策略の文化としての中国 ~『琅邪榜』と中国の武術思想そして自分たちのサッカー?

中国ドラマについて書きたいことが溜まりまくってるんですが、差し当たってここらへんから。
お題は『琅邪榜(ろうやぼう) ~麒麟の才子、風雲起こす~』より。



元はチャンネル銀河、今はHuluAmazonプライムビデオで見られます。2015年作品。全54話。
来週(10/9)からチャンネル銀河で、続編も始まります。



中国版『ゲーム・オブ・スローンズ』?

まずどういう作品かですが。

南北朝時代を模した架空の国・梁。都では皇太子と第5皇子・誉王 (よおう) との後継者争いが激しさを増していた。そんな中、2人は情報組織「琅琊閣」から“麒麟の才子を得た者が天下を得る”という情報を手に入れる。その麒麟の才子とは、江左盟の宗主・梅長蘇のことだった。
両者は早速、梅長蘇 (ばいちょうそ) の獲得に乗り出すが、梅長蘇は蘇哲 (そてつ) と名を変え、都に潜入していた。梅長蘇は実は、12年前に謀反の罪で壊滅させられた赤焔軍の生き残り、林殊 (りんしゅ) だった。猛毒に侵され以前とは違う容貌となった林殊は、軍を罠に嵌めた者たちへの復讐を果たそうと都に舞い戻ったのだ。(Hulu)

ストーリーとしては、そんな感じ。偽名が二重になってるのでややこしいですが、蘇哲=梅長蘇なのは公然の事実なので、そこは余り関係がありません。"江左盟"というのは後でも説明しますが、中国独特の半公認任侠集団的自治組織みたいなもの。まあ日本でも幕末の清水の次郎長一家とかは、そんなところもありますかね。
"赤焔軍"というのは普通に官軍の一組織なんですが、それにいちいちニックネームをつける習慣があるらしいです。一定の独立性はありますが、軍閥までは全然行かない感じ。基本的には名前がついているだけ。

"復讐劇"ではあるんですが、主人公たちが際立って清潔な人柄の人たちばかり(&美男美女(笑))であり、かつ復讐計画全体が"麒麟の才子"("臥龍""鳳雛"みたいなもの)による周到遠大な計画によって進められるので、特に前半分は快調快適に進んで久しぶりに「見るのが止まらない」状態を経験しました(笑)。策が一つ一つピタッピタッとはまって行く感じは、結構たまらないです。
後半分になるとそれまで隠れて指揮していた麒麟の才子の正体が概ね敵側に露わになってしまうので、ぐっと難度が上がって辛いシーン危ういシーンも増えて来ますが、それでも成り行きの納得感や品位は失われることなく、エンディングまでたどり着きます。
小説原作ものならではでもあると思いますが、構造美と知性の通常よりかなり高いハードルを、見事にクリアし切った傑作だと思います。

この"中国"ドラマの傑作の比較対象を欧米作品で探してみると・・・『ゲーム・オブ・スローンズ』('11)ですかね。かの。世界的モンスターヒットドラマ。




共通点としては、実在の歴史的地理的構造(GoTはグレートブリテン島と欧州大陸の二段重ね?琅邪榜はずばり中国大陸)を堅固なベースとしながら、その上にフィクションならではの網羅性と完全性と典型性を駆使して、「世界」を、「世界そのもの」を、「人間の世界」を"決定版!"という気迫で描き出そう"実体化"させようという、そういう企画であること。我々の住んでいる世界は要するにこうなっている、その世界ではこういうことが構造的な必然として起きる、それをかなり客観的な感触でヴィジュアライズしている、そういう作品であることが挙げられると思います。
勿論どんなフィクションもそれぞれに「世界」を「作る」わけですけど、ただその目指す知的な完全性包括性において、両作品は突出していると思います。

共に小説の原作があるゆえの作り込みの周到さということは言えると思いますが、オリジナル脚本で匹敵するものを探すとすれば、『スタートレックDS9』('93)ですかね、前にも言ったと思いますが。"宇宙"が舞台なので「実在の歴史的地理的構造」をベースとするわけには行きませんが、その条件下では十分な世界観の包括性と立体感を獲得している秀作だと思います。その条件で言えば日本のアニメの『銀河英雄伝説』('88)なんかも同系の作品ということになると思いますが、こちらはただ世界構造を余りに単純化戯画化してしまっているので、"包括""完全"という印象からは遠くなってしまっていると思います。"中身"は十分秀逸ですが、入れ物は。

『ゲーム・オブ・スローンズ』との比較に戻ると、どちらも"人間の世界"への包括的な洞察とそこで起きることへのある種の非情な"見切り"という点で共通はしているんですが、違いがあるとすればGoTがより"混沌"を強調して、ストーリー的にも文明の周縁部や辺境からの視点をメインに話が進むのに対して、琅邪榜の方はより"秩序"的であり、皇帝の権威や法秩序自体はあくまで尊重し、舞台となっているのも中華帝国("梁")の中央官界がメインで東西南北の周辺諸国は"周辺"としてのみ登場するという、そういう違いがあります。
だからとちらもかなり悲惨な出来事や人間の救われない行動が次々と描写されるわけですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』の場合はそれらは専ら「裏切り」、頻繁ではあるけれど一つ一つは突発的な出来事として起きます。一方『琅邪榜』の場合は全てひっくるめて「策略」というか、敵味方の策略の交錯の中での必然の一端として専ら起きます。

こうして書くと、何か『琅邪榜』の世界が古典的な秩序の中にあり、『ゲーム・オブ・スローンズ』の"現代的"な無秩序とのコントラストの中に見えて来そうではありますが、基本的に中国の伝統的な小説世界(「武俠小説」)に則っている琅邪榜にそういう面が無くはないと思いますが、それはそれとしてまた別に僕が感銘を受けるのは、中国の"歴史"の厚みというか、人間世界のあらゆることを言語で秩序化して行こう、せずにはいられないという脈々と伝わる執念のようなものと、作業の慣れから来るその手際の見事さと。

別な言い方をすると、絶え間ない「裏切り」のドラマである『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界はそれだけハードでありダイナミックであり、一方で「策略」のドラマ『琅邪榜』はより整然としていて予定調和的であるとも見えるわけですが、ただ"裏切り"が問題になるのはその前提に"信頼"や"期待"があるからなわけで、それはある意味「甘い」こととも言えて、裏切りすら"予定"の行動として組み込んでしまう描いてしまう『琅邪榜』の方が、見方によってはハードで非情なんですよね。最初から期待もしていない。
流麗なストーリー運びの中に、"流麗"ゆえの非情さが時折垣間見えるというか。

ちなみに『DS9』の場合は"物語"の典型の組み合わせとしてストーリーが構成されていて、個人の行動はあらかじめ「世界」の中に埋め込まれている感じ。『銀英伝』もまあ、人間行動の「典型」の収集と陳列が、基本的にはやっていることですね。

とにかく「策略」の壮麗な織物として構成されている『琅邪榜』の世界と、その背後にある気がする中国人の独特のドライな世界の見方という、そういう話でした。


中国の武器と武術

「策略」ということで思い出した&思い当たること。

突然ですが、子供の時に水滸伝、多くは多分横山光輝の漫画(笑)



だと思いますが、とにかくそれを読んだ時に"禁軍師範"の王進や林冲が、「棒術」を中心に教えていたことに違和感を感じませんでしたか?"棒術"?マイナーじゃねえ?剣術とか拳法とかなら分かるけど。皇帝や将軍様(公儀剣術指南役)が"棒"を振り回してるのって、あんまりイメージ出来ない。捕吏じゃないんだから。

その疑問を解いてくれたのが、結構前の番組ですがナショジオグラフィックチャンネル『科学で見る格闘技の真髄』という確かアメリカ人研究者による番組で、主な内容については昔ブログを書いたのでそちらを参考にしていただきたいですが、その中で一つ面白かったのは中国の武器及びその技術体系は「棒」を基本としていて、「槍」だの「矛」だのあるいは日本で言う「薙刀」のような長柄武器の区別は、その"棒"の先に様々な"アタッチメント"を装着する、その"付け替え"の種類の問題としてフラットに位置付けられているということ。従ってその用いる技術も、あくまで"棒術"のバリエーションの一部として基本的には考えられるということ。棒が使えればどの武器も使える、だから禁軍師範も棒術を教える。

理屈は分かるけれどどうにもドライだなという。"アタッチメント"と言われると、なんかがっかりするというか。(笑)
そうかもしれないけれど。掃除機のノズルかよという。(笑)

実際中国の長柄武器は機能的に細分化されていてかなり多種多様のようです。日本だとパッと思い付くのは、「槍」と「薙刀」くらいしかないですが。
例えばウチにあるこの本



だと、「矛」「槍」「戈(か)」「戟(げき)」に始まり、合計・・・なんと19種類もの武器の名前が絵と解説入りで載っています。さすがに全てがレギュラーで使われたわけではないでしょうけど、それにしても多いですね。
実際に見る中国史劇、三国志みたいなバッタモンではなくて(笑)もう少しシリアスな題材のドラマを見ていると、古代中世の中国の一般兵士が用いる長柄武器は、「戟」と呼ばれる刺突用の「矛」とピッケル状の"引っかけ"武器「戈」を組み合わせたハイブリッド武器が、大多数に見えます。・・・まあ単に小道具を使い回してるのかも知れませんが(笑)。ちなみにこれは、三国志で言えば呂布の主武器です。("方天戟")

日本にも日本なりの細かい区分が無いわけではないでしょうが、少なくともフィクションや通念としては、余り共有されている感じは無いですね。
あるいは「日本刀」という我が国が誇る代表的武器がありますが、あれは切って良し刺して良しの汎用性、鋭さと耐久性の相反する要素のバランスが比較的取れているところが優れているわけですが、中国だと「重さと頑丈さでぶった切る」"刀"と、「鋭いが細身で脆い」刺突用の"剣"というのは基本的に別の武器です。ここらへんからも、日本の武器はいちいち使い分けるよりも汎用という志向が強くて、中国ほど細かい分類というかドライな機能主義は一般的ではないということは、推測出来るのではないかと思います。

続きを読む

スポンサーサイト

テーマ : 中国ドラマ
ジャンル : テレビ・ラジオ

関連
今週の所長さん


河田陽菜(かわたひな) 様

画像ブログ1(グラドル)
画像ブログ2(それ以外)
歴代の所長さん(データ)
最新の記事
相互(的な)ブログ
カテゴリー
アーカイブ&検索

09 ≪│2018/10│≫ 11
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

©Plug-in by ASIA SEASON
最近のコメント
最近のトラックバック
自己紹介的な
amazon.co.jp

RSSフィード
QRコード
QRコード
アクセス解析

にほんブログ村