"監督がゲームを作る"ということについての試論

一度書きかけてうっちゃってたものですが、まあ何とかなるかなと思い直して書き上げてみました。
ご笑読(笑)下さい。


少し前になりますが、footballistaの浅野賀一編集長と川端暁彦氏のこの対談は、凄く面白かったです。

遠藤保仁やピルロの時代は終焉?「ボランチ=司令塔」はどこへ行く(footballista)

表題にある"ボランチ論"ということにとどまらず、所謂"ポジショナル・プレー"を筆頭とする「現代サッカー」の様々な問題を、日本の現状や歴史と上手く接合・着地させた議論になっていると思います。
僕自身も割りとそういう目的意識で(サッカーについて)物を書くことの多い人なので、刺激される部分が大きかったです。

だから書こうと思えばこれを肴に何本でも書けそうではあるんですが、今回はとりあえず一つのテーマに絞って、書いてみることにします。

該当箇所としては、ここらへん。

浅野「貴族と労働者もそうなんですが、もっと言えば労働者もAIによって働く場所を奪われているというか……今の欧州トップレベルのサッカーは職人の巧みな技や経験からくる判断よりも、プログラミングされたコードで動くサッカーみたいな感じです。ただし、一つひとつの駒はスーパーな特長、絶対的な武器を持っている」
川端「そうですね。貴族が倒されて労働者の時代が来たわけではなく、『中産階級の勃興』が起きているんですよね。ちゃんと教育を受けて頭脳労働できるんだけれど、同時にハードワーカーにもなれる。求められているのは、頭が良くて、なおかつ24時間戦える猛烈系というか(笑)」
浅野「単純なブルーカラーではなく、ブラックなホワイトカラーというか(笑)、ハードワークできる頭脳労働者ですね。だから本当の司令塔はプログラミングのコードを書く監督なんです。最近はその傾向が加速した気がします。


「貴族」と「労働者」というのは、"貴族"系ボランチと"労働者"系ボランチ。ビルロとガットゥーゾ。
ただその分類・択一すらも"古い"というのが、ここで言われていること。
「中産階級」という比喩は上手過ぎて笑いましたが(笑)、それはともかく。

"プログラミング"とか言われると、いかにも「最先端」≒「ペップ」、もう駄目、ギブアップという感じに人によってはなるかも知れませんが、まあ少し待って下さい。
上でも言われているように"加速"しているのは確かなんでしょうが、逆に言えばあくまで"加"速なわけで、それ以前にも無かった話ではないわけです。

それは「欧州」だけではなくて、ここ「日本」でも。


"ゲームメイク"をめぐる伝統的ジレンマ

要は"誰がゲームを作るのか"という問題ですが。
伝統的にはやはりそれは特定の技能系プレーヤーとその周辺に発生する自然的コンビネーションがほとんどを担い、そこに過度の集中の弊害が出て来るようなら補助的な構造を監督が準備し、あるいは最初から構造にはめ込むような形でゲームメイカーを配するように、チームを作ったりする。
定期的に「ゲームメイカーは不要」と唱える監督は出て来ますが、実際にはそうしたチームは十中八九攻め手の欠如に悩み、改めて"ゲームメイカー"を招来するかあるいはゲームメイカー以上の依存度で前線FWの個人能力に依存するか、たいていはそういう結末

という"限界"を突破するかに見えるのがつまり、昨今脚光を浴びている「ポジショナル」なチーム作りなわけでしょうが、とにかくこんな感じで、「ゲームメイカー」(選手)がゲームを作るのか「監督」がゲームを作るのかという二項自体は、例えばJリーグを主体にサッカーを見ている人たちの間でも、普通に共有されて来たものだと思います。
僕自身、「ゲームメーカーを置かないのなら監督が"ゲームメイク"するしかないわけですが」的な書き方は、具体的には思い出せませんが(探すのめんどくさい(笑))何度かこれまでにもした記憶があります。

・・・と、ごちゃごちゃぼんやり書いててもしょうがない気がするので、思い切って図式化してみましょう。それぞれの監督(チーム)における、ゲームメイクについての"選手"要素と"監督"要素の。
具体的には僕がある程度責任を持って書ける、"ヴェルディ"と"日本代表"という、二つのサンプルを使って。
異論反論は受け付けます、というか多分異論反論だらけだと思いますけど(笑)、とりあえずまとめて提示することに意義があるかなと。


(1)ヴェルディの例

上から下に、「構造」性が高まって行きます。


1.ほぼ100%選手にお任せ ・・・松木安太郎('93,'01)

'93年就任時には"オランダ"、'01年就任時には"スペイン"を口にして何やらやろうとしたことはあったんでしょうけど、結局はそうなってたと思います。具体的な依存対象としては、ラモスとか前園とか。

2."選手の組み合わせ"自体が"チーム" ・・・オズワルド・アルディレス('03,'04。天皇杯優勝チームは除く)

"1"に比べると機能性、監督の"貢献度"自体は相当高いですけど、要は選手への"依存"の仕方が複雑高度になっただけとも言えると思います(笑)。好きな監督ですけどね。

3.一応"形"が先行はしているけれどそこに選手を配置するところで仕事は終了 ・・・バドン('05)

3-4-3。という以上の、"中身"は無い感じでした。

4.特定選手の能力を前提とはしているがそこへの寄せ方は論理的。 ・・・エメルソン・レオン('96)

ご存知"マグロンシステム"ですけど、そういうものとして一級品でした。

5.選手の"動き"の具体的なレベルまでコントロールの意識されたチーム作り ・・・松田岳夫('09)

万事機能的でしたが、特に「井上平に点を取らせる」チームに仕上げたのには感動しました。この時以外、井上平は"点の取れる"選手にはなれなかったですからね、他チームでの時含めて。
まあ"ペップのスターリング"含めて、「ストライカー」を作れる監督は概ね成功している監督だと思います。

6."戦術"ありきのチーム作り(の成功) ・・・オズワルド・アルディレス('04年天皇杯優勝チーム)

"3バック"も"ハイプレス"も、事実上初めてこのチームがヴェルディでの成功例だと思います。それまでのアルディレスの(選手本位の)やり方の真逆を成功させたという意味でも、鮮烈でした。つまりはここで初めて、「選手」と「監督」の比重が逆転する。

7.フィールド全面に渡る整然とした選手の配置と動きの構築 ・・・ネルシーニョ('95)

選手の互換性と、特にサイドの選手を使った攻撃パターンの人為性という点で、"6"よりも構造性の次元が上かなと。

8."動き"自体ではなくて動きが生まれる"構造"そのものの構築 ・・・李国秀(総監督。'99,'00)

指示でも誘導でもなく、構造自体が選手の動きを決定し、それが同時に"ゲームメイク"にもなるという理想(像)。ゲームメイカータイプの選手自体は重用していたので、"7"との順位は逆の可能性もあるかも。


一応"5"に置いておきましたが、松田監督が何をしていたのかは、実は僕はよく分からないんですよね、期間が短かったのもあって。ちょっと"整理"と"工夫"が上手かっただけにも見えるし、もっと深い構造を作っていたようにも見える。その"中"を取ったというか。(笑)
"定義"はいかにも直感的ですけど、概ね"4"くらいから、「監督かゲームメイクをしている」と、言い得る要素が出て来るのかなと。
ただ"ポジショナル"云々と比較可能なのは、7,8のみでしょうね。

大雑把な指標としては、「選手の技能・アイデア頼み」「監督の具体的な指示や誘導に従う」「構造や一般原則が選手を動かす」という順番で、構造の深さというか"ポジショナル"的現代性が深まるのかなと。
ただし一般的に"監督のゲームメイク"として期待されているのは、むしろ二番目のイメージが中心ではないかとも思います。それで事足りるというか(笑)。余りにも攻撃"パターン"でしかないと、すぐ手詰まりにはなりますが。


・・・せっかくなので、その他の監督についてもざっと分類してみましょうか。

1.松木型 加藤久、エスピノーザ、'06ラモス
2.原オジー型 ロリ、高橋真、冨樫
3.バドン型 ニカノール、小見、三浦泰
4.レオン型 '991st"林システム"の時の李国秀、"07(フッキ・システム)ラモス、高木琢
5.松田岳型 川勝('10-'12)
6.オジー型改 柱谷哲(?)

そもそもが上の監督たち用の類型なので、少々強引ですが。
ロリはエジムンドを擁していい仕事をしたと思いますけど、やはり"依存"の色合いが強くて「レオン型」までは行けないなと。三浦泰は難しくて、見方によれば"6"かも知れない。高木監督は主に"レアンドロ"システムの時の評価。哲さんは"組織的"にやろうとはしてたんでしょうけど、結果ほとんど出来てなくて"1"の可能性すらあると思います。

ちなみにロティーナは現在進行中なので、ノーコメントとさせていただきます。
ただ少なくとも調子の悪い時には、「単なる"バドン"なのではないか」という疑いを抱かせられたということは、書き留めておきたいと思います(笑)。"ゲームメイク"、まで行けるんでしょうか今季は。


次、代表です。


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