ザックジャパンについては簡単に言うと、
1.ザックが色々と駄目である。
2.だから選手がもう勝手にやっている部分がある。
という、大筋としてはほとんどの人が一致する観測に、加えてベラルーシ戦後に本田が新たに告白した、
3.W杯用に新しいことをやっている最中である。
という、つごう3つの主な論点が現在あるわけですが。
これらの論点及びそれらどうしの関係性を、"大筋"という以上の細かさで水沼さんは記述していて、それによってクリアになることや自分が雑だった(笑)ことがいくつか見えて来て、面白かったです。
<元日本代表 水沼貴史が語る>メンバー固定の弊害が出ているザックJ (THE PAGE)
確かに僕も、実況を聴いていて「へえ、上げろと言ってはいるんだ」と、思った記憶はあるんですよね。アルベルト・ザッケローニ監督がタッチライン際で何度も大きなゼスチャーを見せていた点だ。派手なボディーランゲージから伝わってくる選手たちへの指示は明確だった。
「ハーフナーへクロスを上げろ」
ただ今回も含めて余りにもハーフナーが放置される、にも関わらず繰り返し呼ばれて繰り返し同じように使われて、かつ同じようにまた放置される様を見続けていたので、もう全部ひっくるめて、ザックはハーフナーの高さを活かす、クロスを供給する手当てをやっていないということで結論としてしまっていたわけですが。そこだけを強調していたというか。ある種の"結果責任"という意味も含めて。
しかし水沼さんは少なくとも今回に関しては、クロスを上げさせようとするザックの意思に、一定以上の注意を向けています。
それはなぜかと言うと・・・・
つまり選手たちが試みている"新戦術"、及びそれが同時に意味しているザックへの"無視"の、直接的なサンプルとして、ハーフナー問題を捉えているわけですね。日本代表の選手たちが狙っていたこととは、試合後にMF本田圭佑(CSKAモスクワ)が言及した「新しいこと」に集約されるだろう。
ベラルーシ戦では、FW香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)が最終ラインの前あたりの低い位置にまで何度も下がってきていた。ときには本田が下がることもあったように、ポジションを流動的にしながら相手の隙を突いて、ボールを受けて、さばいて、あえて相手選手が密集している中央を崩そうという意図だったと思う。
水沼さんの観察だと、今までザックがハーフナーを活かす為にそこまで目立つアクションを取ることは無かったということですから、逆に言えば選手たちの反乱が露骨になったからこそ、ザックの"指示"も今回に限って派手だったと、そういう文脈になりますか。今までの、単に何となくハーフナー仕様にチームがチェンジ出来ていないという、"未消化""不徹底"という程度の話ではないという。
なおついでですが、ここで述べられている新戦術における「ポジションの流動性」という特徴については、多くの人が"フリーダム過ぎる香川"という「問題」として取り上げていますし、あるいは僕がその前のセルビア戦で気にしていた、何でそんなに香川(と岡崎)下がって来るんだろうというそれ自体は単純だった(笑)疑問に対する、一つの答えなのかも知れませんね。
単に混乱しているのではなくて、一応予定の行動である。到達点を見据えた試行錯誤のいち場面であると。
続きます。
陰謀説?(笑)ハーフナーの高さを生かそうとしない点だけではない。FW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の相手の裏に抜ける能力が生かされない点も、ザッケローニ監督と選手たちの意図が大きくずれていることを物語っているように思えてならない。
(中略)
(山口蛍の"柿谷はちゃんと裏を狙っている"という証言の)一方でMF遠藤保仁(ガンバ大阪)は「裏を取れない」と言っている。原因は何なのか。ただ単に前を見ていないのか。見ているけどタイミングが合わなくて縦パスを出せなかったのか。あるいは、タテ一発で素速く崩すサッカーを志向していないのか。
遠藤クラスの選手ならば、柿谷の動き出しに合わせて長い縦パスを入れられる。となると、3番目の理由が働いていると思わざるを得ないだろう。
いやまあ、とにかくハーフナーばかりでなく、柿谷が消えていたのも、"新戦術"実験のせいであると。
斬新というか盲点というか。僕は本田と柿谷の"蜜月"ばかり強調していましたが。
まあ納得したとまでは行ってないんですが。特に考えていなかった可能性なので、考えさせられたという。
元々明らかに相性の悪いハーフナーはともかくとして、柿谷がハブられているなんてことはまず無いでしょうけど、ただ柿谷が相性以前にザックがここのところかなり意図的に抜擢した選手であり、その一発で裏を取って得点に結びつける能力が一種のザックなりの"新基軸"なのは確かですから、それに対して上の新戦術、明らかにDFが待ち構えているところを丁寧に揺さぶって何とか崩すという逆側の方向性を持ったそれと当面合わない柿谷の特徴が、今回に限っては無視に近い扱いを受けたと、それくらいならあるかもなと。
古参たちがたくらんでいる上官への"反乱"に、事情の分からない新兵が結果的に蚊帳の外に置かれたというか。(笑)
まあ柿谷的にも、ただ単に"通じなかった"、"デカいCBに挟まれて何も出来なかった"という話だけでまとめられるよりは、かえって救いがあるかも。(笑)
しかしでは本田(たち)はあれかな、やっぱり前田のような、パス回しを助けるタイプのCFに、また入って来て欲しいのかな。そもそも丸っきりそういうタイプを置かないのは、どうかしてるとは思いますが。
よく言われる"メンバー固定の弊害"の、最新版というか改めての水沼さん的定義というか。主力選手の大半はヨーロッパのクラブでプレーし、国内組の遠藤とDF今野泰幸(ガンバ大阪)も経験値が高い。そうしたある種の優越性が、勘違いに変わってきているように思えてならない。
(中略)
その「新しいこと」にしても、おそらくはチーム全体で取り組んでいることではないだろう。試合に出られる一部選手だけが机上で考えてトライしているように映る点で、今後へ向けての不安は尽きない。
単なるマンネリの段階はもう過ぎて、完全に"階級固定"の段階に至ってしまったと。本田を筆頭とする、一部選手によるチームの私物化。
それ(新戦術の試み)が一種の創意工夫・意欲の発露であることは水沼さんも文中認めているわけですが、監督の意図との乖離が限界を越えてしまっている、監督が「飾り物」(水沼)に見えてしまう、事態は深刻であると、そういうわけですね。
そしてもう恐らく、ザッケローニ自身/個人には、どうしようもない状態だろうと。選手たちと話し合って、妥協点を探るべきだと。
いや、なかなか思い切った内容ですね。単なる"毒舌"でも"分析"でもなく。
普段の水沼さんのトークも、割りとぎりぎりまで本音全開な感じですけど。
金田さんあたりと並べると、これが日産魂かなという。(笑)
ぶっちゃけ讀賣よりも、OBの質は平均的に高いですよね。知的水準というか。
とにかくなんか色々と整理された感じがするというか、ぼんやりorばらばらに考えていたことに、実が入った感触があるなというか。
例えばハーフナーの件とかは、一方で"本田たちが勝手にやっている"という主張は僕も前々からしていたわけですから、結果だけ見てまともに使う気が無いとザックだけを責めるのは、公平性というか論理的一貫性という点で、少し問題があったかもなという。・・・・正直"叩き慣れ"という面は、あったと思います。(笑)
ザックが悪いと、言っときゃあ済むという。まあたいてい済むんですけど。(笑)
それにしてもあれですかね、書いててふと思ったんですけど、今本田たちが折り入ってやっている"工夫"というのは、そういうつもりはなくても何となく岡田監督の「接近・展開・連続」と似たような問題意識というか設定課題というか、回り回ってそんな感じはしなくもないんですよね。
いや、別に繰り返してるとかあえてモデルにしてるということはないと思いますけど、一方で本田は南アの戦い方への後悔というか無念の思いというのを折りに触れて見せていて、それを繰り返さないということが非常に強いモチベーションとしてあるのは明らかなわけで、それは言い方を変えれば岡田ジャパンの「転向」「妥協」は間違っていたと言っていることでもあるわけで、つまりはその前の段階の岡田監督の"工夫"を、違う形で引き継いでいると、あの時の岡田監督の立場に立っていると、そういう位置づけも出来ないことは無いかなという。
見ての通り、今いる主力メンバーの大半は「岡田組」なわけで、その"共通体験"としてあれは原点にあるわけでね。実際にどうしようとしているのかは、まだ十分に明らかにはなっていないですが。(今回も"机上"(↑)なのか?(笑))
と同時に、その"反乱"によって覆い隠されてしまっているけど、逆にザック自身はかなりカウンターやシンプルな(攻撃)スタイルの方に、チームを持ってこうとしている最中なのかも知れないですね。それゆえの、意外なほどの積極的な柿谷の抜擢という。
いやあ、盛り上がってまいりました。(?)
『新戦術』と『監督の意図』の問題ですが、これって5月のブルガリア戦後に
監督・選手間でディスカッションしてクリアにした部分もあったはずです。
http://web.gekisaka.jp/395388_119653_fl
その時の記事によると、ザックは、
『自分の戦術はあるけど、ピッチでやるのはキミたちだから、
キミたちが一番いいと思うところでやってくれればいい』
と選手達に話しているようです。
選手達は、この発言を錦の御旗に戦っているのではないでしょうか。
本田一派?としては、当然、自分達は賊軍ではなく、
むしろ官軍として奮闘してるだけで、ザックへの無視なんてとんでもないと・・・。
このへんはどう思われますか?
失礼します。
どこかの給料遅配の代表チームでもない限り(笑)、選手たちがそんなに正面切ってサポタージュするとか監督の顔を潰すとかいうのも考えにくいので、なるほどそういう言質があっての現状なら、それなりに理解は出来るかなと。
ただ恐らく事態はザックが想定していた遥か先にまで選手の"自主性"が進んでしまっていて、だから下手に話し合うもんじゃないんだよなというか、労使関係・上下関係の難しさを感じたりします。(笑)