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親善試合トーゴ戦雑感&展望
2009年10月16日 (金) | 編集 |
ふーむ。どうなんでしょうね。

キリンチャレンジカップ2009 日本代表 ○5-0● トーゴ代表(宮城)

これで”落ち着いた”と言えるのか。


これがもしもっと前なら、「岡田ジャパン」の”初期”とかなら、僕も多分そういう見方をしたと思います。
妥当だと。落とし所だと。オーソドックスだと。一定の合理性があると。
メンバー選択に。戦術に。
そしてこれを基盤に、今後展開蓄積して行く、あるいは行くべきであると。
なかなか結構な、”オールジャパン”であると。(笑)

現象、瞬間としては、そういう見方を強く否定するものではないですが、先の予測や更に実際に感じてることは、少し違います。


僕がこの試合の岡田ジャパン、岡田監督に見るもの。

1.「相手」や「舞台」(まとめて”ターゲット”?)が定まった、それらを実感的に視野に捉えた時の、岡田監督の要領の良さ。
2.岡田監督の「攻撃パターン」作りの妙な上手さ。


2は広い意味では、1の一部であるかも知れませんが。

さてまず1ですが、これは岡田監督の”現実性”であるとか、マネージング能力であるとか、そう言われるもの、例えば’98フランス(とその前の出場権獲得)や昇格時の札幌、そして勿論連覇時のFマリで岡田監督が示して来た「実績」の、一つの言い方であり得るでしょう。
あるいは今回の代表でも、一見意固地に見える岡田監督が、しばしば見せる、意外な変わり身の早さも、それに含めていいと思います。”俺流”、”憲剛システム”、そして今回と。

・・・・ちなみにフランスのチームは、あれは僕は十分に「成功」したチームの部類だと思っています。
確かに「足り」なかった。でも”失敗”はしていない。
初心者監督に率いられた初出場の田舎チームが、クロアチアとアルゼンチン相手に少なくとも大恥は掻かずに、何とか試合らしい試合をやり遂げて、帰って来れた。
守備・プレッシングなんかは、むしろ今のチームよりも整っていた/精密性があったような気がするのは、逆に問題かも知れませんが。(笑)

話戻して『接近・展開・連続』『世界を驚かせる(W杯ベスト4)』と、いささか空想的な(笑)側面が強調されている、orそれらが先行して推移して来た現チームですが、いずれの時期においても実は岡田監督は、意外に要領良くかつ素早く、一つのまとまり落ち着きを、チームにもたらしてはいる。
それは日本人外国人含めて、日本で目にする(つまり主に日本人選手を用いた)あらゆる”監督”たちの中でも、公平に見てかなり上位に位置づけられる、「能力」ではないかと思います。

むしろ要領が良過ぎる、ちゃっちゃと作ってパッパと作り変えて見せるけど、一つ一つが要するにそれ止まりで、発展性も継続性も、それ以前に論理的機構的な緻密さやそれについての追求心が見えない方が、問題になるとすればそうだと思います。
しかし瞬間瞬間を見れば、それなりに仕事はしている、やろうとしたことは一応実現している、将来的にもor別の状況でもそれについては期待・信頼出来る、決していきなり「無能」と呼んですませられる人ではないと、それは言っておかなければならないだろうと。

要するに一つの性格・資質の、同時的不可避的な2つの現れという、ことでしょうけどね。
器用な分、根気が無い。ひらめく分、論理性が無い。どっかのブロガーも、少し、そういう傾向があるかも知れません。(笑)

それはともかく、引き続いて”2”ですが。

今回、岡田ジャパンの見せた「サイドアタック」「アーリークロス」、その意識の徹底の副産物(と、”ストライカー”らしいストライカーの起用・機能の効用)だろう、パススピードの向上・統一が、比較的広く、高い評価を得ているようですが。
ただ翻ってみれば、オーストラリア代表に跳ね返されてひねり出した「憲剛システム」(ロングとショートの融合&ゲームメイクの平易化)も、最初はなかなか鮮やかに機能しましたし、その”跳ね返され”る前(笑)に、より純”接近展開・・・・”路線で作り上げ磨き上げていた、横パス(≒ペナ角からの並行クロス)を素早くクルクル回して敵を幻惑して、音楽が止まった時に(正確には隙が出来た瞬間に)ボールを持っていた人がシュートするという攻撃も、オーストラリア以外のアジアや国内親善試合レベルでは、かなりの有効性を見せていた時期もありました。

・・・・一応言っておくと、その”憲剛システム”と今回の無理やり言えば”岡崎システム”(?)は、基本的に同じ一つの流れの中にあるとも言えて、つまり上で書いてあるように「低くて速いクロスにニアで合わせる」という攻撃の方向性は、既にその時点で定まってはいたんですよね。

とにかくこのように、岡田監督はその時々割合明確な”攻撃パターン”を編み出して、かつ実行させることには比較的、いや際立って優れた人で、決して判で押したようなどさくさショートカウンターの人でも、丸っきり選手任せの人でもないと、十分に言い得るところがあると、そういうことです。
古い話をすれば、ジョホールバルのチームが機能させた、「2トップが走り回って作ったスペースを”トップ下”北澤が使い、それを山口素・名波・ヒデが3ボランチ的に支える」なんてのも、そうした”攻撃パターン”の1つでしょう。

まるで褒めてるようですがそういう流れではないのは、ここまでのトーンから、お分かりと思いますが。(笑)
いや、書いたこと自体は、ほんとですけど。

では何が問題か、これらの”特徴”をまとめるとどういうことが言えるか。
基本的には”1”の項で既に書いたこと、チーム作りが場当たり的になる、その時々あるレベルある状況への適応を、繰り返すだけになる、ということです。発展性も継続性も無い。
”発展性”が無いというのは、どれだけやってもレベルが”上がら”ない、あるいはある程度以上に普遍性のある”上達”や”向上”をしないということ。常に目の前の”レベル”に、対応しているだけだから。
勿論どんなチームも瞬間の積み重ねで、その繰り返しで強くなって行くというのも一つの事実ですが、限度がある。余りにも「先」や「ゴール」を見通さないと、器用なようでかえって効率が悪いということ。
岡田ジャパンの目的だけに特化して言っても、要は”この”チームが世界を驚かせればそれでいいという「企画物」みたいな側面は元々確かにあるので(笑)、場当たり結構と言えそうなところもありますが、一方でその”驚かせ”る内容は1試合ではなく、「W杯ベスト4」なわけで、本来はある程度究極に必要とされるレベルは、想定されてある(べき)はずなので。

次に”継続性”、実はこれが今回の一番の論題なんですが、それについて”攻撃パターン”がどのような意味を持つかというと。
つまり、我々は贔屓チームの攻撃が行き詰まっているのを見ると、つい「攻撃パターンを作れ」的なことを言いたくなる、言い出す人が少なくないわけですが(笑)、それに対してたいていの監督は、基本的なコミュケーションの向上なり原則の浸透なり、要するに「今までやって来たことの精度を上げる」とか「自分たちのサッカーをする」とか、それらは正論だったり言い訳だったり(笑)、チーム事情により意味合いは様々ですが、そういうどちらかというと普遍主義的な答えの方を、主に提示して来るわけです。

で、総体的にはやはりそれは正しいように思えて、よっぽど単純なサッカー(古典的リアクションとか)をやっていたりチームのレベルが低い場合の命綱とか、あるいは逆に既に十分に強いチームの最後の”詰め”・・・・もしくはその(強さの)蓄積の中で自然に形成されたようなもの以外で、「攻撃パターン」とやらがサッカーの中でそんなに決定的な位置を占めることはあんまりないというか、少なくともチームを”強く”することにとって本質的なものとは思えないと、僕の経験は教えています。

ところがそれを、岡田監督はやってしまうんですね。あっさりと。頻繁に。(笑)
それもほとんど、チーム戦術・構造の「主体」として。結構異例なことだと思います。人というか。
普通は「チーム構造」がある程度恒常的なものとしてあって、それだけでは用が足りない/決め手に欠ける部分を、”攻撃パターン”(セットプレーも含めて)で打開する、補うという、そういう関係になっているわけですが、岡田さんのチーム、少なくとも(両)代表チームは、そういうバランスになっていないように見える。
むしろ初めに”攻撃パターン”ありきで、それに従ってチームが自然形成されるというか、その都度作り変えられるというか。

そしてその”攻撃パターン”は、特定の相手や特定の状況・レベルとの、非常に具体的な対峙経験から、言わば切実に、ピンポイントでひねり出されて来るものなので、切実な分、場当たりで、長期的な構造の基盤とはなり難い。
・・・・要するに何が言いたいかというと、これまでもそうであったように、岡田ジャパンが時々に様々な理由や行きがかりでぶつかる困難や新たな「課題」と、それの克服の為に編み出される/変化させられる”攻撃パターン”に従って、これからもチームは変化し続ける、転がり続けるだろうということです。

例えば今回言われている”パススピードの向上”なんかも、別にそれを向上させようとして、それこそかつてヒデが身を持って突きつけたような「普遍的」課題として、チームが取り組んでいるわけではなくて、たまたまでしょ?極端に言えば。”アーリークロス”攻撃の。それによる攻撃リズムの誘導の。
だからこの先基本となる攻撃パターンが変われば、あっさりどっか行ってしまっても、おかしくないと思います。

理論的には今の(仕様の)岡田ジャパンが十分に強くて、大きな挫折抜きで本番まで行ければ、結果的な継続性は、確保されるわけでしょうけど。
どうかな。どうも岡田監督の”状況”の受け止め方自体が、直感的という以上に感情的で、いちいち右から左に大きく揺れる傾向がある気がしますし。それによって「変化」し、「発見」することもあるわけですが、過程全体を誰もコントロールしてないような、そういう印象はどうしてもあります。収穫は上がってなくも無いけど、獲りはぐれてるものまとめ切れてないものも、沢山あるというか。

仮に基本線が正しくても、その構えの薄さが、本来チームが到達してしかるべきレベルにも、チームを導き切れないというか。
まあ”アイデアマン”だけでは、駄目だという、そういう話ですけど。


とにかく、現在の時点では、僕にはまだほとんど何も分からない、つまり本番で岡田ジャパンがどういうチームになってるか、見当がつかないという、そういう話です。
「論理的延長」については語れても、良くも悪くも岡ちゃん(笑)の頭にひらめくものは、僕には予想が付かないので。

結構異能の人かも知れません。”攻撃パターン”を量産できる。
そういう頭の構造になっている、つまり普遍性や理論的全体性とは、違うところで頭を使っている人なんでしょうね。
だからこそ逆に、継続”しない”ことは、ある程度予想出来るわけですが。(笑)


更にそれによって、仮に岡田ジャパンが「勝てる」チームになったとしても、その後で日本人がサッカーが「上手く」なっていることはほとんど期待出来ない(つまり蓄積しないから)ということも、「予想」出来るわけですが、それはまた別の問題。

今回のテーマはあくまで、”この”チームの継続可能性についての、予見でした。


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コメント
この記事へのコメント
>岡田さんのチーム、少なくとも(両)代表チームは、そういうバランスになっていないように見える。
 そうかな? オフェンスに関しては逆のような気がします。 もちろん岡田さんが構造を事細かに構築していると言うより、いい意味で選手任せなんですが。 表面に出てくる小手先の変化は、主軸の2,3人は殆ど気にしてませんよ。
 むしろディフェンス、それも自陣ゴール前での守り切り方の方が心配。
 発展性といわれると、今出来ることを最大限にやるだけに徹している、と言う点で同意します。
 長くなるので、拙ブログでまとめてトラックバックします。
2009/10/18(Sun) 00:05 | URL  | Mario #-[ 編集]
一言だけ言っておきますと、
多分用語法が、少しずれてるんだと思います。前提として。
つまり僕が日頃Marioさんの岡田ジャパン関係の記事を読む時も、最初???という感じで、読み進めて行く内に、ああそういうことかと無事に読み終えられる、みたいなのが多いので。すり合わせに、少し時間がかかるんですね。

と、いう可能性に、留意された上で、何なりとお書き下さい。(笑)
2009/10/18(Sun) 07:19 | URL  | アト #/HoiMy2E[ 編集]
これを読んで、自分は浦沢直樹を思いました。伏線上手のまとめ下手。さて、岡田監督の最終巻は??

しょうもなくてすいません…
2009/10/20(Tue) 21:48 | URL  | CHONO #N4sINcV.[ 編集]
浦沢直樹か
”伏線”という言い方だと、「500ページ」だか「2000ページ」だかあったはずの”教科書”が、やけに早く閉じられた気がする、トルシエを思い出しますが。(笑)

岡田監督は・・・・ジャンプの週刊連載的かな?
”毎週出し切る””毎週クライマックス”で、その都度サラの(心理)状態から、トンデモ展開を繰り返す。(笑)
案外結果的な、「一貫性」があったりしますけどね。ストーリーというより本質・魂の部分で。無意識ゆえの。

最終巻なのか最新巻でしかないのか、それが問題です。(笑)
2009/10/21(Wed) 07:07 | URL  | アト #/HoiMy2E[ 編集]
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