ヴェルディ、代表、漫画、アニメ、女子バレー 他
最近読んだ電子書籍漫画単行本 ('20.3.23) ~ボールスポーツもの特集
2020年03月23日 (月) | 編集 |
ツイッターで予告して自分にプレッシャーかけてまで先週末~今週はサッカー記事を書く予定だったんですが、どうしても忙しくて無理そうなので代わり(?)にサッカーを含む(ボール)スポーツ漫画の一斉レビューなどを。
結局漫画なんですけど。(笑)

完読したものはありません。
冒頭数巻を各サイトで無料で読んだものの中から、例の"講談社20誌"に連載中でないもの。
[  ]内は試し読みに使ったサイトです。


(サッカー)



『アオアシ』 小林有吾 [Kindle]

「アオアシ」という長期流行中の"甘酸っぱい青春"もの系っぽいタイトル、少年誌丸出しの熱血バカ(ていうかサル(笑))っぽい主人公のルックスと表紙のデザインで、正直「日本のサッカー漫画」に対する最近僕の中で俄かに高まっていた信頼感が無ければとても読む気にならなかった作品ですが、相当面白かったです。
主人公は見た目通りの"熱血バカ"タイプで、しかも登場時の活動基盤は地方(四国)の弱小中学サッカー部&草サッカーというこちらも見た目通りの(笑)「サル」属性なんですが、これはむしろキャラ造型の"正確性"と賞賛すべきなのかも。いや、何というかそういう"外見"からは"意外"な読み応えの作品ではあるんですが、でも狙いとしての「裏切り」ではなくて「型」を型のまんま平然と使いながらしかし内実でねじ伏せている感じの、どうも不思議な読み味の作品なんですよね。
それはもう一人の主人公的人物の"性格破綻の天才監督"やら、その他の主人公が出会うライバルたちにしてもそう。多分"企画書"みたいなものを読まされたら、その段階ではふーんとスルーしておよそそそらなそうな感じの。そういう意味で、「デザイン」に対する僕の印象は別に間違ってはいないと思うんですけど。騙されてはいないというか偏見ではない(笑)というか。もし結果「傑作」になっていなかったら、「陳腐」な作品と言うだけだったのではないかという。
・・・Wikiには作者は元々スポーツ漫画に興味が無かったとあるので、そういう意味で"スポーツ漫画としての造型"については特に狙いも愛情も無い(笑)、類型的なものになってるのかなという。
なのに何でこんなに面白い。(笑)

面白さとしては一つには

1.プレーヤーとしての主人公の能力

言ったように"田舎"のチームのワンマンプレーヤーである主人公は、少なくとも登場時はひたすら自分でボールを持って離さずにドリブルしまくってゴールまで行く、原始的というか"子供"のようなプレイスタイル。運動能力の高さこそ既にうかがわせてはいるものの、今時中学卒業年齢にもなってこんな"教養"の低い選手になぜJでもトップクラスの育成プログラムを誇るクラブの前出のユース監督が興味を持ったかというと、それは好き勝手滅茶苦茶やっているようで実は彼なりにゲーム全体やチームメイトの状態を細かく把握し、(彼の考える)勝利への最短距離を常に探っている彼の独特のゲームアイに気付いたからなんですね。それがその後激変するサッカー環境と、"誤解"を生みがちなパーソナリティとの兼ね合いの中でそれがどのように発揮されて行くのか活かされて行くのか、序盤を読んだだけでも既に相当に楽しみです。
・・・個人的には、ヴェルディ在籍時のエジムンドとか思い出したりしたんですけどね。一見"わがまま"に見えるフォア・ザ・チーム、"チーム"の勝利を最短距離で目指すゆえの"ワンマン"プレー。まあやはりどちらかというと南米的な、"野性"の知性ではあると思います。それを欧州的現代的フォーマットで、どう活かすのか。

2.ずばり本格的J"ユース"漫画

スタートが中学卒業年代ですから、"これから"ユースに入るわけですね。単にトップへの通過点としてではないJユースそのものが、がっつりと描かれるありそうでなかった作品。
当面描かれているのは、ヴェルディなどを連想させる国内トップクラスのユースチーム、ユース選手たちの、圧倒的な"エリート"性。よく"たまたま中高生年代のキャラを使ってるだけで中身は大人・プロ・何なら人類最強"みたいなインフレ描写が少年漫画ではありがちですが(笑)、そういうのではないもっとリアリティのある"エリート"性が、結構怖いくらいです。十分に上手いんだけどそのレベルには至らない"有望"選手たちの絶望感と共に。とにかく読み応えがありそうです。

・・・いずれについても何というか、単に"取材"したとかいうレベルのものにはとても見えないので、スポーツ"漫画"には興味が無くてスポーツやサッカー自体には、それなりの見識を元々持っていた人に違いないとは思いますけどね。




『Mr.CB』 綱本将也(原作)谷嶋イサオ(作画) [DMM]

競馬好きらしい(笑)原作者による、「ミスターシービー」という往年の名馬の名前にかけた、「CB(センターバック)」を主人公にしたサッカー漫画。具体的には、かつてのレジェンド代表CBが見込んだ、無名の天才新人CBとの師弟物語、なのかな?
センターバックという題材も珍しいですが、同時に進行するJ3相当の下位カテゴリーにくすぶるプロクラブの経営問題やそもそもの"存在意義"の問題も鋭く問われていて、そちらだけでも読み甲斐がありそう。そこに更に新任の異能監督やサッカーメディアの野心的な女記者など序盤にして次々燃料が投入される欲張りな作品ですが、さすが『ジャイキリ』等で実績のある原作者で危なげはありません。
ていうか正直、ジャイキリとは次元の違う面白さで、そこらへんは何というか現在は原"案"と表記されているジャイキリとの、距離感の差というかコミットメントの深さの差を感じてはしまいます。やはりあれはどちらかというと、"ツジトモ"の作品なんだろうなという。
1巻しか読んでないですが既に十分に面白いです。これからどのような、「CB」ディテールが語られるのか。




『修羅の門異伝 ふでかげ』 川原正敏(原作)飛永宏之(作画) [Kindle]

「原作」「作画」方式ではありますが、単行本中の解説によると原作者の友人である作画者が、多忙で描けない原作者の代わりにわざわざ絵柄を似せて作画しているという、珍しいと言えば珍しいスタイルの作品。
そもそも人気格闘技漫画『修羅の門』



のスピンオフの、"サッカー"漫画という不思議な作品でもあって、絵柄と共に世界観にも共通性を持たせているらしいです。(そちらは未読)
ストーリーもかなり変わっていて、南米寄りの天才サッカー選手である主人公が、規律でガチガチに固まった(名門)高校サッカー部のやり方を嫌って、せっかく入部テストに受かったのを蹴って草サッカーチームを結成し、目指すはそれでも参加可能な天皇杯、天皇杯の決勝という形で可愛い幼馴染への「国立に連れて行く」という約束(つまり本来は高校選手権で果たすはずだった)を果たそうという、なんか薬やってるのかなみたいな設定ですが(笑)、作者が多忙を押してもどうしても漫画化したかった作品だけあってサッカー描写にはしっかりした迫力がありますし、"規律サッカーへの反逆"もただのお花畑でない、ぎりぎりの"哲学"の緊張感があります。僕が読めた段階で結成したチームはまだ動き出してませんでしたが、傑作の予感たっぷりでした。


(バレーボール)



『神様のバレー』 渡辺ツルヤ(原作)西崎泰正(作画) [Kindle]

若くて意気軒高・・・にしても異様に自負心の強いバレーボールのコーチが、全日本のコーチへの抜擢を餌にとある弱小中学の男子バレー部のコーチとして、課された無理筋なノルマを果たして行く話。
"神様"とは大層な振りかぶりようですが、それはサッカー以上に"データ"スポーツであるバレーボールにおいて、データ分析を基にした戦術と戦略、加えて敵味方双方の"心理"を残酷なまでに見切った彼一流のチーム運営ゲームコントロールで、論理的に"それしかない"というたった「一つ」の狙いの結果をピンポイントで実現して行く主人公の構想と手腕を指しています。
それにしても"大上段"で、大した気合の漫画だなという(笑)。結構長く続いているので、行く手に待ち受けるだろう様々な困難にどのように「神」の面目を保たせていくつもりなのか、大いに興味があります。




『ハリガネサービス』 荒達哉 [コミックシーモア]

中学時代、元々平凡な素質の上に足の大怪我でジャンプの出来なくなったバレーボーラーの主人公が、仕方なく"練習台"としてのサーブ専門選手として日々を送る中で、いつしか身に付けた変態的なサーブ技術を活かして、名門高校バレー部の"ピンチサーバー"として(後にそれだけではなくなるようですが)意外な大成をして行く話。
主人公のサーブ技術が飄々と変態的に凄くて笑えるのと、最初主人公の一般的な運動能力と技術の低さを見下して相手にしていなかった強豪校のチームメートが、むしろエリートらしい"技術"への率直さで主人公を認めてサポートに回って行くプロセスが凄く熱くて良かったです。エリートの中にもエリートの苦悩があって、それを描くのももう一つのテーマかなという感じ。


(その他のスポーツ)



『WILD PITCH !!!』 中原裕 [Kindle]

最終的にはいわゆるプロ(NPB)に行くんだろうと思いますが、そこにまでは至らない"独立リーグ"の実態と、そこらへんのランクの野球選手たちの悲喜こもごもを描く漫画、かな?という。
ドラフトにかかるかかからないかの当落線上の選手たちがさらされる駆け引きや選択、Jリーガーもそうでしょうが独立リーグの標榜する"地域密着"を、実際にどのように選手たちが受け止めているのかなど、興味深い描写が沢山出て来ます。





『ROBOT×LASERBEAM』 藤巻忠俊 [コミックシーモア]

かの『黒子のバスケ』の作者が描く・・・何と"ゴルフ"漫画(笑)。意外過ぎる。内容も意外性に満ちてましたけど。
喜怒哀楽が薄くて"ロボ"とあだ名される超理系主人公が、ひょんなことからトライすることになったゴルフを飽くまで理系的にしかしえぐい効率で自分のものにして行く話。
『神様のバレー』辺りとも共通するものを感じる、スポーツへの徹底的に理系的科学主義的なアプローチの漫画の、最近の"潮流"と言っていいかも知れない一つかなという。
主人公の「理系」性と能力に説得力がちゃんとあって、かなり面白いです。





『送球ボーイズ』 フウワイ(原作)サカズキ九(作画) [Kindle]

比較してこちらは割りとオーソドックスと言えばオーソドックスかも知れない、"熱血"ハンドボール漫画。主人公は異能ではありますが。
「ハンドボール」そのものが珍しいのと、ハンドボールのメッカらしい富山県氷見市の描写の濃厚な地方色が面白くて、飽きずに読めました。
何でかこういうマイナースポーツを描いたものの方が、選手たち一人一人の"超人"ぶりや競技の厳しさが伝わって来ることが多くて、そこが迫力ですね。競技自体をアピールしたいという、作者の情熱の本気度とその競技への集中的な関心のなせる業という感じですが。




『灼熱カバディ』 武蔵野創 [Kindle]

・・・実際にはカバディはボールを使いません。(笑)
ただ体育館スポーツとして定着してますし、ユニフォームも含めてイメージ的には凄くボールスポーツっぽくて、この項を書き出す直前まで"ボールを使っていない"ことを意識していなかったくらいで。
そうですねえ、「体育館でやるラグビー」という感じでしょうか、ただしボールを使わない。選手の見た目的には、ハンドボールっぽいか。
上で"マイナースポーツものならではの楽しさ"について言いましたが、こちらはもう、マイナーどころの騒ぎではない(笑)ので、どちらかというと「知らないスポーツを知って行く」喜びという感じでしょうか。作者自身と共に。
登場人物たちも"子供の頃からの生粋のカバディプレイヤー"などおよそ例外中の例外なので、それぞれのバックグラウンド(例えば主人公は元全国クラスのサッカー選手)をベースに、汎「スポーツ」的観点からカバディの魅力を発見して行って、そのプロセスが一つ一つ面白いです。

灼熱カバディ

解説もなぜかサッカー部の監督がやったりする。"容易に点が動かない"スポーツ(サッカー)の専門家が、"容易に点が動"くスポーツ(カバディ)について語る妙味。
とにかく何か、一見すると凄くマッチョなんですけど、"脳が開く"瞬間の多い作品です。知るって楽しいというか、ほとんど異文化交流というか。広くはやはり、「マイナースポーツ」漫画の楽しみでしょうけどね。
そしてやはりみんな超人(笑)。怖えよスポーツエリート。


こんなところで。
J再開までには、"本物"の"スポーツ"記事も。(笑)


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テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
最近読んだ電子書籍漫画単行本(’20.3.11)
2020年03月11日 (水) | 編集 |
"読み放題"を卒業した後無料・試し読み本の渉猟へ移行して、その後自らはその成果を基に"有料"領域に進出しつつここで無料本を片っ端から紹介して行こうという計画でしたが、先日ぼやいたように課金沼予想以上の恐ろしさにびびって代替案としての講談社漫画雑誌20誌購読生活に突入してしまったので、少し予定が曲がったというか見えない感じに。
とりあえず今回は、"渉猟"した中からその"20誌"で連載中のものをいったん除いて(そっちでコメントするかもしれないので)、残りの内既に通して最後まで読んでいる(完結or読み切り)作品のみを紹介しておきます。

ちなみに"渉猟"サイトは以下。

Amazon Kindle
コミックシーモア
まんが王国
BookLive!
DMM電子書籍
楽天ブックス
BOOK WALKER
honto
ebookjapan
(スキマ)
(マンガ図書館Z)


まだあるとは思いますが、まあ十分でしょう(笑)。リンクは僕が「無料」本を漁る時に使っているページに直リンしてあるので、必ずしもトップページではありません。
月額会費などはなく、課金するにしても都度課金の形態であるサイト(業界大手らしいU-NEXTはその基準で外れ)の、"無料"で読める物で探しました。「スキマ」「マンガ図書館Z」は無料が基本のサイトで、その分品揃えははっきり古いですが逆に他のサイトには無いものも見つかったりします。

こんなに沢山あってどうするんだという感じでしょうが、基本的な("無料"の)品揃えは前にも言ったようにほぼ共通しているんですがそれでも中にはそのサイトならではのものもあって、更に言うとアプリが使い易くて端末を選ばないのは何と言ってもKindleなんですが、一方でこれはAmazon全般に言えますが検索がシンプル過ぎて本を探すには不便なので、他のサイトで見つけた無料本の続きをKindleの有料本で購入するという、またしてもAmazon独り勝ちみたいな使い方が定着しそうです。(笑)
あ、一応言っておくとそれに次ぐ使い易さだなと思うのが楽天ブックスのアプリだったりするので、"国籍"にこだわる人は(笑)楽天の方にお金を落とすという選択肢もあるかと。Google Play Booksのアプリも使い易いですけど、"国籍"条項の足しにはならないですね。(笑)

ではそろそろレビューの方を。



サイト名は"無料"本を読むのに利用したサイト。「期間限定」というパターンもよくあるので、今現在どういう扱いになってるのかは、確認しないと分かりません。


[Kindle]



『鉄風』太田モアレ 全8巻

あらゆることが軽く出来てしまう天才過ぎて虚無的になっている美人女子高生が、女子総合格闘技に出会って、昔習った空手(これも天才的ではあった)をベースに自ら課した無理くりな"成長"コースを歩んで切望していた「燃焼」を得る話。才能とは努力とは、そこにそれぞれの"人格"がどのように作用して来るのか、勿論格闘技のディテールも厳しく追求しながら、複雑な諸要素を圧倒的なスピード感でまとめて描き切った傑作。僕も思わず、圧倒的な勢いで初課金。(笑)
基本的には総合格闘技の「総合」性要素の無限性が、"天才"にも地道な努力の余地を十分に与えるという、そういう構造を背景にしていますね。まあ究極的にはやはり、"天才"の快楽を味わう物語だと思いますけど。




『椿荘101号室』ウラモトユウコ 全3巻

こちらはある意味対照的な、自分に甘い凄く"駄目"な女の子(注・社会人)が、駄目過ぎて同棲相手の別れの申し出を"現実"として拒絶してしまい(別れて"いない"事になっている)、家出の果てにたどり着いた変人ばかりの謎のボロアパートで暮らしながら、何やかや最終的に"収まって"行く話。
よくある"集合住宅"ものというか長屋(笑)人情もののような緩い構造のストーリーで、主人公も特別に"改心"したり"努力"したりしているわけでもないんですけど、見ようによっては凄く深い、あえて言えばユング派的な"治癒"の物語。誰かが治すわけではないんだけれど、色々な人と人との関わりの中で、自然な「統合」が起きるという。
主人公は弁解の余地なく"駄目"なんだけど、その"駄目"さに嘘が無いというか"分かる"部分が凄くあって、それに対して周りの人は通常の隣人の枠を遥かに越えた干渉と世話を同時に行い、言うべき事はなまじの家族以上にバシバシ指摘し、その言葉の切れ味が心地よくまた笑いを誘う作品。




『秘密のサッコちゃん』よしまさこ 全2巻

体の一部に触れるとその相手の心の中にある複数の異性への気持ちのその時点での大きさ(の差)が"不等号"として見えてしまうという、一見するとラノベがかったふざけた特殊能力を生まれつき持っている女子大生の女の子(サッコ)が、それゆえの若くしての愛の無常の認識と特に男性への不信感に悩みながら、心の中に異性が一人しかいない(亡くなった妻)つまり「不等号」が形成されないレアな男への恋の経験を中心に、"愛"の実相・本質について学んでいく話。
・・・というと凄く教訓譚ぽい(笑)ですが、そこまでシリアスな話ではなくさりとてラノベ風の法螺話でもなく、リアルではないけどギャグやファンタジーでもないしという、独特の文体で描かれている・・・とも言えますが多分作者のノーマルな文体にたまたま飛び道具か導入されて、それを上手く消化した感じなんじゃないりかなという。
"大傑作"というわけでもないけれど流しては読めない、でも気楽には読める(笑)なんか色々ちょうどいい感じの作品。


[BookLive!]



『9時にはおうちに帰りたい』青色イリコ 全3巻

仕事は普通にするけれどおしゃれピープルや意識高い系集団(あるいは単に男性サラリーマン社会)にはどうしても馴染めない、それぞれタイプの違った(深度も)オタク系会社員女子が偶然胸襟を開いて語り合う機会を得て同じ社内で友達になって、以後アラサー社会人女子ライフをめぐる様々なテーマについて分析したり傷を舐め合ったり時には現状克服の努力をしたり(大抵は失敗(笑))を繰り返す4コマ
それだけですが、大変面白いです。特にこれは女性の特徴なのか、馴染めない事への諦念を抱えつつも簡単に開き直ったりはせずに、ひと通りの付き合いやスキルをキープしようと努力しているところが逆に味かなと。


[BOOK WALKER]



『ブラックホールに飛んでいけ』トルソー 全1巻

こちらは若い"男性"会社員が抱える企業社会への適応の困難を、突如やって来た謎の宇宙人の励ましや宇宙人ゆえの(?)視点の転換に助けられながら何とかやって行く話。意外と真面目な馬鹿ファンタジー。時々変な哀愁つき。


[スキマ]



『博多新聞東京支社』長谷川法世 全2巻

『博多っ子純情』の作者による、東京勤務の"博多っ子"たちの話(笑)。ある種島耕作的な古き良きモーレツサラリーマン社会/時代を描いた作品ですが、全然古くなくて読み易いです。"新しく"はないてすけど(笑)。地域と時代に密着した印象の作風の人ですが、ナチュラルに批評的というか意外と"時代と寝ない"人なのかなと。
勿論新聞華やかなりし頃(ようやくテレビニュースの台頭に敏感な人なら危機感が芽生え始める頃)の新聞記者ライフのあれこれも、興味深いです。2巻しかないですか、結構"ザ・新聞記者"という内容になっているのではないかと。




『サッカーの憂鬱 裏方イレブン』能田達規 全2巻

こんなサイトでこれが無料で読めるとは。儲けた。(笑)
内容は全くのタイトル通りです。
社長からホペイロから営業の人まで、プロサッカークラブに関わる様々なジャンルの「裏方」の生活をこれでもかというくらいに網羅的に、かつ決して長くないページ数にも関わらずそれぞれに濃密に描いた大力作連作漫画。ほんとどんだけ取材しているんだろうという感じです。飽きさせない正攻法という感じの漫画。


残りは全部ふかさくえみという同じ人の作品。



『ちまさんちの小箱』『フェルマータライフ』 それぞれ全2巻



『ユキミレコード』『ドミナントセブンス』『お手元のフリップにどうぞ』 それぞれ全1巻

一応上二つが長編(?)で、下三つが短編集。
どれも似たようなタッチ&隙無く同水準の作品ばかりなので、どこから読んでくれても大丈夫です。
ジャンルとしては・・・ギャグっぽいSFというかSFっぽいコメディというか、そこに"ドミナントセブンス""フェルマータ"などという用語に表れている音楽家(芸術家)っぽいセンスもうっすら混じる感じ?
馬鹿馬鹿しいと言えば馬鹿馬鹿しい、他愛無いと言えば他愛無い作品ばかりですが、毎度設定の利き方がいちいち素晴らしいというか活かし方が天才的というか。そして上手い!以前紹介した"林麦"さんあたりにも通じる、漫画に愛されている漫画家というか息を吸うように漫画を描ける人というか。(という印象。陰の努力はともかく(笑))
暴走しないあらゐけいいちとか言えば、少しは感じが伝わりますかねえ。全然正確ではないんですけど。意識を"飛ばさ"ないのがむしろ強さというか。


[マンガ図書館Z]



『ライジング』わたべ淳 全2巻

どうも未完ぽい社会人女子ソフトボール漫画。
"女子"の柔らかさやトップスポーツ選手の"筋肉"のゴツさや体育会系人間関係の圧やマイナースポーツの置かれた不安感が、塊となって襲い掛かって来る感じの作品。(笑)
でも暑苦しくはないですね、息苦しいですけど。基本アダルトな世界。これも新しくはないけど(2001年作品)古くはないと思います。何か"スポーツ"への超時代的な理解を感じさせる作品。地味に傑作だと思います。
『美晴・ライジング』という同じく女子ソフト漫画



があるようなので、混同しないように。(笑)


以上が短さもあって、既に通して読んでいる(一部課金)作品。
量的にもこれくらいがちょうどいいかも知れないですね、たまたまですけど。
次回以降の形態はまだ未定ですけど、どういう形でかは続ける予定です。もうなんか漫画欲がねえ。本気で読んだら家計のバランスに危険なレベルで。日本の漫画面白いですね。全体的な"評論"とかは、またどこかでまとめて。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
Kindle Unlimited 読み放題漫画単行本たちの感想 (最終回)
2020年02月12日 (水) | 編集 |
「最終回」と言い切れるのは、今後も続けるだろう電子書籍漫画生活(ハマったあ)を、Kindle、コミックシーモア等各サイトで提供される"無料・試し読み"本を「入り口」として利用しながら回せるというめどが立ったからで、(定額)"読み放題"システムを今後利用する予定はほとんど無いからという、そういう理由によります。

・・・話飛んでるかな?(笑)、つまり"うっかり"有料期間も含めて二カ月の読み放題徹底利用を経て、次の「入り口」としてたまに目にしていた最初の数巻"無料"という本の渉猟をしてみたところ、少なくともKindleに関してはその多くが"読み放題"のラインアップと被っているのでどちらかを利用すれば良く、その場合ラインアップの更新があちら頼みな読み放題よりも当然自分で選べる"無料"本の方が分かり易いわけで、今後はこちらを中心に生活することになるだろうという、そういう話です。

ちなみにコミックシーモアにも"読み放題"システムはありますが、こちらは(コミックシーモアの)"無料"本とはがらりと違う、そこから外れた古い本ばかりで全く読む物が無く、無料期間終了を待たずに解約してしまいました。
その一方"無料"本のラインアップはKindleとほとんど共通しているので、なるほど"無料"というのはサイト側の設定ではなくて発行側出版側の設定なのだな、その証拠にKindleでもシーモアでも、無料対象の巻数は全く同じだしと、ここらへんが現在までに分かったところです。

まだこの二つ以外は確認していないので、何か新たな情報があれば、またお知らせするかもしれません。(笑)


とにかく最終回。
まずは「作家」編。作品単体で興味深いというよりも、その作家さん自体に面白みを感じる人特集。


「作家」編

岡田索雲



『メイコの遊び場』『マザリアン』

超能力幼女殺し屋の話と、そこに巻き込まれると生物無生物問わず巻き込まれた複数の物体・存在が融合してしまう("混ざりあん")怪現象が頻発するようになった世界の話。どらも超常現象設定で、かつどちらもぶっ飛んだ暴力展開が中心になっています。前者は幼女が罪の意識無く殺し屋稼業を(対象も基本犯罪者ではありますが)営んでいますし、後者の特に「ノミ」と融合した女の子のジャンプ力とキック力の描写は衝撃的でした。ノミのそれを人間スケールで見ると、どれくらい凄いものなのか。
「超常」と「暴力」というのは深夜アニメなどでも多数派を占める、ある意味若い世代のエンタメのお決まりのスタイルではあると思いますが、ただこの作者の力量&筆致の奥行きは、そうした"流行"という次元を遥かに遥かに凌駕するもので、驚かされました。

まず二作のスタイルが全然違います。前者は絵から文体から、戦後間もなく的なノスタルジック・レトロな"怪奇"的なもので、また"文学"的でもあり美学的でもあり、てっきりそういう作家さんなんだと思いました。ところが後者はほぼほぼヤンキー漫画的な直情性と下世話なユーモアセンスに満ち溢れていて、読んでいる最中は『メイコの遊び場』の人だとは全く/一切気が付かなくて、後で照らし合わせて仰天しました。どちらかがつまらない、"失敗"作とかならともかく、どちらもとんでもなく面白かったのに、このバリエーションは驚異的です。なんなんだという感じです。
「超常」と「暴力」についても、それぞれ非常に魅力的で熱の入った設定・描写ではあるんですが、印象的なのはそれらを扱うある種の"余裕"ですね。どうだこの設定凄いだろう、この暴力衝撃的だろうという上記"流行"作品でありがちな耽溺・陶酔が、全く無い
併せて現時点で何者なのかどれだけ奥があるのか、僕には掴めない人です(笑)。今後も注目して行きたいと思います。


林麦



『デンセツノ魔キュウ』『ツグミリミテッド』『ウインディ、サニー』

最初のは男女、残り二つは女女の、それぞれうっすら"恋愛"的な関係を魔法・超能力・霊力(?)といったファンタジー設定と日常性をさりげなく重ね合わせて描いた"青春"系作品。(それぞれ副題「魔女と野球と空飛ぶホウキ」「百合と団地と超能力」「海と団地と雨乞いの巫女」)
なんかいかにも同人的というか、年少作家によくある感じであんまり読む気しないかも知れませんが、スタイルがいいのかスタイル関係無いくらい作者の才能がわがままな程有り余っているのか、"スタイル"で到底定義できないレベルに面白いです。読者は楽しんでればいいわけですけど、多分同業者は嫉妬で死にそうになるタイプの作家だと思います。(笑)
ちょっと批評が難しいですね。真似することに意味の無い、孤高の才能。とにかく止める蹴るポジショニングするパスするドリブルするシュートする全ての動作がハイレベルで簡潔で効果的という感じの人。それ以外に言いようが無いというか。まあ違うスタイルだとどうなるのか、見てみたいような別にどうでもいいような。(笑)


若林稔弥



『僕はお姫様になれない+』『幽子さんは見られたい』

既にアニメ『徒然チルドレン』で僕を篭絡済みの作家さんの、なんかアウトテイク的なもの。
やっぱこの人凄かったんだあと、確認・再認識。幸福。(笑)
ストーリーというよりひたすら人間"関係"、感情の"ひだ"を描く人ですが、なんかとにかく達人ですね。言ってみれば高精度の"関節技"の嵐なんですけど、それが同時に"エンタメ"としての分かり易さ、"華"も持っているという。桜庭和志的な?(笑)
既に名は知れているはずの人なので、こういうのがUnlimitedで読めますよと言う、紹介まで。


大久保ニュー



『テツコの幕は今上がる』『名悶☆オラオラ高校~男の園に女教師ひとり~』『マヨイ姫』

なんか予想外に面白かったアングラ人情系作家(?)さん。
人生落伍しかかり女が行きがかりで小劇団を立ち上げてそこから復活して行く『テツコの幕は今上がる』を読むと、恐らく作者の背景は"演劇""劇団"なんだろうと思うんですが、そこから想定されるこってりした人間関係や市民社会斜め見的なマイナーアングラ価値観の"味わい"という需要を満たしつつも、そういう「ジャンル」に収まらない、でも何と言うのは難しい独特の抜けの良さを持っている人。浸りつつ抜けているというか。
『名悶☆オラオラ高校』もタイトル・副題からエロティックコメディかと思いきや、エロティックでないことはないしコメディでないことも無いんですが、どうにもそれで説明した気になれないそれ以上の手応えのある作品。ひねりはそんなに無いんですけど、設定とストーリーから想定される受け取れる感動が、常に最大値以上にある感じ。受け止めたつもりが倒されているというか。"林麦"さんと少し似た批評の難しさのある人かも。
『マヨイ姫』は方向がやや逆で、マッチョな肉体きっかけで始まった恋の真剣さを描いているようで、最終的に"肉体"の魅力の否定し難さが印象に残る感じの作品。(笑)


坂木原レム



『フルイドラット』『モンスターキネマトグラフ』『リサイクル』

色々描いてますが基本的には"異形"好きというか多分特撮(&日本軍?)マニアというか、そういう感じの人。そういうものに向ける視線の独特の湿気を含んだ"優しさ"というのが、特徴かな?
『フルイドラット』はドイツを中心にヨーロッパに点在するらしい、"鼠人間"の伝説を軽く踏まえた、現代の遺伝子操作人間の話。鼠女の妙なエロさ可愛らしさが印象的なこれが代表作の本格長編ですが、より秀逸なのは短編の『モンスターキネマトグラフ』の方。妙齢女性が(性を中心に)"興奮"すると怪獣に変身してしまうお馬鹿設定で、しかもそれが密かに戦時中日本軍の秘密兵器として使われていたというおいおいな話なんですが、いいんですね。
着衣引きちぎって怪獣に変身してしまうのも恥ずかしいですし、しかも"変身"したという事は"興奮"したという事もバレバレ(笑)でそれも恥ずかしいですし、そこに「秘密兵器」の悲哀がかぶさってかつしかしそれを支える人々の優しさや国から派遣された管理官との意外な恋愛展開なども重なりやたらめったらエモーショナルです。そして最終的に優しいです。趣味的ですがいい作品です。
こういう妙なユーモアセンスと優しさの随所に生きた、短編集『リサイクル』も良いです。今後の活躍が予想される、新進の作家さん。


イトイ圭



『海辺のオルランド』

アートな絵とアートな人間関係とアートなストーリーのアートな作品なんですが、物凄く読み易くてちゃんとストーリーが楽しめます。
読み易さは正義というか、結局のところ何よりの力量の証明というか。
特に漫画の場合は、ほぼそれで判断していいと思います。読み難いのは個性や作風ではなくて、単なる力量不足クオリティ不足。面白いものは、読み易いはず。


中山ユキジ



『絶対不発アトミックガール』

投げやりに描いているとしか思えない(笑)なかなかに"壊れた"ドタバタギャグストーリーなんですけど、他の同種の作品とは何か一線を画す体幹の強さを感じます。"逃げ"や"気取り"のドタバタではないというか。
こういうのはたいてい最初だけ面白くてすぐ飽きるんですけどもっと読みたかったですし(1巻で完結)、今後どういう作品を描いて来るのか凄く楽しみな新人。
とりあえずめっちゃ笑いました。(笑)


森もり子



『さよなら、ハイスクール』

web作家によるスクールカースト逆転知能犯ストーリー。
凄く今時な感じですが、こちらも"類型"と切り捨てられない確かなものを感じます。
・・・"類型"ではあるんですけど。(笑)
若い人は頭がいいなあという感じで正直ちょっとよく分からないんですけど、他の作品も評価は高いようですね。いずれ読んでみます。


・・・続いては「職業」編。



「職業」編

僕の作品チョイスの基準を大きく分けると、一つは前半で扱ったような作者のセンス自体に感じるものがあるもの、それからある種定番のスポーツもの、それからこれは"気が付くと"という感じなんですが、自分が興味があったり馴染みが薄かったりする業界の職業生活を描いたものと、この三つでだいたいまとめられる感じがします。
その三つ目。


・漫画家と編集



『マンガに、編集って必要ですか?』 青木U平

売れないオッサン漫画家が主人公という事で、土田世紀『編集王』



的な暑苦しい感じかなと思いましたが、違いました。女性誌から来た使えない新人女性編集との意外な心の交流と裏切り、アシスタントについている"編集不要"論を持論とする新世代漫画家の冷静な描き方と、一つ一つ丁寧に吟味された感じの素材で構成された、かなり面白そうな漫画家漫画。奥さんとの関係や今は出世した古参担当の描き方も面白かったです。要するに全部(笑)。先が読みたいです。



『なのはなフラワーズ』 青木俊直

こちらは女性専用アパートに住む男に免疫の無い女性漫画家の、男性編集との関係を描いた話。主人公はその編集に恋心を抱いているわけですが、それにほだされてその編集の"無能"に文句が言えなくなっている悲惨な話かと思ったら案外そうでもなくて・・・という。上の作品同様、「そう簡単に無能と断じてはいけない」という話で、漫画家と編集の単純には行かない関係を窺わせて興味深いです。


・IT業界



『チェイサーゲーム』 松山洋, 松島幸太朗

ゲームソフト業界の話なので「漫画」と並べて「コンテンツ」「クリエイティブ」という括りでも良さそうなものですが、何せゲームをほとんどやらない人なのでその距離感が"IT業界"という愛の無い括りに。(笑)
漫画自体はなかなか面白かったです。大物ゲーム会社社長(らしい)原作による、自社の具体的環境を大いに利用したかなりリアルらしいゲーム開発現場のあるある。特に企業訪問&新人研修編の、"新しい"業界にも関わらずやはり存在する大きめのジェネレーションギャップの話は興味深かったですね。"新人類"は常に新人類というか。変に勇気付けられました。(笑)



『フォレンジック刑事』 猿山長七郎

ITセキュリティの専門家の話。
大した漫画ではないですしノリはギャグっぽいですが、ほとんどの人は知らない業界でしょうから読む価値はあるかなと。


・webマーケティング



『マンガ版Webマーケッター瞳の挑戦!』 星井博文, ソウ, トレンド・プロ, 村上佳代



『マーケ企画部 四葉幸のハッピーオウンドメディア』 トレンド・プロ, 藤島昭, akino, インフォバーン



『Web担当者の悩み・問題を解決!価格交渉人ネギリエ』 星井博文, ソウ, トレンド・プロ

自社サイトやSNS等を駆使したwebマーケティングの現場で実際にどのようなことが行われているかを描いた漫画たち。
一種の「学習漫画」ですけど、意外と"漫画"としても面白かったです。特に最後の"価格交渉人"の女の人のキャラは良い。(笑)
全体としては、凄く地道な作業ばかりで、にも関わらずどうしても「壮大な詐欺」のような悪印象(社内の他部署から正にそういう目を向けられがち)もなかなかぬぐい切れずに、何をやってるかは一応分かったしそれなりに筋も通っているけど、出来れば自分ではやりたくないなと感じる仕事でした。(笑)


・その他の(怪しい)仕事たち



『うさぎさんのおしごと』 poko

"バニーガール"という非常に古典的な「女」売り仕事の話で、そう言えば何やってるんだろう、風俗とかキャパとかは、もうだいたいみんな知ってるけどという感じで興味深かったです。
基本的には「ウェイトレス」であって、お客さんの隣に座ったりもしないんですね、へえ。だからバニーとお話ししたい客は、結構工夫してその"時間"を作っている。それでもやはり、"お誘い"は色々とあるみたい。(笑)
エッセイ漫画として純粋にいい出来なので、"ついで"に読んでみてもいいのではという感じです。



『霊感保険調査員 神鳥谷サキ 漆黒の墓標』 ひとみ翔, 紫陽

「保険調査員」の話、ではありますがまあ、"霊感"です。(笑)
ただ"保険調査"の話としてもちゃんと出来ていて、やはり死亡事故等を扱う関係でどうしてもそういうネタは付きまとうようで、社内でそういう"案件"が得意な人振られやすい人というのがいるという話は、なるほどなと。その中にずばり"霊感"がある人も一定数いるという説明は、説得力がありました。



『霊能師・音羽マリアの浄霊ファイル(2)霊能師が教えるお墓マニュアル』 ひわときこ, 音羽マリア

こちらはもっとずばり"霊能師"ですけど、「墓」業界の話としても読めます。
今年のお盆からは一応墓参りくらい自発的に行っておこうかなと、改めて思ったりしました。すっかり親戚が集まらなくなったので、ご無沙汰してましたが。
この前のもそうでしたが、こういう"宗教"まではいかない緩い"霊能者"ものの世界観道徳観に、変に共通性があるのが面白いというか、説得的だなあという。ほんとにこうなのかもしれないというか、こうであるなら別にそれでいいかなという感じになります。


まあなんか散々お世話になっておいて「不要」論みたいなことを言ってしまった"Unlimited"ですけど(笑)、"無料"本より作品数自体は多いですし今回紹介した中にも"無料"化されていないものは結構ありますし、とりあえず一巡二巡利用してみるのは、特に普段そこまで漫画を読んでない人には十分に価値があると思います。
僕はもう、三巡四巡してしまったので(笑)、当分いいですが。

ではまた、今度は「無料本」紹介の時にでも。



テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
Kindle Unlimited 読み放題漫画単行本たちの感想 (第四回)
2020年01月29日 (水) | 編集 |
無料期間中限定の企画のつもりでしたが、うっかり間違って有料期間に突入してしまってたのでまた一か月分。(笑)
いい加減タネも尽きるかと思ってたんですが、尽きないですねえ全然。Kindle漫画の沼深し。


というわけで多分一回では全然終わらないですが、まずはこれまでにも取り上げた作家さんのものから。



『麻雀小僧』 押川雲太朗

『Let's Go なまけもの』の人。
作品に出て来た各地の雀豪たちが一堂に会して大会戦を行うというパターンは、福本伸行『天』の東西対抗戦あたりが有名だと思いますが、この作品は最初からそれを目指して構築された凝った作りのストーリーで、その分少しわざとらしさもありますが周到に練られた様々な"雀士"のタイプの描き分けは、やはり読み応えがあります。
その中で肝心の主人公("麻雀小僧")の打ち方が、一番に近い変則な鳴き麻雀なのも、面白いというかあえて難度が高いというか。充実し過ぎてもう当分麻雀漫画はいいかなという気にも、なるところはある(笑)作品です。真面目にこの後この作者、麻雀漫画描けるのかなというのは。




『グッバイ・ボールボーイ』『はまねこのアンサンブル』 高田桂

『サポルト!』の人がその3年くらい前?に描いた、同人誌掲載作品たち。(らしい)
一言、上手いです。上手過ぎです。可愛くないです。(笑)
・・・言い方悪かったですね、"可愛げない"に直しましょうか。(同じや)
実はこういう感想は、前回の『サポルト!』の時にも感じてはいたんですが、あれはまあ言っても"プロ"としての作品なので、"新人作家が全力でプロ仕様をクリアした完成度の高さ"ということで、とりあえずは受け取っていたんですよね。・・・それでも「ぶっちゃけ『ジャイキリ』より上手い」という(意味の)、不穏(笑)な感想が既に添えられていますが。
それに対して今回は、"同人"という紹介文から言うなれば"上手い"『サポルト!』作家さんのルーツが、よりプリミティブな段階の姿などが見られるかなというそういう興味もあって読んだわけですが、完全に当てが外れました(笑)。既に上手いというかプロ仕様というか、同人だろうと何だろうと、「高田桂」はいつどの瞬間を切り取っても「高田桂」らしいというか。(笑)
まあ僕も全然詳しくないですが、"同人"と言っても最近は要は流通形態としてそうだというだけで、古典的な意味での"アマチュア"性は必ずしも求められるものではないんでしょうけどね。ピンキリでもあるでしょうし。それにしても、僕が日頃読んでいる講談社系メジャー誌の"新人"作品やあるいは今回"Unlimited"でちらほら読んだ他の同人系作品と比べての、圧倒的な完成度の高さ洗練具合、可愛げの無さ(笑)に驚きました。個人的な資質なのか何かバックグラウンド的な理由なのか。
特に『グッバイ・ボールボーイ』は唸りましたね。"選手"と"サポーター"、それぞれの「道」を分かれて歩む幼馴染的関係の二人の少年の年月を描いた、あえて言えば模範的なサッカー文化"内"ストーリーなんですが、それをここまで読ませるとは。このひねくれ者の僕に。(笑)
という感じでまだ"創作の秘密"は謎のまま(笑)なんですが、ヴェルディサポのよしみ抜きにしても好奇心をそそられる作家さんなので、今後も研究(?)を続けて行きたいと思います。(普通に読め)
今までの題材だと、さしずめ"Jリーグの吟遊詩人"という感じですけどね。違うタイプの素材だと、どういう見え方をするのか。





『今日の授業は良い授業』 左藤真通

Unlimitedでは初めてですが、以前モーニングで『アイアンバデイ』というロボット業界の漫画



連載していた人の短編集。塾講師の授業運営の自己改革を描いた表題作や、中国の「科挙」を巡る独特の狂的な情熱を描いた作品やら将棋の"見る専"についての考察的漫画やら、どれも物凄く個性的で面白かったです。得意分野はロボットと将棋という事で、基本的にはデジタルな人なんでしょうけどね。ただそれと"狂気"に近い情念性が、妙に自然に接続されているのが独特。ほぼ"天才"という印象も受けますが、反面自虐も凄くきつい感じなので、それが今後どう出るかなという感じの人。


・・・次からは初登場の人。



『ドロユメ』 倉田青昂

僕の「今週のモーニング」系の記事をいつも読んでいる人は気が付いていると思いますが、僕はアート系の漫画というか、"絵"的な表現に意識の高い漫画には平均して冷たいというか、"一枚絵"的な上手さにはほとんど価値を置かないというか、漫画なんてのは見易さ読み易さが第一で、絵もいわゆる"漫画"的な絵、情報が多過ぎない絵がむしろ望ましいというそういう体質の人です。それに関して好みという以上の理由をあれこれ言うことも可能は可能なんですがそれは置いておくとして、ともかくこの作品は見るからにどちらかというと"アート"っぽい感じの質感の作品で、内容も「死んだとは思えないほど綺麗な死体」という紹介文で始まる"ミステリーホラー"という美意識っぷりで、逆になぜ読もうとしたのかの方が謎な部分もあるくらいですが、読んでみたらかなり意外な作品でした。
とにかく滅法読み易い。見かけ通り一枚絵の多い、セリフが少なくて絵を中心に進行していく漫画なんですが、それでいて読解や語りが停滞することが全くと言っていいほどなく、セリフが少ない分恐ろしくさくさくと読めるので、目も頭も疲れないけどめくりが追い付かなくてスワイプする指が疲れるという、変わった漫画(笑)。一巻一巻もすぐに読めてしまうので、読む時は先にまとめてダウンロードしておくことをお勧めします。(尚ここでは"全7巻"となっていますが先もまだまだあるので注意)
とにかく結構珍しい読書(漫画)体験だったので、ご報告しておきます。(笑)



『プルコギ』 富沢順, ハーロマ, 具光然

一方こちらはほぼ真逆というか、大阪のド大衆向けの焼き肉屋を舞台にしたコテコテストーリー。これはこれで振り切り過ぎ(笑)なところもあるんですけど、そもそも"プルコギ"って名前はたまに聞くけどなんやねんという興味から読んでみましたが面白かったです。
まあ"プルコギ"自体は朝鮮風焼き肉という程度の意味のようですが、この作品で主に取り上げられているのは「白肉」、つまり内臓肉を素材とする(赤肉ではない)もう一つの焼き肉世界。知らない事ばかりでしたし、それをめぐる焼き肉バトルやら在日&半島系闇社会の因縁やらのドラマ展開も、濃さと読み易さのバランスが良くて楽しめました。"必ずしも好みではないのに面白かった作品"として、『ドロユメ』と並べておきます。


「大阪」が出て来たところで、"地域"性の関連する作品でもまとめて紹介しておきますか。



『漫画 黒川温泉新明館』 柴田敏明

戦後間もない時期の熊本の温泉地黒川を舞台に、一人の跡継ぎ経営者が温泉地全体を立て直し盛り上げていく実話を基にしたストーリー。
というとなんかお仕事漫画というかビジネスハウトゥーみたいな感じですけど、中身は全然違って九州の山間部の小さな集落に住む人々の圧倒的な生活感や、少しずつ変化・発展して行く戦後日本の時代感がしみじみと伝わって来る、どう言ったらいいんでしようね、"怪奇"色抜きのつげ義春みたいな(笑)。乏しい参考材料で言えば。
一番感動するというか目をみはる感じがしたのが、地域的時代的に情報も資材も資金も圧倒的宿命的に欠けている中で、平凡な温泉地の経営を成り立出せる為の誰に教わったわけでもない細々とした試行錯誤的工夫や、必要とあらば新しい温泉設備そのものも自分で作ってしまう、それを苦労と感じてる様子もない言うも愚かな天然自然の"DIY"感覚。昔の人はすげえなというか必要は発明の母というか、超ブーメランだけど(笑)俺らやっぱり甘やかされて育ってるかなという、そんな気持ちになりました。監督の教え方がとかスポンサーの姿勢がとか、甘えた事言ってんじゃねえよ的な。(笑)
そんなに"面白く"描こうとしている感じでもないんですけど、妙に面白かったです。




『流転のテルマ』 蔵西

中華人民共和国内「自治区」より更に奥地の"西チベット"地域に行方不明の兄の捜索に向かった日本の若者の苦難の旅を描いた、紀行・冒険ストーリー。割りとオーソドックスな"少女漫画"的絵なので、少女漫画家がロマンチックな興味でエキゾチックな題材に手を出したのかなと思いましたが、どっこい作者はがっつりこの地域の愛好家のようで内容は本格的。それを描く為に漫画の方がある感じで、これがデビュー作のよう。
なんか不思議な感じの漫画です。絵はやっぱり少女漫画ですし(塀内夏子を甘くした感じ)、現地ガイドをめぐる"BL"的な関係の描写なども今時感がありますし、それと"チベット"の本格感のギャップがどうにも(笑)。どういうスタンスでどういう製作体制で描いてるのかなという。とりあえずどこに住んでるんだろうという。(多分普段は日本なんでしょうけど)
でも面白いです。山岳地帯の素朴な女の子たちも可愛いです。結構萌えます。微妙にエロいし。(笑)




『Artiste』 さもえど太郎

やや強引な分類ですが、"パリ"の漫画。パリの料理界・飲食業界を舞台にした漫画ですが。
新人らしいですが、何か盤石のクオリティ。出て来るのはフランス人ばかりですが、"借り物"感は無し。直接的には「料理」「料理人」の世界を描きつつ、それが同時に表題通りの"アーティスト"の感性の世界の描写にもなっています。
"盤石"過ぎてあんまり言うことも無いんですが、ここ(1巻のみUnlimited対象)から"料理界"の重厚な人間ドラマとして展開していくのかそれとも気弱な天才料理人の主人公の内面を掘り下げて行く感じなのか、まあ両方ではあるんでしょうけど後者の比重が高くなった方が、"興味"としては増すかな「料理」そのものを描くには向いているかなという感じですが、どうなんでしょう。




『BOOM TOWN』 内田美奈子

更に強引に(笑)、"BOOM TOWN"という商業用ヴァーチャルシティという"地域"を舞台にした漫画。
主人公は、そこに起きるバグやハッキング等の治安紊乱行為・現象の防止・抑止・取り締まりに当たる職業的専門家の一人。ただ単体の巨大な敵や陰謀が登場するわけではなく、"攻殻機動隊"よりはだいぶ日常的な治安活動を描いていて、その分ヴァーチャル領域での生活についての考察や描写もきめ細かな感じ。そこが見所ですかね。
面白いと言えば面白いのは、そこに登場・常駐している"NPC"的なヴァーチャル人格たちが、自分たちがそういう存在だという事を知っているんですよね。それによる個別なアイデンティティ・クライシスのようなものも起こるは起こるんですが、そこからよくある"AIの人間への逆襲"みたいな大雑把な話にはならずに、あくまで個別の案件・エピソードとして進行処理されて行く感じが独特かも。
淡々とした描き方もあってここが面白い!と言い辛いんですけど(笑)、こういう"先端"的でSF的な素材をそういうタッチで表現している出来ているのが、一番の特徴でありまた一番の作者の力量の証な気がします。『攻殻機動隊』も表現は抑制的ではありますが、あれは一種の"ダンディズム"としてそうなっているのであって、そういう自意識すらこの作品には特に窺えないんですよね。もっと"何でもない"事のように未来的技術が取り扱われている。(説明が難しい(笑))


まだまだ沢山あってどこで切っていいのかよく分からないんですが、一応"10作"紹介したという事で、今回はここで区切りとしておきます。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
Kindle Unlimited 読み放題漫画単行本たちの感想 (第三回)
2019年12月17日 (火) | 編集 |
第一回第二回
無料体験期間中としては、これが最後
掘っても掘っても出て来ます。(笑)
期間中他の事が全部おろそかになっていたので、いったん離れていずれ常客として帰って来る予定。


今回もほぼ読んだ順。




『オーレ!』 能田達規

ここで登場の能田サッカー漫画
JFL降格寸前のおんぼろJ2クラブを、嫌々出向して来た市役所職員(のち球団職員)が立て直す話。
こういうストーリーに付き物のお馴染みのメニューを一揃い忠実に揃えつつ、その一つ一つに"あるある"に留まらないディテールの力強さと創意のある傑作。
ただ"傑作"であればあるほど、主人公の"仕事"が優れていればいる程、そもそもその仕事自体に"行きがかり"や"こだわり"以上のどんな意味があるのか、零細"プロ"スポーツチームの価値なんてものを「情」(じょう)や「洗脳」以外でどのように第三者に認めさせられるのかという根本的な疑問も湧いて来なくはなく、だから作者もまず自治体職員の立場からの「町おこし」という目的を公的に軸に据え、そしてある意味蛇足にも思える「世界的クラブ」までの出世という慌ただしいエピローグを付け加えたのかなと。
つまり本来それくらいの目標が無いと、一般的には存在価値が無い、税金投入や出資を依頼する名分は無いものなのではと。そうでなければ、本当に出したい人だけが金を出して細々と続けるのが分相応なのではないかと、スポーツチームなんてと、そこまで言っては"読み"過ぎかもしれませんが。
まあ他の作品を読んでないので、想像です。




『カナヤゴ』 日笠優

少女刀鍛冶師の話。
漫画としては、"素直に描いた"という以上のものではない部分はありますが、それだけに逆に、「日本刀」「刀鍛冶」の世界そのものの凄みが、"素直"に伝わって来ます。
以前こんなの



も読んだことがありますが、(日本)刀鍛冶の世界ってほんと独特の"神"(しん)の入った迫力があって、伝統的に神職と深い関係があるのも納得が行きます。日本が「神国」である可能性を、束の間考えさせるというか。(笑)




『癒やしのエステ風俗嬢』 犬原みーたん

"風俗"(嬢)ものというジャンルには独特の難しさがあって、最低限人の興味は惹けるし(だから僕も読んだ(笑))分かり易い"裏表"があるからドラマは作り易いし、ある程度のものにはすぐ出来る。でもそれ以上のものにするのは逆に難しくて、そもそも求められているのかも怪しい。
そんな中でこの作品は、恐らくは作者自身のセンス・感性によるのでしょう、現代的な風俗嬢が直面する様々な葛藤や、もう一つの軸であるヒロインとその元カウンセラーとの間の洗脳的ストーカー的な"恋愛"関係(とそこからの解放)を、単に取材しました勉強しましたという以上のはっとさせる洞察力やリアリティで描いていて、ある種"不意打ち"的なインパクトにしばしば見舞われました。「実録」ではないけれど「迫真」というか。
今のところ同種の作品しか見当たりませんが明らかに才能のある作家さんで、ヒロインが風俗を嫌になったからではなく、風俗嬢生活を通して得られた成長によって風俗の枠に収まり切らなくなって卒業して行ったように、作者自身もいずれこういうジャンルを"卒業"して行くんだろうなと、そんな予感に駆られた読後感でした。





『麻酔科医ハナ』 なかお白亜

こちらはまあ、「麻酔科医」という珍しい世界が覗けるという以上の取り柄は特に無い作品。(笑)
でもそれだけでも、読む価値はあると思います、読み難いところもありませんし。



『B(べー)ブラームス20歳の旅路』 留守key

後の大作曲家ブラームスの青春時代を、史実を基に想像して描いたストーリー。(のよう)
音楽的な素養はしっかりある作者で色々興味深くはあるんですが、作品としては明らかに分量と設定が合ってなくて、未完成以下というかこれで評価しろと言われてもなという感じ。
むしろ一番面白いのは、折々に挿入される当時の音楽事情についての解説文の方かも。



『流水さんの霊能者行脚』 流水りんこ

第一回で取り上げた霊能者斎(いつき)&小林薫ペアの周辺人脈の人による霊能物で、世界観的な共通性が多いので、補完的に読むと面白いです。あっちが面白かった人は是非。



『KIMURA~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~』 作・増田俊也、画・原田久仁信

こちらも第一回で取り上げた梶原一騎の自伝的昭和格闘技界漫画『男の星座』を、作者(増田俊也)自ら"引き継ぐ"つもりと公言して書かれている作品。元はノンフィクション本。
ただこちらの主人公はあちらではやや引き立て役的だった柔道家木村政彦の方で、読んだところまででは最終的に力道山とどういう感じになるのかはまだ不明。ともかく木村政彦がいかに不世出の実績を誇る柔道家なのかと、そしてこれは意外でしたが"神経質な天才柔道家"とかではなくてむしろ豪放磊落な大馬鹿タイプであった様子がたっぷり描かれます。基本「力」の柔道なんですよね、意外。




『ちゃんと描いてますからっ!』 星里もちる

父親が漫画家なんだけれど、ネームを切るところまでしかやらないので、幼い時から作業に慣れ親しんでいる上は中学生の娘たちが(密かに)絵を描いて仕上げて連載をこなしている一家の話。(笑)
まあ別に虐待とかではなくて、単に駄目なお父さんの話なんですが、背景には恐らく「絵を描くのめんどくさい!!」という漫画家としての作者の血の叫びがあるんだろうと思います。(笑)
それが切実だから、嫌な感じを受ける話にはならないというか。
漫画家の日常みたいなものも当然見れて、楽しい作品。




『牌賊!オカルティ』 片山まさゆき

麻雀における"デジタル"(純粋確率)派と"オカルト"派(「ツキ」「流れ」「経験則」等)の対立を描いた作品。
直接的には、隆盛しているデジタル派に対するオカルト派の逆襲を描いているわけですが。
勿論体裁はギャグ漫画ですし、意外と淡々とストーリーは推移するんですが、型通りの「デジタル」に対する作者の深く静かな怒りというかやり切れなさみたいなものが感じられなくはないです。
サッカー界では、そもそもちゃんとデジタルにやれるチームの方が圧倒的に少数なので("プロ"でも)、今のところはほぼ理論的な遊戯のレベルに留まっている議論だと思いますが。
何にせよ毎度この人の麻雀漫画には、独特の迫力がありますね。デジタルな実力があった上でのオカルトというか。




『コンビニいちばん!!【完全版】』 作・末田雄一郎、画・人見恵史

今回一番驚いた作品、ですかね。
大手コンビニ・チェーンのエリア別巡回指導員の世界を描いた作品で、まあ業界物としてコンビニあるあるにでも触れられたらいいかなくらいの感じで読み始めたんですが、"仕事漫画"として出色の出来で、堪能しました。
面白かったのは「ストーリー」と「キャラ」の構造で、基本的には"ケーススタディ"として主人公が担当各店舗の"問題解決"に当たる一話完結型のストーリーなわけですが、ただ定期的に出張や新規開店などはあるものの職務形態上主人公は担当エリア内を"巡回"しているわけで、結果的に同じ店舗、同じ店長なりアルバイトなりが、それぞれ違うタイプの"例"として何度も出て来るんですね。つまり「解決」はしてもやり捨てにはならなくて、"その後"がちゃんとある。店舗とそれを取り巻く人間関係が、それ自体一つの"キャラ"として成長していくわけです。

例えば探偵もので、特別な依頼人なり被害者なりが、主人公に救われたのち助手としてレギュラーに繰り上がるみたいなケースはよくあると思いますが、この作品の場合はそういうことがあちこちで日常的に起こって、「一話完結問題解決」型にしては異例の分厚いストーリー&キャラ構造を形成している。多分それは狙ったものではなくて主人公の職業形態から結果的に生じたものだと思いますが、それをやりこなせる原作者の確かな技量もあって、非常に読み応えがあります。例えば最初の"問題解決"が内在させていた別の問題やその解決のその後の影響なども結果的にフォローされることになって、「仕事」の描写としてなかなか無い本格的なものになっている。
繰り返しますがこうした特徴は必ずしも計画的なものではなく偶発的なものだと思うんですが、ストーリー作りの一般的技法としても面白いものだと思うので、是非他ジャンルの他の作家さんもやってみたらいいと思います。(笑)

作者自身コンビニ店長体験を持っていて、勿論"業界"ものとしても十分過ぎる面白さ。
時代的には「ビデオ」と「プリクラ」と「ブラウン管テレビ」の時代ですけど、特に古さは感じませんでした。




『トリック・スター』 作・末田雄一郎、画・高梨みどり

というわけで同じ原作者のものを、探してみたのがこれ。
改めて見てみると実はかなり売れっ子の原作者(末田雄一郎Wiki)のようで、モーニングの『駅員ジョニー』あたりは見覚えもあるんですけど(他『蒼太の包丁』など)、割りと泥臭い作品が多くて食指が動かない中、これは"アイスホッケー"という素材が興味深くて読んでみました。
面白いです。これも泥臭いは泥臭いんですけど、セリフの切れ味というか冗談のセンスが訳の分からない突き抜け方をしていて、スポーツ選手の世界という事もあって、ひょっとして「頭のいい脳筋」みたいなものが存在するのかな、存在するとこんな感じなのかなこういうスポーツ選手って結構いたりするのかなと、想像したりしました。
ま、基本的には原作者のセンスだとは思うんですけど。ほんと硬軟自在というか、それこそデジタルオカルト(アナログ)両方強い感じの人で、底が見えません。いずれ片っ端から読んでみたい感じですが。
ストーリーとしては、アイスホッケーのプロ化問題を背景とした話で、結構意図的にJリーグをめぐるあれこれを陰画にしている感じで(オリジナルは94年)、それはそれとして書く目的だったのかなという感じ。二巻しかないので慌ただしくはありますが。


以上。
ではまた。(笑)


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
Kindle Unlimited 読み放題漫画単行本たちの感想 (第ニ回)
2019年12月10日 (火) | 編集 |
間隔置かずに第二弾。(前回)
それだけ読んでるということですけど。まだ無料期間一週間あるけど、またやるのかな。(笑)
"レビューの評価の高い"順に検索して行って、それがちょうど100ページ目までというのが今回分。


今回もほぼ読んだ順。

まずは"かっぴー"作3作品。




『原作版 左ききのエレン』(既刊16巻。14巻からシーズン2)

ちょうどドラマをやっているのは全然知りませんでした。(未見)
少しややこしいですが本人作画によるこの"原作版"web漫画がまずあり、その好評を承けて作画を別の人がやったジャンプ+連載の"リメイク版"が描かれ、それの重版出来を待って(本人談笑)シーズン2が開始され、そこにドラマも挟まるというそういう流れのよう。

そういう予備知識は無しに読み始めましたが、まず度肝を抜かれたのは絵ですね。

eren1eren2eren3

上は最初の3ページですが(なか見検索より)、天才画家と代理店のデザイナーを主人公とするらしい要は"絵""美術"を題材とする漫画を、上手い下手は置いておいて(ま、下手なんでしょうけど当面(笑))この絵柄で描いてしまうという思い切りというか意識の澄明さに圧倒されました。
実際内容もその通りで、美術をめぐる、それを中心とする"才能"をめぐる(副題「天才になれなかった全ての人へ」)、更にそれを取り巻く広告代理店&ファッション業界の"先端"的で"華麗"かつハードでハイソサエティなビジネスの世界という、抽象的で極度に知的で関係するあらゆる人の自意識の暴風雨が渦巻いているような題材を、恐ろしく明確にさっぱりと、尋常じゃない読み易さで読ませる力量というか"デザイン"力に驚きました。相当鬱陶しい題材なはずですけど、スパッスパッという感じで読めます。かと言って単に"読み易さ"に主眼が置かれているわけではなくて、才能とは何かビジネス・仕事とは何かという"テーマ"の追求自体にはド直球の厳しさのある作品。(というかそれが目的。"文体"の問題は付随的)

余りに全てがピタッとハマっているので、何だろうこれは、単に天才という事なのだろうか(でも副題からすると天才"ではない"という自意識で描かれているっぽい)、仮に天才だとしても、これは自分が正に描きたい自分自身の中核に近い素材を新人が怖いもの知らずの勢いで描いた(絵からはそう想像しますよね(笑))、その"時期"だから生まれる特別なバランスなのではないかとか、色々考えながら読んでいましたが。(その時点では7巻まで)




『アイとアイザワ』(全2巻)

で、てっきりUnlimitedでは7巻までしか読めないと勘違いしていたエレンの続きは放っておいて(実際は全部読めます)、何の気なしに手に取ったこの作品。

視界に入る情報を瞬時に記憶する“カメラアイ”の持ち主である女子高生・アイ。彼女は人工知能の研究機関・NIAIが開発するAI「アイザワ」に恋に落ちてしまう。そこから始まる人類の存亡を賭けた恋と戦いの冒険譚。

という話ですが、読み終わるまでそのかっぴーの原作作品(作画は別)だとは全く気づきも連想もしなくてびっくり。
これはこれで間違いなく優れた作品で、題材としてはある意味よくある"AIと意識/意識・自我とは何か""そのAIの人類への反乱"的なあれですが、それを巧みな設定とクリアな思考・説明で、類似他作品と比べても抜群といっていいレベルの徹底性と網羅性と精度で、しかも全2巻というかなり狭いスペースで一通り描写し切っている非常に優秀な・・・何というか"脚本"で、言われてみればさすがかっぴー氏(笑)という気にはなるんですが。
ただ面白いか面白くないかというと、さほど面白くない。面白くないというか・・・興奮しない。頭でっかちというのとは違うんですけど、知性だけで読んでしまう感じ。通り過ぎるというか。





『金子金子(きんこ)の家計簿』

こちらはかっぴー氏本人作画による、僕もそうと知った上で(笑)読んだ作品。
面白い。文句なく面白い。
"お金"をめぐる、現代おしゃれ人種群像的なギャグ漫画であり、また『左きき』の"ビジネス"パートだけ少し持って来たような、実際に代理店業界で働いていた作者のある意味最も得意というか、ホーム的な内容を気楽に描いた作品のようですが。
これだよねという。この"スパッと"感。この説明尽くして余り無しの、"そういうものとしてそこにある"感じが、かっぴーだよねという。
今度は"新人の勢い"的なニュアンスはまるでないので、要はそういう人なんでしょう。
内容は全然違うけれど、『左きき』の時にあった生理的快感・興奮が、この作品にもあります。

それを可能にしているのは・・・結局"絵"かなという。つまり『アイとアイザワ』との比較で言えば。
上手いとか下手とかではなくて、"本人の絵"であることが大事。原作者・脚本家単独としての可能性は、『アイとアイザワ』においてもある意味十分過ぎる程見えるわけですけど、それはそれとして&それにも関わらず、"かっぴー"が本領を発揮する為にはやはりかっぴーの絵が必要で、つまりかっぴーはなんだかんだ「漫画家」であると、「アーティスト」であると、知性だけではなく生理の表現が必要な人であると、そういう話。

・・・突飛なようですが(笑)、なんかジミヘンとか連想しちゃったんですけどね。ジミ・ヘンドリックス。
曲がいいとかスタイルが革新的とか、色々な褒められ方はするけれど、結局"ジミヘンがああいう風にギターを弾く"ことによって、初めて成立する芸術という意味で。
それを取っちゃうと、つまらないとは言わないけれど、単なる知的なものになるという。分析的というか。
曲だけだと批評、ギターも弾き出すといきなり"爆発する天才"になるという。

なんか変な事言ってますけど、それだけ表現としての"一体感"があるという話ですね、前提として。
ジミヘンで言えば曲と演奏の、かっぴーで言えば内容と絵の。"知的"な内容を単に"知的"で終わらせない。"生き物"として動かす。
かっぴーの絵はジミヘンのギターであると。ないしがっぴージミヘン説。左ききだけに!(お後がよろしい?)

ジミヘン知らないとかいう人は、別にいいです(笑)。ほんとただの比喩なんで。どちらかというと、分からなくて当然の(笑)。まあ絵ある場合と無い場合との違いを、見比べてみるのは、実際面白いと思いますよ。



他にもまだまだ傑作群。





『やれたかも委員会』 吉田貴司

これはなんか、ドラマになってたのを知ってた気がします。見てはいませんが。
あの時違うように振る舞っていれば言っていれば、やれたのかな?という、男子永遠のテーマ(女子もでしょうけどやはり切実さでは(笑))・心残りを、男二人女一人という構成の"委員会"がやれたやれなかったで多数決で判定してくれるという、そういうシチュエーションの一話完結シリーズ作品。

面白いのはこの"委員会"の構成で、最初は出るエピソード出るエピソード、ことごとく男二人が"やれる"判定で女一人が"やれたとは言えない"判定なのに首をひねって、もっと紛れさせないのかなケースバイケースじゃないのかなと構成の単純さに疑問を持ちましたが、その内気付いたのはこれは単に"対立"ということではなくて、"男の視点"の「限界」を示す意図的な構成なのだなと。
つまり男が特に男に甘い判定をしなくても、男"なり"に客観性を持とうと努力したとしても、精一杯出来て2/3、約7割なのだと。"男としての"100%の裏に、"女"の30%常に残るのだと、そういうことを示しているのではないかなと。
まあ単純に女審査員の説明する「やれたとは言えない」理由になるほどと思ってしまうことも多いわけですが(笑)、仮にそんなに説得力が無かったとしても、"構造"としてそうなのだという話。
男は男でしかない。残念ながら。あるいは幸いに。(笑)

面白かったです。が!一巻でお腹一杯になってしまったので、二巻以降は読んでいません。
一巻の範囲で、十分に僕の青春に蹴りはつきました。(笑)





『セイバーキャッツ』 山本貴嗣

人類が宇宙中に植民している時代における「中国武術」の価値を問うたアクションSF。
なんのこっちゃという感じですが(笑)、でもかなりマジな作品です。(笑)
中国武術の"考証"は大本気だし、人類文明の発展・拡大の果てに残る(中国)武術の改めての価値という問いもマジです。
まあ答えは言いませんが。(笑)
ストーリーとしては割と普通ですが、随所で武術に伴う中国哲学が深みを添えていて、面白かったです。



『中国少数民族いまむかし: 西江・元陽をめぐる旅』 まえだなをこ

タイトル通りですが、色々かわゆいです。ゆったり旅エッセイ漫画。絵が綺麗。
"少数民族の素朴な美少女"のイメージの喚起力たるや。(笑)



『ギフト』 ナガテユカ

実行犯としての女子高生解体人を含む、アンチヒーロー臓器売買業者の話。
テーマとしての「生命の(本当の)価値」や民主主義的道徳の意味の問い直しは、深いような浅いような、納得するところも無いこともないけれど・・・くらいですが、絵と筋運びが上手なので内容の割りにストレスなく読めます。



『Let's Go なまけもの』 押川雲太朗

元雀ゴロでその時代に稼いだ数十億でのんびり暮らす"なまけもの"おじさんと、ド天然のポジティブ馬鹿のお嬢で、負けても負けても自分が麻雀が下手だと全く気が付かずに高レートの麻雀に飛び込んで行く困った女の子との友情と恋?「麻雀の強さ」の描写・考察が、かなり分かり易くて面白いです。





『編プロ☆ガール (主任がゆく!スペシャル)』 川崎昌平

だだでさえの出版不況の中、出版社の下請けで更に過酷な環境で働く編集プロダクションの社員たちの出版業界残酷物語。・・・のはずなんですけど、最終的にはそれでも"働く"って素晴らしい"本"て素晴らしいという話に着地してびっくりという内容。(笑)
別にブラック労働を肯定しているというわけではなくて、"業界"の構造的問題は当然指摘するんですが、ただそれはそれとして「本」が好きである、そして編集プロダクションで働くのは大変だし金にならないけど、面白いか面白くないかと言えば結局面白いという、そういうことみたいですね。
二周くらい回って感動に行き着く本です。(笑)

漫画に添えて、その回の内容についての解説がいちいち設けられていて、それも面白いです。



『野宮警部補は許さない』 宵田佳

警察の内部監察の予備みたいな部署の話。
そこを仕切る、あえて出世コースから外れて来たとんでもなく性格の曲がったイケメン(元)エリート警部補と、それに振り回される新人熱血女性警察職員の話。
設定としては色々とありそうな、"アニメ化前提"みたいな感じもしないわけではない(笑)作品ですが、その警部補の"性格の悪さ"の描写やそれと密着した捜査テクニックの"謎解き"的な面白さが、「機能」的にとても高くて読ませます。"内部監察"に伴う「善悪」の感覚も、なかなか繊細で面白いです。単純な正義感ではないけれど、一周回ってなるほどそういう風に"断罪"するのかと、やっぱり悪いことは悪いよねという、そういう心地よさもあります。
ある意味理想的な「警察」ストーリーかもという。アニメ化・・・しそうだなあ(笑)。色々狙いが正確な作品。


沢山読みましたね。
レビュー評価もろ上位よりも、その少し下くらいに、僕が面白いと思うものが集中しているということかも。
さあ"100ページ"以下はどうなっているでしょうか。(笑)


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
Kindle Unlimited 読み放題漫画単行本たちの感想(第一回?)
2019年12月03日 (火) | 編集 |
8インチタブレットで電子書籍(つうか漫画)を読むコツを掴んで、ほぼ疲れずに無限に読めるようになったので、KIndleの書籍読み放題サービス"Unlimited"一か月無料体験に申し込みました。
まだ二週間くらいですけど、その間に読んだ面白かったものを紹介。あくまで"無料体験"の範囲なので、Amazonアカウントがあれば誰でも確認可能ですし。

ほぼ読んだ順に。


『霊能者ですがガンになりました』 小林薫



からの・・・

『強制除霊師・斎』シリーズ 小林薫




実在の"強制除霊師"斎(いつき)さんのガンとの闘病を描いた漫画をまず読んで、そこでのいつきさんのパーソナリティが魅力的だったのでそもそもの"強制除霊師"シリーズも読んでみたという流れ。
後者の表紙はおどろおどろしくて正直前者が無ければ手を出さなかったと思いますが、内容はどちらも凄くさっぱりきっぱりしていて読み易いです。あえて言えば、生者も死者も、さっぱりきっぱりして余計なトラブルを引き起こさないようにしましょう!という作品。(笑)
前者は特に、お坊ちゃま&理系馬鹿で患者対応が全くなってない主治医に憤慨しつつ、しかしある意味彼の幼稚ではあるけれど嘘のない"合理性"をさっぱりきっぱり(笑)認めてあげるあたりが面白いですかね。


『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』 荒いママレ




という流れでもう一つ医療系。
「薬剤師」というレア&日陰の題材を用いつつ、作りとしては「医療」ものとして求められる"医療現場あるある""患者への想い""医学的問題解決過程の知的快感"といった要素をすっきり完璧に典型的に描いた、ある種"模範的"な作品。まあたくまず素直に作ったという感じですけど。とにかく満足度は高いです。
勿論「薬剤師」という題材も興味深いというか、"医療従事者"の世界の中でどういう位置にいるのか、これを読んで初めて知ることは多かったです。例えば"救急医療"の時にどう振る舞うのかとか。



『ナナのリテラシー』 鈴木みそ



『限界集落(ギリギリ)温泉』 鈴木みそ




どちらも広義の"コンサル"業についての漫画。
前者は名物変人凄腕コンサルが社長を務める会社に職業体験に来た天才女子高生が、いきなりの実地でコンサル業務の何たるかを急ピッチで学び、社員化→独立へと至る過程を追った漫画。(と一応紹介しておこう)
飛び切り優秀な女子高生"ナナ"がストレートに出して来る「正解」や「合理的提案」を、"グル"(導師)たるおっさんコンサルがずらして包んで視点を転回して「大人の正解」にたどり着かせるストーリー構造はオーソドックスと言えばオーソドックスですが、その過程で二人が特に暑苦しく(or白々しく)ぶつかったりせずにあくまで論理的に淡々とナナが"成長"していくところが特徴的で面白いところであり、あるいは作者はもう少し長いシリーズにするつもりだったのに打ち切られたらしい、人気が出切らなかった原因でもあるのかも知れません。
ポテンシャルとしては"名作"級のものを感じますけどね。モーニングの"三田紀房"(『ドラゴン桜』)枠は、今度この人にあげて欲しいというか。(笑)
『限界集落(ギリギリ)温泉』はこの人のそれ以前のヒット作で、タイトル通り限界集落の村おこし"コンサル"の顛末を描いたもの。こちらはアイドル&オタクカルチャーの通り一遍でない理解と、それを村おこしの原動力として手段化する工夫のあれこれが面白いです。
二つに共通しているのは書籍/漫画を筆頭とする"コンテンツ"産業の未来、それをどのようにコンサル(笑)して行けば生存可能なのかという、作者の根本の関心。今のところは、「個別にはやりようがあるけれど基本的にコンテンツで食うのはもう無理だ」という結論のようですけど。(笑)


『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』 佐倉色



関連して、新人漫画家の受難を通して、「出版」&「編集」(者)業界の宿痾的不合理を問題提起したルポ漫画。
読んでいると"職業倫理"全般の問題として、「ニッポンもう駄目じゃね」という気にさせられますが、一応この作者がかなり"不運"な目にあったケースではあるようです。
漫画としては、内容の割に凄く読み易いです。それ自体"罠"でもあるんですが作者が編集に酷い対応をされる都度何とか踏ん張って感情的にならないようにするので、決してヒステリックでも攻撃的でもありません。(それが逆に切ない(笑)。狂った世界では先に狂った方が強い。(笑))



『サポルト! 木更津女子サポ応援記』 高田桂




ヴェルディサポとしてもお馴染みの高田桂さんによる女子高生サポーター漫画。(対象クラブのホームタウンは木更津ですが、中身はまあまあヴェルディ(笑))
全くの一般人から行きがかりでゴール裏に放り込まれ、そこからスタジアム観戦や声出し応援の楽しさを一つ一つ発見して行くヒロインの姿を中心に、"サポーター"カルチャーを肯定的勧誘的(笑)に紹介しているストーリー。(1巻)
ぶっちゃけ基本安楽椅子観戦(探偵みたいに言うな)の僕が共感し易い内容とは言えないわけですが、不思議に"入って"来ました。ヒロインたちがその"瞬間""瞬間"に感じた事自体は、確かな手応えで伝わって来たというか。(勧誘はされませんけど(笑))
「素直」に描いている(から伝わって来る)という印象と、一方でそれ自体としてはシンプルな設定を、とことん自分の中に落とし込んでから描いている(から伝わって来る)という印象と、両方のある作品でした。
・・・余計な一言ですけど、ジャイキリもこれくらいやってくれれば認めるのになとか。(笑)
その中で最も「批評」的かも知れないのはイギリスからの帰国子女のサポ仲間の存在で、彼女の口にする「地元」(のチームを応援すること)に対するイギリスと日本の感じ方の違いという視点が、この後発展したりすると面白いですけどでもそれだと理屈っぽくなり過ぎるかなとも。(笑)
ま、続きは続きで。面白かったです。


『男の星座』 作・梶原一騎、画・原田久仁信



これも"スポーツ"もの?
梶原一騎の遺作で、梶原漫画の格闘技世界を自伝的に改めてトレースしたというか『大甲子園』したというか、そういう作品。
中心は力道山と大山倍達で、『空手バカ一代』とは結構違う"真実の"大山倍達と、そして何より今までスポット的にしか描かれることの少なかった力道山のプロレスラー人生を、かなり包括的にきちっと描いているところが見どころかなと。
・・・ぶっちゃけ普通の人にとっての「力道山」は、「相撲取り→空手チョップ(シャープ兄弟)→疑惑の木村政彦戦→チンピラに刺殺」くらいで終わっちゃうと思いますが、その"木村政彦"と"刺殺"の「間」に詰まっている実はここが本体の"プロレスラー力道山"の活躍・苦闘がたっぷり描かれています。正直僕も、今更初めて力道山に尊敬の念を抱いた感じでした。そもそもそんなちゃんとした技術(中身)のある格闘家だとも知らなかったですし。

漫画としてはまあ、"梶原一騎"です(笑)。1985年の作品ですし。そういうものとして、十分読み易いですけど。


とりあえず以上です。
"後半"二週間分をまたやるのか、あるいは有料(笑)会員として継続するのか、そこらへんは未定で。


テーマ:漫画の感想
ジャンル:アニメ・コミック
よしながふみ対談集『あのひととここだけのおしゃべり』
2014年04月28日 (月) | 編集 |
漫画評論系レポ第二弾。
特に繋がりは無いですが。

全体テーマは・・・・「少女漫画」「BL」かな。
『大奥』『きのう何食べた?』のよしながふみさんホステスによる、女性作家対談集。


よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべりよしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり
(2007/10/04)
よしなが ふみ
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やまだないと&福田里香編

"少女漫画におけるタバコ"

福田 キャラに吸わせるとほんとのほんとのことは態度でも言葉でも言いたくないんだ、っていう強烈なテレがあるっていう意味になるんだよね。(中略)
福田 キャラがタバコを吸うっていうことは食べ物を食べなくてすむっていうことなのよ。そうすると腹の底が見えないんだよね。
(中略)
よしなが これだけ日本人の喫煙率が下がったのに、あいかわらず少女マンガの中ではタバコ吸うんですよねえ。
やまだ でもあいつらさ、タバコ吸うけど箱もってないんだよね。魔法のタバコ(笑)。だからあれは記号のタバコでしょ。あれはイワキの葉っぱと同じなのよ。(笑)
(p.34-35)

(モー2に描いてた)やまだないとって女だったんだ、という程度の認識ですが。
なるほどねえ。多いか少ないかはともかく、男漫画より女漫画の方が遥かに喫煙シーンの印象が強いのは、やはり"男"の記号として未だにタバコが強い存在感を持っているということなんですね。
実際に今喫煙の女ウケがどうなのかはよく分かりませんが、たまに堂の入ったタバコの吸い方をしている人を見かけると、かっこいいとまでは思いませんが同性として微妙なプレッシャーを感じるのは確かです。(笑)
そのぶんセックスアピールも健在でも、おかしくはないだろうという。
"イワキの葉っぱ"というのはこれですね、念の為。(笑)

岩鬼

水島新司の名作野球漫画『ドカベン』の名物キャラで、いつも口に咥えた葉っぱを手離さない、草食男子の先駆け。(最後のは嘘)

"オタクと世代"

よしなが 福田さんによるとオタク憎み世代だっていうんですよね、岡崎京子さんの世代の人たちは。
福田 (中略)岡崎さんはすごく憎んでるの。オタク・フォビアみたいな感じで。そういうインタビューも残してるんですよ。
でも、それが羽海野さんになってくると全部並列なんですよ。おしゃれなこともオタクも。
(p.37)

まあ"世代"というか、(当の漫画業界の人にすら)嫌悪される理由は確かにあって、それは未だに解決も克服も別にされてはいないとは思うんですけど、時代が一回りして単純に既成事実化する、気が付いたら"オタク"的なものが周りにあった"世代"になると、意識性が薄れるのはまあ、理の当然世の常ですよね。
Jリーグの"サポーター"も、同様の理由で「空気」化しつつ、しかしそのことによる増長が逆に意識・反感の先鋭化を改めて招いているという、比較すると少し複雑な状況ですが。


こだか和麻編

"「ゲイ」と「男」と「BL」"

よしなが (前略)女の人がいかにもゲイの人らしいゲイが苦手なのは、憧れないからだと思うのね。ゲイの人たちは差別されていて、女である自分たちと同じように差別されている人たちだから(中略)
こだか なるほどね。だから、BLのように、男の人同士の話になる、と。
(p.120)

昨今猖獗(しょうけつ)を極める"BL"に対する、「何で女はそんなにホモが好きなのか」という、大多数の男による素朴で野蛮な(笑)疑問に対する一つの回答例。
特殊性、あるいは"第三の性"的な「ゲイ」が好きなのではなくて、あくまで「男」どうしの関係に興味があるのだという。
それは翻ってそれを好んでいる女性自身も、普通にヘテロである可能性が高いということにもなりますが。

"女の恋愛と男の恋愛"

よしなが 女の子は、本当は男の人とそういう関係になりたいんだろうな、と思うのよ。
こだか 同志的な
よしなが 同志的な。本当は、男の人と同志で恋人になりたくて、でも男の人は女の人にそんなものを求めてはいないから・・・・・・。
(p.121)

僕は求めてるよ!!だからおいで!!(笑)
いや、まあ、どうなんでしょうか。
ここらへんは、確信的"フェミニスト"であるよしながさんの個人的好みが、強めに出ている意見という気もしますが。
ただ後で出て来る「やおい」の話と合わせて、要するに伝統的教条的"恋愛"からの脱出を、女性(漫画読者)が様々に求めているという、そういう実態はあるように思えますね。その表現の一つとしての、BLというか。


三浦しをん編

よしなが (前略)オタクの子たちが非オタクと話していてもつまらないって言うのは、自分の趣味の話が通じないというのももちろんあるんだけど、「話にオチがない」からなんですって。たとえ日常の話でこれといったオチがないにせよ、人に話すんだからきちんとした物語にしろ、と。あまりにも「それで?」という話が多い、と。(笑)
(p.367)

この場合の「オタク」は広く取って自分も入れちゃいますが(笑)、"オチ"はともかくとして「普通(非オタク)の人」というのは、社会通念や慣習的思考・言い回しを、右から左に受け流すことの繰り返しだけで一生を送る面があるので、今言っているそれがどういう特定の文脈に属している話や観念なのかという意識が希薄な場合が多いわけですよね。(それで日々通用する)
「物語」というのは文脈そのものですし、「オチ」というのはその文脈を前提にした意味の逆転ですから、そういう意味で比較して、"非オタク"の人の話し方が漫然としているということはあるだろうと思います。
・・・・まあどちらかというとこれは、「オタク」云々よりもお笑い・バラエティの世界でよく言われる話ではありますけどね(笑)。要は日常性以上の世界とその意味の意識的捉え直しの経験・習慣をどれだけ持つかということで、そういう意味では"ロック""お笑い""二次元"も、同じような「機会」になるということは言えると思います。勿論他のものも。"趣味"全般というか。
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伊藤彩子『原作者インタビューズ』
2014年04月19日 (土) | 編集 |
最近まとめて漫画評論系の本を読みまして、まあ「読書日記」的な軽い感覚なんですが、量的にいっぺんにやるのが厳しいので。
まず第一弾。


まんが原作者インタビューズ―ヒットストーリーはこう創られる!まんが原作者インタビューズ―ヒットストーリーはこう創られる!
(1999/10)
伊藤 彩子
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田島隆(『カバチタレ』)編

----それじゃあ、どうして東風さんに?
田島 編集長と担当が呉までぼくに会いに来てくれたとき、メシ食いながら「ウチのいとこを使ってくれんか」と直談判やったんですよ。
(中略)
田島 キャラクターを決めるまでには、本当に時間がかかりました。東風もさんざん悩んで・・・・・・。(中略)結局『ナニ金』の亜流でいってしまえと。「『ナニ金』に似てて何が悪い、正統継承者たぞ」と(笑)。
----半端に似せるよりも、そのままでいいじゃんって感じですね(笑)。
(p.46-47)

単なるこぼれ話ですけど。(笑)
余りにも露骨に似てるので、てっきり青木雄二の"院政"か、『ナニ金』の後釜を作る為の編集主導の"プロジェクト"なのかと思ってたら、勿論原作・作画それぞれに青木雄二との縁はあったんですが、ああなったのは飽くまで結果的にだという、驚きの真相。(笑)
しかし思い切りいいにも程があるだろうという(笑)。語弊があるかもしれませんが、ボランティアでレイプされに行ってるような感じ、"表現者"としては。「原作者」発の企画だから、出来たことというか。漫画家には無理なんじゃないか、あそこまでのは。

これは、『モーニング』でも『S』でも言われたんですが、実社会でも、その情報だけで食っていけるくらいのレベルじゃないと、生半可なものでは、まず無理だと。
----専門家じゃなくても、取材して書くっていうやり方もありますよね。
調べた程度でやってるものだったら、一話、二話が完成度か高くても、その後続けるのが難しい。
(p.50)

この件については、後でまとめて。


さいとう・たかを(『ゴルゴ13』)編

原作者の登場は、おもに二つの理由に支えられていたようだ。
ひとつは、漫画を商業ベースで考えたとき、一人ですべてを仕上げるには、仕事の量的にも時間的にも無理がある。(中略)もう一つは、まんが家からは絶対に出てこないようなアイデアや情報を含んだストーリーを提供してもらい、まんがにバリエーションを持たせようというものだ。
こうした考え方は、週刊誌、とくに青年誌が急激に増えてきた六〇年代後半に顕著になってくる。
(伊藤p.64)

以上が漫画原作及び、漫画製作の"分業"体制の歴史の基本。
そしてその草分けの一人が、さいとう・たかを氏。

さいとう その頃は、ストーリー物の世界を"漫画物語"とか"ストーリー漫画"なんて呼んでいた。(中略)
(活動写真)が"映画"という名前が付いて呼ばれるようになったように、"ストーリー漫画"も、一つの名称を付けてやるべきじゃないかと。それで、『劇画』と呼ぶようになったんです
(p.67)

なるほどね、僕らは今日では単に「ギャグ漫画」等との区別で使ってるだけですが、当時的には「写真が活動する」「漫画がストーリーする」という具合で説明的に感じたんですね。
逆に再び今日では、むしろ『劇画』の方が、特殊な用語というか、"劇"の部分がわざとらしく説明的に感じてしまうわけですが。

コマ割りは、映画でいうなら絵コンテを描くようなもので、監督の仕事だ。分業体制を取ったのは、絵はダメでもコマ割りの仕方が上手い人もいて、そこに最適な絵を入れれば、作品としての完成度が高まることを狙ったからだという。
(p.67-68)

この件も、また後で出て来ます。


木内一雅(『代紋TAKE2』)編

いつもぼくは、「オレはプロデューサーと脚本家と、監督の半分までやる」ってい言うんです。「君ら("作画"担当)は残り半分の監督と、照明とカメラと俳優と美術と道具周りだ」と。
(p.96)

"半分の監督"の部分が無いと(あっても?)、言われた作画担当としてはあんまりいい気分ではないでしょうね(笑)。救いが無いというか。
まあ作家主義的な原作者というか、文芸主義者なんでしょうね。
僕もほとんど絵に興味が無い人なので、分からんではないですが。(笑)
とにかく、一つの「分業」例

講談社は、まんがの中で句読点使っちゃいけないっていう決まりなので、改行を句点、代わりに「!」を読点代わりに使うようにしています。
(p.97)

へええ。
そうだったっけか。

今のまんがの体制っていうのは、ものすごい歪みがあるんですよ。つまり、大友先生が登場してきて、絵のレベルが極端に上がった。そうなると、あそこまではいかないにしても、ソコソコのレベルの絵を描かないとダメっていう世界になっちゃったんです。当然、絵にかかる時間が長くなると、まんが家さんがしっかり話を作り込む時間がなくなってくる。
(p.103)

まあ1999年なので、「大友克洋」という焦点の当て方になりますが。
でも僕なんて、アニメでしか知らない。今やほとんどの人は、そうだと思いますが。
ただ言われている状況としては、今日でも通じないことはないのかなと。"週刊連載ペース"という問題ほど、大きな問題ではないとしても。
・・・・どっちかというと、「絵」に偏執的なある種の漫画家たちが、そこで引っかかって自滅しているというような感じも、しないではないですが。あるいは絵の「脳」に偏り過ぎて、話の「脳」が働いていないように見えるというか。止め絵と共に、話も止まる。

----ところで、最近の青年誌はジャンルまんがが多い関係で、専門知識をもった原作者の方が増えてきてますが・・・・・・。
木内 (中略)「どんなことでも書けます、調べれば」っていうくらいのほうが、いいような気がします。だって人殺しやらなきゃ人殺しのシーンを書けないのかっていったら、違うでしょ。それと同じですよ。
(p.104)

上の田島隆さんとは、反対の見解。
ただ一般論としては、明らかに田島隆さんの方が正しいように思えます。"書け"ればいいというのは書き手の視点であって、これだけ作品のある中で読み手がお得感を求めるという視点からは、やはりちょっと"調べた"以上のスペシャリティは、あるに越したことは無い。どうせなら、人を殺したことがある人の人殺しのシーンを読みたいというか。(笑)
まあそれは極端な例としても。
最終的には、勿論個別の問題であるし、その原作者の才能・センスの問題ですけどね。
つまり薄めのバックボーンでも説得力や専門家以上の洞察力を示せる人はいるだろうし、逆に専門知識を持ってれば誰もが"原作者"になれるわけではない。小説だったら、ゴーストライターに書かせるという手もありますが、漫画"原作者"は言わば自身が"ゴースト"の一種なわけでね。
この問題は、後で更にもう一回出て来ます。


城アラキ(『ソムリエ』)編

商業誌の場合、原作家ってバッティングピッチャーなんですよ。まんが家はバッター編集者は審判かな。(中略)
まず、まんが家さんが打ち返せない----理解できないとか、つまんないと思うような球は投げたらダメ。かといって、まんが家さんに合わせた球だけ投げてればいいかっていうと、そうじゃない。
(p.125)

なるほどね。"審判"というのは今いちよく分かんないですけど(笑)、(表に出る)漫画家中心に考えると、こういう例えはありかも。
ていうかこの人は、多分"バッティング・ピッチャーの快感"が分かっているんですよね(笑)。"合わせる"主体性というか。自分が合わせることによって、相手の中の何かが働き出すのを見る快感というか。
もっとフラットに、"コーチ"の快感と言ってもいいかも知れないですけど。

作品における三人の力関係って、原作家三〇、編集者三〇、まんが家四〇だと思っています。
(p.128)

ふむ。逆に「分業」という感覚じゃないですよね、この人は。
真に「共同作業」的というか、バンドのアンサンブルに近い感じ。漫画家がヴォーカル?リードギター?(笑)

たとえば、三人いると必ず誰かか疲れるわけ。(中略)
でも、三人のうち二人がヤル気があるときは大丈夫なんだよね。
(p.129)

まあ、そうかも。一般的にも。
多数決じゃないですけど。(笑)

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古林海月 著 『わたし、公僕でがんばってました。』
2011年09月20日 (火) | 編集 |
わたし、公僕でがんばってました。わたし、公僕でがんばってました。
(2011/06/24)
古林 海月
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以前当ブログのコメント欄にも降臨して下さった、猫狂いという意味でもお仲間(参考)の漫画家、古林海月さんの新作。

米吐き娘 1 (イブニングKC)米吐き娘 1 (イブニングKC)
(2005/01/21)
古林 海月
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米吐き娘大吟醸 (イブニングKC)米吐き娘大吟醸 (イブニングKC)
(2007/06/22)
古林 海月
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・・・・目下の代表作は『米吐き娘』、と、あえて言っておきましょう。
現在は鋭意変化(へんげ)作業中のようですが、いつか必ず大きくなって、化けて出る(?)人だと、僕は信じています。(笑)

ほんとにねえ。
古林さんの書くものなら、どんな題材でも今すぐにでも、またイブニング等で読みたいくらいですけどね。
4コマでも、モー2とかでも、適当に場所を与えれば、必ずなにがしかの存在感を出せる人だと思うんですが。
講談社の得意そうな漫画家というか。
どうも、ツキが無い印象。
蒸し返すようですが何でまた『米吐き』は後半はよりによって、"集英社"みたいな描かせ方をしようとしたのか。バトルなんて要らねえし。ていうか既にナチュラルにバトルだったし。未だに納得が行きません。


さて問題の本作は、なんかいかにも「実用書」のコーナーにでもありそうな装丁ですが(笑)、中はちゃんとした漫画です。
と言っても所謂"ストーリー"でもフィクションでもなくて、題名にある通り古林さんご自身の地方公務員としての就業経験を基に、"公務員"という仕事の実際を、そのパブリックイメージの数々と照らし合わせつつ、様々な側面から紹介した内容です。

スタンスとしてはそうですねえ、「エッセイ漫画」「教育漫画」の、中間くらいでしょうか。
古林さんご本人がキャラとして語り手となって、基本的にはオーソドックスにジャーナリスティックに(?)レポートを進めて行くんですが、随所に古林さん独特の脱力したボケというかユーモアセンス(とあえて言うと最近恥ずかしい)も挟み込まれて、ファンとしては嬉しいというか懐かしいというか。

・・・・まあ、細かく言うと古林さんの"ユーモア"というのは、別にあえてボケたから面白いとかシリアスだから面白くないとかそういうタイプではなくて、普通に語っている中にもどうしようもなく染み出して来るというか、語っているそばから溶解が進むというか(笑)、そういう類のものなんですけどね。
真面目になればなるほど、脱力感が止まらないというか。(笑)
どこだ、どこが漏れているんだ。

そういう意味では今回は、見た感じ、"シリアス"(『夏に降る雪』米吐き1巻所収)でデビューして主にイブニング編集の意向であのゆるふわ路線を開拓されたらしい古林さんが、あえて言えば初めて自分の"采配"で意図的にボケなども入れてみたと、そこらへんが新境地というか"実験"性なのかなとそういう印象。
まあそんなに無理して、「漫画批評」的に読むタイプの作品でもないんですけどね。(笑)

個人的には、「(公務員時代)結構もらってたんだなあ」というのと、「そうか相方のトッコさんは辞めるの反対だったのか」と、そこらへんが意外でした。
"公務員"については、とにかく部署異動をそんなにするものなのかというのが、知らなかったのでびっくりしました。何となく一生同じ仕事をしてるような偏見が、やっぱりあったもので。

『米吐き』読者的には、その方針の是非は別にして、イブニング/商業漫画誌の編集が入らないと、なるほどこんな感じのバランスになるのかあとそういう興味でも読めるかと思いますが、あんまりこういうことばっかり言ってると嫌がられるでしょうから(笑)、これくらいで。


以上、ご紹介まで。
感想はこちらで受け付けているそうです。

http://ameblo.jp/komehaki/entry-10941980521.html

現在は"ハンセン病の漫画を執筆中"とのことで、出来れば今回一瞬期待した、(公務員漫画である)『夏に降る雪』的なストレートにシリアスな(ストーリー)作品も、それはそれで面白いので期待したいところですが、どういう作品なんでしょうか。

ともかく今後のご活躍を、心からお祈りしています。