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試論:監督の職分と能力
2008年11月26日 (水) | 編集 |
昨日のを承けて、とりあえずやってみます。ま、”論”という”用語整理”という感じですけど。
ちなみにいきなりですが、本来的には僕は監督主義というか作家主義というか、なるべく”一人”の人間・人格から出て来たものを受け取りたいタイプで、「分業」とか「話し合い」とか、あんまり好きじゃないです。少なくともクリエイティヴなジャンルにおいては。だからワンマンでやれるなら、やってくれた方がいいんですけど。

ただ現実に様々な職能が入り混じってるサッカーの監督という業務について、以下でも出て来る他ジャンルに比べて、余りにも手つかずというか丸投げというか、分業等が是非以前に、考えられることすら一般的にはほとんどなく来ている、監督という”籤”を目をつぶって引き続けている感じが(笑)、ちょっとムズムズするので考えてみたくなったという、そういうことです。
だから素晴らしい案が見つかったとしても、「制度」として普及させたいとは思わないんですよね。基本はケースバイケースでいい。普及して欲しいのは、「意識」の方かな。一回大きくグラつかせられれば、後は各々その都度考えてもらえればそれでいいという感じ。

・・・・ま、「分業」が選択肢として普通のものになってくれれば、というそういう感じかな。してもいいししなくてもいい。


職名編

あんまりゴチャゴチャさせてもしかたがないので、昨日の思いつきに従って、「二分法」「2人一組」「トップとセカンドのセット」に絞って、考える・・・・というか例示してみます。基本前者がトップで後者がセカンドです。

例1:「マネージャー」と「コーチ」

現実にサッカー(やスポーツ)の世界で使われている職名ですが、英語的にはどちらもそれぞれ「監督」を指しちゃうんですよね。その国のメディアの慣習次第というか(笑)。「コーチ」は、「ヘッドコーチ」と表記されている場合もありますね。ここでは

マネージャー・・・・管理・運営・総合
コーチ・・・・技術・競技・現場

とまあ、だいたいこんな感じの分担で言っています。更に詳しくは”職能編”で。
実際にサッカーで自分を「マネージャー」だと思っている(言う)監督と、「コーチ」だと思っている(言う)監督と、結構別れるでしょうね。(プロ)野球の場合はほぼマネージャーですかね、「監督」の仕事は。

例2:「ディレクター」と「ライター」(「演出」と「構成」)

ライター?この時点でサッカーじゃないじゃんという感じですが、まあチームの”中身”や”骨格”を作る人という感じで。勿論昨日の「監督」と「脚本家」という連想を引き継いだものです。
この場合面白いのは、むしろディレクターという比喩の方かなと。同じ中身や理論を、それぞれの見せ方で見せる、それぞれの完成・提示の仕方をする。これはつまり、理論や戦術が現実のチームやサッカーとして実現する際の、理論や戦術そのものではない、ある領域を示す比喩として有効かなと。「マネージャー」よりもう一つ二つ、直接的にサッカー的な概念というか。・・・・まあ単純に、監督の”個性”や使える選手の制約という説明の方が、通り易いと言えば通り易いですかね。

例3:「デザイナー」と「エンジニア」

サッカー、映像メディアに続く、もの作り編(笑)。
「デザイナー」という語の選択は、あまり自信が無いというか、もっと一般性包括性のある職名が無いかなという感じですが。「設計」とかまで含めた広義の概念と、しておいて下さい。誤魔化しですが。(笑)
ここの売りは「エンジニア」の方ですね。サッカーにおける、”エンジニアリング”という領域を意識させるというか。岡田監督がヤバいと言っていたのは、あえて言えばここかな。
「デザイナー」も、「エンジニア」との対比という意味で、理解して欲しいです。デザインを実現するエンジニアリング。


他にもいい比喩があったら募集中ですが(笑)、何となく、分業のイメージは掴めたかと思います。
冒頭で「前者がトップで後者がセカンド」と言っていますが、仮にコーチングが主に得意な人が、トップに立っても勿論それはそれでいいわけですよ。あるいは脚本家が自分で映像化しても。エンジニアは語の定義からして、予めエンジニアリングの対象を求めるので、それが先行するということはないはずですが、サッカーなんてやることは概ね決まってるので(笑)、エンジニアリングの腕メインで監督業をやるのは、現実には別におかしくはない。

ただ・・・・タイプがどうあれ、ひとたびトップに立って大勢の人間を仕切る場合は、必ず「マネージャー」としての能力は必要になるし、(上で説明したように)理論が現実のサッカーになるには、”ディレクション”という側面もつきものです。あるいはメインはエンジニアリングでも、最低限どういうサッカーをするのかという、”デザイン”は提示しなくてはいけない。
だからやはり並びとしては、これが自然というか、そのつもりは特に無くても、その時その人は必ず前者の職についているというか。


職能編

以上のような比喩も手掛かりに、今度は「監督」の名の下に必要とされている/されて来た職能とは要するに何だということを、なるべく総覧的に考えてみたいと思います。
これも当面便宜的に、上に倣った”前者”型と”後者”型に、分類しながら羅列してみましょうか。

前者型
↑・フロントとの媒介業務
↑・チームの目標の設定
↑・メンタル/モチベーションコントロール及びコンディション管理
↑・ゲームやリーグ/大会の位置付け・展望や、それに基づく人材配分
↑・チームのスタイル・方向性の設定(”攻撃的”とか、”組織的”とか)
↑↓・それを具体化する為の、コンセプトやデザインの提示(”接近・・・”とか(笑)、”ショートパス主体”とか)
↓・フォーメーションや基本的な攻撃&守備ヴィジョンの提示
↓・それらを機能させる為の約束事、グループ戦術の整備や、練習メニューの作成など
↓・セットプレーなど特定のパターンのすり合わせや、個々人への指導
↓・スカウティング、作戦
↓・用兵
後者型

分類不能(一応は入れてあります)
・フォーメーションの決定
・用兵

なんか漏れてる?尚フィジコやGKコーチといった、特殊に専門的な職能は最初から別で。マスコミ対応的なものも重要なんですが、一応チーム/クラブ内のことに限定してみました。
フォーメーションや用兵は、決定するのは職名的な「型」を問わず時の監督なわけですが、内容的には本来理論的であり、エンジニアリング的でもあるという。しかし一方で、ほとんど気分転換的に、あるいはあるやり方の理論的追究や精度の向上の課題を逃れる為に、フォーメーション変更や奇抜な選手起用に走る監督もままいますし。
↑↓項はギリギリのラインで。この段階までは必ずしも現場から発想する必要はないというか、ここでの”夢想”が逆に革命のきっかけになったりする。

内容的には具体的なはずの純・競技的な部分は、逆に言語的には境界線が曖昧というか、”戦術”や”組織”と慣用的に一括されがちなので、特にもう一つ、分類の提案をしておきます。それは

1.コンセプト
2.理論、アイデア
3.エンジニアリング

3分類。ある程度まとまって論じてある岡田ジャパンがやはり分かり易いと思うので例示すると、

1.
日本人のアジリティ・密集でのスキル・運動量を活かしたサッカー(”接近・展開・連続”)
形にこだわらず、個々人のひらめきを重視(”ジャズ””無常”)
チャンスの質と量の追求による、決定力不足のカバー

 ---(基本フォーメーションの設定)---

2.
ゾーンディフェンス(忘れてるかも知れませんが(笑)”オシムとの違い”として、結構強調されてました)
ハイプレスと動き直し
軽量テクニシャン中心の構成と、小まめな横の揺さぶりによる崩し

 ---(1,2に合わせたフォーメーションの修正・調整)---

3.
それら全ての段取り、精度(笑)

・・・・3.がいきなりボヤッとしているのは、元々言語化し難い領域なのと、どちらかというと岡田ジャパンには欠けているところなので、特筆することが無いからです。

とにかく純・競技レベルで、少なくとも3つの次元が存在して、そしてそれぞれに得手不得手もあるということを、職能分類の項の最後として書いておきましょう。


次回はこれらの概念や分類を基に、実際の監督類型について考えてみたいと思います。


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