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女子春高バレー2023まとめ
2023年01月11日 (水) | 編集 |

いやあ、誠英強かったですね。ほぼ勝ったかと思いましたけど。
古川学園も昨年よりは明らかに強くなっていて、これならタピアという"反則"込みでも優勝の資格は十分と、よそとの相対含めて準決勝までは普通に思ってたんですけど。
対して今年はノーシードからの誠英はそのバイアスもあってか強いことは強いけれどこれと言って目立つ強みは無いな、"泥んこバレー"と言ったってもっと"泥んこ"売りのチームはいくらでもいるし、強いて言えば"泥んこ"界の最名門?なんか半端なアピールだな(笑)みたいなそんな印象で。でも実際に両者が当たってみると、タピア・阿部(明音)そして新星南舘絢華の三枚看板が揃って圧倒しながら勝って来た古川は、逆にその"三枚"が思うように決められず"強み"になり切れなくなると、急にチームとしての心細さが生まれて去年までのタピア頼みのチームの"ランク"感に戻ってしまった感じで、誠英が盛り返し始めた第2セットの途中あたりからかなり雲行きが怪しく。一方の"強みの見えな"かった誠英は逆にその地力メインで勝って来た中から元から(センター)エースではあった182cmのミドル北窓絢音が勝ち上がりながら更にフィットして来て、能力自体は怪物的ではないものの、相手(古川)の状況が完璧に見えている感じの的確な動きに自分の能力を乗せて決定率自体は怪物的になって、止まらない感じに。

古川側の問題としては、タピアと共にチームを引っ張っていた阿部が準決勝辺りで既にピークアウトというか疲労が限界に達していたように見えて、それでも勝ててはいたので攻撃パターンを変えられないまま、準決勝までの相手より実力が一段上の誠英にぶつかってしまっていたことで、(25-19で獲った)1stセットの結構早々から、「違う、熊谷(セッター)、そこは阿部じゃない」とかテレビの前でつぶやいていました。ほとんど"敗因"を語る原稿が頭の中で出来かけていた(笑)くらいでしたが、それでも勝てた盛り返せたのは、それまで"三枚看板"の陰に隠れていた髙橋陽果里らの他の選手が巡って来た"出番"にきっちり活躍をして見せたことと、互角以上の情勢になればやはり要所でのタピアのアドバンテージが大きかったこと、勿論熊谷も中盤以降は、阿部以外の選手への配球の比重を増やして、適応もして来ましたしね。決め手はやはりタピアでしたけど、タピアだけでは流れ自体は盛り返せなかった(途中本人の焦りも目立って来てましたし)と思います。そういう意味では総合力の勝利というか、"脇役"たちも伊達にここには立ってない実力者であることは最後の最後に強く印象付けられました。
ちなみに"三枚看板"の残り一人南舘選手は、か細い体で(笑)意外な程最後まで疲労も見せずに決め続けていましたが、ライトなので打数に限界があるのと体勢的には阿部程無理は利かないので、"代役"までは難しくてどちらかというとマイペースにチームの得点数の"保険"の役割を担い続けていた感じ。

とにかく"ピーク"の高さという点では古川学園が最強であり、優勝に値したのは確かだと思いますが、ベース/ボトムの強さでは誠英強しの印象の強かった、決勝戦でした。
とりあえず"監督"としては、田渕(正美)監督の方を、ベスト監督として強く推したいですね僕は。そういう誠英の底堅い強さを作っただろう監督力自体も勿論ですし、何よりテレビ画面越しに見える選手たちへの接し方の好感度が圧倒的に高い。高ぶらず出しゃばらす、淡々と要点だけを言い聞かせ、多くの他校の監督たちのように怒鳴ったり声を荒らげたりは決してしない。(陰では知りませんが(笑))
(田渕監督に限らず)それだけでいい監督に見えるし、公衆の面前で高校生相手に大声を出している時点で、何を言ってても結構げんなりする部分が僕は大きいです。時に怒鳴ってしまうことはあるかも知れないけれど、怒鳴る前提な感じなのはどうもなあ。

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決勝のファイナルセットで(15点中)4点の先行を許すというぎりぎりの状況でも、にこやかにタイムアウトの意思表示をする田渕監督。

Seiei_tabuchi2Seiei_tabuchi3

そうして集まって来た選手たちに、(言うべきことはもう言ってあるから)「後は自分たちでゆっくり相談して来て」とユーモラスなボディ・ランゲージで伝える田渕監督。

準々決勝あたりからでしたかね、マイクの設定が変わって各校のタイムアウト中の会話がよく聴こえるようになったんですが、その中のどこかで田渕監督が、「・・・という風に俺は思うけれど、そうするかどうかは自分たちで決めて?」と言っている場面があって、へえ、そんな関係性なんだ、そんな言い方するんだと興味深かったですね。ただの指示でもないし、ただの"委任"でもない。
決勝戦の実況の中では、「教師と生徒ではあるけれど、一緒に戦っている(対等な)仲間であるということを忘れないでいたい」という、田渕監督の基本的な考え方も紹介されてましたね。
とにかく内情は知りませんが(笑)、見た目ナンバー1監督は文句なしに田渕監督でした。優勝した古川の岡崎監督も名将と言われているそうですが、元々怒鳴りタイプなのは置いておくとしても、決勝戦では劣勢の時は焦り倒して優勢になったら有頂天になってという感じに見えて、まずあんたが落ち着け、大人だろうとか思ってしまいました。
東九州龍谷の相原監督みたいに、大きな声を出したりはしゃいだりするのがそもそも好きで、試合中に「俺も声出したいんだよ入れてくれ」と選手のエールの中に飛び込んで行ったりする(そういう場面があった(笑))のは、あれはあれで微笑ましくていいと思いますけどね、"大声"派でも。(笑)

とにかくそういう田渕監督含めて誠英の"好チーム"感は強かったですし、一方で"助っ人"タピアも含めて後述するように魅力的な選手が多くて、そちらはそちらで古川も応援してましたし、途中からは結構自分的に困った感じ(笑)もありましたが、まあ"優勝しに来た"度は近年の実績からも古川の方がかなり高かったでしょうし、この最終結果で良かったかなと、そんな決勝戦でした。



春高バレーはなぜ面白いのか

去年5年目と言っているのでもう6年目なのか、毎正月大会期間中はほとんど部屋に缶詰めになって(特に準々決勝までの最初の3日間は、仮眠時間を確保するのもひと苦労)、放送される限りの全試合を夢中になって見ている春高バレー。(の女子)
バレーボール自体は必ずしも僕のフェイバリットスポーツではないですが(3,4番目くらい?)、スポーツ"イベント""チャンピオンシップ"としては、結構断トツに近く楽しい/興奮させられる存在です。

なぜそんなに面白いのか、他競技との比較とかになると色々と要素が多くなり過ぎて面倒なのでよしますが、同じ"バレーボール"の枠内で、かつ特殊な"国籍"要素が加わる国際大会は置いておいて、国内最高峰の筈の実業団リーグVリーグとの比較で考えてみると。

一つ目としてはまず観戦初年度から気が付いたように、

1.「高校」「部活」チームならではの練度・求心性の高さと、そこから来るチームの個体化度の高さ

という要素。
チームにもよりますが毎年11月から3月一杯+α、年末年始休みを挟んで5か月前後の開催で、社業の傍ら活動しているVリーグチームに対して、大雑把に夏のインターハイ、秋の国体、冬の春高と3つの目標/ピークが年間通してあり、一応"学業の傍ら"とは言うものの(笑)実際には社員選手とは比べ物にならない専心の出来るだろう高校バレー部とでは、シンプルに練習時間も違うでしょうし上で言った"パワハラ"的指導も時に含んでの純粋な高校生に対する各校監督の指導の浸透も、"大人"に対するそれよりは良くも悪くもだいぶスムーズでしょうし、競技経験の無い僕には理由は確かとは分かりませんがとにかく結果として高校チームの"チーム"感"まとまり""個性"両面におけるそれは、Vリーグチームの平均を大きく上回っているように見えて、単純に試合が見てて楽しいです。飽きません。比べるとVリーグは、どのチームのどの試合を見ても、少数の例外を除いてぶっちゃけいつもおんなじように見えてしまう。よっぽど詳しい人でないと、違いが分かり難いというか。
勿論春高にある"トーナメント"の、"青春"の緊迫もそこには無い訳ですが、それはまあ仕様上仕方が無い(笑)ので言うべきではないだろうと思いますが、とにかく事実としての比較はそう。

2.3セットマッチの潔さ

春高は試合数的にはその大部分にあたる、1、2、3回戦及び準々決勝までは、2セット先取の3セットマッチで行います。
確かに若干刹那的ではあって、実力差にばらつきのある各都道府県代表の高校生チームの集中開催ゆえに取られている許されている形態というところはあるかも知れませんが、ただ実際に6年間見ていてそれゆえのアップセット、弱い方が勢いでうっかり勝ってしまうようなことはほぼ無くて、5セットマッチでも結果自体は特に大きく変わらないだろうというのが、僕自身の印象。
そして準決勝以降は3セット先取5セットマッチVリーグ仕様で春高も行われるんですが、やはりちょっと、同じ高校生どうしの試合でも空気感は変わりますね。そこまで勝ち抜いて来た実力校どうしなので退屈するということは無いですが、あえて言えば"密度"が薄まる感じはあります。こちらの見る目も、少し冷たくなる(笑)。5セットの果ての帰結を見通しながら、遠間で見てしまうというか。どうせこうなるだろう的な。(それはそれで"成熟"した試合及び試合の見方ではあって、だからこそバレーボールの最も正式な試合形式ではある訳ですが)
そして勿論、試合時間は長くなる。準決勝以降の3試合ならまあそれもいいでしょうが、もし1回戦から5セットマッチだったら、間違いなく僕はこんなに熱中していないです。試合中&大会中にあくびをこらえる時間は大幅に増えるでしょうし、特に然程興味の無い高校どうしの試合を今のようにコンプリートするのはかなり厳しいだろうと思います。(そして試合というものは"選び"出すと、どんどん見る対象が減って行くもので。それによって恐らく"大会"自体への感情移入も薄くなる)
バレーボール自体、本当に現状の5セットマッチがベストなのかという疑問はかねがね僕は持っているんですが、それを言い出すと話が長くなるので置いておくとして、とにかく"2セット先取の3セットマッチ"形式が、僕にとっての大会の価値/興奮度を高めているのは確かですね。
国際大会との兼ね合いなどからはあり得ない話ではありますが、もしVリーグが3セットマッチに移行したら。・・・見るでしょうね僕は、少なくとも今よりは。"チェック"したい気持ちは今でも十分にあるんですよ。ただ"チェック"以上の興味は余り無いので、その為の毎試合5セットマッチ、最低3セットは長いなあという。だったらここぞという試合だけでいいやという感じに。

3.カメラ位置の問題

今回新登場の、イチ押しの説。(笑)
意外とこれが大きいんじゃないかと、6年目にして今更気が付いた要素というか。

現在の春高本大会は、巨大体育館東京体育館を縦に4面に区切って、女子の試合はその両端のAコートとDコートで、準々決勝までは行われます。(+別会場もあり)
そしてそれを中継するフジCS放送の画面は、こんな感じ。

harukou_angle

対して"センターコート"と呼ばれる準決勝以降の、体育館の真ん中に横向きに作られたコートでの試合画面は、こんな感じ。

harukou_angle2

カメラ位置が準々決勝まではかなり遠く高く、俯瞰的で、準決勝以降は近く低く平面的になっているのが分かると思います。

勿論"近く"で撮っている準決勝以降の方が"扱い"としては上で、一般的には「臨場感」のある画面ということになるのでしょうが、こと競技としてのバレーボールを見る上では実は前者の"遠い高い"アングルの方が適している面が多いと思うんですよね、僕は。特に目まぐるしく行き交うボールを目で追いながらそれぞれのプレーの繋がりを一望して直感的に理解するには、上の画面の方が圧倒的に優れている。下の画面は近過ぎて追い切れなかったりシーンシーンがいちいち分断したり、あるいはカメラ自体の動きやカット割りに繋がりを依存する傾向が強い。(ちなみに例に挙げたのは、"近い"中では比較的"遠い"アングルのもの)

このこと自体は実は前から気付いていて、それは以前"皇后杯"という同様に大型体育館で一斉開催される年末のトーナメント戦を見に行った時に、大して観客も入っていないのを幸いに(笑)試合中ころころ見る場所を変えた中で発見したもの。カメラの位置よりは少し上だったかなと思いますが、角度的にはほぼ前者のような"画面"で、最終的には落ち着いて見ていました。見易いなあと。面白いなあと。
一方でせっかく会場に足を運んだのに麗しの女子選手たちを間近で見られないという問題(笑)もあった訳ですが、適宜アップの挟まるテレビ/ネット中継ならその難点も無い。"3セットマッチ"とは違って、これに関しては割と本気でVリーグでも国際試合でも、実装して欲しいなと思っていますね。まあ見た目が若干貧相なのは確かなので、サッカーの国際試合で一部やっているように平面モードと俯瞰モードを切り替えられるようにするのが妥当かも知れませんが。
・・・それで思い出しましたがフィールドの広いサッカーに比べてバレーのボールの行き交う目まぐるしさは段違いなので、"プレーの繋がりを体感的に理解出来る"効果・メリットもまた段違いなんですよね。逆に言えば僕がVリーグのチームプレーを淡白に感じるのも、"平面"画面でしか見てないからなのかも知れないと、思わなくはないですが。

3セットマッチの俯瞰画面のVリーグ(中継)。是非やって欲しいです。(笑)
それでもつまらなければ・・・。理由"1"に戻る。(笑)



今大会の注目選手たち
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女子世界バレー2022まとめ
2022年10月12日 (水) | 編集 |
ベスト8でブラジルに敗れて終了。[試合結果]

いやあ、惜しかったですね。逆側の山(グループ)の試合は見てませんが、ここを越せば結構本気でメダルのチャンスだったかも。そのブラジル戦も十分に勝てた試合でしたし、素直に残念。
確かにこの大会のブラジルと中国は、例年に無い弱さだったと思いますが、オリンピックと並ぶこの重要な大会で手を抜いていた訳ではないでしょうし、あちらの事情はよく知りませんが日本は日本で伸びしろも見える以上、2年後に必ずその差がまた開いていると考える根拠も特に無いので、パリ五輪(までの2年間)は久々に"楽しみ"に出来る五輪になりそう。
正直期待以上の健闘でした。選手&スタッフの皆さん、ご苦労様。(でも勝てる時に勝っておかないとねえ、勝利の女神の後ろ髪は(笑))
Vリーグも少し真面目に見るか、という気にはさせる大会でした。


眞鍋監督のチーム作り・采配 [選手一覧]

グループリーグ序盤は特にチーム編成に疑問と非難の声が轟轟で、でもそれも仕方ないかなという状況でした。井上はともかく見るからに最初から疲労が溜まっている状態の古賀の二人のアウトサイドコンビのバックアップが、こちらはこちらで見るからに不調の石川一枚しかおらず、その癖その石川も含めた宮部妹・佐藤淑乃のアウトサイド3人を"ブレイク3"と称してピンチサーブ専門選手として扱う/枠を使うような謎の編成。そしてどんだけ他の選手に不満なのか知りませんが、強化試合ならともかく他ならぬ世界選手権の本番を、アウトサイドからの転向したての内瀬戸と国際大会初出場の福留で迎えさせるというこちらも謎なリベロの編成。
それでその"奇策"に効果があればまだいいですが、"ブレイク3"の監督指令によるジャンプサーブは一向に効果を上げず、リベロも特に目玉(?)のレセプションリベロ内瀬戸のプレーは後述するようにむしろ弱点になっていて。こちらも批判の集まっていた9/23の大会開始直前9/18まで行われていたB級参加国大会"プレ大会"へのフルメンバー参戦が誰の意向かは分かりませんが、その疲労を引きずるエース古賀の案の定の3戦目の故障離脱の時点では、"自業自得"の意味も含めて(笑)の終わった感は濃厚でした。

しかしそこから代わりにスタメンになった石川の大復活、そしてブラジルの絶不調にも助けられての数年ぶりの勝利を起爆剤にチームは持ち直し、"ブレイク3"も多少は(笑)機能し出し、所属の東レの同僚である新エース石川との関係の良好さも心強かったのでしょう、ここも議論の多かったポジションであるセッター関も試合を追うごとに安定して行って、ついには当たるも八卦くらいにしか多くの人が考えていなかったろう、"転向"ミドルブロッカー宮部姉が「日本で一番高い」という眞鍋監督の言葉通りの威力を攻守に発揮する場面が出て来るに至って、あれ?何だかんだ狙い当たってね?と手のひらを返す人が増えて行ったのではないかと想像します。(笑)
・・・急増レセプションリベロ内瀬戸だけは結局どうにもならずに、"専門家"福留のフル稼働という起用法に落ち着いてましたが。

まあ東京五輪の主力であった選手を代表実績の無い若手二人と並べてピンチサーブ要員に指名するくらいに眞鍋監督の大会前の石川の現状に対する評価は低かった訳で、古賀→石川の入れ替わりとそこからのチームの復活には偶然・幸運の要素も少なからず含まれていたとは言えると思いますが、毎度のことながら身体能力的に地力劣勢の日本の打開策にともかくも眞鍋監督が色々と工夫して編成の歪みも恐れずに種をまいていること、その種が運にも助けられて一応芽吹いていること、更に遡れば今大会でも威力を発揮した"速いバックアタック"戦術の有効性、すっかり主力に定着している井上の伝え聞く慰留と抜擢と、大きくはここまで眞鍋監督のヴィジョンは成功しているとまとめてもそんなにおかしくはない感想を持てる、今大会だったのではないかなと思います。

・・・どうしても納得が行かないのはピンチサーバーの起用のタイミングで、長い目で宮部妹や佐藤に成長の機会を与えるその為に定期的にポイントを無駄にする、それ自体は我慢するにしても、セットやゲームを決める本当に大事なポイントやコート内のメンバーでちょうど追い上げムードに乗って来たようなタイミングでポコッと未熟な選手が出て来てムードに水を差す、あるいははっきりと勝機を逸する、そういう場面が少なからずあったように思います。それはその他の選手の場合でも同じで、例えばベスト8ブラジル戦の第4セット(でしたっけ)最終盤のさして好調でもない元々サーブに当たり外れの大きい古賀のピンチサーバー起用も、全く要らなかったと思います。あれが無かったら古賀が放った気の抜けたサーブを返されての失点が無かったら、セット取れてたのではないかと、後悔が残ります。
起用のタイミングがある意味一貫しているので、いいと思って/ポリシーでやってるんだろうなとは思いますが。試合に勝つ為の"采配"としては悉くと言っていいくらいに失敗しているので、是非再考してもらいたいです。あとブレイク3はブレイク3でいいですけど、どう考えても3人も要らないので(笑)、育成・選別が終わったら普通に二枚替えのオプションも使えるような編成・起用法にして欲しいです。

しかしまあ、僕の見識の浅さもあってバレーの監督はサッカーの監督に比べるとほとんどみんな似たようなことしかやってないように見える部分は少なくないんですが、その中でも中田前監督と眞鍋監督はつくづく違うタイプの監督だなあ、戦術云々を越えてとことん気が合わないだろうなあ(笑)と感じさせられた今大会でした。論理重視で積み上げ型で、ある意味では実効性よりも方法論の見た目の整然性確実性にこだわる中田監督と、データなどもそれはそれで活用はするんだけど、本質的にはイメージ・直感重視で多少過程や道具立てが変でも実効性が"ありそうな"イメージに遮二無二向かう眞鍋監督と。それゆえに結果が悪いとただの支離滅裂・思い付きに見えるんですけど。(笑)
一方の中田監督は一見するとちゃんとしているように見えるし本人はそう思っているのではないかと思いますけど、"積み上げ"とは言っても要は積み上げ"易い"ところを積み上げているだけで、本当に勝つ為にあるレベル以上にとことんやる訳でもなく駄目ならそれっ切りで既存の方法論の練度を問題にするだけ。そして諦めて他の方法論を導入し始めた時には、特に何の論理性もその時には無い。

まあ"論理的"と"直感的"というよりも、"建前"型と"本音"型とでも言いたいですけどね僕は。眞鍋監督は眞鍋監督で目端が利き過ぎるので場当たり的ではあるんですけど、中田監督の場合は自分の好む"建前"に引きこもって場にちゃんと"当"たってくれない傾向が強い。建前で通用している間は確かに堅固なチームを中田監督は作るので、それぞれの資質が生きる場面はそれぞれにはあるんでしょうけど。少なくとも一発勝負の連なりの代表チームの監督としては、眞鍋監督の"場当たり"性の方が向いているかなという。何とかしようとはする。本気で。東京五輪のチームのように、なすすべもなく緩やかな崩壊過程で無気力に本番を迎えたりはしない。
挫折した優等生の脆さよというか。(笑)

まあどのみち日本がメダルを取ったりする可能性は、大差なく低いんでしょうけど。
次の世代にはもう少し二人を止揚したような監督も出て来てくれるんですかね。(笑)



各選手について

・石川真佑選手(OH)

なんか色々考えちゃいましたね。
この選手は高校時代から物が違うとは思っていて、身長が170そこそこしかないのを除けば間違いなく心技体いずれも"超"の付きそうな一級品の素材だなとは。
古賀に比べても好不調のあるタイプではないので、それだけに久しぶりに見た(視聴環境的理由で眞鍋ジャパンはここまでほとんど見れていない)国際試合での石川の見る影もない不調ぶりには、どこか悪いのかな"早熟"のピークの終わりでも来たのかなと、結構深刻なものを感じてしまったりしていました。ところが・・・
古賀の離脱でスタメンで出るようになってからは、割と早々に拍子抜けする程あっさりとトップフォームを取り戻したので、そんなにメンタル要因が大きかったのか、バレー人生でほとんど初めて"主力"扱いされていないことのダメージが大きかったのかと、驚くと共に逆にそれ以前に眞鍋監督との間で何があって"ブレイク3"なんてまとめ売りの扱いになってしまったんだろうと、シンプルに不思議になりました。復調と復権が、たまたま上手くタイミング的に重なったとかがあったのかな、解せんと。(笑)
まあ単なるプライドではなくて、"責任感"という意味で、それを背負い切るパーソナリティ的特徴も含めて、重用されてナンボの選手ではあるんだろうなとは思いますけどね。あの身長で二段トスを常時ハードヒットし続けるプレースタイル(ブロック怖くないのかな)には、相当な覚悟というか自分の"使命"への確信が無いと難しいでしょうから、やはりそれなりの立場の必要な選手ではあるんでしょうね。
より広くは、"チーム"スポーツと言いつつも"個人"スポーツ性が強い、それぞれの選手が1プレー1プレーに個人として背負う責任のサッカーなどに比べて極端に大きい(特にスパイカーは)バレーにおいて、"気持ち良く"やれること"自分のペースで"やれること、立場に自信を持ってやれることが非常に大きい、プレーが全く変わる、そういう事例を改めて見たなという経験ではありました。まず"いい"状態のプレーをちゃんと見てあげないと、ほんと判断出来ないんですよね、バレー選手は。逆に悪い状態の時は、ある意味みんな同じになるので。(笑)


・井上愛里沙選手(OH)

この人もタイプ的には本当は180以上あって欲しい正統派アウトサイドですが、"古賀の対角"(またはエース対角)として、プレー自体はきっちり安定してますね。ただネット情報によると夏のVNLでも前半良くて後半尻すぼみになったと聞きましたが、今大会も前半に比べて後半は得点力も見かけの覇気もなんか衰えた感じて物足りなくて、単純にスタミナの問題なのかなと思ったりしますが。
だとすると石川の復活した今後は、今大会古賀の負傷でたまたまそうなったように、古賀と出場機会を分け合う形になるのかなと思いますが。そして古賀が完調ならば二人のバックアップ的に。まあバックアップに井上がいるのは、かつての石井に比べてもかなり頼もしくはありますが。(少なくとも攻撃面について言えば)


・古賀紗理那選手(OH)

まあプレー全般については相変わらずやや大会/試合ごとのノリに注文が付くところはありますが、もう何回も力は証明し直している選手なのでとにかくコンディション整えてとしか言えません。着地が相手コートに寄り過ぎる負傷のパターンには何か技術的理由がありそうですから、そこら辺も出来れば調整して欲しいですね。
気になるのはサーブの当たり外れの大きさで、最初の2試合とかは重いプレ球のようないいサーブを安定して打ってたのに、その後はいい試合もあったけれど駄目な試合は本当に駄目で、何でそんなに試合ごとに分かれるんだろうと不思議です(昔からですが)。今大会に関してはブレてないというよりも、ブレる程強く打ててないという、単純に見るとそんな印象でしたが(駄目な試合は)。


・関菜々巳選手(セッター)

いや、これは。モノになりつつあるんじゃないですかね。
僕が女子バレーを見始めた2015年以降、正直日本代表のセッターって誰を使っても目くそ鼻くそというか(笑)、帯に短し襷に長しのレベルにすら達していない"選択"に感じていましたが、今回の関は本当に"正"セッターというか、関のプレーを基準に/基盤に代表のプレーを構築して行く価値のありそうな、そういう予感を抱かせました。技術的にも性格的にも、少し"固い"というか不器用な印象は基本ありますが、その分意思/意図は明確で、眞鍋戦術("速いバレー")の遂行意思もその為の適合性も、これははっきり監督が使うだけの理由を示すことに成功した今大会だったと思います。器用ではないですけど"決定的"なプレーを、他のどのセッターよりもしますよね。ヴィジョンがあるというか。このまま成熟して行けば、と思わせてくれます。


・内瀬戸真実選手(リベロ)

レシーブについてはそんなにどうこう言う気は無いです。必要以上に叩かれてましたけど、"アウトサイド"の選手の中では最上位クラスなのは、前監督時代の(新鍋と並ぶ軸としての)起用法からも明らかですし。眞鍋監督の言うように他のリベロたちと比べても"日本で一番"かはともかくとして。今大会見せてしまったオタオタぶりが、急なリベロ転向の動揺によるのか加齢による俊敏性の問題か、どちらが大きいのかは"今後"(あるとすれば)を見て判断したい感じ。
ただもっとこれは駄目だなと思ったのはトス質で、ほとんど常に変な回転がかかっていてあからさまに打ち難そうなトスになっていて、"第二セッター"としてのリベロの役割が当たり前になった近年においては、むしろそちらの方に常時それをやっている"本職"との違いが出るんだなあと、変な形で余り意識してなかった"本職"たちの陰の凄さを確認してしまった次第。(笑)
まあ含めて内瀬戸個人を責めてもしょうがなくて、本当にそんなにリベロに人材がいないの?と、そっちの方が疑問というか心配というか。上で言ったようにここまでの試合を見てないので、眞鍋ジャパン基準での比較は出来ないんですが。


その他
・林琴奈選手(OH) 書くことない位偉い(笑)。"優等生"界の最高峰。新鍋先輩のような魔法は無いけどこの穴の無さはさすがに凄いとしか言いようがない。
・山田二千華選手(MB) "素直"な"大器"は素直に成長中。大会中にブロードがすっかり国際水準に。
・宮部藍梨選手(MB/OH) 遠回りした&コンバートされた大器。高いねえ、スパイク(クイック)力さすがにあるね、当たり前だけど普通のスパイクも打てるね。楽しいね(笑)。完成目指して頑張れ。
・佐藤淑乃選手(OH) この選手がどうこうというよりも、サーバーへの不安で敵から帰って来たボールへの対応までチームごとぎこちなくなってたのが印象的でした。"ピンチサーバー"とはいえやはり"チーム"の一員なんだなと。良くも悪くも。


以上。


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女子春高バレー2022備忘録 ~堤亜里菜と高濱日菜穂(?)
2022年01月13日 (木) | 編集 |
[総評]
2018年大会から(ほぼ)全試合視聴を始めて今年で5年目ですが、今年は例年になく上位陣の層が薄くて見応えという意味ではその5年間では正直最も物足りなかった気がします。
金蘭は脆かったし、成徳は迫力不足、でも結局この大常連2校が4強には残ってしまうという。
(そして八王子実践は今年もスペック倒れ)
・・・やっぱりコロナの影響とかは、あったんですかね。それとも更なる均衡化で、"名門寡占"の崩壊が進みつつあるということなのか。

その中で安定して穴の無かった前年覇者就実の優勝は順当だったとは思いますが、"連覇""無敵"という程の強さがあったわけではなく、あくまで相対という感じ。準優勝の古川学園は・・・。言いたかないけどやっぱり"助っ人"バレーですからね。

去年までのバルデス・メリーサ選手

バルデス・メリーサ

のように帰化の意思がある訳でも無し、優勝されてもねという感情を抑えるのはさすがに難しいです。
日本語の声掛けも達者にやって、タピア本人の態度には何の文句も無いですが。

日本人選手では前年覇者の期待と注目を背負ってやり切った勝ち切った就実の深澤めぐみ選手が問題なくMVPだと思いますが、"異形"のインパクトという意味では共栄学園の堤亜里菜選手を忘れる事は出来ないでしょうね。

「最近の高校バレーであれだけ一人に打たせ続けるのを見た記憶がありません」とは大林さんのこれでも結構控え目な表現だと思いますが(笑)、大会3日目春高名物三回戦→準々決勝の地獄のダブルヘッダー日程の中でも、むしろそれまで以上堤堤また堤で打たせまくる打ちまくる様には唖然としました。

結局準々決勝で古川学園に敗れた訳ですが、上記規格外ドミニカンを擁する格上古川に序盤止められまくって、第1セット後半~第2セット前半にかけて一度はもうジャンプ出来ない位に精魂尽き果てたように見えながら、なぜかそこからまた立ち直って第2セットを取ってしまった怪回復には、ほとんど背筋が寒くなりました。(笑)
正直むしろ、すんなり負けて欲しかったくらいだったんですけど。見てらんなくて。

実際もう少し見ている人が多かったら、炎上必至だったのではないかと。(笑)
それにしてもこういうこと(怪回復)がたまにあるから、追い込み一本の根性指導も無くならないんだろうなというのと、でもやっぱり何か人間の"可能性"を見た思いはするなというのと。

まあ前提には堤亜里菜選手個人の特殊性、大林さんが「完成されている」と評する高校生離れした頑強さ、170cmの体をぱんぱんに充実させているパワー/体力と、見ての通り今時の高校生としてはおよそ色気や垢抜けとは無縁な昭和の漫画みたいなルックスが暗示する(?)ド根性・精神力・無心の強さがあるんだろうと思いますけどね。
古川戦で苦戦したように高さ対策の調整は必要となるでしょうが、パワーは本当に超日本人的なので、潰れないで上手く育って欲しいです。・・・なんかこう、"胴体全部が体幹"みたいに見える凄い打ち方するんですよね。低身長なのに超高身長選手ばりにヒットポイントが自由自在という。どの体勢からでも強いスパイクを打って来る。(だから打数が増えちゃうんでしょうけど(笑))

tutumiarina

まあほんと見るからに底抜けにいいコで。(笑)
息子の嫁に是非という。("自分の"ではないというところが彼女のキャラクター笑)



[各評?]
上で言った、正月とはいえ最初の3日間はほぼ仮眠しか取らない状態でないと達成出来ない全試合視聴(笑)。・・・録画なんかしても翌日の試合までに見れないですから。
それを支えているのは"チームの完成度"という意味では平均してVリーグを余裕で越えている高校バレーの面白さと、その中で輝くそれこそ堤選手のような未来の大器の発見と、それからやっぱり・・・一期一会の美少女バレーボーラーたちとの出会い。(笑)
まあほんと一期一会なんでね。ほとんどの選手はこの大会の後で目にする機会は二度と無い、ごく一部とVリーグや大学バレーで再会する機会があるだけなので。独特の切な/刹那い感情は湧きますね。
とにかく、眠くても頑張れるのは彼女たちのおかげ。(笑)

そんな中で今大会は、競技レベル同様(?)なかなか僕のアンテナに引っかかるコがいなくて、寂しいなあと思っていたんですが。
最後の最後にいました。ほんと最後の最後。
なぜか決勝戦だけ突然出て来て、なぜそれまで出てなかったのかが謎な活躍をしていた就実の2年生ミドルブロッカー高濱日菜穂選手。

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172cmとポジションなりの身長ながら、へなっ(笑)と薄い感じの頼りなげな可憐な風情と、一方で少年的な無邪気感と清潔感で、かなり僕の琴線に触れるものがありました。

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・・・相手にタイムアウトを取らせる得点を挙げて喜ぶ高濱選手。

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・・・優勝決定後、仲間に手荒い祝福を受ける高濱選手。

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来たア痛ーて感じ。先輩深澤ツインズも、やってるやってると。(笑)
なんか試合中もやたら頭叩かれるんですよねこのコ。
一年坊主でもないのに。末っ子キャラ。(笑)
叩き易い/叩きたくなる感じの頭なんだろうなと(笑)。髪の毛も柔らかそうだし。

このコの"へな"感て、女の子にとっても割と理想的なシルエットなんじゃないかなと思います。ゴツくない長身。足も長いし、普通にティーンモデルでいけそうな気がします。(もうやってたりして)
その"へな"な体をしならせて、スパイク自体は十分強力、ブロックもなかなか。普通に有望選手だと思います。来年も楽しみ。


・・・その他の気になった選手。

まずは松山東雲の3年生、178cmのチーム最長身ミドルブロッカー村上由奈選手。

murakamiyuna1


"モデル"感溢れるクールビューティーで、プレー中も勿論かっこいいんですが、僕が特におっと思うのはタイムアウト中、熱血緊迫の作戦会議のさ中の"超然"感。

murakamiyuna_a

上を見る。

murakamiyuna_b

横を見る。

監督の言うことを聴いてるのか聴いていないのか、いや聴いてはいるんでしょうけど(笑)それ以上に"個人"としてそこにいる感が強い。プレー中にもある"個人"性が、よりはっきり出て来るというか。
プレーの流れの中での実体的関係性は関係性として、チームメイトへの愛情は愛情として、でも私は私よ部活カルトに100%を委ねたりはしないわという自立感。
まあだいぶ妄想ですけど。(笑)
かっこいい"女子高生"だなという。同性人気も高そう。

何となくMリーグの茅森早香プロ

kayamori_m

とか思い出すんですけどね。顔も、雰囲気も。
そこからの類推では、話すと気のいい面倒見のいいお姉さんタイプなのかもなとか。(笑)

・・・同性人気と言えば、"王子"様タイプで目立って見えたのは、和歌山・開智高校望戸凪智選手とか。

mochido

176cmの、そういえばこのコもミドルブロッカーだな。
まあポジション柄背の高いコが多い&体を伸ばすプレーが多いので、目立ち易い映え易いのかもしれない。高校生年代だと、サイドは170前後くらいがむしろ標準になっちゃいますしね、比べると。
2年生。

・・・そして最後大穴。何と試合に出てない選手からの抜擢。(笑)

青森西高校の10番、名前は...大塚怜美というらしい、166cmの1年生。セッターなのか。へえ。
何せ試合には出なかったので試合中はずっとマスクして補欠仕事をしてただけなんですが、そのマスク越しに補欠仕事越し(笑)に、それでも何か凛としたものが伝わって来て、このコは・・・と変な注目の仕方をしていました。
そして最後の最後、高校バレー恒例相手チーム監督への試合後挨拶の時に、ついにマスク開放。(笑)

ootsuka01


なるほどこんな顔だったのか。(笑)
思ってたより"少年"寄りでしたけど、緊張感というか負けん気の強さみたいなものはマスク越しに伝わって来ていた通り。

ootsuka02

横向いてるし。(笑)
なにげに"大人の話を斜(はす)で聴く"コは、それだけでポイントが高いところがあります。(笑)
不敵感というか、"少女"幻想"天才"幻想を刺激されて。
まあそういうイメージが好きなんでしょうね。
来年はプレーも見たいぞ大塚怜美ちゃん。さぞかし強気のトス回しを。(笑)


とにかく今年も楽しませてもらいました。
選手及び関係者の皆さん、お疲れ様でした。
ただ3日目のダブルヘッダーだけは、どうにかなりませんかね。名物とか言ってる場合では(笑)、実際には。


テーマ:バレーボール
ジャンル:スポーツ
女子バレーオチのない話
2021年10月20日 (水) | 編集 |
21-22V.Leagueの開幕とは余り関係無いですが、女子バレーに関するオチ(答え)の無い話を3つ程します。(笑)


1. 結局古賀紗理那はなぜ復調したのか(≒なぜ不調に陥ったのか)

バレー古賀紗理那の悩みを払拭した母からの「カッコよかった」とは。(Number Web 2018/10/04 田中夕子)

ネーションズリーグ後、短い休暇で熊本の実家に帰省した。バレーボールを頭から外して、リラックスした時間を過ごす中、の何気ない一言が胸に刺さった。
「紗理那、前のほうがよかったよね。高校生の時のほうが力が乗っていて、もっとスパイクがカッコよかったよ」
 アドバイスではなく、ふとした日常会話ではあったが、一番自分を知る母がそんな風に見ていたのかと思うと、何が以前と違うのか、少し立ち止まって考えるようになった。

再び始まった全日本での合宿で若宮啓司トレーナーに相談すると、ヒットポイントが低くなっているのではないかと言われ、自分のポイントを確認するために壁打ちをしたらどうか、と提案された。
(中略)
「毎日ひたすら、壁に向かって1人で打ち続けたら、だんだん『ここかな』というポイントがわかってきたんです。同じ場所で打ち続けられれば無駄な力が入らないし、どれだけ打ち続けても肩が疲れない。それまでは気づかないうちにボールをとらえる場所が後ろになっていて、かぶり気味で打っていたんですけど、今は一番体重が乗るポイントがわかった。それだけで、スパイクの感覚がものすごく変わりました」


以前も書いたように、古賀紗理那が日本のエース/国際級の選手になるのに必要なのは、「成長」ではなく「復調」「復元」である、対状況ではなくあくまで彼女自身・内部の問題であるというのが僕の基本的見方だったので、

今季['20-'21]古賀がやっていたプレーというのは、基本的に2015年のワールドカップにおいて、まだ19歳だった彼女が既にやっていた/出来ていたプレーだからです。この大会については去年だったかCSで全試合再放送した時に再度確認しているので、決して"思い出補正"の類ではないと割りと自信を持って言えます。この程度のプレーなら、6年前に既にこの選手は出来ていたよと。
(『’20-’21シーズン女子V1リーグNECレッドロケッツまとめ』)


ここで言われているような「素人である母親の(良かった時についての)素朴な直観」(僕の意見も要はその類)、「壁打ちによる内部感覚的チェック」が上昇のきっかけであるという説明は、僕的には結構我が意を得たりというものなわけですが。
・・・ただ問題は、それが"2018/10/04"の記事であるということで。

つまりこの直後に行われた世界バレーは勿論、翌年のワールドカップも含む2019年まで範囲を広げても、実際には僕の目に古賀紗理那の復活は映ってなかったんですよね。あくまでコロナ禍による中断を挟んだ2020年末に始まったVリーグで、ある意味突然という感じでそれを認めた。
"2018年から始まって徐々に・・・"ということで辻褄を合わせてもいいんですが、ちょっと長い。(笑)
せめて翌年のワールドカップ時点では気配くらい見えていい筈ですけど、当時の記事には何のコメントも無い(『女子バレーワールドカップ2019 雑感』)。その後の'19-'20Vリーグのプレーについては記事自体書いてない。(チームは8位)
中止になった2020年の代表シーズンがもしあったらそこで復活かその前兆が見えた筈だったという想定は可能ですが、それについては実はむしろ試合が無かったからこそ、そこでじっくり休養・調整出来たからこそ本来のプレーを取り戻せたんだという説を既に唱えてしまっているんですよね。(笑)

あくまで古賀自身の内部感覚とプレーのバランスの問題が幹でそれ以外は枝葉ないし余禄だという主張自体には、今でも強い確信があるんですが。"プロセス"としてはどうだったのか。"2020年"をどう考えるのか。
'19-'20Vリーグのプレーを思い返すと、そこから明けて春からの代表シーズンに突入していきなり良くなったイメージは全く無いので、仮に上昇傾向が潜在していたとしても効果としては"休養"のメリットの方が、少なくとも大きかったのではないかと、やはり今でも思いますかね。

ただ上の"2018年世界バレー前の原点回帰"から始まるストーリーラインも捨て難く魅力的なので、どうしたものかと。(笑)
取り戻しかけた内部感覚や自信が、直後の世界バレーやその流れのVリーグでは慌ただしくてまだプレーに反映し切れず、あるいは"壁打ち"の成果の蓄積が間に合わず、その後くらいにコロナが来てくれればちょうど分かり易い気がするんですけど(笑)、実際はもう一年低迷が続くわけですよね。そんなに長く一つの手がかりを追えるものなのか。途中でまた自信を失ったりしないものか。
もう何というか、自分自身でインタビューしたい気持ちですけど。(笑)

どうなんでしょうねえ。復活してくれたのは本当に嬉しいというか、今でも夢を見ているような気持ちがありますが。
サッカー界における僕の贔屓選手たちは、井上潮音にしろ山田直輝にしろ平山相太にしろ、一度転げ落ちたピークから二度と復活してくれてないですからね、それに比べると。(潮音は今季多少の気配はあるんですが、いかんせんチーム事情で最近はほぼ試合に出られてない)
割と共通して独特の自己バランス、どこにも偏らない寄り掛からないニュートラルな感覚を持った選手が多分僕の好みで、逆にそれが復活する際にどこかに何かに頼れない寄り掛かれないという、難しさがあるんだと思うんですけどね。全体感覚そのものを、再現しないといけない。
女子バレーだと他に引退した新鍋理沙選手とかが、同カテゴリーのご贔屓でしたが。

ともかく古賀選手には末永い活躍を。いつかインタビューさせてくれれば嬉しいです(笑)。(無理)

koga_highschool

・・・高校時代、"かっこ良かった"頃の(笑)古賀ちゃん。
髪型がちょっと、当時は。(笑)
代表で出て来た時はもう直ってましたが。


2. 宮下遥とは。バレーボールのセッターとは。

古賀選手と共に、僕を女子バレー愛好に導いた(元)"天才セッター"にして美少女スター選手。(Wiki)

miyashita

古賀と宮下。結構なミーハーですね(笑)。カズとラモスかよという。(笑)
ボーイッシュかつ可憐なルックスと"15歳で全日本入りした天才"のイメージ先行で興味を持った選手ですが、実際いい選手ではあります。
178cmと日本人女性としては十分な長身ながら、ほとんどそういう印象を抱かせないむしろ"子猿"的(笑)な敏捷性からのミラクルなスパイクレシーブを頻発し、定期的に(セッターが駄目なら)リベロ転向提案が冗談半分持ち上がるディグ/レシーブ力。平均期待感では僕が見た範囲では木村沙織や荒木絵里香らと並んで日本ナンバー1クラスに思えるサーブ力。"長身セッター"としての売りの一つでもありますが、特に1枚ブロックの時に秀逸なセンスを感じさせるブロック力。近年そこまででもない気がしますが全日本の主力セッターだった時期にはほとんど100発100中だったツーアタックの決定力。

いずれのプレーもセンスの塊というか、体格も含めて運動選手としての最高級の資質を感じさせる選手だと思いますが、ただ彼女には一つ重大な欠点があって、それは・・・トスが下手だということ。(笑)
仮にも長きに渡る全日本常連セッターを下手と言い切ってしまうのはアレですけど(笑)、他のプレーと比べるといかにも平凡で不器用に見えるのは事実ですし、代表の歴代のライバルたちとの比較においても平均的に常に問題視されて来たポイントなのは確か。

宮下個人の評価としては概ねそういうことなんですが、ただ早くから見込まれてある種の英才教育を受けて、15歳で全日本入りしてから27歳の現在に至るまで、結局その"欠点"について言われ続けるってどういうことなんだろうという、素朴な疑問が僕としてはあります。バレーのトスって何なんだろうと。練習しても上手くならないものなんだろうか。上手い下手ってどういうことなんだろうと。
ていうかそもそも論として。
例えばサッカーでもバレーのセッター同様、"司令塔"と呼ばれるタイプの選手(近年ポジションは益々不鮮明ですが)がいますよね。その選手の、プレービジョンが凡庸だったり守備力や身体能力等含めた総合力が物足りなかったりすることは、それはままあります。ただ・・・「パスが下手なのが欠点」なんて言われることはまあ無い(笑)。そもそもそんな選手はそういう役割を与えられないですし、基本的な上手い下手センスは誰の目にも自明に、ある程度育成に左右されるにしても生来的に近く決まって余り動かないものに見えますから。そこが議論になることはまず無い。

でもバレーは・・・"トスの下手なセッター"って普通にいるんですよね。それこそが課題だと言われる選手が、トップレベルにも。宮下を筆頭に。各チームにちょこちょこと。

漠然と上手い下手と言っててもしょうがないので、ここで僕のさほど豊かでない観戦経験からですが、トス・・・というより"セッター"の上手い下手について少し分類を試みてみますか。具体的には、セッターの"下手"の種類。

1.シンプルに下手(笑)

トスの一つ一つが素人目にも見るからに覚束なくて、上げてみないとどうなるか分からないレベル。
さすがにこんなのはVリーグ以上だとなかなかお目にかからなくて、思い浮かぶのは3,4年前までの(最近は知らない)東レの白井美沙紀選手とか。高校時代まではアタッカーと兼任だったということで、単純にキャリア不足なんだろうと当時は呑み込んでいましたが。

2.不安定

1と違ってちゃんと上がってる時のを見ると別に下手という感じはしないんですが、その割に駄目な時はとんでもなく駄目なトスを上げて来る、スパイカーに合わせる気があるのかどんなトスのつもりでその強弱だったのかみたいな。
たいていは挙動不審、メンタルの不安定とセットで、それが原因なのかプレーに自信が無いから挙動不審になるのか。(複雑な組み立ての中で混乱しちゃうタイプもいますね)
思い浮かんでるのはNEC1年目の塚田しおり選手とか(笑)。塚田選手の場合得意なタイミングの幅が滅茶苦茶狭くてそれ以外が凄く雑という印象でした。下手というより不器用。

3.力不足

広過ぎる言い方に見えるかも知れませんがそうではなくて、要は"長い"トスや"高い"トスや"速い"トスなどが必要になった時に、筋力なりなんなりの理由でその要求に応えきれない選手。単純に届かなかったり間に合わなかったり、そちらの要求を満たそうとすると力の入れ過ぎでコントロールが不安定になったり。
これはまあ、特定の誰かというよりも、その時チームが戦術的に要求するそうしたプレーに応えきれない全てのセッターということになりますか。ある水準以下ならあるいは他のタイプのプレーなら無難にこなせる選手だったりもするけど、その場面では失格。

・・・そこらへんと関連して注釈的にトスの"種類""タイプ"と上手下手について。
一般に手の内に収めてから柔らかく出すトスの方が安定感は出し易く、"上手く"見える傾向はありますね。控えのベテランセッターとかに多いタイプ。(笑)
ただ逆に指先で突いて出すトスの方が速さや強さ(あるいはそこから来る高さ)は出し易いので、国際試合レベルで要求されるのはそういうトスあるいはそういうトスを操れるセッターである傾向は強いようですね。勿論柔らかいトス自体はどこでも必要な訳ですが、ただ全体の強度が高いので強さを出す力がまず優先するというか、大は小を兼ねるならぬ強は弱を兼ねるというか。
一方で不安定にもなり易いので、さっきとは逆に期待の若手セッターに多いタイプというか(笑)。やらしてみて不安定が過ぎれば、ベテランの柔セッターに代える。


4.柔らかさ(?)の不足

と、言うような分類、"タイプ"の違いを踏まえた上で、しかしあえての表現。
逆に言えばどちらのタイプのトスを上げる上でも感じてしまう部類の、基本的な"不足"。
サッカーで言えばボールタッチの硬さとかコントロールの不安定とか、司令塔/パサーとしての基本的な資質を疑わせるタイプの"不足"。一番サッカー的にも分かり易い"下手"というか。
宮下は・・・結局これなのかなと思ってしまうところがあるんですが(笑)。身も蓋も無いですけど。

所属の岡山の試合はNECに次いでよく見てますけど、なんか宮下のトスは、根本の部分でダサいんですよね(笑)。垢ぬけないというか、パッとしないというか。
成功したトスでも、"トスワーク"としては上手く行ったプレーでも、何か"上げてるだけ"という印象が付きまとう。棒球というか、味わいが無いというか、美が無いというか。本人勿論一生懸命工夫してやってるんでしょうけど。それでチームを勝利に導いたりもしてるんですけど。
道具の使い方自体には長いキャリアでそれなりに習熟していても、そもそもの道具が粗雑という感じ。"トス"という。あるいはその際のタッチ。

代表レベルで比べなくてもそうなんですけど、代表となると尚更そのトスが生み出すプラスアルファの乏しさや繊細さの不足や、予定が崩れた時の(技術による)リカバリー力の足りなさみたいなものが、目につくというか天井になってるというか。
冒頭で言ったように結構上級なキャリアを長いこと歩んでいる選手な訳で、努力に果てはないとはいえひと通り人事は尽くしての現在だと考えられる訳で、要はそもそもの部分で"下手"なのではないのか向いてないのではないのか、ポジション間違えてるんじゃないのかと、そういう結論にたどり着いてしまいそうです。パスの上手くない司令塔。他のプレーはみんな上手いのにね。(笑)

じゃあってんでリベロだと、サーブやブロックが出来ないからもったいないし、一応178cmあるからサイドでもやれそうではあるけど何歳になっても細いままなのでパンチ力とかはどうなんだろう、代表レベルに到達出来たのか。むしろ俊敏性も生かしてミドルの方が、高さは少し物足りないけど一流になるチャンスは大きめかな?
色々高いレベルで帯に短し襷に長しなので、セッターにして全部生かそうとしたのも分かるっちゃ分かるんですけどね。後はトスが上手ければね(笑)。何でなんでしょう。"運動選手"としての資質は本当に超一級品だと思うんですけど。動作の一つ一つが美しい。・・・トス以外は(笑)。なんか呪われてるのか?

と、ぶん投げ気味ではありますが、それでも出来ればパリで、古賀紗理那に上げる宮下遥を、見たいものだなと僕は思っています。ミーハーなので(笑)。大好きなので。その独特の屈折した性格共々。(笑)

miyashita2

まあ今回こうやって宮下を下げましたけど、逆にじゃあ誰が"上手い"セッターなのかと言われても、サッカーの司令塔/パサーのようには、すっと名前が浮かばないんですよね。あの選手のああいうプレーは印象に残ってるなあというのがいくつかあるだけで。シンプルに"上手い"というのがよく分からない、バレーのトスは。僕が素人だからかも知れないですけど。でもサッカーだって素人だしな。何か余程入り組んだ特殊な(不自然な?)プレーなのではないかと、思っているところがありますが具体的には現時点では僕には分かりません。(オチなし)


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中田ジャパン(女子バレー)の番外編的まとめ
2021年08月28日 (土) | 編集 |
資料(1) (2) (3)

もうあちこちで批判はされ尽くしてますし、今更普通のことを書くのも気が進まない(一週間前に自分が書きかけたものを読んでももういいよそういう話は、飽きた!とか思ってしまう(笑))ので、余り他の人が書きそうにないことだけ選んで。


中田ジャパンの"擁護"可能性

中田ジャパンへの批判・提言を一言でまとめれば、「スピードや一本目の質への妙なこだわりは捨てて、攻撃参加枚数の確保に重点を置いた世界標準のバレーを黙ってやれ」ということだと思います。
ここで攻撃の"枚数"ということを言う時に前提されているのは、あえて言うと馬鹿みたいですけど(笑)、"参加"するに足る水準の攻撃力を持ったアタッカーが常に一定"枚数"分いるという状況だと思います。それこそ(実際に中田ジャパンの中で生じた問題ですが)新鍋のバックアタックを、本気で"枚数"に入れようとは、余り誰も思わないわけで。

その観点を踏まえてこうした提言は、中田東京五輪チームの最終メンバー、特に大エース"古賀ちゃん"(笑)を筆頭に未熟なところはあれど確かに"世界"や"未来"を感じさせる石川黒後、サブにも石井といういつどこで出てもそれなりに遜色なくやれるアタッカー/アウトサイドヒッター陣を見回してみれば、なるほど一定の説得力はあるように思います。・・・結果的にはね。

ただ2016(17)年の中田ジャパン誕生時の状況を思い出すと・・・。どうだったかなと。
そんな"正論"で、単純に済んだ状況だったかなと。
ここで中田ジャパンの初陣、2017年のワールドグランプリの登録・出場メンバーを振り返ってみましょう。

(WS) 古賀、新鍋、石井優希、鍋谷、石井里沙、内瀬戸、堀川、野本、高橋沙織
(MB) 岩坂、島村、奥村、松本 (S) 宮下、冨永、佐藤美弥 (L) 小幡、井上琴


ウィングスパイカー(現"アウトサイドヒッター")は9人の名前がありますが、さあどうでしょうこのメンバー。
長期不調中の古賀(復活はようやく2020年になってから)、直前まで引退も考えていた老兵の新鍋、"若手"でもなければ"頼りになるベテラン"でも未だなかった万年二番手の石井優希、面白いけどほぼワンポイント専門の鍋谷、MB兼任可もなく不可も無くの石井里沙、好選手だが所詮低身長の脇役内瀬戸、なんちゃって"大型レフティー"堀川、永遠の未完の大器野本、コメントに困る高橋沙織と、まあ正直誰をどう当てにしたらいいのかという陣容。
"将来性"という観点で見ても、"若手"と呼べるのは古賀くらいしかいないですし。一応黒後は"育成年代チーム優先"という理由でのメンバー外でしたが、この時点ではまだVリーグデビューすらしていない未知数。後知恵でなく、しょぼっと思った記憶は当時あります。誰が点取るのと。

元々勿論日本女子は大型スパイカーがガンガン打ちまくって圧倒出来るようなチーム/国柄ではないわけですけど、例えば最後の"栄光"'12ロンドン五輪銅チームと比較しても、そこから木村沙織が抜け江畑が抜け迫田が抜け、中間'16リオ期に長岡が台頭するも深刻な負傷で長期離脱中、残ってるのは劣化した新鍋くらいで代わりの台頭選手も無しと、恐らくこの時期は近年の中でも人材的にかなりどん底と言っていい時期だったのではないかと、こちらはまあ、後知恵含みですが。
例えば前監督眞鍋政義氏はロンドン後の2014年に、"ハイブリッド6"と称する時に6人全員がアタッカー/アウトサイドヒッター的に振舞って入れ代わり立ち代わりスパイクを打ちまくるような戦術を取りましたが、逆に言えばそれだけそういうタイプの人材が豊富だという認識が当時はあったわけですよね。(2014WGP時のメンバー)

そういう立脚点は、中田監督には無かった。タイプ的にハイブリッド6みたいなことは、やろうとは思わなかったでしょうけど(笑)仮にやろうとしてもやれるようなやる"甲斐"があるような陣容では、当時は無かった。アウトサイドの火力をベースに据えたようなチーム作りを、自然に出来るような状況ではなかった。・・・2014年ならぬ2021年に比べても。2021年の選手層なら、例えば"ハイブリッド6"的なことをやってみるのも、一興と言えば一興かもしれない(笑)。それだけの"枚数"の用意自体は、出来なくはないかもしれないというか。

だから中田監督が、貧弱な選手層を前提にして、攻撃の"量"ではなく"質"、数は少なくても出来る事確実な事を一つ一つ拾い上げて慎重に繋いで作り上げる職人的な丁寧さを強みにするチームを作ろうとしたのも、状況的な合理性はあったと言えなくはないと思います。実際集合時の絶望的な感じからそれなりに戦えるチームになって行くまでの速度は、意外と早かったな着実だったなと言う印象を、当時僕は抱きました。結果ブロード一辺倒になったとしても(笑)、何も無いよりはマシなので。それがつまりは、2017年の日本の"出来る"ことだったということで。
ただ・・・その"為"に中田監督がワンフレームバレーやらを採用したのかと言うとそれはそんなことは無くて、あくまで結果的な合理性だと思いますね。なぜならそのバレーは、(世界の中の日本とは違って)国内戦力優位の久光製薬で、主に磨き上げられたものだったので。どういう戦力だろうと、要するに中田監督がやりたいのがそういうバレーだったのだろうと、それがたまたま状況にも、フィットしているように見える瞬間があったという。

貧打を何枚揃えても所詮は貧打、だから貧打でも点が取れるような超速くて超精密なコンビネーションに活路を求めますというのが中田監督の"合理性"。
ただ実際の中田ジャパンの歩みが示したものは、むしろ例え貧打でも枚数増やしたりシンクロすることの効果は結構明白に顕著で、それはたまにしか決まらない"精密"さよりもたいていの場合勝るということで。
増して満更"貧打"でもなくなった最近の日本のアタッカー陣を考えればと、それの世界仕様でのもっと伸び伸びした有効活用をと、そういう話になってしまうのは致し方ないところ。ただ今日の(アウトサイド陣の)状況を、僕自身もイメージ出来ていたわけではないので、そういう意味で"2017年の"中田監督に、一定のシンパシー・同情はあるよというそういう話です。(笑)


あったかも知れない中田ジャパン

その延長みたいな話ですけど。
このように、サイドアタッカーの人材不足という状況と皮肉な適合性(笑)も見せつつ進んで行った中田ジャパンは、別な言い方をすると"オールラウンダー"がどの状況からも仕掛けるトータルバレーではなくて、守備職人新鍋のレシーブ力を軸とした分業バレーだったわけですね。レシーブ職人新鍋+ブロード職人奥村&島村というのが、再三言うように初期の基本形。
完成度は高いが伸びしろも機動性も無い大ベテラン荒木が早々に(本番間際とかではなく)ミドルの軸として固まっていたのも"職人"バレー感を増す訳ですが、それはそれとして中田監督も、出来ればトータルに能力の高い現代的な大型サイドを揃えて戦いたいという気持ち自体は持っていたようで、最初の最初の先発メンバーは新鍋抜き(古賀+石井優+堀川)でしたし、その後も結果新鍋には頼りつつも、何とかスケール感を出そうと選手起用に苦慮している様子は見られました。

ただ・・・僕が好きだったのは実は、新鍋と内瀬戸、二人のレシーブ職人を両方先発させた、言わば最も守備的分業的なシフトの時の中田ジャパンだったんですよね。(笑)
その際には古賀なり野本なり時に石井なり誰かが守備免除の"打ち屋"として残り一枠に入るわけですけど、その割り切り感がむしろ心地良かった。"現代的"ではないかも知れないけど、逆に中田監督の「ハート」が感じられて好感が持てた(笑)。ああこういう人なのね、こういう感じが落ち着く人なのね、これくらいの"確実性"を、本来は求めたい人なのね。ある意味不確実性そのものを武器とする、シンクロだのハイブリッド(笑)だのは、とことん性に合わない人なのねという。

これはサッカーでもそうですが僕は基本的に&最終的に、その監督のやりたいこと得意なことをやってくれるのか結局一番という、そういう考えの人なんですよね。"世界の潮流"やら理論的可能性は可能性として、ひと通りは見るとしても。"戦える"チーム作りには、しばしばむしろそちらの方が大切だと。
逆に半可通や借りて来たような戦術で戦われると非常に腹を立てる(笑)人で、だからもし中田監督が早い段階で割り切って、もう分業で行くんだその方が効率的なんだと腹を括ることに成功していたりしたら、意外とシンパになっていたかも知れません(笑)。少なくとも通り一遍の"世界仕様"論への、最初の防護壁くらいにはなって見せたかも。・・・実際問題真面目な話、打ち屋一人に絞った"守備的"布陣の方が、攻撃力が高いように見えることも少なくなかったんですよね、中田監督も面白いもんですねと当時苦笑いしてましたが。それだけ日本の"トータル"アタッカーたちの能力に問題があったということでもあるでしょうし、と同時に少なくとも"中田監督"下でやる場合、下手なトータルよりもはっきり分業の方が最終的な効用が高いという可能性は低くなかった。

その路線で・・・もし五輪が延期にならずに新鍋が健在なままで、2020年末には復調していた古賀が2020年夏にも間に合ってでもいたら。どのみち黒後も石川もそこにはいたでしょうし、丹念に磨かれた"分業"中田ジャパンは、形だけ"潮流"に色目を使った今回のあぶはち取らず中田ジャパンよりは、少なくともいいチームだったのではないか戦えるチームに仕上がったのではないかと、そんな風に思わなくはないです。
まあ相当批判は受けたでしょうけど(笑)。でもどのみち批判は受けますからね。(笑)
常時(レシーブ職人を)二人置くかどうかはともかくとして、半端に外野の声に耳を貸さずに初期型のチームのあくまで延長で突き詰めるという選択肢は、実際あったと思いますね。2018年まではぎりぎりそうだったのかなあ。2019年になると完全にぶれてますけどね。とにかく気が付くと、寄る辺が何も無くなっていた感じの、2021年のチームでした。


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中田ジャパン追加資料 (メンバーの変遷と流れの整理)
2021年08月18日 (水) | 編集 |
「コメント&記事集」後編を踏まえて。
本当はこの後に書いているまとめとセットのつもりだったんですが、そちらが予想外に長くなっていて今日中に終わらなかったのでこちらだけでも。
・・・いや、明日色々とのあるワクチン接種の2回目なんですよ(笑)。それて゜明日以降しばらくどれくらい稼働出来るか読めないし、一応体調も整えて臨みたいので。いったん作業を切っておこうと。


2017年 [コメント&記事]

戦績 : WGPグループ1予選ラウンド6位(敗退)、アジア選手権優勝グラチャン5位

メンバー

WGP

(WS) 古賀、新鍋、石井優、鍋谷、石井里、内瀬戸、堀川、野本、高橋沙
(MB) 岩坂、島村、奥村、松本 (S) 宮下、冨永、佐藤美弥 (L) 小幡、井上琴


アジア選手権

(WS) 古賀、新鍋、野本、鍋谷、石井里、内瀬戸
(MB) 岩坂、荒木、島村、奥村 (S) 冨永、佐藤美弥 (L) 井上琴、小幡

・・・太字は初選出(以下同様)

グラチャン

(WS) 新鍋、石井優、鍋谷、内瀬戸、堀川、野本
(MB) 岩坂、荒木、島村、奥村 (S) 冨永、佐藤美弥 (L) 小幡、井上琴

・・・紫字は復帰(以下同様)

トピックス

・レセプションアタック(サーブレシーブからの攻撃)と速いバレー("ワンフレームバレー")の重視
・セッター宮下遥への特別な期待感の噂
・新鍋理沙の代表復帰、岩坂名奈のキャプテン指名
・明からさまに粗削りな大型セッター冨永こよみの重用
・ミドル重視の組み立てだがクイックは威力不足で実際には島村&奥村のブロード攻撃へ依存
・クイックを打ちたい所でもブロード、更にはバックアタックを打ちそうな所でもブロード。
・古賀・石井優・堀川の攻撃的サイドでスタートするが、すぐに(堀川に代わって)新鍋がサーブレシーブの要として固定され、随時そこに第二のサーブレシーブ要員としての内瀬戸が更に加わる構成。



2018 [コメント&記事]

戦績 : ネーションズリーグ10位アジア大会4位世界選手権6位

メンバー

ネーションズリーグ(旧WGP)

(WS) 長岡古賀、新鍋、石井優、内瀬戸、鍋谷、高橋沙、堀川、井上愛黒後
(MB) 岩坂、島村、奥村、芥川 (S) 宮下、冨永、佐藤美弥、田代 (L) 井上琴、山岸戸江


アジア大会

(OH)[旧WS] 長岡、新鍋、石井優、鍋谷、野本、黒後
(MB) 岩坂、荒木、島村、奥村 (S) 冨永、佐藤美弥 (L) 井上琴、小幡


世界選手権

(OH) 長岡、古賀、新鍋、石井優、内瀬戸、黒後
(MB) 岩坂、荒木、島村、奥村 (S) 冨永、田代 (L) 井上琴、小幡


トピックス

・年頭から(速い)バックアタックの強化を課題として掲げる。
・長岡の長期故障からの復帰と黒後の加入。
・ミドルに本来クイックを得意とする芥川が加わったが、あくまで攻撃はブロードメイン。芥川自身も国内リーグで盛んにブロードにトライしていたので、代表召集の予定があるのだなとすぐ分かった。
・最終メンバーのセッター田代が一応初招集。



2019 [コメント&記事]

戦績 : ネーションズリーグ9位ワールドカップ5位

メンバー

ネーションズリーグ

(OH) 古賀、新鍋、石井優、内瀬戸、鍋谷、黒後、今村長内吉野中川
(MB) 岩坂、荒木、島村、奥村、渡邊彩入澤芥川
(S) 宮下、冨永、佐藤美弥、田代、 (L) 小幡、井上琴、山岸


ワールドカップ

(OH) 古賀、新鍋、石井優、鍋谷、黒後、石川
(MB) 岩坂、荒木、奥村、芥川 (S) 宮下、佐藤美弥 (L) 小幡、山岸


トピックス

・立ち上げ当初からコーチを務めていたトルコ人コーチフェルハト・アクバシュ退任。
・指導内容としては、古賀らのサイドの選手に(簡単に技に逃げずに)スパイクを強く叩くことを奨励していたことが知られている。
・代わって年末に、元東九州龍谷高校女子バレー部監督の相原昇氏がコーチに就任。
・相原昇氏の東九州龍谷高校は、中田久美監督のバレーにも通じる所のある"速い"バレーの実践で知られ(参考)、岩坂、長岡、鍋谷、芥川といった中田ジャパンの選出選手も多く輩出している。
・シーズン通して1本目のレシーブ及びトスの速さ縛りを緩めたり締め直したり、"攻撃参加枚数"と"ワンフレームバレー"との間で揺れ動き続けた。
・最終メンバー石川真佑がデビュー。



2020

トピックス

・キャプテンを岩坂→荒木に交代。
・サーブレシーブの要、新鍋理沙選手引退。
・セッター候補の一人、冨永(現岩崎)こよみ選手、出産の為に選手休業。
・コロナによる空白期間の欧州視察で、中田スタイル/ワンフレームバレーへの回帰を決断?(参考)



2021 [コメント&記事]

戦績 : 東京チャレンジ2021(対中国●0-3)ネーションズリーグ4位東京五輪予選ラウンドA組5位(敗退)

メンバー

[参考] 東京チャレンジ2021

(OH) 黒後、古賀、長岡、石井優、石川、林
(MB) 島村、荒木、山田二千華 (S) 田代、籾井 (L) 小幡


ネーションズリーグ

(OH) 黒後、古賀、長岡、石井優、石川、鍋谷、
(MB) 島村、荒木、芥川、奥村、山田二千華 (S) 田代籾井 (L) 小幡、井上琴


東京五輪

(OH) 黒後、古賀、石川、石井優、林
(MB) 島村、奥村、荒木、山田二千華 (S) 田代、籾井 (L) 小幡


トピックス

・年頭の決意表明では、原点回帰発言が目立つ。
・セッター候補の一人、佐藤美弥選手引退。
・籾井、林、山田選手代表デビュー。
・そのデビュー試合(東京チャレンジ2021)ではミドルで山田・荒木をメインに使い、奥村・島村の"ブロード"得意組はほとんど使わず。
・つまりそういう意味では"原点"ですらない。(本番でもブロードの不発が個人的には気になった)
・ネーションズリーグでは好成績。しかしスタメン(黒後・古賀・島村・荒木・石川・籾井&小幡)固定を危惧する声も。
・本番では他国が軒並みミドル3人登録なのに対して4人登録。しかしその内の2人(奥村・山田)をほとんど使わなかったことに疑問の声多数。
・古賀の負傷離脱のアクシデントにより、(ミドル4人登録のあおりでの)サイドの枚数不足や固定スタメンの脆さが結果的に問われる形に。


『まとめ』


テーマ:バレーボール
ジャンル:スポーツ
女子バレー中田ジャパン コメント&記事集(2019-2021)
2021年08月11日 (水) | 編集 |
(2016-2018)編より。


2019

ネーションズリーグ2019後 [9位]

全日本で石井優希が攻守の要に成長。中田監督も「昨季とは全然違う」(Web Sportiva/中西美雁 2019.6.23)

もともと石井はパワフルなバックアタックが打てる選手ではあったが、サーブレシーブにまだ不安が残っていた昨季は、守備からバックアタックに移る難しさを感じていたという。
しかし今季は、サーブ、スパイクレシーブのあとでも、強烈なバックアタックを打つ場面が多くなった。
「以前に比べて苦手意識はなくなっています。今年はセッターも積極的にバックアタックを使ってくれていますし、得点も取れている。攻撃枚数を増やすために有効ですから、後衛では積極的にバックアタックにいくようにしています」


「メダルを取る」ブレない目標に向けて中田久美監督が語る、東京五輪までの1年(スポナビ/田中夕子 2019.7.25)

――世界との差は埋められないものではない、とおっしゃっていました。ここからの1年間でどうその差を埋めていこうと考えていますか?

常に「粘る」と言っていますが、「粘る=ラリーを続ける」ということではないんです。どれだけ拾っても、結局相手のエースに決められてしまっては「これだけ拾っても簡単に決められた」とダメージも残るし、疲労も残ります。私が考える「粘って」というのは、例えばブレイクの場面ならば、まず相手にいいサーブを打って、そこからの相手の攻撃に対して、簡単に落とすのではなく球際を粘る。そして、そこから1本で点数を取りに行くということ。
ラリーを続けさせる粘りではなく、あと一歩、粘って必死で上げることで攻撃につながりやすいパスになるのなら、そこを粘る。ラリーで流れをつくるのではなく、レセプションアタックを確実に決める。そういう面で言えば、Aパスが入った状況でコンビミスが出るのはもったいないし、それはセッターの技術不足であり、アタッカーのスキル不足でもある。ここは1年で確実に詰められるものだと思っています。

・・・当初から言っていた「絶対的な技術」や「精度」の、言い換えと言っていいかなと。末尾部分を見ても分かると思いますが。


ワールドカップ2019後 [5位]

女子バレーで課題が露わ。佐藤美弥を苦しめた「間」と魔のS4ローテ(Web Sportiva/柄谷雅紀 2019.10.1)

多くの試合で見られたのは、ラリー中、セッターの佐藤美弥(日立リヴァーレ)に供給される1本目のパスに高さがなく、コート内がばたつくことだ。佐藤がコート上を駆け回り、何とかボールに追いついてトスを上げてはいたものの、ミドルブロッカーの攻撃参加は少なく、ライト側に振る余裕もない。「レフト偏重」になった攻撃は、ブロックとレシーブの堅固な守備を持つ相手には通用しなかった。

パスを高く上げすぎずにセッターにリズムよく返球し、そこから攻撃を繰り出す。中田久美監督が久光製薬を率いていたときから貫いてきたコンセプトだ。カメラのひとつのフレームの範囲内にボールが収まるという意味から、「ワンフレームバレー」とも呼ばれる。

・・・古くからのファンには常識だからかもしれませんが、この言葉自体はここらへんの時期に、僕は初めて耳にしました。

ラリー中の1本目に"間"を作り、できるだけ多くのアタッカーに攻撃参加させる。徐々に形になり始めたのが大阪での最後の3連戦だった。最初のセルビア戦後、中田監督はこう言った。
ラリーが続いたら、少し"間"を持たせるためにパスを高めに返しなさいという話をした。そのことによって、ミドルブロッカーも十分に"間"を取れるようになったのかなと思います」

・・・ラリー中限定ではありますが(つまりレセプション時ではないですが)パスを「高」くしろと中田監督自身が言っていたという言質。

チーム最多となる158点のスパイク得点を挙げた石井は、その成果をこう言った。
「偏りがなく、バックアタックを含めて、みんなが同じ打数になれば相手も惑わされる。私自身も仕掛けていける。監督のワンフレームバレーも取り入れつつ、"間"を作るところは作っていくことができたのが大阪ラウンドだった」

・・・"取り入れつつ"とは?という感じですが。具体的な位置づけは?という。石井も大変。(笑)

それでも、わずかに改善の可能性は見えた。オランダとの最終戦で、トスこそ上がらなかったが、新鍋がバックライトからバックアタックの助走に入り、トスを呼んだ場面があった。新鍋は言う。
「ライト側にブロッカーがいない状況があったので、呼んでいた。フロントのレフトや、後衛のアウトサイドヒッターがバタバタしている状況があったので準備はしていました」
これまではブロックフォローを優先していたが、今大会ではセッターが前衛時に連続失点をしてしまうことが多いため、意識が変化したという。

・・・こちらは新鍋を使う限り常に存在する、新鍋後衛時問題。

バレーW杯で苦戦した中田ジャパン。浮き彫りになった「間」の重要性。(Number Web/米虫紀子 2019.10.3)

セッターの佐藤美弥(日立リヴァーレ)は、大会開幕の前日、石川へのトスについてこう語っていた。
「打つテクニックがあって、幅が広いので、そこを殺さないように、彼女の打点を生かすトスを上げたい。スピードで強みを殺してしまっては、意味がないと思うので」
これが佐藤の本心だろう。石川に対しては、あくまで持ち味を引き出す高いトスを上げて生かした。

・・・"新人"への猶予措置期間中だったのもあって、割と強めの言い方。

石井は今年5月から6月にかけて行われたネーションズリーグでは、高さを生かすトスで日本の最多得点を挙げたが、大会後トスを速くした。合宿中はうまくはまっているように感じたが、海外のチームを相手にすると勝手が違った。
「やはり外国人選手が相手だと、ブロックが前に出てくるので、囲まれてしまう」

・・・上の柄谷記事と総合すると、ネーションズリーグで緩めたものを中間期間に締め直して、ワールドカップでまた緩めたという流れでしょうか。

眞鍋政義前監督の頃から、もっと言えば男子の代表も含めて、日本が“速い攻撃”を目指しては、大会中に行き詰まり、トスを浮かせてスパイカーの打ちやすいトスに調整する、という光景を何度も目にしてきた。

久光製薬の中心選手でもある石井は、ワンフレームバレーについて、大会中こう語っていた。
「日本では通用していたけど、(1本目が速い分)攻撃枚数が減ったりするので、(世界に対しては)まったく同じというのは通用しないと思います。でも監督は、ワンフレームバレーはぶれずにやっていきたいということなので、久美さんのバレーなので、そこはしっかりやっていかないと。その中でも自分たちでいいように変えられるところは変えて、うまくはめていかなきゃいけないかなと思います」

・・・上の"取り入れ"問題の答え?ほぼ顔を立ててるだけ状態という感じも。

第9戦のセルビア戦では、1、2セットを奪われた後、監督からの指示により、1本目の返球を高くして間(ま)を作ったことで、日本のバレーがガラリと変わった。

・・・再びの証言。

ワンフレームの枠を飛び出したことで、個々が持ち味を発揮し始めた。中田監督はこう分析する。
ワンフレームのバレーができるから、対応ができると思うんです。セッターにきっちりと(ワンフレームで)コントロールして持っていくという意識があるから、『この場面は高くしよう』となったら、意識的に高くできる。

(ワンフレームバレーは)意識づけの1つなので、別にその型にピッタリ当てはめることがベストだとは思わない。やっぱり状況判断。自チームのオフェンスの態勢などによって、速く攻めるべきところは、コントロールしてセッターにきっちり速く持っていけばいいし、場面に応じていろんなコントロールができるのはすごくいいと思います」

・・・物は言いよう?

W杯で見えた女子バレーの課題とは?海外勢の練習に大山加奈が注目。(Number Web/大山加奈 2019.10.9)

速さを追求して、うまくいかなくて、ゆっくりと、間を使ったバレーに戻す。同じことが何度も繰り返されているのが、本当にもったいない、と感じさせられた大会でした。

ブラジルのサーブ、組織力を前に中国はトスが低く、速くなり、セッターが1本目をレシーブした後の2本目、セッター以外の選手が上げるトスの精度が落ちてしまいました。その結果、スパイカーが自分の能力を活かせない状況になってしまったため、あの中国でさえ、苦しい展開を強いられた。

加えて、ブラジルはミドルブロッカーのマーラ・レオン選手を起用しました。マーラ選手はクイックに入る時、大きく、ゆっくりしたリズムなので、サイドやバックアタックの選手と攻撃のスピードが揃い、中国のブロックに対してブラジルの攻撃が数的優位な状況をつくることができた。その結果、あの鉄壁で穴がない中国のブロックですらブラジルの複数での一斉攻撃に太刀打ちできず、今大会初めて2セットを失いました。

・・・他国どうしの例を使っての、非中田的バレーの有効性の主張。


2020

新鍋理沙が引退で大ピンチ。中田ジャパンはでっかい穴をどう埋めるか(Web Sportiva/中西美雁 2020.6.24)

新鍋は、中田ジャパンが掲げるテーマ「ワンフレームバレー(サーブレシーブを高く上げすぎずにセッターに返し、トスも速くして相手ブロックが完成する前に攻撃を仕掛けること)」に欠かせない選手だった。2017年のアジア選手権では優勝の原動力になり、MVPを獲得。攻撃力には陰りが見え始めていたものの、東京五輪でも主力として活躍すると思われていただけに、突然の引退発表に驚いたファンも多いだろう。

五輪開催まで約1年。新鍋が抜けた大きすぎる穴を、中田監督はどう埋めていくのか。
(中略)
守備力を重視してオールラウンダーの鍋谷友理枝を起用することも考えられるが、一方でライトに攻撃専門の選手を入れ、黒後と石井優希(久光製薬スプリングス)、もしくは古賀紗理那(NECレッドロケッツ)でレフト対角を組む"超攻撃的"なバレーの質を高めていく必要もあるだろう。その場合はレフトの2選手がサーブレシーブを担うことになるため、新鍋がいた時のような「速いバレー」をある程度は諦めざるを得ない気もするが......。




2021
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テーマ:バレーボール
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女子バレー中田ジャパン コメント&記事集(2016-2018)
2021年08月11日 (水) | 編集 |
最初に言っておくと、就任前も就任後も、中田久美監督個人には期待も好感も特に抱いたことはないんですが、2015年あたりからぽつぽつと女子バレーを見出して、初めてリアルタイムで結成の最初から見る全日本の4(5)年間だったので、やはりそれなりの集中した関心を持って見たチームでした。
というわけで色々確認と勉強を兼ねて、主にチーム戦術的なキー概念について、それぞれの時期にどのような言語化がなされていたのか、見つけられた範囲で書き留めておきます。
重複も多いですがその都度文脈やニュアンスが微妙に違うので、含めて記録。


2016

中垣内祐一、中田久美が抱負を語る 全日本バレー男女代表監督 就任会見(スポナビ 2016.10.26)

中田 ひとつ言えることは高い、外国のバレーと同じことをやっていても勝てないということです。(中略)
私は結局バレーボールとはリズムだと。日本のリズム、日本のテンポで、どうやって点数を取るのかという点の取り方の部分。ここを確実なもの、質の高いものにすることによって、もう少し日本人の武器である器用さや忍耐力、つなぎや粘りというところにつながって表現できるのではないかと思いました。



2017

中田監督「伝説に残るようなチーム作る」 2017年度バレー全日本女子始動会見(スポナビ 2017.5.26)

中田監督 期待している選手は、もちろん木村(沙織)のような大黒柱がいなくなった今、第2の中心選手ということを考えると、これからは古賀、黒後。若い選手に1人でも多く、アンダーカテゴリから上がってきてほしいと思います。

中田監督 五輪であったり世界大会の数値を分析して、「レセプションアタック」。サーブレシーブからの攻撃の決定率が低かったのがポイントなのかなと。なので、まずはそこを徹底的に強化して、最低限でも自分たちがどうやって点を取るのかという「形」を作りたいと思います。非常に時間がかかる部分ではあるのですが、丁寧に時間をかけてやりたと思っています。

――最初に言われた5つの強化ポイント(「スピード」「正確性」「連係」「桁外れの集中力」「世界に負けない強さ」)を具体的に説明してほしい。

中田監督 高さとパワーでくる外国チームに対して、高さとパワーで対抗するのは限界があるというところで、身長が低い私たちが世界で戦うためには「スピード」「絶対的な技術」が最低条件だと思います。そのためには、「連係・コミュニケーション」が非常に大事だと思いますし、「集中力」というのは海外のチームを相手に試合をすると体力を消耗することが多いので、集中力が切れるとパフォーマンスが落ちてしまう。スタミナ切れですね。それをなくすということでこの5つを挙げました。



WGP2017前

中田久美と宮下遥、天才セッターの師弟が思い描く全日本女子の未来図 (web Sportiva/中西美雁 2017.6.26)

宮下 サーブレシーブからでも、フリーボールからでも、がんばってトランジション(スパイクレシーブ)からでも、同じようにいいテンポで攻撃するというのが、今みんなが挑戦していることです。


高さ以前に、日本は技術が足りない。中田久美が開始したバレー観の革命。 (Number Web/田中夕子 2017.7.4)

近年は女子バレーも男子バレーと同様に、サイドアウト(相手サーブ時に点を取ってサーブ権を取り戻すこと)よりもサーブからのブレイク(サーブ側が得点すること)をどう取るかをテーマとして掲げるチームが少なくない中、あえてレセプションからの攻撃力向上を課題にした。

高めるべきはAパスから攻撃に至るまでの準備のスピードと、切り返しのスピードの速さ。できるだけ速く、高さを出さずにパスを返し、セッターは素早くボールの下に入り、ジャンプトスで高い位置からセットし、スパイカーは相手のブロックが完成する前に攻撃準備をして打つ。

・・・トスを低くしろとは言っていないのは割と盲点。(全体の)"速く"が結果として"低く"を呼んでいるだけで。理論的には。

サーブ力も年々高まる中で、セッターにピタリとパスを返すのは至難の業でもある。攻撃枚数を増やすために1本目のパスは高く上げ、間を使って攻撃に入るのを主流とするチームが世界でも増える中、あえてスピードを武器とする。少しでも精度が落ちればリスクが伴うことは承知の上だ。

中田 確実に取らなければならない1点があるし、その取り方をどうするか。(中略)パスが返って、ブロックが1枚になって、圧倒的に攻撃側が有利なはずなのに決められない。どうして?と理由を紐解いて考えれば、スパイカーも、セッターも技術が足りないということ。

・・・2017年冒頭の「最低限でも自分たちがどうやって点を取るのかという「形」」に対応?

女子バレー 中田久美監督「誰がエースや軸になってくれるか期待」(The Page 2017.7.8)

──「久美さんのやりたいこと」「スピーディーなバレー」「速いバレー」についてもう一度教えていただけますか。

「間」ですね。(中略)パスの高さ(地上からセッターに渡るまでの高さ)でテンポや間を作ってもらいたい。テンポや間がいいからスピーディーに見える。

──キーマンは?

やっぱり1本目を触る選手でだいたい7割が決まりますよね。


全日本女子 中田久美監督に聞く(後編)「初年度は課題をひとつずつクリアするところから」 (バレーボールマガジン 2017.7.12)

中田:Aパスが入らなかった時の高いブロックに対しての点数の取り方は大事ですけど、それは既に世界の上位に入ってるんです。それなのに、現在の日本はAパスが入った時の数字がよくない。本来の武器であったものがなぜそうなってしまったのかと素朴な疑問を抱きました。

・・・B,Cパスアタックを避ける為のAパス重視ではなく、Aパス時が弱点だからAパスアタックの強化だというのがここでの論理。


WGP2017

中田新体制の全日本女子 、「世界」を認識 “スピードバレー”の肝はセッター(スポナビ/田中夕子 2018.7.18)

前週のオランダ大会では攻撃力と高さを重視し、オポジットに堀川真理を起用したが、仙台大会では新鍋理沙を入れ、ブラジル戦ではセッターの隣に入るレフトに内瀬戸を入れるなど、ガラリと異なる布陣で臨んだ。(中略)
新鍋が入ることによってレセプション(サーブレシーブ)が安定したばかりでなく、攻撃面にも変化が生まれる。特に効果的だったのが、オランダ大会ではレセプションも担い、攻撃でも多くのスパイクを放った古賀紗理那のバックアタックだった。

オランダ大会では両レフトの選手とリベロが3人でレセプションに入るのを常としていたが、1本目のパスから正確性とスピードが求められるため、前衛時の攻撃はあっても、バックアタックの打数は少なく、攻撃枚数が減り、相手にブロックポイントを献上する場面も目立った。
その課題を受け、仙台大会では後衛レフトの選手がレセプションから外れ、前衛レフトの選手と新鍋、レセプションを得意とするリベロの小幡真子が入り、レフトの古賀や石井優希が後衛時にはサイドアウトからでもバックアタックを打つ準備に入るようにした。古賀が「攻撃枚数を増やして相手のブロックを分散させようと思って積極的に入った」という攻撃は、特にタイ戦では高い効果を発揮。

ワールドグランプリの仙台大会では多くの課題も残った。
ミドルブロッカーの奥村麻依や島村春世の機動力を生かした攻撃や、新鍋や内瀬戸の個人技でラリーを制する場面もあった反面、スピードを意識するあまり十分に準備ができず、コンビうんぬんの前に(トスの)高さが出ず、力が乗ったスパイクを打てないケースも目立った。


日本には、“省エネ”バレーが必要だ。中田監督が新鍋理沙に託した役割。 (Number Web/米虫紀子 2017.7.21)

「ラリーが続いた時に、攻撃がレフトだけになってしまうのがきつい。ラリーの中でもミドルブロッカーや、あるいはバックアタックで切れないといけないし、そのためには1本目のコントロールがもっと必要。サイドアウト(相手にサーブ権がある時の攻撃)にしても、レセプション(サーブレシーブ)がちゃんと返っても決定率が4割を超えていないので、そこは継続して強化していきたいと思います」

・・・攻撃の"バリエーション"という問題意識は同じだが、だから1本目は簡単に高く上げて攻撃参加人数を増やすという主流の考え方に対して、逆に1本目の精度が必要というのが中田流。

「日本人が外国人選手とやる時って、ものすごく体力を消耗する。日本人同士でやる国内の試合とはまったく違う。それは(久光製薬の監督として)世界クラブ選手権を戦った時にもすごく感じました」
ネットから簡単に手が出る海外の大型選手と違い、小柄な日本人選手は、高さのある海外チームと対戦する時にはスパイクもブロックも常にフルジャンプしなければならないし、国内なら決まるスパイクも、高いブロックに阻まれる。だからフィジカル強化はもちろん、戦い方にも工夫がいると考える。
だから私はサイドアウトにこだわるわけです。とにかく1本で切ろうと。そうすれば体力を消耗しにくいから。」

「ただ、速いバレーを求めるとどうしても(スパイカーが)ヒットする場所が低くなるけど、そうじゃない。トスが何秒という速さじゃなくて、セッターが高い場所で離して、高いところでスパイカーに打たせる。これが一番速いバレー。それを間違えちゃダメ。そのためにも、1本目のところでちゃんと間(ま)を作ること。そうすれば周りの準備は絶対にできるので、速くもなんとも感じないはずです」

"トスの高さ"問題。再確認。

・・・最終成績:予選グループ6位


アジア選手権 [優勝]

グラチャン2017

全日本女子グラチャン韓国戦 会見コメント(中田監督)(バレーボールマガジン 2017.9.6)

――バックアタックの打数について。

今日の試合に関してはバックアタックを使っても決まってなかったと思います。確実にサイドで幅を使って攻撃していった方が有効だったと感じています。バックアタックを無理してまで使うケースが今日の試合に限っていえばなかったと思います。

・・・バックアタックの"立体"性よりもサイドの幅の"確実性"を好むという傾向は、この後も何度か見られます。

全日本女子 ロシア戦会見コメント(中田久美監督)(バレーボールマガジン 2017.9.7)

――攻撃のバリエーションについて。真ん中からの攻撃が少なく、バックアタックも見られませんでしたが、韓国戦同様、使っても決まらないケースであったのか、それともサイド中心にしっかり攻めていこうという戦略的な問題だったのでしょうか?

今日は、バックアタックは考えていませんでした。その代わり、サーブとレシーブ、サイドに速いトスの打てる選手を選び、ロシアのブロックは高いですが、横の動きに対して遅れてくる傾向があったので、バックアタックでいくよりもサイドできっちり攻めていくということでこの試合は臨みました。

攻めるサーブを打つために、レセプションアタック、サイドアウトを1本で切るという確実な武器があれば、サーブは攻められると思います。もちろん、ミスをなくすということもこれからの強化のひとつだと思いますが、どんどん攻めていく、なおかつミスをしても1本できる、連続失点はさせないという方向でできればというふうに思います。

・・・サーブ時に攻める為にもレセプションアタック。

グラチャンブラジル戦会見 中田監督(バレーボールマガジン 2017.9.9)

――今日は真ん中もパイプも積極的に使っていましたが、どういう理由ですか。

前回皆さんに、なぜバックアタックを使わなかったんだと言われたので使いました。


グラチャン後 [5位]

日本女子、グラチャンで見えた世界との差 課題は山積みも、大きな財産を得る(スポナビ/田中夕子 2018.9.11)

特に攻撃枚数やパターンの少なさは、2戦目のロシア戦でも顕著に表れ、チーム発足時に「4枚攻撃が基本」と打ち出していたものの、実際には攻撃枚数は多くて3枚。レセプション(サーブレシーブ)が乱れ、ここに上げるしかないという状況を除いても、攻撃枚数が豊富だとは言い難い状況だった。

・・・「4枚攻撃基本」発言の典拠は不明。

その理由を内瀬戸はこう言う。
「まずはAパスを返してミドルを使えるようにしなければというのが強くて、自分自身もレシーブに集中していました。(バックアタックが0本だったロシア戦は)事前のミーティングでフロントから攻めるのが有効だと言われていたのもあって、バックアタックはあまり考えていなかったんですけれど、バックミドルもバックライトももっと呼ばなきゃいけなかったと思うし、試合の中で戦術を変えられたら良かったのかな、と思います」

実際に打つ本数が少なくても、助走に入れば相手も警戒するが、助走に入ることすらなければ、当然警戒する必要はない。そうなれば、ブロックは前衛の攻撃に偏り、被ブロックの本数が増えるばかりで、ブレークのチャンスを失う。

ロシア、米国、ブラジル戦でスタメン出場した石井が言った。
「ただ速いバレーだけじゃなくて、全員が攻撃できるぐらいの軌道が安定したパスを出せればもっといいのかな、と。(中略)パスで間をつくって、セッターが一番取りやすい高さに返す。いろんな幅から打つために、もっと攻撃枚数を増やすために、そういう質がこれからは求められると思います」

・・・「攻撃枚数」も、あくまで「パス」(1本目)の精度で実現。


2018
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女子バレー 2020-21VCup NECレッドロケッツまとめ
2021年03月30日 (火) | 編集 |
V Cup
今年から始まった代表選出選手以外のVリーガーによる、ポストシーズンのカップ戦。
こんなDAZNでもやらない試合について書かれてもこのブログの大多数の読者には何のことやらという話でしょうが(笑)、僕の贔屓チームNECレッドロケッツがあれよあれよと決勝にまで進んだこともあり(結果は準優勝)、書きたいことが沢山あり過ぎてツイッターでは処理出来なさそうだったので、ここを使わせてもらいます。

とりあえずは準優勝おめでとうございます、NECレッドロケッツ。
後で書くように最終結果には微妙に不満足ですが、日本代表等でシーズンのレギュラーを5人(ないし4人)も欠いた、他のチームにも増して露骨な"Bチーム"状態で、決勝まで進んだのは望外の喜びで、"おめでとう"と言ってあげていい戦いだったと思います。
以下その内容について。


金子監督の選手起用の特徴

今季で就任三年目の金子隆行監督
レギュラーシーズン3位に導いたそのチーム作り・采配について、終了当時僕は

1.(意図してかは分からないが)中心選手である古賀紗理那のやり易いような構成を作ってその復活を助けた。

2.ライトの曽我啓菜、セッターの澤田由佳をかなり徹底してレギュラーに固定し、必ずしもそれぞれに力が劣るとは思われない、前年までの主力選手山内美咲と塚田しおりの二人を結果的に"干した"に近い限定的な出場機会にとどめた。


という特徴を挙げました。"2"自体が"1"の中身でもあるので一つのことしか言ってないとも言えるかもしれませんが(笑)それはともかく、おまけ的に取り上げた「内定選手川上雛菜のピンチサーブ重用の謎」も併せると、割りと"決め打ち"的な選手起用をする監督という特徴も、見えて来そうな気はした訳ですが。
結論的に言うとその印象は今回のVCupの采配でますます強くなり、そしてそれこそが実は今回の"Bチーム"仕様レッドロケッツの躍進にも繋がったと、そう僕は考えています。

まず今大会のチーム構成ですが、OH古賀・MB島村・MB山田の3選手が代表に招集されOHネリマン選手が帰国と主力4人が抜けた状態。しかし金子監督はそこから更にレギュラーセッターの澤田選手はおろか第二セッターの塚田選手すら使わず、高卒新人の安田美南選手を主戦セッターとして大会に臨みました。これだけでも思い切った"若手起用"ですが、更に更に"若手"という意味なら十分過ぎる若手である高卒二年目のシーズンレギュラーOHの曽我啓菜選手まで途中までほとんど使わないという、セルフ罰ゲームか?というくらいの徹底的なBチーム仕様を形成。
・・・そういえばネリマン故障時の代替スタメン廣瀬七海選手も、ほとんと使わなかったですね。

元々勝たなくてはならない大会でもないですしそれ自体は大胆ではあっても監督の自由、いいとか悪いとか言う類のことではないですが(またもや出場機会を得られなかった塚田選手の気持ちだけは少し心配でしたが)、驚くべきはその罰ゲーム(笑)メンバーチームが軒並み少なくともNECよりは遥かにAチーム構成だったV1他チームを次々撃破して、すんでのところで優勝というところまで迫ったこと。
NEC"B"メンバーも親心を加味(笑)すればそれぞれにいいところはありましたが、基本はやはりただの"B"チームメンバーであって、かつての久光のように"控えまで代表クラス"みたいなそんな選手層ではない。だからそんなNEC"B"が勝ち進めた理由は・・・驚くなかれ「チーム」としてのまとまりの良さ/総合力ではないかと、自分でも驚くような結論。レギュラーほとんど総とっかえのカップ戦用"即席"チームが。・・・まとまりの良さ、プラスそこからの成長力、かな?

実際ウチが一番いい"チーム"に見えましたね。優勝した上尾のほぼほぼ"正規"チームの当然の完成度の高さは、また別にして。
そしてそれを可能にしたのが金子監督のチームマネジメント、上で言った"決め打ち"の迷いの無さ、目の前の状況にいちいち細かくは反応せず、事前に立てた「計画」通りに粛々と選手を使っていく、そういう特徴だというのが僕の答えです。
「計画」の中身は大胆(↑)でも、「計画」自体は慣れっこなので日常なので不動なので、実績の無いメンバーたちも安心して引け目無くその中に居場所を見つけることが出来、成長の時間を確保することが出来、計画から外されたメンバーもある種"諦め"て大人しく次の"計画"を待つ、待てる、待つしかない(笑)。ドライなような包容力があるような、独特のマネジメント。
なるほどそういうことかと、僕なりに色々と合点のいった、大会でした。


決勝上尾戦の惜敗

そうした金子式(?)マネジメントの下一試合ごとに力をつけた、チームになって行ったNECの即席Bメンバーたちは、総当たりの予選ラウンドで一度今大会"ガチ"度ナンバー1の上尾メディックスに敗れるものの、無事進んだファイナルラウンドでは選手層の厚さには定評のある宿敵久光スプリングスまで0-2からの大逆転で破って、決勝で再び上尾と相まみえます。
そこでも第一セットは接戦からの勿体ないロスト、しかし第二セットはきっちり奪い返し、第三セットも好ムードの中快調にリードします。これは勝ったろ、と、この時点で僕は思いました。単に点数状況がいいだけでなく、相手のモチベーションが低くて相対的に強いことはこの大会でもありましたが、初めて本当にこのチームを、"チーム"として「強い」と感じた時間帯でした。開幕当時の"品評会"状態からここまで、よく"育った"なあと、泣きはしませんが(笑)感慨深くすらなっていました。

それを壊してしまったのが・・・。僕の意見ですが。柳田選手かなと。柳田選手のモチベーションの低いプレーと、その柳田選手を"計画"通りチームにとどめ続けることになった、金子監督の「計画」。計画マネジメント。結果的にね。
そもそもこの大会で柳田選手がレギュラーではないもののそれなりに使われたこと自体、僕は意外だったんですよね。高卒から今年で25歳のベテランに近い中堅どころ、かつ古賀選手不調時には実質的なエースに近い役割さえ果たしたこともあるチーム内実績のある選手で、そういう選手が故障でもないようなのにリーグ戦中盤以降はベンチからも外れ続けていたわけですから、要は構想外なんだろう今オフにはさようならなんだろうと、ほとんど既定事実のように思っていたので。

そういう選手に若手や歴の浅い選手同様に改めてこの大会でチャンスが与えられた、それ自体は悪いことではないわけでしょうが、肝心のプレーは案の定というか、フレッシュなモチベーションも主力の座奪回の気迫も感じられず、さりとてそもそもそういう役割ではない攻撃専門選手ですがキャリアの貫禄でチームを支えるわけでもなく。思うに本人も、使われていることが意外だったのではないかと位置づけが分からないままだったのではないかと、想像しますが。
元々168cmとトップリーグのアタッカーとしては極端に小柄で、さりとて技巧派ではなく気迫と瞬発力である意味無理やり攻撃力を発揮していた選手なので、そこらへんの反応が悪いとほんとただの穴になってしまうんですよね。サーブすら、かつての"ビッグサーバー"の面影は薄くなっていましたし。

更に問題に感じたのは今回の"VCup"チームとの相性で、何度も言いますが基本"B"チーム、完成度の低い若手とレギュラーには足りない選手の集合体で、勝ち進みながらも一つ一つのプレーは結構毎度危なっかしい。ただそういうチームであることを自覚してまた「計画」が許容していて、その前提でチャレンジし続ける、そのモチベーションのフレッシュさと失敗を気にしない回復力が、このチームの生命線だったわけです。そこにモチベーションの低いor曖昧な選手、柳田選手が混ざると、どうにも雰囲気が変になるんですよね。今まで気にしなかった"失敗"が、普通に"失敗"としてのしかかって来る。ちゃんと気落ちする。がっかりする。他の選手はともかく、柳田選手のそれにはそういう印象・嫌な感じを僕は受けました。ムード悪くなるからさっさと外してくれよと。
それでもライトの打ち屋として限定的にチームに関わっているならまだ良かった(普段はその役割が多い)んですが、この試合この第三セットではチームの要であるレギュラーライトの山内選手と同時に出ている時間帯が長かったので、必然役割が広がってチームへの影響も大きかった。そこからの崩れは速かったですね。あっという間に追いつき追い越され、一度もムードが回復しないままセットを奪われ、そのままなすすべなく第四セットも取られて負け。

結果実力通りと言えば実力通りなのかも知れないですけど、それでもこの試合に関しては十分に勝てたという感触が強いので、悔しかったです。この素敵な"Bチーム"に、優勝という結果をあげたかった。
その"敗因"が柳田選手だというのは勿論あくまで僕の意見ですけど、そもそもなぜ今回の徹底育成チームの"計画"に柳田選手が加えられたのかという違和感含めて、やはり疑問はありますね。納得しにくい分、残念感が増すというか。逆に"若手に近い中堅"の第二セッター塚田選手には、ほぼ出場機会が与えられなかったことと比べると尚更。それこそ構想外を疑いたくなるくらいに。(実際には違うと思いますけど)

まあ言いたいのはチームの躍進を支えた金子監督の「計画」マネジメントが、決勝の柳田選手の起用に関してはとなり、優勝を逃す一因になってしまったという、そういう"皮肉"です。
これに限らず、金子式マネジメントは基本中長期に割と極端に焦点が当たっているので、目の前の一点を一勝を、ピンポイントに取りに行く感じではないんですよね。向いてないというか。"弱化"にしか見えない(笑)ピンチサーバー起用や、せっかくいいプレーをしたぱかりの伸び盛りのセッター安田選手を力の分かっている澤田選手に"予定"通り代えてしまったり、1プレー単位だと首を傾げたくなるような采配は結構ありますよね。(笑)
トータルでは勿論、メリットの方が大きいと、僕も思ってますけど。


選手たち

ここからは今大会で新たに出場機会を多く与えられた、愛すべきBチーム選手たちを一人一人。


15 吉田あゆみ選手 OH

今大会僕的に一番の収穫で、すっかりファンになってしまいました。

向かって左側。
"クマちゃん"呼ばわりした山田二千華選手よりも更に"クマ"感ぬいぐるみ感(笑)の強いムクムクした体型ですが、そこからそのイメージに違わぬパワフルなスパイクを繰り出す高卒二年目の選手。
僕がいいなと思うのはその安定感素直さで、まだ"苦手"なトスというものはあるようですし定期的に笑っちゃうような"素直"さ(笑)で敵ブロックに捕まるプレーなどもありますが、決められる形出来るプレーは確実に決めて来ますし失敗の素直さもむしろ"大器"の証明という感じで僕は好感しています。
・・・"フェイント"すら素直ですからね(笑)。可愛いなあ、いいコだなあと思いながらほくほく見ていました。(笑)
こういうと何か大雑把で粗いようにも聞こえるかもしれませんが、いくつかの穴以外はむしろ"堅実"な選手で、例えば比較して悪いですが同じ"パワー"型の(かつての?)廣瀬選手のように、行き先はボールに聞いてくれみたいなプレーは一切しません。スパイクも、(ジャンプ)サーブも。レシーブやブロックもこつこつ真面目にやりますし、このまま磨いて穴を塞いで行けば、それこそ代表にも自信を持って送り出せそうな信頼感のあるタイプの選手だと思います。
ほんといい選手だと思いますね。アジリティも意外と高いですし。身長がもっとあると尚いいんですけどね。(登録176cm)


11 古谷ちなみ選手 OH

この選手はねえ。どう言ったらいいんでしょうね。
NECでの出場歴は浅いですが大卒で間もなく25歳と若くはないですし、それゆえ伸びしろは少ないだろう中スパイクのパワークイックネス共に不足気味なのは明らかに選手としての天井/限界を示しているようには見えますが、一方でそのパワーの不足をいかにも練習した感じのブロックアウトの多用で少なくともこの大会での得点力の問題としてはカバーし切り、またフロントでコンパクトに打つのは苦手な分、バックでは大きく綺麗なフォームで安定感のあるバックアタックを繰り出し(サーブも同様)、更にこれは少し驚いたんですがライト打ちも意外と上手い。要は「フロント、レフトでの強スパイク」という、アウトサイドヒッターの"核"となるプレー「以外」の部分を目一杯頑張ることによって総合点を"間に合わせ"ているという、変則的なバランスの選手。
とはいえ"間に合わせ"られるのはあるレベルまででしょうし、言う程技巧派でもないので特にブロックアウトを交わされ始めたらほぼ打つ手が無くなる感じはしますけど、とにかく努力してるなあというのは伝わって来る選手。全てのプレーを真面目にやるので、今大会そうであったようにそれこそ"あるレベル"でのチームでなら十分に頼りになる"中心"選手でしょうし。あえて言えばエースタイプ。あるレベルまでならね。
まあ端的に筋力が足りないのかなという感じはしますけどね。パワーもクイックネスも両方無いのは。その分フォームは無理なく綺麗ですけど。パワーが無い割に二段打ちが安定してるのも、そこらへんからでしょうか。(むしろ古賀選手あたりより安定している気が(笑))
なんか惜しい選手ですよね。ほんとエース"タイプ"ではあるかと。もう少しだけ迫力が出てくれば、古賀選手のいいバックアップにはなりそうですけど。頭も良さそうですしね。
期待し過ぎないように、期待してます。(笑)


後ろ側。手前は"スター"古賀。
比べるとどうもなんか、"幸薄い"感じに見えるのは気のせいか。(笑)
頑張ってるんだけとねえという。(笑)


14 安田美南選手 セッター

金子監督的には恐らく大会一の推しポイントだったろう、179cmの大型セッター。
あんまり日本では話題になるだけで成功したのを見た記憶の少ないサイズで、塚田はどうすんだよと思いながら割りと疑惑の視線で(笑)見ていたんですが、悪くはない気がしました。
特徴は・・・気の強さかな、とか思いましたが。この身長なのでツーアタックを狙うのはまあ当然なんですけど、それが失敗した後にめげずに二連続で狙って行ったシーンなどがあって、驚きましたね。笑ったというか。ただのスパイカーじゃんよそれという。(笑)
肝心のトスの方でも、スパイカーの打ち易さという意味では平均的にはまだ優れてるとは言えないと思いますが、ただその(仮に)"打ち難い"トスを妙に安定した同じ軌道で連続して上げたりすることがよくあるので、ずれてはいても確信犯(笑)というか、やはり気の強さはうかがえるなという感じ。繊細だけどその分時々目に見えてメンタルの崩れることのある現在の正セッター澤田選手とは、身長(澤田選手は158cm)ともども対照的。(笑)
さすがにこの身長なので、高くて速いトスがミドルのクイックとばっちり合ったりした時は、かなり爽快ですね。数はまだ多くないですけど。
なんかこのまま来季普通にレギュラーになっちゃったりする気はするんですけどね。金子監督の期待の様子からすると。まあ(低身長の)澤田選手を固定したのも金子監督ですから、そんな単純に身長で決めたりしないとは思いますが。


8 野嶋華澄選手 MB

大学出の新人ミドル。
ほぼ出ずっぱりでしたが、山田と島村二人代表に取られて実際問題ミドルは上野と二人しかいないしなあと割と関心薄く見てましたが、この選手も悪くはないなと。
途中まで特徴がよく分からない感じに見えましたが、クイックとブロードをほぼ同レベルでソツなく打ち分け(ややブロードの方が威力はある?)、特に終盤はブロックの堅さの印象も強くなって行った気がします。要はバランスのいい、穴の少ない選手ですね、月並みながら。代表二人と強烈な攻撃力を誇る上野選手を押しのけて使う理由は今のところ余り見当たりませんが、いてくれると安心な選手ではあるかもしれません、新人ながら既に。
・・・でもブロックほんとに強いかもなあという気は、結構してますが。そこは島村あたりになら、勝てるかも知れない。


それで思い出しましたが、"ムード"(笑)以外で今大会のNECの"勝因"を一つ挙げるとすれば、ブロックの平均的な高さ堅さというのは、あるかもしれないですね。誰が出ても、ほぼ満遍なく。主戦セッターが安田選手だったのもあり。
引退した大野選手や今の島村選手を筆頭に、ミドルの"攻撃力"の印象は伝統的に強いチームですが、ブロックが強い印象は少なくとも僕が見たここ6年程には無かったので、結構新鮮でした。普通に止めるなおいという。(笑)
選手スカウティングも含めて、そこらへんが金子監督の一つなのかも知れませんね。

以上、色々な選手が見れて楽しかった、2021年第一回のV CupにおけるNECレッドロケッツの戦いの感想でした。
優勝したかったなあ。(未練)


テーマ:バレーボール
ジャンル:スポーツ
’20-’21シーズン女子V1リーグNECレッドロケッツまとめ
2021年02月24日 (水) | 編集 |
まだVCupとやらは残っているようですが(ファンでもよく把握していない)、DAZNで見られるNECレッドロケッツ(以下NEC)の試合はともかく終了したので、一応まとめておきます。
・・・なるほど代表非選出メンバーによる、新設のカップ戦なのね。(VCup Wiki)

レギュラーラウンド3位、その4位以上で行われるファイナルステージでも3位で、恐らくは妥当な結果で(笑)終了


開幕

バレー界のほとんど唯一絶対の大目標である2020年東京五輪のコロナ禍による延期、更には翌年の開催自体も危ぶむ観測もある中、勿論国内リーグも日程変更や短縮、一部チーム不参加のニュースなどが相次いで、だだでさえバスケのBリーグにも押されて元々気勢の上がらない中、正直モチベーション競技レベルの心配も少なからず抱きながら迎えた20-21シーズンの開幕でしたが。

始まってみれば特段おかしなムードも無く、むしろ例年よりゆっくり練習時間の取れたリラックスや充実感を感じさせる場面なども少なからずあり、拍子抜けしたというか安心したというか。
と同時に、前々から特に春高バレーの高校チームとの比較で抱いていた、Vリーグのチームは練習不足なのではないかそれで熟成や個体化の半端なまま、往々にして緊張感の欠ける"国内最高峰リーグ"を漫然と毎年消化し続けているのではないかという疑いが、ますます強くはなりました。2,3年前までの絶対王者だった頃の久光などを除けば、"チーム"としての強さや個性を感じることはほとんどなく、ただただ個人技の足し算で決まる面の強い、薄味なリーグ。これでプロ化とか言われてもねという。
まあ比較対象は春高とJリーグなので、例えばBリーグの現状はどうなのかとかは、僕は知りませんが。


古賀紗理那の復調

その怪我の功名"ゆったり調整"の恩恵を、少なからず受けたのではないかと思われるのが、NECのエースにして全日本のエース候補、アウトサイドヒッター("ウィングスパイカー"の方がいいなあ)の古賀紗理那選手。

kogasarina210224

今季はゆっくりコンビ合わせをすることが出来たというコメントがDAZN実況でも紹介されていましたし、また開幕前にはこんな記事も。

古賀紗理那「痛いところもない」新シーズン抱負語る(日刊)

シーズン開幕戦となる来月18日の岡山シーガルズ(佐賀県総合体育館)に向け、古賀が調子を上げている。「ケガも痛いところもないです。今の調子をさらに上げていきたい」。


何てことの無いコメントのようですが、メンバー外になる程のはっきりした怪我でもない限り、過去どこかが痛いとか痛そうにしているのを聞いたことや見たことのない選手なので、逆に"痛"かったんだろうなあ、痛いところが常にあったんだろうなと、改めて想像させられたコメントでした。

そして開幕したそのリーグ戦には、実際にここ数年とは別人の古賀紗理那がいました。
プレイスタイルが特に変わったわけではないんですが、持ち前の硬軟自在な広角スパイクの、幅やギャップやメリハリや思い切りが、恐らくは気持ちよく腕を振れることに支えられてでしょう、ここ数年より一回り二回り大きなスケールで展開されて、最初から最後まで安定して、日本人トップクラスの得点数や決定率をキープ。長らく続いていた"代表エース候補"という期待に対する名前負けや、「いい時はいいけど・・・」という頼りなさを、完全に払拭して見せたプレーだったと思います。

これに関して古賀の"成長"とコメントする解説者も多いわけですが、僕は全然そう思わないんですね。ただただ、コンディションの問題だろうと思っています。

全部言ってるな。もういいか。(笑)

一応話戻すとなぜそう思うかというと、今季古賀がやっていたプレーというのは、基本的に2015年のワールドカップにおいて、まだ19歳だった彼女が既にやっていた/出来ていたプレーだからです。この大会については去年だったかCSで全試合再放送した時に再度確認しているので、決して"思い出補正"の類ではないと割りと自信を持って言えます。この程度のプレーなら、6年前に既にこの選手は出来ていたよと。
だからこそ、その後の凋落がよく分からなくて、それに対して彼女の才能を疑ったり月並みな"成長"の必要性を語る声に、僕は耳を貸す必要をほとんど感じていませんでした。逆にそれゆえより深刻に身も蓋も無く、「早熟」だったのかな、単純にピークを過ぎて衰えたのかなと、悲しい諦念も抱きかけていたんですが。
そこからの復活。プレーは特に変わっていない。有効性も同じく。ならば要するに、体調がいいんだろう、良くなったのだろうと、そういう話です。(笑)

勿論変わったというか、"付け足"された部分もありますけどね。
一番は勿論、サーブレシーブの向上。これはまあ古賀に限らず、高校バレーの各校の絶対エースが普通は高校時代には身に着けない(優先順位が低い)プレーなので、卒業後に上達するのは当たり前ではあるわけですが。ただそこから2,3年経ってもまだ結構苦戦していた記憶が割りと新しいので、すっかり上手くなった安定したなと、改めて"今年"のプレーについて言うことは出来るかなと。
それからこれは恐らく中田ジャパンに呼ばれるようになって意識付けが進んだものだろうと思いますが、コンパクトな腕の振りによる(トスからの)速いタイミングのスパイク。本来は少し余裕のあるタイミングと大きな腕の振りの中で最大限に自在性を発揮したいタイプなので、いかにも余所行きのぎこちないプレーもしばしば見せていたんですが、今年はもう完全に物にした感があります。"得意"プレーとは違うにしても、自分なりの工夫・細工を加えられる余裕も出て来たというか。

ただ今年NECがチームとして取り組んでいるという、"速いタイミングのバックアタック"については、チーム自体の練度の問題もあって少なからぬ"余所行き"感はまだまだありますね。やはり"持ち味"ではないよなという、感。
よく分からないのが今季は切れ切れのサーブで、こちらも"ここ数年"はむしろ弱点というか代表で古賀のサーブ番になると毎度冷や冷やしていた(笑)ものでしたが、仮にコンディションが悪くてもそこまでその影響が出るタイプのプレーかなと。別にジャンプサーブの打ち手という訳でもないのに。ちなみにこれも、"2015年"には全然問題がありませんでした。定期的なボールの変化に合わせる必要はあるとはいえ、それはみんな同じ条件ですし、ちょっと極端過ぎるんですよね古賀の場合、差が。不思議。

とにかくそもそも僕が(女子)バレーを常時見るようになった理由そのものである"古賀紗理那"が帰って来てくれて、本当に嬉しかったし本当に楽しかったです。
相変わらず大して内容の濃い"リーグ"では今季も無かったとは思いますが(笑)、何せ「理由」が健在なので、疑いはなかったです。見る「理由」に。(笑)
古賀の古賀らしい(変幻自在なので"らしさ"の種類は多いんですけど)スパイクが決まったその瞬間には、"試合"や"リーグ"への不満など毎回どこかへ行ってしまいます。サッカーならどんなスーパーストライカーでも1試合に決まるのは1,2本がせいぜいですけど、バレーなら10本20本ですからね、お得です。(笑)


NECのチーム内関係の変化

その古賀の復調にも間接的にですが影響していたと思われる、"チーム"としてのNECの変化について。
目につく大きな変化としては、
・大物外国人、ネリマンの加入
・レギュラーセッター、塚田→澤田へ
・レギュラーライト、山内→曽我へ
というものがあげられると思います。
その内ネリマンについてはまた後で書くとして、後ろ二つというのが結構"古賀"にとっても大きな変化かなと。

まず古賀加入以降のNECの主な選手構成の変化(と成績)を追ってみると。(参考)

14-15 高校三年生の古賀が"内定選手"として加入。優勝。
15-16 4位。
16-17 優勝。近江あかり引退。
17-18 山内美咲(東海大)、塚田しおり(筑波大)、加入。5位。
18-19 山田二千華(豊橋中央高)加入。6位。山口かなめ、大野果奈引退。
19-20 曽我啓菜(金襴会高)、澤田由佳(東北福祉大)加入。8位。
20-21 ネリマン加入。3位。


まず'14-'15シーズンの優勝時は古賀の出場は内定選手としての限定的なものに過ぎず、主力となっていたのはキャプテンの近江を筆頭とする山口、大野といった既存選手たち。古賀も翌年からは、代表と行ったり来たりはしながらも常時出るようにはなりますが、代表時と比べてもパフォーマンスには余り冴えはなく、またその理由でもあるでしょうがどうも既存選手たち特に近江には遠慮というか距離感があるようなプレーぶりに僕には見えました。
その近江も'16-'17シーズンで引退し、"顔"的にもまた近江が担っていたサーブレシーブを含むアウトサイドヒッターの軸としても、いよいよ古賀がチームの中心になる・・・はずだったのが"17-"18シーズン(以降)。しかしここで問題となったのがその年加入した山内・塚田の大卒選手たちとの関係性で、NECでの歴では古賀が上ですが年齢的には二つ上、大卒選手としてそれなりの完成度を持ちまたカルチャーも共通する二人を当時の山田監督が積極的にレギュラー起用したことで、"新リーダー"古賀の仕事は何ともやり難いものになってしまったように見えました。自身の調子も余り良くなく、また特にセッターである塚田との相性あからさまに悪く、故障がちのベテランセッター山口に出て来てもらってようやく一息つくということを繰り返していました。

監督が現金子監督に代わってからもしばらくそうした状況は続いていたと思いますが、変化が出て来たのが山田二千華、曽我高卒の"純"後輩選手たちの台頭と、新セッター澤田の登場。年も少し離れていますし"高卒カルチャー"というものがあるのかどうかは知りませんが(笑)、ともかく遠慮なくリーダーをやれるメンバーの比重が増えて来たことと、相性の悪い塚田中心のセッター体制の縛りが緩んだことで、随分古賀にとっての快適さは向上したように見えます。
金子監督にどこまでそういう意識があったのかは分かりませんが、特に今季"20-21シーズンは、多少強引にも見えるくらいかなり意図的に山内から曽我へ、塚田から澤田への、主軸の移動を行っていましたね。山内のプレー自体は悪くなく(むしろ序盤はかなり冴えていた)、一方で高校バレーのスター曽我の方はまだまだ開花途上という感じだったので、山内については結構気の毒/不公平に僕には見えていましたし、また塚田と比べた澤田の技術には問題ないとしても、それでも"身長"(ブロック)という明らかな考慮要素(澤田158cm塚田175cm)と周到に組み立てを考えるタイプらしい澤田のセットアップが時々歯車が狂って盛大に混乱する"持病"を見せることからすると、もう少し塚田の起用機会はあったのではないかなとこちらも公平に見て思いはしますが。

ともかく久しぶりの上位進出に成功した今季のチーム内関係はこんな感じで、古賀にとっては良好にはなりましたが、山内・塚田両選手の心境には、心配な部分も少なからずあります。
僕は好きだよ、山内。頑張ってくれ。(笑)

yamauchimisaki210224

もう一人の"元"主力選手、後半ずっとベンチ外だった柳田選手は・・・やっぱり退団するんでしょうね。彼女も何か、同い年の"スター"古賀との関係は終始微妙だった気がします。総じてなんだかんだ、"古賀中心"のチーム作りを、金子監督は意図的に行ったという推測は成り立ちそうではありますが。


"ネリマン"の功罪

他Vチームとは違って外国人の大砲を置かないことに長らく定評のあった(岡山も勿論そうですが)NECですが、今季は久々の大物選手ネリマンをアウトサイドに迎え入れて、フル活用しました。
それが上位進出に貢献しなかったとは言いませんが・・・結構微妙な感想を僕は持っています。
まずネリマン自身の能力&タイプに、最初から少し疑問があります。例えば'16-'17シーズンの優勝時にも、ニコロバという大砲が実はいましたが、彼女は所謂打ち屋、攻撃専門のスポット選手であり、近江と古賀らで形成するチームの中心線(レフト)に付け加えられたりられなかったりする、"エキストラ"な選手で、実際に活躍機会もポストシーズンに集中していました。ポジションはライト。
対してネリマンはレフトのレギュラーであり、サーブレシーブの要の地位こそ古賀に譲るもののプレー自体は総合的で、パーソナリティ的にも外国人ながら堂々たるリーダー的な選手。彼女が出続けることで本来古賀に次ぐサブリーダー的な存在になる筈だった"総合"選手山内の存在感が曖昧になり、ライトのポジションを若手の攻撃的選手曽我に譲る一因にもなったと、そういうことは言えると思います。(それでも山内の方が戦力としては曽我より上だと僕は思いますが)

それはそれで仕方のない事だとも言えるかもしれませんが、ただそもそもの選手構成的に見たネリマンの必要性適材性に僕は疑問があって。外国人大砲を入れることにした、それ自体は方針だからいい。ただ既に古賀と山内という計算の出来る"総合"アウトサイド、ダブルリーダーがいるチームに加えるならば、むしろ打ち屋タイプ、別に守備や繋ぎが出来てもいいけど(笑)とにかく問答無用の爆発力が特徴の選手の方がすっきりするのではないかと。一つしかない外国人枠を、山内とタイプ的にかぶる選手なんて入れてどうするんだろう、効率が悪いなと、そういう感じはします。
それによって山内に代わって出場機会を増やした曽我が圧倒的な攻撃力を見せてくれたりすればめでたしだったわけですが、現実には山内とどっこいがいいとこ。山内の守備と繋ぎが消えた分むしろマイナスでは?という収支。ひょっとすると最初から曽我を育成するつもりで、山内のライトのレギュラーの座を取り上げるつもりで"ネリマン"を選んだのかも知れないですけど、ただネリマンも所詮は大型の外国人選手でありその割には器用というだけであって、仮にそうだとすれば随分リスキーな計算だなという。

一方、実は上の"収支"には欠けている要素があって、それは山内と曽我の比較に付け加えての、山内とネリマンの比較。ポジションは違いますが。ここで山内とネリマンの攻撃力の差が山内の守備と繋ぎの欠損を大きく上回るものであれば、曽我を使った上での最終的な帳尻を大きくプラスと算定することも可能ではあるわけですけど。そこがねえ、微妙でした。
本人の調子と小兵セッター澤田とのコンビネーションの不安定のどちらの原因が大きいのかは分かりませんが、ネリマンの攻撃力決定力は敵として前所属トヨタ車体で見ていた時にはなかなか及ばず、打数は多いだけに"ネリマンで負けた"と言いたい試合も2.3ありましたし、チームが今季の新機軸として推していた"速いバックアタック"の際のライン踏み越しの勇み足の多発癖も、最後まで治らず。最終的に勝負のファイナルステージで故障発生して今季を終えたわけですが、急遽出場の万年レギュラー"候補"廣瀬でその穴が十分に埋まってしまうという始末。(ちょっと悪意のある言い方ですが(笑))

まあ人格者なので余り悪口は言いたくはないんですが、結果微妙な補強ではありましたね。満を持しての方針変更の割りには。逆に"方針変更"ゆえに、「中」を取ったのかも知れませんが。少し半端だったなと。
最初に言ったように、どうせ外国人獲るなら素直に打ち屋で良かったと思います。ニコロバなら優勝出来た、なんて無責任なことはさすがに言えませんが。(笑)
もっと感覚的なことを言うと、古賀/山内/ネリマンでは、スパイクのタイプ自体も似たり寄ったりなんですよね。勿論さすがにネリマンのパワーは頭一つ抜けてはいるわけですが、決して"不条理"なパワーではなくて、"条理"が残ってしまう。外国人大砲独特の、一瞬で空気が変わる、やられた方どん引き(笑)みたいな解放感突破力が、ネリマンのスパイクには無い。古賀も山内も、最終的には上手さが目立つ選手ではありますが決してパワーが無いわけではないですしね。そういう意味でも、効果の薄い"補"強だったかなと。
結論、山内が可哀想だなと。(笑)


ニチカは面白い、曽我ちゃんはまだまだ、川上雛菜は・・・謎(笑)

上の"勢力図"とはさほど関係のないところで島村・上野のリーグでも屈指の先輩ミドルブロッカー陣と健全なポジション争いを繰り広げて、先ほど発表された日本代表候補にも順調に名を連ねて成長を続けている大型ミドル山田二千華(にちか)選手。
"大型"と言いつつ身長は183cmとミドルとしては普通ですが、ただ何か"大きい"(笑)。体の厚みがありパワーがあり、日本人には珍しく上から"爆撃"するようなクイックが打てる。ブロックの高さ感も同様。
加えてプレー同様のスケール感のある、がさつぎりぎり(?)の大らか豪快なキャラクター(笑)で、外国人不在もあって割りとちまちま息苦しかったNECのムードを、一つ変えてくれた選手だと思います。最初なんだこの雑な感じのコはと思っていなくはなかった(笑)僕も、今ではすっかりファンです。呼びやすいですしね、"ニチカ"って。"山田"だと前監督の印象が強過ぎるし。
まとめて頑張れ"クマ"ちゃん

yamadanichika210224

という感じの選手(笑)。いや、マジ大物だと思いますけど。代表基準でも。

一方、高校時代はその怪物的な運動能力からの驚異の滞空時間とスピード&パワーで金蘭会高校の黄金時代の一翼を担い、僕も密かにこちらは"おサルちゃん"として愛していた(笑)曽我啓菜(はるな)選手。

sogaharuna210224

ただVデビュー後は割りと苦戦しているなという印象。身体能力・ジャンプ力には疑いは無いわけですが、何せ土台が172cmなので、高校ならともかくトップカテゴリーor国際的に高さ勝負は分が悪い。Vでも既にそれは。
それもあってでしょう、NECではポジションを高校時代のミドルからアウトサイドに移されましたが、現状そこでも特に大きな長所は発揮できていない、見えていない感じがします。それぞれ優れてはいるスピード・パワー・ジャンプ力、全てかき集めてようやくぎりぎりレギュラークラスのプレーが出来ている感じ。勿論守備や繋ぎは当然まだまだですし。これから何でどう勝負していくのか違いを出して行くのか。そんな中でも代表に呼ばれたりはしているので、将来を嘱望されているのは間違いないわけですが。
まあ全体的なレベルアップ、トップレベルへの適応を待つ感じなんですかね。一応調子のいい試合では切れのあるクロスやブロードをばしばし決めたりはするんですけど、ただそれって"機動力のあるミドル"の選手でも普通に出来る部分の大きいプレーなので、何か"アウトサイド"の枠を無駄に使ってる感もしないでもない。昨季までいた同じMB/OH兼用選手の荒谷栞選手の方が、まだ"アウトサイド"ならではの得点力を発揮していた場面は多かったと思います。
まだまだですね(だから山内が可哀想(笑))。明らかにまだ、"期待"先行の選手。

最後におまけで筑波大からの内定選手、ポジションはアウトサイドの川上雛菜(ひな)選手。
早速盛んにピンチサーバーで使われていますが・・・です。(笑)
大学までピンチサーバーはほとんどやった事が無かったと言う通り、お世辞にも威力のあるサーブの打ち手とは言えない。とにかく出番を作って試合に慣れさせる意図があるとしても、そもそもではどういう将来性を見込んでいるのかも、少ない出場時間ではまだ謎。パワーがあるようにも見えないし、守備が上手いわけでもないようですし、身長も普通(178cm)ですし。
結構可愛いので、目の保養にはなるんですけど。(笑)

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本格参戦の来季には分かるんでしょうか。可愛い以外の理由が(笑)。一応楽しみにはしてますが。


以上。
この後はいよいよ代表シーズンですが、本当にあるんですかね東京五輪。(笑)
何となく"幻の五輪代表"が似合いそうな雰囲気も無くはない気がする、古賀紗理那選手ではありますが。いや、縁起でもないことは。(笑)


テーマ:バレーボール
ジャンル:スポーツ