ヴェルディ、代表、二次元、女子バレー 他
明訓の敗戦
2009年08月08日 (土) | 編集 |
Number734の甲子園特集号で取り上げられていて、懐かしかったのでちょっと当時の思いを。
内容的には、前にどっかで見たような気のするものでしたけど。
ドカベン世代じゃない人は、ハナから気にしないで下さい。(笑)

問題となっているのは、山田太郎たちが入学/入部して以来、夏・春連続全国優勝して「常勝」の名を恣(ほしいまま)にしていた神奈川県の明訓高校野球部が、その山田たちが2年の夏、前人未到の3季連続優勝をかけて3たび出場した夏の甲子園二回戦で、初出場の無名校、岩手県代表の弁慶高校

benkei

に敗れた大波乱の顛末について。
連載当時はスポーツ紙にも堂々と取り上げられた、ちょっとした”スポーツ界の”大事件として、大きな話題となりました。

この敗戦について作者の水島新司先生は、書いてしまって間も無く後悔の念にかられて、それは未だに続いていると述べておられるとその記事にありましたが、当時の僕(小学生)も、別に怒りはしませんでしたが(笑)、何とも納得の行かない、気持ちの悪い読後感を持ったことを、覚えています。


ポイント1 ”リアリズム”

水島先生の”後悔”の基本的なポイントとしては、明訓を負けさせてしまったことそのもの、つまり「明訓だって負ける」という当時こだわった”リアリズム”が、更によく考えてみるとどうもわざとらしいというか、浅薄な気がする、”常勝”明訓ロマンは明訓ロマンで別に良かったじゃないかと、そういうことのようです。

これについては僕は何とも言えないというか、勝ちっ放しは勝ちっ放しでもそれはそれで良かった、漫画的にもいいチャレンジだったと思いますが、「負け」は負けで、それも”常勝”明訓擁する『ドカベン』なればこその衝撃で、決してそれ自体として興趣の殺がれるものではないと思います。

ただ問題はその負かせ方で、「決勝でも準決勝でもなくて二回戦」「決め技は”豪打”でも”剛球・魔球”でもなく、(地味な)ベースランニング」という”リアリズム”の禁欲性が、どうもやり過ぎで読者として拒絶された感じがしたのと、作品自体の根本的な構成とも、合わないような気がするというそういうことです。

つまり『ドカベン』という作品はどういう特徴を持った作品かというと、名高い殿馬の「秘打」や岩鬼の「悪球打ち」に代表される、大げさでやや現実離れした要素をふんだんに盛り込みながら、しかし全体として非常にしっかりした野球漫画である、十分に”リアル”だと言える、そういう複合的な性格の漫画だと思います。
荒唐無稽でもあるけど、読めばちゃんと野球が上手くなる、野球漫画というか。『アストロ球団』とは違うというか。(笑)

言い換えればドカベンのリアル/非リアル(ドラマ)というのは、余り直接的な個別要素には還元されない性格を持っているということで、明訓敗北という”リアル”を追求するのに、「二回戦」という舞台設定や「ベースランニング」という決定要素のような、明からさまに寒々しい”現実”性を持ち出して、作品が根本的に持っている『華』を損なうのはいかがなものだろうということ。もっとそれらしい、あえて言えばベタにドラマチックな枠組みで、正々堂々と(?)負かせて欲しかった。
それがドカベンらしいというのと、ドカベンならそれが出来たろうというのと。あんな不意打ちのような負け方は嫌だ。現実は甘くない、て、知ってるよそんなの、わざわざドカベンで教えられなくても。(笑)

直前の一回戦の、(打倒明訓の大本命)高知代表土佐丸高校の弁慶への敗戦なんかは、明訓との対戦を目前にして足元をすくわれた、土佐丸の苛立ちが凄く”リアル”で良かったので、全体的な流れとしては分からなくはないんですけどね。
でもちょっとやり過ぎたかなと。何よりも明訓の敗戦が、あまり「必然」に見えない、弁慶が勝者として正当とも美しくも感じられないのが、問題だと思います。


ポイント2 弁慶ナインの”キャラ”

同じく水島先生の弁によると、「明訓敗戦」という筋書きが決定した根本の理由としては、武蔵坊数馬(上左)と義経光(上右)という自らの作り出したキャラクターに、こいつらなら明訓を負かせる/負かせるに相応しいと、水島先生が直観・納得したことが大きいとのことです。
これについては、僕は大いに不満ですね。

大会が始まるまではなるほど、2人とそれに率いられた弁慶高校には、ただならぬ雰囲気があって、結末を知らなくても明訓ピンチの予感は既に十分感じていましたが、いざ蓋を開けてみると武蔵坊の怪人・超人ぶりこそ期待通りだったものの、義経はちょっと球が速いだけの軽薄な二枚目に過ぎず、残りのメンバーに至ってはザコキャラもいいとこ。
前年に戦った犬飼小次郎”キャッチボール投法”時の、土佐丸ナインの不気味さや、いわき東ナインの地味ながら骨太な野球巧者ぶりや結束力が、懐かしく思えるばかり。

そんな弁慶に負けるのは納得が行きませんし、しかも決め技はよりによって義経の”八艘飛び”(それが「ベースランニング」ね)、呆然とする明訓ナインやその前の交錯プレーで”仁王立ち”したままの悲愴感たっぷりの武蔵坊を尻目に、ニヤけた二枚目がピョンとひと跳ね、手を叩いてホームインて、そりゃ”リアリズム”というより”ニヒリズム”だろうと。
なんちゅう後味の悪さ。

・・・・ていうかさあ、知らねえって子供は”義経の八艘飛び”なんて。”弁慶の仁王立ち”でもどうか。
その一事を見ても、やや読者を置いてけぼりにして、筆を走らせてしまった結果であると、言っていいのではないかと思います。この主従にどんな思い入れがあるのかは、知りませんが。

およそ水島先生らしからぬ、失敗だった気が。


別にね、リアルでもハードでも、ニヒルですら、あってもいいとは思うんですよ。
例えば『一球さん』”三球士”のヤーな感じとか(笑)、ヤはヤだけどあれはあれでヒリヒリして面白かったですし、正に”ちょっと球が速いだけの軽薄な二枚目”の大友投手なんかも、ほぼ同系のキャラながらこちらでは十分に味を出してると思います。
ただ弁慶高校は・・・・。描き損ないではないかと、あるいは描き込み不足。それをよりによって、「明訓敗戦」という一大イベントでやってしまったという、痛恨。
ま、実際ご本人悔いてらっしゃるようなので、もういいですけど。(笑)

以上、元野球少年の思い出話でした。(笑)



豪華版ドカベンシリーズ 全21巻セット豪華版ドカベンシリーズ 全21巻セット
(1993/04)
水島 新司
商品詳細を見る
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック