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甲野善紀、前田英樹 『剣の思想』 第2回
2014年03月05日 (水) | 編集 |
第1回から。

剣の思想剣の思想
(2001/10)
甲野 善紀、前田 英樹 他
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引き続き。


"第二章 身を損なうもの(甲野善紀)"より。

始めに「甲野善紀」さんですが、こちらは知ってる人も結構多いだろう、そもそも"古武術研究"などというものが現代に存在感を持って存在している、その功績の大部分を担っていると言ってもいいかも知れない、第一人者・・・・というと本人照れそうなタイプですから、代表的人物と、そう紹介しておきます。(笑) (Wiki)

僕がこの人を知ったのは、暇な男子大学生のアイドル、伝説の雀鬼"二十年間無敗の男"桜井章一氏

雀鬼・桜井章一20年間無敗の麻雀 誕生編 (バンブー・コミックス)雀鬼・桜井章一20年間無敗の麻雀 誕生編 (バンブー・コミックス)
(2012/09/27)
柳 史一郎
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の、友人というか盟友としてです。
このルートが、実は最強なのではないかという気がしますが。(笑)
"二十年間無敗"などということがあり得るということと、武術の伝説的達人名人たちの神業の多くが事実であり得ることが、ある種共鳴する形で、甲野善紀という人を通して説明されていた記憶があります。

今回の本では、例の精神科医の名越康文氏との交遊が綴られていて、意外なような納得なような。

前回の前田氏の問題提起に対する、返答。
メインはむしろ、前田氏の"スポーツ"批判に対する留保というか、武道界は実はそれに輪をかけて駄目だという話に割かれているんですが、あんまり関係無いのでそれは割愛。


・「井桁崩しの原理」

身体を捻らない、体内に支点を作らないという体の運用法の体系(中略)
まず何よりも理解されにくい点は、井桁術理が固定した支点をもとにおこるヒンジ(蝶番)運動を禁じていることです。人間の関節構造は、ほとんどがヒンジ構造をしており、そうであれば当然のことながら、ヒンジ運動は避けられないと多くの人は考えるのでしょう。
(中略)
しかし、固定的な支点によって生み出される(中略)ヒンジ運動は、この動きを阻止するのがきわめて容易です。
(p.29)

「井桁崩し」というのは、「ナンバ」と並んで甲野理論の中心的・代表的タームですが、それについての解説はこの本の中で直接間接に出て来るので、少しまとまった形で読みたい方はWikiの方でも。
・・・・と思ったけどwikiも大した解説をしていないので(笑)、一応こんなのを引いときます。

 ・相手を倒す方向とは別の方向に働きかけることで崩します。
 ・別名を「平行四辺形の原理」といいます。
  長方形が畳まれて平行四辺形に変形していくように動くことから、そう呼ばれています。

(『半身動作研究会の「技アリ」ブログ」』)

「井桁」というのは井戸の上の方のシャープ型の木枠のことで、それがつまり「平行四辺形」ですね。
"捻らない"はまだしも、"支点"を作らないというのはなかなか即座に理解し難いですが、後半の「支点」を基にした動きは予想し易い、抑え易いという話が、ある意味の説明になりますが。そもそもが"技"ですから、それを使うメリットや優位性という視点が無いと、意味の無い話になりますからね。

体を捻るな、ということは、現在広く普及しているスポーツはもちろん、武道であっても違和感を感じる人が多いようです。なにしろ、現代では体幹を捻っておいて、いわゆるタメを作り、それで力を出そうとしている人の方が圧倒的に多いですから。

しかしこのような体の使い方は、どうしても若さ、筋力といったものを重視した近代スポーツの体の使い方に呑み込まれてしまいます。
私はよく、武術の体の使い方を「共同募金のようなもので、少しずつ大勢の人が出し合えば個人の負担は僅かでも大きな金額が集まるのと同じで、身体各部がそれぞれ自分の持ち場で無理なく動くことによって、その力がうまく合わさるようにする」と説明するのですが、体を捻って、タメを作って使う身体の運用法では、どうも直接その動きに使われる部分と、間接的にその動きを支える部分とが分かれ、使われるところは酷使され、そうでないところはたいした出番もないまま傍観しているように思うのです。
(p.30-31)

"共同募金"。
"元気玉"の方が、ウケがいいのでは?(笑)。一応武術の話だし。(笑)
それはともかく、どっちの比喩でも固定した物体的な「力」が足されるイメージになってしまいますが、実際には力の"伝達"の仕方の話なんだろうとは思います。固定支点を基にしての"タメ"る動きというのは、その伝達を意図的に滞らせて溜め込むことによって解放時の大出力を狙うわけですが、その"滞り"の無理が特定部位にだけかかってしまうという、そういう話。
そしてそうした"集中"よりも分散・均等の方が、上手くやれば結果的に出せる力も大きい、"タメ"に勝てるという、そういうことなんでしょうね。

最近は、バスケットボールや陸上競技、野球といったジャンルの中で、私の武術における身体の使い方に関心を寄せられた方々といろいろお付き合いをしております。
面白いことに、私の術理に深い関心を寄せられる方々は、ウェイトトレーニングなどを主とする近代のスポーツトレーニングに疑問を感じられている方達で、身体を摩耗させるトレーニングの在り方から離れようとされていることです。
(p.35)

前回の"「スポーツ」の弊害"の話への応答。
"ヒンジ"に代表されるある種「機械」的な運動の無理と、それを(ウェイト)トレーニングで補う、あるいは更なる負荷を体に掛けることの限界。

それで、そういう酷使に耐えるもっと強い体を、壊れる前に作っておこうとする。トレーニングというわけです。(前田)

前田氏は新陰流(または"剣術"そのもの)で、甲野氏は井桁原理で、そもそもそうした無理をする必要性自体を無くし、更には"スポーツ"的動きでは出来ない動き、それを上回る有効性を持った動きを、実現しようとしているという。

スポーツの技術は、体を摩耗させ、ごく短期間で限度に達してしまうことと切り離せない。(前田)

しかしこのような体の使い方は、どうしても若さ、筋力といったものを重視した近代スポーツの体の使い方に呑み込まれてしまいます。(甲野)

ここらへんも、共通する問題意識ですね。
早生の醜さと浅薄(前田)、筋力主義の侘しさ(甲野)。

色々論点が出て来ましたが、まとめると次の三つか。
・"スポーツ"的動きと強化による、身体への無理。
・"スポーツ"的動きの単調さ、限界。
・力ずくの動き及び身体の部分的に偏った使用そのものへの、美的知的不満。


健康と勝負と美。これは別に"重要度"順ではなくて、世間に訴え易い順です。(笑)
二人の動機の根本も、実際は3番目こそが出発点にある気がしますし。
甲野さんは特にそうですね、「技」が「力」を凌駕出来るのでなければ、そもそもやる意味が無いしという。
まあ武術のレゾンデートルの更にディープな話は、次回の前田氏担当の回でより全面的に展開されるのでお楽しみに。(?)


今回比較的内容が少なかったので、最後に個人的関連妄想でも。

・ゴリ森山のステップワーク

前回話した"ファンタジスタ"の特別性の理由というのとは別に、"サッカー"と"武術"ということでもう一つ印象的なトピックスがあったのを思い出しました。
それは元名古屋の伝説の"スーパーサブ"森山泰行選手のプレーで、元々優れたストライカーではあった彼が、晩年に近くなったある時期から何か神がかったプレー、もしくは獣がかった(笑)プレー勘をエリア近くの狭いゾーンで見せ始めて、その背景にどこかの武術家のところで習い覚えた古武術的足運びがあるということを、あるインタビューで言ってたんですよね。(具体的には今回は調べられませんでした)
古い記憶で何とも説明し難いんですが、本当に不思議なプレー感覚、異様な決定力・落ち着きを、ある時期から急に森山選手が見せたのは確かなので、その記事を読んで「ふーん、古武術って実効性のあるものなんだ」と、最初に思ったのは多分こっちです。
・・・・そうね、フリオ・サリナスのプレーとか、甲野さんに分析してもらったら面白いかも。(笑)
ペナルティ・エリア内は、時に"スポーツ"では割り切れない領域には見えますね。スピードとパワーでは。

・"タメ"と"ポゼッション"

サッカーで「巧い」選手と言えばタメを作れる選手で、ゲームメイク、パスサッカーと言えば中盤司令塔かポストプレイヤーが作る"タメ"が、出発点となるのはよく見る風景ではあるんですが。
ただ一方で特定の"タメ"ポイントに頼ったサッカーというものは、必ずしかも割りと早々に、独特の限界が来るのも実によく見る風景なわけで。
あるいは例えばパルサの"パスサッカー"の本当に凄いところは、ボールキープはしているけれど、所謂それと分かる"タメ"や特定の支点、固定点というものがほとんど目に映らない、少なくとも次々に移動流動して捉えられないところだという認識・比喩を用いてみると、甲野さんが個人の体の運用について言っていることも、比較的イメージし易くなるのではないかなと。
個人の"身体の各部位"が、サッカーチームの"個々の選手やポジション"に置き換えられるという、そういう比喩。
まあそうした流動性が達成されるのはそれこそ"達人"の"神業"の類(たぐい)という部分はあって、しばしば実際には、それこそスポーツ的な集中的なパワーの使用に、敗れてしまうわけですが。(笑)
1つのイメージとしては、参考になるかも。


ではまた次回


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