は、今回は除外させてもらいます。


1.製作年代別

まずはシンプルに、製作年代順に。
( )は中国国内的に大きな出来事、[ ]内は参考までに同年の代表的なアメリカドラマを挙げておきました。

(1978~ 鄧小平体制)
1980年代 (3)
1984 西遊記 ・・・[特捜刑事マイアミバイス、超音速攻撃ヘリ エアーウルフ]
1987 紅楼夢 ・・・[新スタートレック、マックス・ヘッドルーム]
1988 ラストエンペラー
(1989 天安門事件→江沢民体制発足)

1990年代 (9)
1990
1991 楊家将、宋慶齢の生涯 ・・・[リーズナブル・ダウト 静かなる検事記録]
1992
1993 中国儒学の始祖 孔子 ・・・[NYPDブルー、Xファイル]
1994 三國志演義 ・・・[ER緊急救命室、フレンズ]
1995 司馬遷と漢武帝 ・・・[犯罪捜査官ネイビーファイル]
1996
1997 (香港返還)
東周列国 春秋篇、永遠なる梁山泊 水滸伝 ・・・[アリーmyラブ、OZ/オズ]
1998 秦始皇帝 奇貨居くべし ・・・[セックス・アンド・ザ・シティ]
1999 (マカオ返還)
大清帝國 雍正王朝 ・・・[ザ・ホワイトハウス、ザ・ソプラノズ]

2000年代 (23)
2000
2001 笑傲江湖 ・・・[24 -TWENTY FOUR-]
2002 (胡錦濤体制発足)
射鵬英雄伝/THE LEGEND OF ARCHING HERO ・・・[CSI:マイアミ]
2003 
2004 
天龍八部/HEAVEN DRAGON THE EIGTH EPISODE、漢武大帝、龍票 清朝最後の豪商、五月に香る槐の花 ・・・[LOST、Dr.HOUSE]
2005 大敦煌 西夏来襲、プロット・アゲインスト(S1盲目の少年)、神馬英傑伝 ・・・[プリズン・ブレイク]
2006 
大秦帝国、復讐の春秋 臥薪嘗胆、大明帝国 朱元璋、北魏馮太后、神雕侠侶/Condor Hero-The Savior Of The Soul、封神演義 ・・・[HEROES]
2007 
2008 (北京五輪)
クィーンズ 長安、後宮の乱、江湖の薔薇、射鵬英雄伝(新版)、遥かなる北の大地へ ・・・[ブレイキング・バッド]
2009 倚天屠龍記/Heaven Sword and Dragon Sabre、孔子、白蛇伝 転生の妖魔、我が弟 その名も順溜 ・・・[グッド・ワイフ]

2010年代 (70)
[前半42]
2010 (上海万博)
三国志/Three Kingdoms、紅楼夢 愛の宴、四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)、美人心計 一人の妃と二人の皇帝、聊斎志異 梅女、茶館 激動の清末と北京の変遷 ・・・[ウォーキング・デッド]
2011 
宮 パレス 時をかける宮女、宮廷女官 若曦(じゃくぎ)、恕の人 孔子伝、則天武后 美しき謀りの妃、武則天秘史、風にはためく五星紅旗 ・・・[ゲーム・オブ・スローンズ、HOMELAND]
2012 (習近平体制発足)
大秦帝国 縦横 強国への道、宮廷の諍い女、隋唐演義 集いし46人の英雄と滅びゆく帝国、項羽と劉邦/King's War、曹操、絢爛たる一族 華と乱、女たちの孫子英雄伝、ムーラン、紫檀(したん)王 ・・・[ARROW/アロー]
2013 
月下の恋歌、イップ・マン、フビライ・ハン、岳飛伝/THE LAST HERO、謀(たばか)りの後宮、画皮2 真実の愛、名家の妻たち/The War of Beauties、賢后 衛子夫、天命の子 趙氏孤児、後宮の涙、二重スパイの男、闖関東外伝 ・・・[ハウス・オブ・カード 野望の階段]
2014 
武則天/The Empress、歓楽無双 恋する事件帖、鹿鼎記 ロイヤル・トランプ、秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛、トキメキ!弘文学院、金蘭良縁、風中の縁(えにし)、名家の恋衣、24の急カーブ 救援物資輸送の大動脈 ・・・[GOTHAM/ゴッサム、FARGO/ファーゴ]

[後半28]
2015 
瑯琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす、武僧伝、雲中歌 愛を奏でる、花千骨 舞い散る運命、永遠の誓い、ミーユエ 王朝を照らす月、皇貴妃の宮廷、ハンシュク 皇帝の女傅 ・・・[Empire 成功の代償、MR. ROBOT/ミスター・ロボット]
2016 
擇天記(たくてんき) 宿命の美少年、射鵬英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー、三国志 趙雲伝、王女未央 BIOU、皇帝の恋 寂寞の庭に春暮れて、蘭陵王妃 王と皇帝に愛された女、女医明妃伝 雪の日の誓い、百錬成鋼、長征大合流 ・・・[ウエストワールド、MARS 火星移住計画]
2017 
琅邪榜<弍> 風雲来る長林軍、月に咲く花の如く、昭王 大秦帝国の夜明け、酔麗花 エターナル・ラブ、永遠の桃花 三生三世、花と将軍/Oh My General、孤高の花/General&I、開封府 北宋を包む青い天、麗王別姫 花散る永遠の愛、寵妃の秘密 私の中の二人の妃、神の手を持つ医師!喜来楽、清の能臣 于成龍 ・・・[ビッグ・リトル・ライズ、ハンドメイズ・テイル/侍女の物語]
2018
2019


アメドラのチョイスは僕の好みというより、"時代"感のあるもの、当時"新し"かったり話題になったもの。

あくまで日本で普通に(DVD等で)見られる作品の範囲ではありますが、やはり鄧小平の「改革・開放」に導かれた1980年代に入って、いよいよ中国でも商業的テレビドラマが作られるようになったという、そういう流れではあるようですね。
1990年代までは、誰もが知っているような国民的伝統的ストーリー(『西遊記』『三国志』『水滸伝』等)の映像化と、映画の翻案(『ラストエンペラー』『新・少林寺』)やアメリカで言うところの"ミニシリーズ"ないし"テレビ映画"のような数話で完結する形式(『ラストエンペラー』『宋慶齢の生涯』『秦始皇帝 奇貨居くべし』)が主で、言わば独立ジャンルとしての「テレビドラマ」はまだ確立し切っていない印象があります。

2000年代に入って作品数もまあまあ増えて、(僕の見るところ)後の流れを決定するような先駆的な作品もいくつか作られていますが(『大敦煌』『大秦帝国』『クィーンズ 長安、後宮の乱』等)、やはり中国ドラマブームが本格化する、日本で見られる中国ドラマの数が爆発的に増えるのは、2010年代に入ってから。
ただ現在に至るも多くのドラマチャンネルや配信サイトでは、「韓流ドラマ」の副ジャンル、「アジアドラマ」の一種というような位置づけにとどまっていて、内容の充実に見合う認知は得られていませんね。そういう意味ではこれからですが、内容的には"黄金時代""最盛期"を、そろそろ「過ぎた」サインが出て来てもおかしくないのではないか、そんな風に思ったりもしている今日この頃です(逆に言えばそれくらい今が既に充実・成熟しているということです)。その日が来ることがなるべく遅れてくれるよう、英米と比べてもやはり分厚さが桁違いの中国の「文化」力に、日々祈りを捧げていますが。(笑)


2.対象時代別

次は視点を変えて別の種類の"歴史"、それぞれのドラマがどの「時代」(王朝)を描いているかで、分類してみたいと思います。
ちなみに同じ趣旨のことを過去にやっている人はやはりというか既にいて(「電視劇一覧」by小魚さん)、先輩!!(または師兄)という感じです。

神話時代&架空

超古代~架空
西遊記(1984)、紅楼夢(1987)、紅楼夢 愛の宴(2010)

架空・偽史
神馬英傑伝(2005)、白蛇伝 転生の妖魔(2009)、聊斎志異 梅女(2010)、画皮2 真実の愛(2013)、瑯琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす(2015)、花千骨 舞い散る運命、永遠の誓い(2015)、擇天記 宿命の美少年(2016)、琅邪榜<弍> 風雲来る長林軍(2017)、酔麗花 エターナル・ラブ(2017)、永遠の桃花 三生三世(2017)、寵妃の秘密 私の中の二人の妃(2017)

殷~周
封神演義(2006)


歴史時代

春秋
中国儒学の始祖 孔子(1993)、東周列国 春秋篇(1997)、復讐の春秋 臥薪嘗胆(2006)、孔子(2009)、恕の人 孔子伝(2011)、女たちの孫子英雄伝(2012)、天命の子 趙氏孤児(2013)

戦国
大秦帝国(2006)、大秦帝国縦横 強国への道(2012)、ミーユエ 王朝を照らす月(2015)、昭王 大秦帝国の夜明け(2017)

戦国~秦
秦始皇帝 奇貨居くべし(1998)

秦~前漢
項羽と劉邦/King's War(2012)

前漢
司馬遷と漢武帝(1995)、漢武大帝(2004)、クィーンズ 長安、後宮の乱(2008)、美人心計 一人の妃と二人の皇帝(2010)、賢后 衛子夫(2013)、風中の縁(えにし)(2014)、雲中歌 愛を奏でる(2015)

新~後漢
秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛(2014)

後漢
ハンシュク 皇帝の女傅(2015)

後漢~三国
三國志演義(1994)、三国志/Three Kingdoms(2010)、曹操(2012)、三国志 趙雲伝(2016)

十六国
孤高の花/General&I(2017)

南北朝
北魏馮太后(2006)、後宮の涙(2013)、蘭陵王妃 王と皇帝に愛された女(2016)、王女未央 BIOU(2016)


ムーラン(2012)

隋~唐
隋唐演義 集いし46人の英雄と滅びゆく帝国(2012)


則天武后 美しき謀りの妃(2011)、武則天秘史(2011)、謀(たばか)りの後宮(2013)、武則天/The Empress(2014)、トキメキ!弘文学院(2014)、麗王別姫 花散る永遠の愛(2017)

北宋
楊家将(1991)、永遠なる梁山泊 水滸伝(1997)、天龍八部/HEAVEN DRAGON THE EIGTH EPISODE(2004)、大敦煌 西夏来襲(2005)、岳飛伝/THE LAST HERO(2013)、武僧伝(2015)、花と将軍/Oh My General(2017)、開封府 北宋を包む青い天(2017)

南宋
射鵬英雄伝/THE LEGEND OF ARCHING HERO(2002)、神雕侠侶/Condor Hero-The Savior Of The Soul(2006)、射鵬英雄伝〈新版〉(2008)、射鵬英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー(2016)


倚天屠龍記/Heaven Sword and Dragon Sabre(2009)、フビライ・ハン(2013)

元~明
大明帝国 朱元璋(2006)


笑傲江湖(2001)、四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)(2010)、絢爛たる一族 華と乱(2012)、月下の恋歌(2013)、歓楽無双 恋する事件帖(2014)、金蘭良縁(2014)、女医明妃伝 雪の日の誓い(2016)

清[前・中期]
大清帝國 雍正王朝(1999)、宮 パレス 時をかける宮女(2011)、宮廷女官 若曦(じゃくぎ)(2011)、宮廷の諍い女(2012)、鹿鼎記 ロイヤル・トランプ(2014)、皇貴妃の宮廷(2015)、皇帝の恋 寂寞の庭に春暮れて(2016)、清の能臣 于成龍(2017)


近・現代

清[後・末期]
龍票 清朝最後の豪商(2004)、江湖の薔薇(2008)、闖関東外伝(2013)、月に咲く花の如く(2017)、神の手を持つ医師!喜来楽(2017)

清~中華民国
ラストエンペラー(1988)、五月に香る槐の花(2004)、遥かなる北の大地へ(2008)、茶館 激動の清末と北京の変遷(2010)、イップ・マン(2013)、名家の恋衣(2014)

清~中華民国~中華人民共和国
宋慶齢の生涯(1991)

中華民国
我が弟 その名も順溜(2009)、紫檀(したん)王(2012)、名家の妻たち/The War of Beauties(2013)、二重スパイの男(2013)、24の急カーブ 救援物資輸送の大動脈(2014)、百錬成鋼(2016)、長征大合流(2016)

中華人民共和国
プロット・アゲインストS1盲目の少年(2005)、風にはためく五星紅旗(2011)


『西遊記』も『紅楼夢』も、本編に当たる部分は"歴史時代"的描写が主なんですが、オープニングに神話的な起源話ががっつり入っているので、こういう分類に。『封神演義』も天界ありきの話ではありますが、一方で「殷末」「紂王」という人間界の具体的状況と大きく絡んだ話でもあるようなので、また少し別な扱いに。西遊記も"唐"と言えば唐なんでしょうけど・・・
それはそれとして、いいでしょ?(笑)この扱い範囲の広さ、細かさ。それだけでも楽しい。「大河は結局戦国と幕末ばっかり」(最近はそうでもないのか)と、お嘆きの貴兄に。(笑)

「史劇」「時代劇」の定義は、僕は少し広く取っているかも知れません。具体的には"近・現代"として示した舞台設定のものは、中国側では「古装」(時代劇の中国での言い方)とは分類されない場合もあるようですが(というか多分、単純に「古」い「装」いかどうかで分けてるっぽい)、ただ日本を含む西側ドラマと基本的には同じような作りになっているずばり"現代劇"と比べると、やはり"昔"の話であるしその時代の中国ならではの日本人には馴染みの無い状況や描写が見られる、それゆえに独自の見る価値も見出せるいい意味での「歴史」(劇)作品と、実用的には定義していいように思います。
多少の偏見込みで言うと、「改革開放」以前の中国は、ひっくるめて"昔"というか。(笑)

挙げた中で一番新しい時代設定のものは、第二次大戦終結後の共産中国の核開発に貢献した中国人科学者たちを描いた『風にはためく五星紅旗』ですが、製作は2011年ともう十分に新しいにも関わらず、やはり「現代劇」として見るのは少し難しいところがありました。日本の同様に"戦後"を描いた作品と比べてもね。"現代"との連続性の薄さを感じるというか。

面白いんですよね、抗日戦争(日中戦争)前後の時代の話とかも。日本も関わっている他人事ではない(笑)深刻な状況を描いているにも関わらず、やはりその「時代」そのものを見る、その時代ならではのリアリティ・生活感を味わえる、正に「時代劇」の楽しさがある。所謂西側的な「戦争映画」(ドラマ)とは、絶対年代的には重なっていても、明らかに何か違う性格・内実を持っている。もっと余裕があるというか。
やはりいい意味で「距離」感があるからではないかと思いますが、時間的に。"近代化"が遅れた恩恵と言ってしまうと、ちょっとあれですが(笑)。歴史が抽象化されていない、単純化されていない。

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テーマ:中国ドラマ
ジャンル:テレビ・ラジオ
策略の文化としての中国 ~『琅邪榜』と中国の武術思想そして自分たちのサッカー?
2018年10月03日 (水) | 編集 |
中国ドラマについて書きたいことが溜まりまくってるんですが、差し当たってここらへんから。
お題は『琅邪榜(ろうやぼう) ~麒麟の才子、風雲起こす~』より。



元はチャンネル銀河、今はHuluAmazonプライムビデオで見られます。2015年作品。全54話。
来週(10/9)からチャンネル銀河で、続編も始まります。



中国版『ゲーム・オブ・スローンズ』?

まずどういう作品かですが。

南北朝時代を模した架空の国・梁。都では皇太子と第5皇子・誉王 (よおう) との後継者争いが激しさを増していた。そんな中、2人は情報組織「琅琊閣」から“麒麟の才子を得た者が天下を得る”という情報を手に入れる。その麒麟の才子とは、江左盟の宗主・梅長蘇のことだった。
両者は早速、梅長蘇 (ばいちょうそ) の獲得に乗り出すが、梅長蘇は蘇哲 (そてつ) と名を変え、都に潜入していた。梅長蘇は実は、12年前に謀反の罪で壊滅させられた赤焔軍の生き残り、林殊 (りんしゅ) だった。猛毒に侵され以前とは違う容貌となった林殊は、軍を罠に嵌めた者たちへの復讐を果たそうと都に舞い戻ったのだ。(Hulu)

ストーリーとしては、そんな感じ。偽名が二重になってるのでややこしいですが、蘇哲=梅長蘇なのは公然の事実なので、そこは余り関係がありません。"江左盟"というのは後でも説明しますが、中国独特の半公認任侠集団的自治組織みたいなもの。まあ日本でも幕末の清水の次郎長一家とかは、そんなところもありますかね。
"赤焔軍"というのは普通に官軍の一組織なんですが、それにいちいちニックネームをつける習慣があるらしいです。一定の独立性はありますが、軍閥までは全然行かない感じ。基本的には名前がついているだけ。

"復讐劇"ではあるんですが、主人公たちが際立って清潔な人柄の人たちばかり(&美男美女(笑))であり、かつ復讐計画全体が"麒麟の才子"("臥龍""鳳雛"みたいなもの)による周到遠大な計画によって進められるので、特に前半分は快調快適に進んで久しぶりに「見るのが止まらない」状態を経験しました(笑)。策が一つ一つピタッピタッとはまって行く感じは、結構たまらないです。
後半分になるとそれまで隠れて指揮していた麒麟の才子の正体が概ね敵側に露わになってしまうので、ぐっと難度が上がって辛いシーン危ういシーンも増えて来ますが、それでも成り行きの納得感や品位は失われることなく、エンディングまでたどり着きます。
小説原作ものならではでもあると思いますが、構造美と知性の通常よりかなり高いハードルを、見事にクリアし切った傑作だと思います。

この"中国"ドラマの傑作の比較対象を欧米作品で探してみると・・・『ゲーム・オブ・スローンズ』('11)ですかね。かの。世界的モンスターヒットドラマ。




共通点としては、実在の歴史的地理的構造(GoTはグレートブリテン島と欧州大陸の二段重ね?琅邪榜はずばり中国大陸)を堅固なベースとしながら、その上にフィクションならではの網羅性と完全性と典型性を駆使して、「世界」を、「世界そのもの」を、「人間の世界」を"決定版!"という気迫で描き出そう"実体化"させようという、そういう企画であること。我々の住んでいる世界は要するにこうなっている、その世界ではこういうことが構造的な必然として起きる、それをかなり客観的な感触でヴィジュアライズしている、そういう作品であることが挙げられると思います。
勿論どんなフィクションもそれぞれに「世界」を「作る」わけですけど、ただその目指す知的な完全性包括性において、両作品は突出していると思います。

共に小説の原作があるゆえの作り込みの周到さということは言えると思いますが、オリジナル脚本で匹敵するものを探すとすれば、『スタートレックDS9』('93)ですかね、前にも言ったと思いますが。"宇宙"が舞台なので「実在の歴史的地理的構造」をベースとするわけには行きませんが、その条件下では十分な世界観の包括性と立体感を獲得している秀作だと思います。その条件で言えば日本のアニメの『銀河英雄伝説』('88)なんかも同系の作品ということになると思いますが、こちらはただ世界構造を余りに単純化戯画化してしまっているので、"包括""完全"という印象からは遠くなってしまっていると思います。"中身"は十分秀逸ですが、入れ物は。

『ゲーム・オブ・スローンズ』との比較に戻ると、どちらも"人間の世界"への包括的な洞察とそこで起きることへのある種の非情な"見切り"という点で共通はしているんですが、違いがあるとすればGoTがより"混沌"を強調して、ストーリー的にも文明の周縁部や辺境からの視点をメインに話が進むのに対して、琅邪榜の方はより"秩序"的であり、皇帝の権威や法秩序自体はあくまで尊重し、舞台となっているのも中華帝国("梁")の中央官界がメインで東西南北の周辺諸国は"周辺"としてのみ登場するという、そういう違いがあります。
だからとちらもかなり悲惨な出来事や人間の救われない行動が次々と描写されるわけですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』の場合はそれらは専ら「裏切り」、頻繁ではあるけれど一つ一つは突発的な出来事として起きます。一方『琅邪榜』の場合は全てひっくるめて「策略」というか、敵味方の策略の交錯の中での必然の一端として専ら起きます。

こうして書くと、何か『琅邪榜』の世界が古典的な秩序の中にあり、『ゲーム・オブ・スローンズ』の"現代的"な無秩序とのコントラストの中に見えて来そうではありますが、基本的に中国の伝統的な小説世界(「武俠小説」)に則っている琅邪榜にそういう面が無くはないと思いますが、それはそれとしてまた別に僕が感銘を受けるのは、中国の"歴史"の厚みというか、人間世界のあらゆることを言語で秩序化して行こう、せずにはいられないという脈々と伝わる執念のようなものと、作業の慣れから来るその手際の見事さと。

別な言い方をすると、絶え間ない「裏切り」のドラマである『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界はそれだけハードでありダイナミックであり、一方で「策略」のドラマ『琅邪榜』はより整然としていて予定調和的であるとも見えるわけですが、ただ"裏切り"が問題になるのはその前提に"信頼"や"期待"があるからなわけで、それはある意味「甘い」こととも言えて、裏切りすら"予定"の行動として組み込んでしまう描いてしまう『琅邪榜』の方が、見方によってはハードで非情なんですよね。最初から期待もしていない。
流麗なストーリー運びの中に、"流麗"ゆえの非情さが時折垣間見えるというか。

ちなみに『DS9』の場合は"物語"の典型の組み合わせとしてストーリーが構成されていて、個人の行動はあらかじめ「世界」の中に埋め込まれている感じ。『銀英伝』もまあ、人間行動の「典型」の収集と陳列が、基本的にはやっていることですね。

とにかく「策略」の壮麗な織物として構成されている『琅邪榜』の世界と、その背後にある気がする中国人の独特のドライな世界の見方という、そういう話でした。


中国の武器と武術

「策略」ということで思い出した&思い当たること。

突然ですが、子供の時に水滸伝、多くは多分横山光輝の漫画(笑)



だと思いますが、とにかくそれを読んだ時に"禁軍師範"の王進や林冲が、「棒術」を中心に教えていたことに違和感を感じませんでしたか?"棒術"?マイナーじゃねえ?剣術とか拳法とかなら分かるけど。皇帝や将軍様(公儀剣術指南役)が"棒"を振り回してるのって、あんまりイメージ出来ない。捕吏じゃないんだから。

その疑問を解いてくれたのが、結構前の番組ですがナショジオグラフィックチャンネル『科学で見る格闘技の真髄』という確かアメリカ人研究者による番組で、主な内容については昔ブログを書いたのでそちらを参考にしていただきたいですが、その中で一つ面白かったのは中国の武器及びその技術体系は「棒」を基本としていて、「槍」だの「矛」だのあるいは日本で言う「薙刀」のような長柄武器の区別は、その"棒"の先に様々な"アタッチメント"を装着する、その"付け替え"の種類の問題としてフラットに位置付けられているということ。従ってその用いる技術も、あくまで"棒術"のバリエーションの一部として基本的には考えられるということ。棒が使えればどの武器も使える、だから禁軍師範も棒術を教える。

理屈は分かるけれどどうにもドライだなという。"アタッチメント"と言われると、なんかがっかりするというか。(笑)
そうかもしれないけれど。掃除機のノズルかよという。(笑)

実際中国の長柄武器は機能的に細分化されていてかなり多種多様のようです。日本だとパッと思い付くのは、「槍」と「薙刀」くらいしかないですが。
例えばウチにあるこの本



だと、「矛」「槍」「戈(か)」「戟(げき)」に始まり、合計・・・なんと19種類もの武器の名前が絵と解説入りで載っています。さすがに全てがレギュラーで使われたわけではないでしょうけど、それにしても多いですね。
実際に見る中国史劇、三国志みたいなバッタモンではなくて(笑)もう少しシリアスな題材のドラマを見ていると、古代中世の中国の一般兵士が用いる長柄武器は、「戟」と呼ばれる刺突用の「矛」とピッケル状の"引っかけ"武器「戈」を組み合わせたハイブリッド武器が、大多数に見えます。・・・まあ単に小道具を使い回してるのかも知れませんが(笑)。ちなみにこれは、三国志で言えば呂布の主武器です。("方天戟")

日本にも日本なりの細かい区分が無いわけではないでしょうが、少なくともフィクションや通念としては、余り共有されている感じは無いですね。
あるいは「日本刀」という我が国が誇る代表的武器がありますが、あれは切って良し刺して良しの汎用性、鋭さと耐久性の相反する要素のバランスが比較的取れているところが優れているわけですが、中国だと「重さと頑丈さでぶった切る」"刀"と、「鋭いが細身で脆い」刺突用の"剣"というのは基本的に別の武器です。ここらへんからも、日本の武器はいちいち使い分けるよりも汎用という志向が強くて、中国ほど細かい分類というかドライな機能主義は一般的ではないということは、推測出来るのではないかと思います。
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テーマ:中国ドラマ
ジャンル:テレビ・ラジオ
HBO(ホームボックスオフィス)の過去・現在・未来
2017年09月18日 (月) | 編集 |
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このロゴと、本編開始前に流れる"砂嵐"(笑)を見るだけで、なんかじーんと来ちゃうんですが。
バリエーションはあるらしいんですが、知る限り基本ずーっと変わってないのがまたいいです。

HBO Wiki

HBO(エイチビーオー、Home Box Office の略)は、アメリカ合衆国の衛星およびケーブルテレビ放送局
ケーブルテレビ局の老舗であり、ライバル局のShowtime・Starzを抑えアメリカでトップの実績を誇る。関連企業のワーナー・ブラザース参加のもと、オリジナルのテレビドラマの制作絶対的な自信を持っており、主要なコンテンツとなっている。


後で紹介するように傑作・ヒット作は数多ありますが、最近では何と言っても『ゲーム・オブ・スローンズ』

ゲーム・オブ・スローンズ

が世界中でドラマファンの右翼も左翼も巻き込むようなタイプの大ヒットをしたので、名前くらいは聞いたことのある人も多いのではないかと。「ドラマ史上最高傑作!」なんて大胆な宣伝をしているのも見かけたことがありますが、あながち嘘ではないです。十分可能性はあると思います。ただそれ自体が強力な"原作"つきなので、それを割り引いて僕は"1位"にはしないと思いますが(笑)。でも"5"は堅い。"3"も多分。

まあゲーム・オブ・スローンズについては来たる最終8章完結後に、また語る機会(笑)を設けるとして。


歴史と作品

まずはHBO製作ドラマの歴史を、重要な技術的業界的トピックと照らし合わせながら。
ちなみに例に挙げているのは、僕がちらっとでも見たことのある作品です。

1972年 - Sterling Manhattan Cableにより放送開始。
1975年 - 通信衛星による番組配信開始。
1989年 - タイム・ワーナー発足により、その傘下となる。


 OZ/オズ('97)
 セックス・アンド・ザ・シティ('98)

1999年 - HBO HDの放送開始。

 ザ・ソプラノズ('99)
 ラリーのミッドライフ★クライシス('00)
 シックス・フィート・アンダー('01)
 バンド・オブ・ブラザース('01)
 THE WIRE/ザ・ワイヤー('02)
 デッドウッド('04)
 ROME[ローマ]('05)

・・・2007年1月 - 米ネットレンタル大手Netflixが中心業務をVOD(ビデオ・オン・デマンド )に移行。
2007年10月 - VODサービスJ:COMオンデマンドで放送開始。

2010年 - HBO GOにてVODサービス開始。


 ザ・パシフィック('10)
 ゲーム・オブ・スローンズ('11)
 GIRLS/ガールズ('12)
 LEFTOVERS/残された世界('14)
 HERO 野望の代償('15)

2015年 - スターチャンネルと日本国内最速独占放送契約を締結。
2016年 - HuluとSVOD(定額制動画配信)サービスにおける日本国内独占配信契約を締結。


 クォーリーと呼ばれた男('16)
 ウエストワールド('16)
 ビッグ・リトル・ライズ('17)

ふーん・・・。
書く前に僕がイメージしていた"ストーリー"は、「ケーブル・衛星・ネット配信の3つの時代を変わらぬクオリティで駆け抜けて来た"HBO"」みたいなものだったんですけど、ケーブル局として創設された2年後にはもう衛星放送が始まっているし、しかもそこから日本でも見られるような作品が出て来るまで20年以上かかってるし、なんか思てたんとちゃう。(笑)
ただその恐らく日本初お目見えの『OZ』の時点では「ケーブル局」として紹介されていて、今でもそう紹介されるのが普通なので、どうなんでしょう、アメリカ国内では基本ケーブルで配信していて、それを国外(または国内遠隔地?)に持っていく時に衛星を使うと、そんな感じの単純な理解でいいのかな?

自前のVODサービス(HBO GO)を持っていることは上に書きましたが、"衛星"サービスを持っているという記述は特に無いですしね。"衛星"を持っていないのは当然としても。(笑)
日本でHBO作品を見た人も、少なくとも『OZ』('97)から『ROME』('05)までの作品は、基本的にスカパーを筆頭とする衛星サービスで見たはずです。
だからあえて「時代」を"画"し直すとすれば、「ケーブル局としてアメリカ国内を中心に活動していた時代から衛星を通じて広く海外にも作品が知られるようになった時代を経て、ネット配信の時代を迎えても変わらず健在な"HBO"」とかになりますかね。長いけど。(笑)

(HBOとネット配信)

上では"現在"運営しているものとして、2010年開始の「HBO GO」を挙げていますが、英語版のWikiによると実は早くも2001年には、オンデマンドサービス自体は始めていたようです。書いてあることを見ると多分スカパーオンデマンド等と似たような感じで、比較的最近の"見逃し配信"という補助的役割のようですが。それをより自立的に運営しているのが、現在の"GO"ということなんですかね、見てないんで分かんないですけど。

それはそれとして、ケーブル/衛星時代の雄であったHBOも、ネット時代への対応にはそれなりに頭を悩ませていたようで、2005年のBBCとの共同制作による大作『ROME』の後、しばらく活動が停滞していたようですね。
言われると確かに、見かけなかった。
その間にはNetflixの台頭があり、アメリカでどうしてたのかは知りませんが、日本では試験的にでしょうか、J:COMオンデマンドと手を組んでみたりしています。そして何か方針が定まったのか、社内部門の整備も終えて、2010年からまた活発に活動を再開したと、そんな感じでしょうか。

ちなみにさっき確認してみたところ、現在のところNetflixには作品を提供していないようです。
Huluとの兼ね合いなのか、それともずばりHBO GOでやるからなのか、いずれにせよ"オリジナル制作"が売りのNetflixとは、同じく伝統のコンテンツ力が自慢のHBOは、相性が悪そうではあります。


作風とその変化
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人を”食べる”ということ。 ~ドラマ版『ハンニバル』
2017年05月15日 (月) | 編集 |
"海外ドラマ"ネタですが、割りと普遍性のある内容なので、こちらでも。





『ハンニバル』(AXN) (ドラマ版Wiki)

内容

世界を震撼させた連続猟奇殺人犯、ハンニバル・レクター。語られなかった"空白の過去"が今、明かされる…。

ある日、若い女性ばかりを狙う連続殺人事件が起き、FBI捜査官のジャックは、FBIアカデミーで教鞭をとるウィル(グレアム)に協力を依頼する。彼は、殺人犯に共感し、頭の中で犯行を再現できるという特殊な能力を持っていた。そして、不安定な彼の精神状態を心配したジャックは、著名な精神科医であるハンニバル(レクター)を招聘する。

映画「羊たちの沈黙」シリーズにインスパイアされ、史上最悪の殺人鬼の“空白の期間”が、描かれる! (AXN公式より)

ハンニバル・レクター

『羊たちの沈黙』等、作家トマス・ハリスの複数の作品に登場する架空の人物。
著名な精神科医であり猟奇殺人犯。殺害した人間の臓器を食べる異常な行為から「人食いハンニバル」(Hannibal the Cannibal、ハンニバル・ザ・カニバル)と呼ばれる (ハンニバル・レクターWiki)


感想

映画版



の方も見てはいますが、余り覚えていないのでほぼドラマ版オンリーの感想になります。シリーズ全体については、ハンニバル・レクターWiki を参照。
一番有名な映画『沈黙』では、ハンニバル・レクター博士は既に収監・拘束された状態で登場しますが、最終的にそこに至る、博士が"シャバ"にいて殺しまくっていた時代が、主に描かれています。

"ドラマ"としては、とにかく演技&俳優陣、及び演出の圧倒的な"クラス"感で押しまくる作品で、余りにも"押され"るので面白いのか面白くないのか、時々よく分からなくなる作品。(笑)
多分、面白いんですけど、全然面白くないという人がいても、それはそれでそうかなとも思う。(笑)


それはそれでいいとして、ではそもそもこの作品は、何を言おうとしている作品なのか。言いたいことが、あるとして。無いかも知れない、"クラス感"自体が、目的である可能性も。(笑)
でもまあ、あるんでしょう、多分。それが何かと言えば・・・

 なぜ人を殺してはいけないのか。より正確には、なぜ人"だけ"、殺してはいけないのか。

ということかなと。
で結局、作品的な"答え"としては、

 別にいけなくはない

ということになるんだろうと思います。
"答え"というか"主張"、"問題提起"ですかね。レクター博士の。


ここで「殺人」そのものの是非・意味に焦点を当ててしまうと、人類の中で歴史上何千回何万回と繰り返されて来ただろう、抽象的ないしは感情的議論・対立に収斂してしまって、収拾がつかなくなる。

ドラマ的ないしフィクション的妙味としては、そこに「食人」という要素が加わること、"殺す"ことよりも"食べる"ことに中心がずれる、そのことによって"抽象"や"感情"が回避されるところに、巧妙さというか面白味があるのだと思います。
つまり、我々現代人は、日々(意識的に)生き物を殺したりはしていませんが、しかし生き物を殺したものを、食べてはいるわけですよね。日々
そこに"食通"であり、"料理の達人"であるハンニバルが、丹念に、他の生き物に対するのと全く同様の手順と意識で「食材」化した人肉・人体を提供して来ることで、「食事」という行為の日常性を通してその"前処理"としての「殺人」が、倫理的慣習的抵抗をスルッとすり抜けて日常化してしまう、受容可能なものになってしまう、そういう危うさ、知的葛藤が、このドラマの中心にあるだろうと思います。

同じ「食材」、同じタンパク質、何も違わないだろう。出て来ているのはほらこのように「料理」であり、日々食べているものであり、その背後には常に、そういう"前処理"プロセスがあるのだ。人と他の生き物と、何の違いがある。なぜ人についてだけ「殺人」という禁忌が成立するのだ、なぜ人"だけ"殺してはいけないのだ、そうハンニバルは語りかけて来る、こちらを揺さぶって来るわけです。

そうしてハンニバルが破壊した禁忌、開けてしまった"地獄の窯"は、ハンニバル自身をも飲み込もうとします。
そういう本質を持っているというか。
シーズン3で、かつてハンニバルに顔を"食われ"、その復讐に燃える大富豪メイスンが、多額の懸賞金をかけたハンニバルを晴れて捕まえたらどうするかという話題になった時に、彼を「北京ダックにして食う」とうそぶき、その"残酷"な"調理"プロセスを嬉々として語る場面は秀逸でした。

元々ねじくれた性格ではあったメイスンですが、しかし彼を食人に"覚醒"させた、(不要な)禁忌を取り去ったのは正にハンニバルの論理の普遍的な説得力であったわけですし、またハンニバルに対して施されると想像するといかにもゾッとさせる"調理"プロセスも、しかし「ダック」に対しては日々実際に行われているものなわけで、そのことが頭をよぎると果たしてメイスンを非難していいのか嫌悪していいのか、観客は立場に窮するわけです。
メイスンの人格や"復讐"という動機の正当性の問題は、おくとしても。


勿論ハンニバルは動物愛好家などではありませんし、ベジタリアンなどでも全くない、バリバリの美食家です。だから決して、そのことで人類の残虐性を「告発」しているわけではありません。
・・・強いて言えば人「だけ」を除外する、人についてだけ"残酷""禁忌"を言い立てる、その人間の偽善と矛盾は、「告発」しているかも知れない。
ただいずれにせよ彼が求めているのは「正義」ではない、"論理的整合性"という意味での"正しさ"は求めているでしょうが、それでもってもっと"素晴らしい"世界を何か構想しているわけではないでしょう。

言っているのはただ論理的にはこうなるよということであって、その禁忌には根拠が無いよと言っている。後の面倒は特に見ない。目的は若干の悪戯心を含んだ人心のかき乱しと知的優越/正当性の誇示と、だからつまり"間違った"ことはしていない、俺の殺しと食事の邪魔をしないでくれという、言ってしまえばそれだけのことだと思います。

この"収拾"のつけなさ加減が、彼を"カリスマ"的ではあっても「教祖」ではなくて「犯罪者」にとどめおく要素だと思いますが(笑)、とにかくそういう人。一見いかにもサイコパス風の"犯行"ではありますが、果たして彼は"欠落"しているのか、それとも人並み以上の情操は備えつつ、その上で人間が抱える論理的な矛盾を意志と知性で"克服"した卓越した人なのか、そこらへんが作品内的にも、評価の分かれるところ。

実際には"禁忌"の"廃棄"という消極的な主張だけでなく、お得意の「食」に加えてその近隣にある「性」、更に「愛」や「友情」のそもそもについてより積極的な主張も行っているようではありますが、特には取り上げません。
結局どうして欲しかったんでしょうね、ハンニバルは。親友であり心の恋人であり宿敵でもあるウィル・グレアムに、何を求めていたのか彼の何がそんなにハンニバルの心を捉えたのか、そこらへんは終始分かるような分からないような、深堀りしてもドツボにハマるだけな感じ。

ちょいちょいウィルの窮地を助けに入る、"殺人鬼"ハンニバルの「味方」としての頼もしいこと頼もしいこと。(笑)
ドラマとしては、そんな感じです。


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『MM9-MONSTER MAGNITUDE-』 ~脚本家・伊藤和典の再発見
2016年12月17日 (土) | 編集 |
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ファミ劇での放送を録画していたのをすっかり忘れていた、『MM9』という日本のドラマを見ました。
『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督の製作総指揮(各話毎に、樋口監督自身も含めた複数の監督が代わる代わる監督するスタイル)による、特撮ドラマシリーズです。2010年製作。全13話(Wiki)
かなり、良かったです。


一言で言えば、"ウルトラQ meets パトレイバー"という感じですかね。
「気象庁特異生物対策課」(通称"気特対")という特殊捜査機関(?)による怪獣退治の話なんですが、各話の"怪獣"どうしにはほとんど関連は無く、また"敵"を退治するというよりも"現象"を解明&対処するという感じで、そこらへんが『ウルトラQ』的。
また"特殊捜査機関"ではあるんですけど、エリート部隊というよりは外れ者公務員の寄せ集めという感じで、それなりに優秀でないこともない彼らが限られた支援やお役所どうしの縄張り争いにも翻弄されながら、何とかかんとかドタバタと、知恵と勇気とまあまあ科学で事に当たって行く、その奮闘ぶり及び地味に豪華で芸達者揃いの俳優陣による妙に生活感溢れるつまるところは"大人のお仕事"ドラマというそういう感じ。(が、"パトレイバー")

俳優陣はほんと、地味豪華ですよ。"特撮"ものですがニチアサ的な感じではなく、深めのゴールデンで普通に民放のレギュラードラマでやれそうなメンツ。

mm9_cast.jpg

尾野真千子、松重豊、加藤貴子、皆川猿時、etc。

実は尾野真千子という人、名前は勿論知ってましたが動いてるのは僕初めて見たんですけど、めっちゃ上手いというかめっちゃいいですね。

尾野真千子1.jpg尾野真千子2.jpg

"強さ"と"弱さ"のバランスの表現が絶妙で、地味だけど色気がある・・・ような無いようなギリギリの感じも、またいい。(笑)
とにかく演技力のある人のようですから、作品によっては、もっと「女」も出したりするんでしようけど。今回はまあ、"おひとりさま"体質的な役どころ。若干のニアミス的ラブアフェアもありつつ。
昼ドラでお馴染みの加藤貴子さんも、"学者"役なんですけど頭でっかちのようなでも意外に堅実で実はねちっこいような独特の性格で、それも「個性的」というよりは「普通の人」がほんとはみんな持っている"複雑さ"を表現している感じで、なんかいい。

加藤貴子.jpg


こういう基本"大人"系のキャラクターの中で、唯一の"女の子"役が石橋杏奈なわけですが、最初は若いのに華無えなあと思ってて、最後まで"華"自体は無かったような気もするんですが(笑)、

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一方で"若さ""新人類"(古)感の方は思いっ切り発揮していて、これも大変良かったです。尾野真千子と"ダブル主演"という触れ込みで、実際このコを中心にしても十分に回せるだけの魅力はあるんですが、位置的にはやっぱり"脇"だと思います。(尾野真千子の)ライバルというよりは、トリックスター的な。
最初はライバルにするつもりだったのかも知れませんね、割りとストレートに気に障る感じで、"わがままでわけの分からない新入社員"(役所ですけど)として登場して来ましたから。
ただわがままなりに尾野真千子との馴染みが意外に良かった

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のと、"新世代"の合理主義の説得力が余りにも鮮烈で、逆に作品の相対秩序には収まり切れずにトリックスター化したという感じ。
とにかく"正しい"んですよ。若くて無鉄砲ななりに、成熟してるというか。最近で言えば、"藤田ニコル"的な感じ?(笑)。おバカだけど間違ったことは言わない的な。ちょいちょい、大人よりも大人的な。まあもっと遥かに、弁は立ちますけど。
男優陣も申し分なくいいです。とはいえ主役はあくまで女優陣という感じは、『あまちゃん』的な構造。ちなみに橋本愛も、いかにも"橋本愛"的な感じ

橋本愛mm9.jpg

で登場しています。(笑)


最初はぱっと見ていかにもパトレイバーだなあ、そういえば伊藤和典脚本だしなあと、いいんだけど逆に(脚本家として)ワンパターンなのかなという感想もありつつ見ていたんですが、ふと見ると原作が「山本弘」で、"パトレイバー"的味とは個人的に結構遠い印象の人だったので、こんなのも書けるんだあ認識改めないといけないのかなと思ったら、「原作とは基本的な設定が共通しているだけで、ストーリーもキャラクターの設定も全く異なったドラマオリジナルとなっている」とWikiに。
それでじゃあもうほぼ完全に「伊藤和典」作品として見ていいんだとすっきりして、かつそういう借り物設定でもここまで"パトレイバー"出来るんだそれはそれでやっぱり凄いなと思い直して(笑)。そして見続けているとさすがに(アニメではなく)実写でかつ俳優陣も本格的なメンツを揃えただけあって、"ドラマ"の濃厚さはやっぱり更に一段深いなと段々のめり込んで、かつその"オリジナル"エピソードの魅力と特に"オリジナルキャラ"である石橋杏奈演じる"朏万里(みかづきまり)"の存在感・説得力に圧倒されて。やっぱこの人凄いんだなと。
ゆうきまさみと共同で『パトレイバー』世界を構築して見せた後は、押井守に信頼されて重用された(『映画版パトレイバー』『攻殻機動隊』『アヴァロン』)のが逆にあだになったところがあって、何となく「職人」的な印象が強くなってましたが(でも『絶対少年』は凄かった。震えた)、本来はもっと/十分に「作家」な人なんだろうなと、認識&尊敬を新たにしたという、そういう話。

いや、この人はね、僕に「脚本」とはなんぞや、いかにあるべきかいうことをはっきり意識させてくれた、多分初めての人なんでね。(TV&新OVAシリーズ版)『パトレイバー』という作品を通じて。そこらへんを語り出すと終わらないので、今回は控えますが。(笑)
富野由悠季さんとかはさすがにもうとっくに賞味期限切れでしょうけど、この人にはまだまだ、もう一つくらい、自由に大きな仕事をしてもらいたいなと思っています。
アニメでも実写でも、それはどちらでもいいですけど。
ていうか普通に実写でいけるじゃんと今回確認した、出来たと、まあそういう話です。
"押井守の実写"とかが、ちょっとうーんと感じるのに対して。(笑)


とにかく良かったです。おすすめ。
機会があったらどうぞ。
特撮も勿論、"さすが"の出来ですし。(そこ最後かい(笑))


テーマ:特撮
ジャンル:テレビ・ラジオ
『劇場版 艦これ』 & 『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅/3D版』
2016年12月05日 (月) | 編集 |
11月で切れる株主優待券を二枚もらったので、慌ただしくダブル・ヘッダーで見て来ました。
まあ『艦これ』の方は、前々から騒いでいたように(笑)、元々見に行くつもりではあったんですけどね。

多分7年ぶりくらいの映画館での鑑賞で、次もそれくらいになるだろうと思うので(笑)、せっかくだから感想を書き留めておきます。
いや、実際二本とも良かったし。






まず『劇場版 艦これ』
TV版絶賛、かつ珍しく絵的映像的なクオリティにいたく感銘を受けていたので、劇場版が出来ると聴いてほんとに珍しく、「大画面で見たい!」という健全欲望が沸きました。(笑)

ふむ。期待通りでした。
「大画面」については、別にどっちでもいいかなという感じでしたが。"TVと同じように"、楽しめたという感じ。同じように綺麗だった。
基本"迫力"には、余り反応しないタチ。小は大を兼ねるというか、"小"で感じないものは"大"でも感じないというか、"大"でのみ感じるものは、それは幻というか単に雰囲気で誤魔化されてるだけというか。
"大"を"生"(なま)とかに置き換えても、いいと思いますが。

まあそんなことは、どうでもいいんです。(笑)
相変わらずの、謎の官能性と、冴え冴えとしたかつ染み入るような情緒に、没入しました堪能しました。
「官能性」と言っても、別に"艦娘"(かんむす)たちアニメ的美少女が、露出度の高い制服を着ていたり戦闘でそれがボロボロになるからとか、そういうことでもないんですよね。そうではなくて、映像全体が、何かのたうつように終始官能的な印象。声の無い声が聞こえるというか。ベースの印象を形成しているのは、多分、独特の暗く彩色された海の色波の動きなんでしょうが。

そこにおいて艦娘たちの"肌"は、むしろ「覚醒」要因というか、"素肌"の清冽さで官能の暗い海にを点しているような、そういう印象。
まあ彼女たちの存在や奮闘ぶり自体が、"戦争状況"においてそのように機能している、"健気"要素であると、そうざっくりアナロジー出来なくもないですが。

・・・深海棲艦たちは、もっとストレートに暗く"官能的"ですけどね。

深海棲艦1.jpg深海棲艦2.jpg


特にそれまで無言無表情だった彼女(?)たちが、艦娘にやられて一瞬"恐怖"の表情を浮かべるところとかは、かなり"イケナイ"感じだと思います。(笑)
やってるのが"正義"側だというのがね、何とも。「残虐」感があるというか。

ただし作品全体の中では、そういうシーンは少し"切り離された"印象ですが。
分かり易い「二重構造」ではない。
それがまた、世界観の得体の知れなさというか"謎"感を与えて、そそるという。(官能をではなくて(笑))

今作ではその世界観についての"種明かし"がなされるわけですが、それ自体はまあ、そうなるだろうなというか、納得はするけど若干の予定調和感というか。少し気は抜けた感じ。
だから"ピーク"は、その直前の、"深海棲艦"化した「如月」が助けに来る場面ですかね。来るだろうなとは思ってたけど、それでもゾクゾクしました。"深海棲艦"特有の「無表情」も、狙い通り効いていたと思います。

その後は何か、"賢者モード"で見ていました。(笑)
ティッシュティッシュ。


追加の感想としては。
ご存知この『艦これ』という作品は、帝国海軍の実在の艦艇たちを美少女に擬人化した「艦娘」たちの活躍(?)を描く、広い(かなり広い(笑))意味の擬似戦記ものというか、ミリタリー趣味ものなわけですが。(Wiki)

僕もそういうものに特に詳しいわけではないですが、その"擬人化"の奇想天外かつ意外に忠実なディテールや、「作戦」展開やそれにまつわる議論・言葉遣いの妙な真剣味や「本格」感、あるいは彼女たち"帝国海軍"が展開している「南方」の風土感や施設のデザインなど、単にオタク趣味コレクター趣味とも、また"考証の正確性"とも少し次元の違う、独特の"入り込み"方"掴み"方を感じさせられて、それがまた僕が気が付くと真剣に見てしまう、そういう一因なわけですが。

「魂」を感じるというか。あるいは「深海」の存在を。わだつみの声が聞こえるというか。(笑)
それは方向としては、"戦争の悲惨さ"みたいなそういうタイプのものではなくて、基本的にはやはり"ミリタリー趣味"ではあるわけなんでしょうが、ただそれを突き抜けて、何かはっとさせるほど純粋に、素朴に、「自分たちの過去」への愛情、慈しみ、そうしたものを感じさせる。

例え本当にそうだとしても、"悲惨"や"間違い"という紋切型で固定して捨て置かれる、そのことへの哀れというか心残りというか。
そんなに「意図」的なものは感じないんですけどね、"作者"のことは知りませんが、何か「思想」があって描いているというよりも、もっと集合的な何かに"描かされている"ような、そんな印象を与える作品。

だからこそこれだけ(ゲームが)ヒットした、"艦娘"たちが愛された、というか。
その冠された艦艇たちの、「名」と共に。


やはり何というか、方向性としては逆に近いかも知れませんが、僕が最近今更国家神道」及び戦時体制について調べているように、日本人には知らなければいけない埋められなければいけない「過去」が、「空白」が、存在している、存在しているということを現代の日本人が心の底で感じていると、大げさに言えばそういう印象です。

それに導かれて『艦これ』も僕の"研究"もあり(笑)、僕は『艦これ』を愛していると、そうまとめておきます。(笑)



続いては『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅/3D版』

ファンタスティック・ビースト1.jpgファンタスティック・ビースト3.jpgファンタスティック・ビースト2.jpg


『シン・ゴジラ』『君の名は。』『この世界の片隅に』といくらでも選択肢がある中で、なぜこれを"もう一本"に選んだかというと・・・"3D"ですね。(笑)
上で言ったように、次いつ映画館なんか行くか分からないので、この機会を逃さずにとりあえず体験しておこうと。
次また7年後とかだったら、今度は"4D"になってるかも知れないですし。(ならんと思う)

まあハリポタはそもそも好きですし。信頼してますし。ハーマイオニーがいないという、不安はありましたが。(笑)
上の"代わり"のおねえさんは、一見いかにも色気の無い感じですが、それが逆説的な色気というか、"文化系こじらせ"ガールというか、それはそれで可愛げがあって、良かったです。
基本的にはでも、「正義感が強い」タイプですね、ハーマイオニーと同じく。それが作者の好みなんでしょう。(笑)

ま、いい意味で、大人版ハリポタです。シリーズが好きな人は、期待を大きく裏切られることは無いと思います。


さて問題の"3D"ですが。
予想以上でした。正直期待以上。

「建物」とか「文字」とか「CGモンスター」とか、そういう"仕掛け"の部分は生理的に驚きはしても、ああそうねというところではあるんですが。
「人間」「人物」が3次元で見えるというのは、2次元とはかなり質の違う経験に感じました。
当たり前ですが、"実在感"が全然違う。見終わってから早速、「AV 3D」で、検索かけてしまったくらい。(笑)
残念ながら、まだまだ一般化は遠そうですけど(笑)、ハード/ソフト両面で。
"ポルノ映画"なら本格的なのがあるらしいですけど、みんなで見るもんでもなあ(笑)。せいぜいデートで使うとかくらいしか。

それはともかくとして(笑)、でもほんとに結構、画期的かも知れないと思いました。
現行の「3D映画」がそのまま発展してそうなるかはともかくとして、いずれはとってかわるかもしれない、新たな"主流"になるかもしれないと、そう思わされました。
分かり易く言って、現在存在する"問題点""障害"が解消されれば、はっきり言って「2D映画が優る」点というのは特に思いつかないということです。2Dでも別にいいけど、3Dであるに越したことはないというか。まあ「固定電話」と「携帯電話」みたいなものというか。それくらい"必然的"な、技術革新に感じられました。
「モノクロ」と「カラー」なら、今でも「モノクロ」の方が美しいと感じる部分が僕はあったりしますが、「カラー」どうしなら、断然3Dの方がいいです。
まあ「映画館に出かける」という"体験"の、特別性という意味でもね。行くのが当たり前の人には、ピンと来ないかも知れませんが。

実際この先も、いい3D映画があったら見に行こうかなと、僕は思ってるところで。眼鏡も買ってしまったし。(笑)
VRゲームとかも、俄然興味出て来てしまったかなあ。自分でも意外ですが。


ま、繰り返しますが、映画としても良かったです。
やっぱりこの人(J・K・ローリング)は凄いですね。
「典型」「紋切型」を駆使しつつ、でも"様式美"に収まらない活力を、常に作品に与えている。
それは多分、それら「典型」の起源・おおもとについての、独特の/この人一流の理解・直観があるからだろうと思いますが。
"後発""模倣"だけど、"古く"はない。"オリジナル"に等しい「使用権」を、その手に握っている。"流派"の正当継承者なのかダライ・ラマ的な転生者なのか、理由はよく分かりませんが。(笑)

とにかく"全てが既に表現し尽くされている現代"という罠を、悠々とすり抜ける特権的な人だと思います。
ただ・・・タイトルはダサい気がします、今回(笑)。分かり難いしピンと来ない。
まあ小説ではなくて「脚本」として関わってるので、決めたのは別の人かも知れませんが。


今日はそういう話。(笑)
なお、3DAVの機材等持っている人がいたら、密かに連絡してくれても怒りませんよ?(笑)


テーマ:映画館で観た映画
ジャンル:映画
『ウィンター・ソルジャー ベトナム帰還兵の告白』 (ドキュメンタリー)
2015年06月22日 (月) | 編集 |

ウィンター・ソルジャー
ベトナム帰還兵の告白 [DVD]



最近ヒストリーチャンネルで見た映画。1972年作品。
副題通り、ベトナム帰還兵たちの証言が次々と流されるだけのシンプルな構成のドキュメンタリー映画ですけど、インパクトがありました。
その陰の作り手のセンスやメッセージも、よく伝わって来たというか。

その中の特に印象的だった証言を、僕もまず黙々と列挙してみます。
順番は製作者の意図を尊重して、あえてテーマ化はせずに、単純収録順です。ただ証言兵士の区別だけは、分かるようにしてあります。


兵士A(移送途中のベトナム人捕虜をヘリコプターから突き落とす常習的な事例について聞かれて)

上官からはこう命じられた。"捕虜を乗せる時は人数を数えるな。降ろす時に数えろ"。
若い兵士が"なぜです?"と尋ねると、"数が合わないと困る"と中尉は言った。


兵士B

村には敵はいなかったが、包帯をした女性がいた。
彼女は6人の共和国陸軍兵に尋問され、包帯をしていたという理由で撃たれた。20発もだ。(中略)
国際開発庁に勤めていた男は(中略)彼女の服を脱がすとナイフを出し、女性器から胸まで切り裂き、内臓を取り出した。そして投げ捨てたんだ。
次に彼はひざまずき、女性の皮膚をはぐと、戒めのように置き去りにした。


兵士C(カルミニ)

武器を使ったゲームをやった。
迫撃砲を使うチームは、まず友好的な村に行き、数軒の家を選ぶ。そして1軒の家が倒壊するまで、迫撃砲を撃つ。
大砲を使うチームも、1軒の家を破壊し尽くす。
少ない弾薬で倒壊した方が勝ち、負けた方がビールをおごる。

中佐も参加したストーン作戦で、ベトナム人の頭を切断した。2人の頭を棒に刺し、原っぱに立てた。
だが記者が取材に来たので、2度と行わなかった。


兵士A(再)

ジュネーブ条約に関しては、講義で指示書きが配られこう言われた。(その後捕虜に"された"場合に主張すべきことのレクチャー内容が続く)
捕虜の扱いについては、何も教わらなかった


カルミニ

ベトナム人の女性が我々の隊の狙撃手に撃たれた。彼女は水をくれと言ったが、上官は殺せと命じた。
彼女は服を脱がされ、乳房を刺され、腹を切り開かれ、女性器にスコップを刺し込まれた
女性は水を求め続けたが、木の枝に吊されて射殺された。

彼らを人間として見ていなかった。それに国のためになると信じて、命令に従ってた。国のためなら許されると。東洋人や共産党員なら、撃ってもいいと思った。


兵士D

彼らは東洋人だ
南ベトナム民族解放戦線の東洋人であるうえに、つり目の不細工な連中だと思ってた。東洋人は我々より劣ると思ったし、アメリカ人を文明人だと思ってた。だから好きなように扱った。


カルミニ

アメリカ人は、国家や政府が正しいと思っている。
神も味方につく、世界最強の国だと。
(中略)
僕は国のためだと思って、ベトナムに行った。二度目の派遣の時は、完全にそう洗脳されてた。

食前食後に荷物を背負って5キロ走らされるので、僕は毎日食事を吐いてしまった。
訓練所では話すにも許可が要る。"カミルニ二等兵です、話してもいいですか?"と。
教官は"何だ?"と言う。"便所に行かせてください"と言うと、"我慢できんのか?"と言う。
"はい"と答えると、"サイレンの口まねをしつつ部屋を3周しろ"と。僕は"ウーウー"と叫びながら走る。大声で速く走らないとダメだ。
またはこう言う。"1時間待て。我慢できたら、ケツを蹴ってやる"。つまり漏らすか、ケツを蹴られるかだ。
あんな異常なシゴキは、精神に悪影響を及ぼす。

ランニングの時は、"殺せ殺せ殺せ"と歌った。(中略)柔道やナイフや銃剣の訓練中にも、"殺せ殺せ"とかけ声をかける。
訓練が終われば敵(東洋人)を殺せると思うと、楽しみになっていった。


兵士E(尋問、つまりは拷問について)

尋問者は監視されたんだ。
ヒル29で行う僕の尋問は憲兵に監視され、彼ら憲兵隊はしばしば尋問に手を貸してくれた。


兵士F

外に出ようとして、上官の靴を踏んでしまった。彼は僕の首をつかんで言った。"俺の靴をきれいにしろ"。
"靴みがき道具を取りに行きます"と言うと、"お前の舌があれば十分だ"と言う。結局彼のホコリだらけの靴を、なめるハメになった。そんなのは日常茶飯事だ。

ベトナムでは役を演じる。プロの海兵隊や殺し屋の役を、正確に演じねばならない。


兵士G

ベトナムから帰国するとようやく、あの戦争や政府の方針が異常だと気づくんだ。
夢を見続けていたような気がしたし、記憶が飛んだような気もした。全部夢だったような感じだ。


兵士F(再)

我々はゲラゲラ笑い、そのことは忘れてしまった。そして僕は1年後に、その一件を思い出した。
まさにベトナムにいる米軍兵の典型だ。ベトナム人を憎みはしないが、軽んじている。彼らを人間として見ていないばかりか、存在を無視していた。


兵士H

村人は米兵の残虐さを知っていたので、若い娘を隠した。だが我々は防空壕に隠れた女性を見つけ、家族の目の前で6~7人でレイプした。村人もそこにいた。(中略)同じような暴行が、10~15回あった。


兵士I

軍では兵士は、心を堅い殻で覆う。洗脳され、人間性を奪われているからだ。
無防備ではベトナムで生きていけない。一瞬でも心を覆う殻を開いてしまえば、正気を失ってしまうだろう。自分が苦しむことになる。


カルミニ

5分前は元気だった友達の死を、受け入れるのは難しい。(中略)そして"お前のためにベトナム人を殺す"と誓う。
そうなると狩りにでも来た気分だ。滞在先や銃の心配をせずに毎日狩りに行けて、無制限に好きなだけ獲物を撃てる。まさに狩猟旅行だ。


兵士J

我々は村で小さな子供の死体を見た。(中略)それに3歳くらいの女の子の死体も見つけた。ヘリの乗員が退屈したから殺されたんだ。
大隊にこれが報告されると、殺したのが2人では少ないと叱責された。(中略)こういうことは一度ではない。大勢の帰還兵が同じような光景を見ている。


兵士K

隊には憎しみが漂っていた。友好的なベトナム人など、いるはずないと思った。
彼らは東洋人だ。"ベトナム人"ではなく、"東洋人"と呼ばれた。

我々が見つけた村の半数は、完全に焼き払われた。
焼く村を選ぶのに、基準は無い。時間があれば、焼き払う。


兵士L

"ハンターキラー"というチームでも、任務に就いた。そのチームで他の操縦士から、ベトコンの見分け方を教わった。
"米軍を見て逃げたら、ベトコン"。"逃げなかったら、よく訓練されたベトコンだ、そいつも撃て"。


カルミニ

ベトナムを去るころ、隊に召集兵がいた。彼らの考え方は、他の連中と違った。(中略)
だが彼らに同意もできず、僕は大学に進んだ。法学専攻だったので歴史を取り、政治科学や歴史の授業で、世界を理解し始めた。
ジュネーブ条約を知った時は、驚いたよ。

(記者)
自分のしたことを理解した?
(兵士)
ああ、すべて間違っていた。人を肌の色で差別せず、人間としてきちんと扱うべきだ。主義で差別するのも正しくない。
そういう話をする時はよく笑う。軟弱に思われないためだ。
男なら情に流されない強さが必要だと育てられた。
(中略)
(記者)
あなたにとって男らしさとは?
(兵士)
今はもう定義がない。
でも僕は以前より、感受性が強くなった。(中略)
でも別のことを考える。表面的な男らしさなど意味がないのに、どうしても涙をこらえてしまう。

心から信じていた組織などを、信じられなくなるのはとてもつらい。(中略)
家族などにその悩みを話すと、"お前はどうかしてる、気は確かか?"なんて言われて腹が立つ。
でも学校の友達は理解してくれる。


兵士M

ステージに上がったら、緊張したよ。自分が冷たい人間になったと、想像した。でないと泣き出しそうだった。
(なぜ泣くのが怖かったの?)
兵士だという感覚が消えないからだ。刷り込まれている。その感覚は簡単に消えず、コントロールするのは難しい。
一度に感覚が戻るのではなく、徐々に戻って来る。
いつか消えてくれるといいんだが、今も感覚は残っているし、受け入れてるよ。


兵士N

本当におかしな話だ。教化や訓練で、人間を思うように操れるなんて。
僕らはウソの人生を生きていた。自分の人生ではない。誰かが決めた道を進んでいた。彼らには僕らの行き先も分かってたんだ。
だが僕らはウソに気づき、闘うことにした。

敵が目の前に現れると、撃たなくてはいけない標的に見える。正直言って、人間ではなく、標的に見えるんだ。
撃ってから思う。"なぜ撃った?"。"僕はこんなことする男じゃない"。来たことを後悔するが、遅い。
だから正当化しようと、躍起になる。間違ってると知りつつ、そうしていた。


(字幕)
1971年1月31日~2月2日、冬の兵士証言集会が、ミシガン州デトロイトで開かれた。
そして4月6日~7日、すべての証言記録が、連邦議会議事録に載った。



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テーマ:最近見た映画
ジャンル:映画
劇場用映画ベスト50[殿堂]
2014年11月11日 (火) | 編集 |
最初は思いの外好評のようだった「小説」二匹目のどじょう的な感じでやろうと思ってたんですが(笑)、あれもあるこれもあると思い出している内に収拾がつかなくなって、気が付くと作品数がちょうどそれくらいになっていたので、じゃあベスト50でいいや、それで「殿堂」だあと、そういう次第です。(笑)

まあ小説に比べると、映画はそこそこ網羅的に見ている方だと思いますし、少なくとも古めのやつは。
そういう意味では、個人的ながら「殿堂」を称しても、そんなに首筋は寒くない。(笑)
とはいえかなり、独自基準だとは思います。余り人に話して理解された経験は無い。
あとまあ、それなりの分厚い歴史を持ったジャンルなので、"殿堂"ということで年代順に並べてみると、結構面白いというかそれぞれの映画の空気感が分かって、認識を新たにするだろうというか。

そんな感じです。
基準は小説版と基本的には同じで、歴史的意義とか客観的評価というよりも、僕に"特別"な印象を残している作品、ということ。
では古い方から。


1920年代
『メトロポリス』(1927独)
『裁かるるジャンヌ』(1928仏)
1930年代
『砂塵』(1939米)
1940年代
『わが谷は緑なりき』(1941米)
『脱出』(1944米)
『紳士協定』(1947米)
『自転車泥棒』(1948伊)
『赤い河』(1948米)
『第三の男』(1949英)
『三人の妻への手紙』(1949米)
1950年代
『ミラノの奇蹟』(1951伊)
『裏窓』(1954米)
『奇跡』(1955ベルギー・デンマーク)
『十二人の怒れる男』(1957米)
『戦場にかける橋』(1957英・米)
1960年代
『荒馬と女』(1961米)
『ナヴァロンの要塞』(1961米)
『アラビアのロレンス』(1962英)
『奇跡の人』(1962米)
『しとやかな獣』(1962日)
『鳥』(1963米)
『小間使の日記』(1963仏・伊)
『未知への飛行』(1964米)
『ベトナムから遠く離れて』(1967仏)
『銀河』(1968仏)
『ワイルドバンチ』(1969米)

1970年代
『小さな巨人』(1970米)
『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973米)
『エクソシスト』(1973米)
『サブウェイ・パニック』(1974米)
『タワーリング・インフェルノ』(1974米)
『悪魔のいけにえ』(1974米)
『ミスター・ノーボディ』(1975伊・仏・西独・米)
『ネットワーク』(1976米)
『ナヴァロンの嵐』(1978英)
1980年代
『普通の人々』(1980米)
『E.T.』(1982米)
『ポルターガイスト』(1982米)
『危険な年』(1982豪)
『ニール・サイモンのキャッシュマン』(1983米)
『刑事ジョン・ブック/目撃者』(1985米)
『ガラスの動物園』(1987米)
『友だちのうちはどこ?』(1987イラン)
『ダイ・ハード』(1988米)
1990年代
『五人少女天国行』(1991中国・香港)
『そして人生はつづく』(1992イラン)
『オリーブの林をぬけて』(1994イラン)
『ショーシャンクの空に』(1994米)
『ブギーナイツ』(1997米)
2000年代
『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001米)[に始まるシリーズ]


・・・と、小津安二郎のどれか、という感じです。(笑)

とりあえず製作国で分類してみると、米31英3、仏3、伊2、その他独1、日1、豪1と、中・香1にイラン3
それから合作がベルギー・デンマーク1、英・米1、仏・伊1、伊・仏・西独・米1。
ヨーロッパ系も結構見てるはずなんだけど、見てる時は浸ってても、見終わるとどれがどれだか記憶に残らないのが問題(笑)。まあ元々その"代表"たるフランス映画は好きじゃなくて、今回の"3"本も内2本はデンマーク人とスペイン人の監督によるもので、残った1本もドキュメンタリー系。要はキミたち向いてないから映画なんて作らんでいい、批評だけやっとれというのが、僕の心の声かも(笑)。ヨーロッパ映画に苦手意識のある人は、とりあえずフランスを外しながら見てみると、思いの外に素朴で愉快なのが多くていいと思います。ロシア人とか天才だよね、やっぱり。入ってないけど。(笑)
イランは3本とはいっても一人の監督(後述)によるシリーズもの。ただし「イタリア、ロシア、イラン」を3大天才的演劇国と言ってる人などもいて、それはそこらの素人捕まえて来て演じさせてもいきなり様になるからとか。"イタリアン・ネオレアリスモ"などもそうした土壌あってこそという。分かる気がする。

次にジャンルで分けてみると、
サイレント
『メトロポリス』『裁かるるジャンヌ』
西部劇
『砂塵』『赤い河』『ワイルドバンチ』『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』『ミスター・ノーボディ』
西部劇系人間ドラマ
『わが谷は緑なりき』『十二人の怒れる男』『荒馬と女』『小さな巨人』
社会派1
『紳士協定』『ベトナムから遠く離れて』『ネットワーク』
社会派2
『危険な年』『刑事ジョン・ブック/目撃者』『ブギーナイツ』
リアリズム
『自転車泥棒』『友だちのうちはどこ?』『そして人生はつづく』『オリーブの林をぬけて』
サスペンス
『第三の男』『脱出』『裏窓』『鳥』
ホームドラマ
『三人の妻への手紙』『普通の人々』『ニール・サイモンのキャッシュマン』『ガラスの動物園』
ファンタジー
『ミラノの奇蹟』『五人少女天国行』『ハリー・ポッターと賢者の石』
ヒューマンドラマ
『奇跡』『奇跡の人』『ショーシャンクの空に』
戦争映画系
『戦場にかける橋』『ナヴァロンの要塞』『アラビアのロレンス』『ナヴァロンの嵐』
シュール系?
『しとやかな獣』『小間使の日記』『銀河』
SF系
『未知への飛行』『E.T.』
ホラー
『エクソシスト』『悪魔のいけにえ』『ポルターガイスト』
パニック・アクション系
『サブウェイ・パニック』『タワーリング・インフェルノ』『ダイ・ハード』

かなり適当ですけど、こんな感じ。
社会派の"1"と"2"というのは、社会問題を直接的にテーマ化しているのと、メインのモチーフに据えつつも基本はドラマを見せるものと、そういう分類です。
キリが無いので控え目にしましたけど(笑)、フェイバリットは何と言っても、"西部劇"です。やってりゃ見ます。9割方面白いです。まあ"内容"や"オリジナリティ"というより、要はグルーブ、スウィングだという意味で、ブルースに似てると思います。とにかく気持ちいい。(笑)

・・・ちなみに小津さんが好きなのも、多分同じ系だと思います。(笑)
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