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御手洗キヨシの憂鬱
2009年05月16日 (土) | 編集 |
いや、ちょっと、言ってみたかっただけです(笑)。(”憂鬱”と)
タイトルが決まらなくて。正式には、「御手洗潔と松崎レオナ」のつづき。


改めて”女”/平準化

『アトポス』(1993)
p.822

「ではぼくにも一つ質問を許してもらおう」
「どうぞ」
「君は女を好きかい?」
「うーん・・・・・・、いい人もいるんだけど……、たいていの時、面倒ね」
「じゃあぼくと同じだ」
レオナは考え込んだ。やがて頷く。
「そうね」


まあ実はより切実に、女の”女”たる部分に日々煩わされてるのは、同性として友達付き合いしなくてはならない、女性の方かも知れませんね。少なくとも何割かは、うなずいてくれるでしょう。(笑)

p.825

「お涙頂戴のホームドラマをテレヴィジョンで見ている時間は、今はないんだ。麻薬から抜け出せない人間の周囲には、それ以上に凡庸なドラマが、うんざりするほどひきずられている。そんな状況に、警官や弁護士を交えて会うことは、時間の無駄なんだ」


これは直接的には、レオナの麻薬癖についての話、忠言ですが。
ほぼそのまんま”恋愛”や”女と関わること”全般にまつわる、御手洗(的女嫌い)が感じているうんざり感の説明としても、使えると思います。・・・・そう言えば「不治の病がそれでも欲しがる束の間のという話もありましたが。ちなみに特に意識的に重ねてあるわけでは、ないと思います。(笑)

麻薬も女も、”吸っ”たら吸ったで(失礼)、何かしらがそこに無いわけではないとしても、漏れなくついて来る様々な特典や更に倍や、姑小姑一族郎党(比喩ね)とのあれこれを考えると、という。
もうちょっとマシな人生の使い方があるだろうと。
・・・・まあ実際には、しばしば女の人にとって、正にその”凡庸なドラマ”そのものが、胸躍る対象なんでしょうけどね。だからあんなものや、こんなものを、喜んで見る。あんな、こんな。(笑)

p.720

「下品な想像はやめて!」
レオナの肩が、怒りで上下していた。
「あなたには女が解っていないわ。女にはみんなレイプ願望があり、みんな大なり小なりマゾヒストだとだと思ってるんでしょうけど。確かに私は、あんな風にされるのが不快一方の女じゃないわ。それは認める。だけど女には、あんな姿にされたところを見られたくない男もいるのよ。
男全員にレイプされたくないのと同じよ。女はレイプ願望を持っている?(中略)たとえそんな潜在意識を強く持っている女がいたとしたって、(中略)彼女もされる男に条件を持っているはずだわ。男の方だってそれを薄々知っているはずだけど、(中略)わざと曖昧にして、女の好色のせいだけに責任転嫁しようとしているのよ。あなたに縛られて、私はちっともよくなかったわ!」


特に必要の無い引用かもしれませんが、別のタイプの、かつより広範に存在しているタイプの女嫌い、”女性蔑視”との区別を主張している箇所として。
相手は勿論御手洗ではなくて、例のレオナを殺人犯として糾弾していた、撮影監督氏です。
ちなみにここで言っている”あんな姿にされたところを見られたくない男”というのも、”愛しい人”(御手洗)とかではなくて、”プレイのパートナーとして選ばない男”という意味だろうと思います。今いち文章的にハマってないんですけど。
レオナの奔放を一番攻撃しながら一番性的に興味津々の撮影監督氏ですが、まあ”女好き”or女への当たりの良さの陰に潜む”女性蔑視”、みたいなものは、割りとよく見られる構造ですよね。ハナから馬鹿にしてるから、気軽に付き合えるというか。
ここで中心的問題となっているのは、”女の性”(または”生”)への男が潜在的に抱く根源的な恐怖や嫌悪みたいなものですが、実はそれ自体は撮影監督タイプも御手洗タイプも、そんなに変わらないと思うんですけどね。それへの対処が、その意識化具合と自分の中への位置付けが違うだけで。


『龍臥亭幻想 下』(2004)
p.227

「ぼくは別に女嫌いじゃない」
「じゃ何嫌いだ」
「何も嫌いじゃない」
「嘘をつけ!」
自分の損得にしか興味がない人間に馴染めないだけだよ。変な勘違いをしないでくれたまえ。」


一つだけ、まだ読んでなかった作品からの引用。
要するに”女”とは何かの再論というか再確認ですが。性別自体が問題なのではない、心的態度や行動が問題なのだ。それを「女」という形で括るのは、確率的現象的な便宜。
ただ改めて言うと、僕はこの「損得」というまとめ方に、実はあんまりしっくり来てないんですよね。これでいいの?島田さん(笑)という。間違いなく最も頻度高く出て来るので代表には違いないんでしょうが、決定版としていいのかどうか。・・・・だって、損得気にするのは当たり前じゃん(笑)。と、言語的にはなってしまう。

意を汲んで僕なりにまとめるとしたら、”外”や”他人”の視点、あるいはその他人と自分との比較、つまりは「損得」という観念が置かれている(ある種の)客観世界についての、”実在感”が強過ぎるということでしょうか。だからそれ”にしか”興味が向かない、そこから離れられない。
その実在感の強さがどこから来るかというと、一つはやはり、女が一人一個、生まれながら(or第二次性徴後)持っている”女のカラダ”という「財産」のせいだろうなと。・・・・男もカラダくらい持ってますけど(笑)、持ってるだけじゃほとんど無価値ですからね、普通。
持っているから常にそれを意識するというのと(”実在感”)、既に持っているものを守ったり”運用”したり、つまりは功利的に立ち回ることが、人生の第一の関心事になり勝ちだというのと。作るよりも守って、更に奪う。人のものを、より多くもらう。”自分のものがない”と、御手洗は批判していましたが。

女は”裸”になれないんですよね、なかなか。”無一物”というか。
常に「女のカラダ」(または外見)という”衣”を、一枚着ている。男女問わず、”持って”しまった人全般の、心象ではありますが。勿論女の場合は、それプラス伝統的な”社会的劣位”という問題があって、よりカウンター狙いになる。


フェミニズムと女の「完成」

”フェミニスト”としての御手洗。

『占星術殺人事件』(1981)
改訂完全版p.231

「君は女性というと、みんなそんなもん(したたかで打算的)だと思ってるらしいな。そんなの女性に対して失礼じゃないか」
「女というとすぐ極端に控え目で、貞淑な人形でなきゃ駄目だと思い込んでいる男たちより失礼かね?」


繰り返しますがデビュー作です。つまり、”改心した””心境が変化した”わけではないということ。
最初からそう。

『ある騎士の物語』(1989 「御手洗潔のダンス」所収)
p.143

「これだけ心おきなく喋ると、君はまた例によって御手洗潔は女が嫌いだ、女性の敵だと書きまくるんだろうけど、僕は女性をライバルとして対等に遇しているだけなのさ。」


「男なら石岡、御手洗というふうに個人のレベルで語られるけど、ハンドルを握る女性がヘマでもやらかすと、それ女というものは、と女性総体の責任として語られるのが人の常だ。(中略)これと戦っているのも、他ならぬ僕さ」


・・・・以上、なかなかに模範的な”フェミニズム”的物言いですが。
”対等”に遇している、だから厳しいというのは、僕もレオナとの出会いの箇所でちらっと書きましたね。


『シアルヴィ館のクリスマス』(2002 「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」所収)
p.14

キヨシはげらげら笑った。そして言う。
「全面的に賛成だねトマス。女性の男女同権主義者たちの正体は、たいていはただの女性上位主義者か、復讐・嘲笑の戦士だ。共産革命の先例と同じだよ。こんなものでは到底成功はおぼつかない。同権の実現と維持には、相応の戦略が要るんだ」
「君にはあるのか?キヨシ」
「あるさ。そのためには、この国の社会制度は、悪くない」


フェミニズムは必然である。ただ実態や戦略に、大きな問題があると。
ちなみに「この国」とは、スウェーデンのことです。そのどこが戦略上好条件であるというのか、具体的には語られていなんですが。まあ想像してみましょう(笑)。当然、「高福祉国家」云々のあたりでしょうが。

”女好き”の陰にある”女性蔑視”に続いて、”女嫌い”の陰にある”フェミニズム”。
実際問題、ある種の(女の)「フェミニスト」は、普通に”女嫌い”ですよね。男が好んで、甘やかして来た「女」を、というか。


で、一つの結論。

『アトポス』(1993)
p.823

「僕はね、女嫌いなんかじゃない、女性の完成をこそ願っているんだよ。それこそが、この馬鹿げた世界の救いだ」


もう一個くらい似たような言及があったと思うんですが、どこ行ったかな。見つけたら足しときます。
今更ですが、基本的には”書き出す”のが最大の目的なんですよ、”解説”じゃなく。(笑)

「世界の救い」という話は、御手洗の”少女”への愛/好感の箇所でも、出て来ましたね。
あそこではまだ「女」になっていない、陳腐化・堕落していないよりプリミティヴで高貴な存在の姿、ということでしたがね。原始女性は太陽であった!・・・・ちょっと違うか。まあ感覚的な共通性は。
とにかく今度は、残念ながら(笑)「女」になってしまった存在の、超越と克己と「完成」という問題。

これも特にそれ以上は今のところ書かれていないので、うっすら想像しつつ、「御手洗とレオナ」の元々の問題に戻して、その内容で代用したいと思います。

・・・・で、ちょっと尻切れですけど、分量的にちょうどいいのと一息つきたいので、今日はもうあげちゃいます。
やっぱ終わんなかった(笑)。喜んでる人がいると、信じたいね(笑)。


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