・・・まあ"オフト以降"でもいいのかも知れないですけど、基本的には"日本リーグ総決算"チームであったオフトが見せてくれた希望を基に、Jリーグ時代の日本代表が本気で世界への挑戦を始めたのは、やはり加茂ゾーンプレスからだと思うのでね。"今日"への(戦術的)繋がりという意味においては、特に。
対象とするのは、"日本代表"永遠のテーマである「体格」の問題が本格化する、五輪年代以降のチーム。
それからアジアで勝った負けたではなく、あくまで対欧州・南米・アフリカにおいてそれなりの成果を出したチーム。
まあ"勝つ"ことの方が少ないので"成果"の見方はやや難しいかもしれませんが、仮に負けても、それこそ"その時の"「自分たちのサッカー」をやり切れたチームなら、成果と見ることにします。・・・つまりまず"やり切れ"てみないと、仮定の話ばかりで現実の参考材料にならないので。更に言えば、一定の力・有効性が実際にあるから、"やり切れる"わけで。負けても十分にそのチームのやり方は、検討の価値はあると考えます、感じます。
チェック項目としては、
の以上5項目をそれぞれ3段階で。1.ディフェンスのポイントの位置 (高・中・低)
2.オフェンス戦術 (ショートカウンター、ボゼッション、ロングカウンター)
3."中央突破"性 (高・中・低)
4.持続可能性 (高・中・低)
5."基準"性 ("トップ"型、"アベレージ"型、"ボトム"型)
4と5については前回の記事を見てもらうとして、やや唐突に見えるだろう「中央突破性」という項目ですが、これは何かというと、今回の"本田・香川"にも到る日本代表(選手)がこだわる日本の"パスサッカー"と称するものは、オランダ式"ポゼッション"とか中盤でゆっくり回して穴を見つけるとかいうよりも、むしろワンツー中央突破の瞬間の快楽の麻薬性(笑)、及びそれについての確かに日本人が傑出しているとも見える器用さ・敏捷性への自信とこだわりが、その実体であるように思うからです。
歴代代表が揉める(笑)のも、結構ここらへんが中心になってるように見えるんですけどね。
まあ、やってく内に、何となく。分かるかなと(笑)。では。
サンプル1 加茂ジャパン('95アンブロカップ)
基本メンバー(3-5-2)
GK前川 DF小村・柱谷・井原 MF山口素・名良橋・相馬・北澤・藤田(森島) FW中山・カズ
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (高)
2.オフェンス戦術 (ショートカウンター)
3."中央突破"性 (中)
4.持続可能性 (高)
5."基準"性 ("アベレージ"型)
"アンブロカップ"とはまた地味ですが(笑)、公式戦ではないとはいえ、アウェーの対列強(イングランド・ブラジル・スウェーデン)戦で、それなりにまともな試合が出来るという震えるような感動を当時味わった、近代ジャパン(?)の言わば国際デビュー戦となった重要な試合だと思います。
・・・ただいきなりですが、診断にはちょっと迷いました。
加茂ゾーンプレスは日本代表(日本サッカー)の言わばハイプレス事始めで、それゆえの戸惑いはありましたし最初は何てエキセントリックなんだとも思いましたが、しかし以後のあらゆる"日本代表"と比較してもプレスの組織化はかなりのレベルで、初めての戸惑いを除けばむしろ安定感のある類のチームだったのではないかと。
実際に加茂さんの作った路線の上に今日の日本サッカーも大きくはあるという意味も含めて、4.持続性を"高"、5."基準"性を("トップ"ではなく)"アベレージ"型と、判定してみました。
3"中央突破"性が"中"なのは、この時期のチームに限ってですね。加茂さん自身はリスクを嫌ってむしろそういう要素を排除しよう排除しよう(ポストプレーさえ嫌う)とその後動き、4-2-2-2にしてからは特にそうで、それが五輪後合流した前園との衝突の一因にもなるわけですが。
サンプル2 西野五輪代表('96アトランタ五輪本大会)
基本メンバー(3-6-1)
GK川口 DF松田・田中誠・鈴木秀 MF服部・伊東・遠藤彰・路木・中田英・前園 FW城
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (低)
2.オフェンス戦術 (無し)
3."中央突破"性 (高)
4.持続可能性 (低)
5."基準"性 ("ボトム"型)
引いて構えて跳ね返すというよりは、しぶとくディレイしながら徐々に後退(笑)して、最後は田中誠が名人芸でスウィープする、みたいな感じでしたかね。まあディフェンスのポイントが最終ラインにあったのは、確かだと思います。
オフェンス戦術が"無し"とは酷い言い方かも知れませんが(笑)、ポイントが後ろにあるのにロングレンジアタックのイメージはほとんどなく、城と前園(+ヒデ)の"1,2ユニット"が何かの行きがかりで高い位置で揃った時に何かが発動するという、そういう感じ。・・・そういう意味では、ザックジャパンとも似ているかも。(笑)
実際の例のブラジル戦の得点は、"長友"的な身体能力を実は誇っていた左サイド路木のロングランニングと、それに合わせて"予定外"にゴール前に走っていたボランチ伊東テルのこれまたロングランニングによって生まれていますね。その前のブラジルのアホなミス含めて、"形"とはとても言えないかと。(笑)
中央突破性はだから高いです。持続可能性はこんなことさすがにいつもやってられないというのと、実際"ブラジル"相手の特異な緊張感が解けたナイジェリア戦では、ナイジェリア自体がまだぼんやりしていたのもあって上手く噛み合わず、最後のハンガリー戦では勝ちはしましたが、前の方はもう別のことをやっていた感じで正に"持続"しませんでした。
"ボトム"型なのも当然ですね。とにかく世界大会の真剣勝負でブラジルとやるという事態がはっきり言って想像の外で、何はともあれいかに破壊的な試合にならないかをひたすら念じた超安全策のスタイル。
サンプル3 第一次岡田ジャパン('98フランスW杯本大会)
基本メンバー(3-5-2)
GK川口 DF秋田・井原・中西 MF山口素・名波・名良橋・相馬・中田 FW城・中山
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (低)
2.オフェンス戦術 (無し)
3."中央突破"性 (中)
4.持続可能性 (中)
5."基準"性 ("ボトム"型)
これを"成功"例としてカウントすることに異議のある人もいるかも知れないですけど・・・。
ただまあ、アトランタブラジル戦程ではないにしても、やはり初のW杯でアルゼンチン・クロアチアとやるというのはかなり想像の埒外の事態であったわけですし、負けたとはいえ僅差、試合は成立していたし、少なくとも「やろうとしていたこと」はやり切れていたと思います。そういう意味での、"成功"。
ディフェンスはプレスの意識はそれなりにありましたが、やはり秋田・中西という、それぞれの部門のスペシャリストのマンマーカーに象徴されるように、基本的には最終ラインで守るつもりのやり方ですよね。
オフェンスは指揮者が前園からヒデに代わっていることで、それこそ例えばヒデが当時望んでいたように「城・岡野」の2トップでも実現していれば"戦術"としてのロングカウンターも成立可能だったかも知れませんが、そのヒデの位置もかなり低めだったこともあり、基本的にはやはり偶然頼みで、ほぼ"放棄"されていたと言って問題無いと思います。
基準性は当然ボトム型、アトランタに比べるとだいぶ守り方には余裕が出て来ていたという意味で、持続可能性は一つ上げました。
サンプル4 トルシエ五輪代表('99一次予選バージョン)
基本メンバー(3-1-4-2)
GK曽ケ端 DF中澤・宮本・中田浩 MF石井・酒井・中村俊・小野・本山 FW柳沢・平瀬
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (高)
2.オフェンス戦術 (ボゼッション)
3."中央突破"性 (高)
4.持続可能性 (低)
5."基準"性 ("トップ"型)
今回の方針(↑)だとここには(見事予選リーグは突破した)シドニーの本選が来るはずですが、いかんせんそれだと戦術もメンバーもほとんど次の日韓W杯と同じになってしまって詰まらないので、特別措置でこのチームもサンプルに。Wユース準優勝のご祝儀込みで(笑)。・・・明らかにこちらが"本来"のトルシエですしね。
更に細かいことを言うと、最終予選以降は小野伸二の負傷もあって"助っ人"中田ヒデ中心の堅いスタイル(ヒデは基本的にカウンター向きの選手)になるわけですが、だから形式的に言えばフル代表のアジア杯スタイルのように、世界(フランス)に通用しなかったから転向したわけではないわけですよ。だから・・・通用したのかも知れないわけです(笑)。それこそWユースのように。まあ強弁ですけど。(笑)
それを抜きにしても、加茂ジャパンのプレッシング(ショートカウンター)事始めに対する"ポゼッション"事始めとして、やはり記録にとどめておきたいチームではあるかなと。
"診断"については、1,2,3はまあその通りですね。4は明らかにトルシエ専用戦術ですから、当然"低"という評価にならざるを得ない(後に控えていたのが恐怖の人間力ですし)。リスキーな戦術の割りに結構安定感はありましたけど、それもどちらかというとトルシエの名人芸というか個人的感覚に負っていた部分が大きくて、内実は常に"板っコ一枚下は地獄"の「トップ」基準型の冒険サッカーではありましたね。
サンプル5 トルシエジャパン('02日韓W杯本大会)
基本メンバー(3-4-1-2)
GK楢崎 DF松田・宮本・中田浩 MF戸田・稲本・明神・小野・中田英 FW鈴木隆・柳沢
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (中)
2.オフェンス戦術 (ショートカウンター)
3."中央突破"性 (中)
4.持続可能性 (中)
5."基準"性 ("アベレージ"型")
ディフェンスは基本形としてリトリート型ではないわけですが、本来の前がかりの形から人選と最終ラインの運用を慎重にして、ぎりぎりのバランスで"中"を取った、本当に"中"という感じ(笑)。まあ中盤の戸田の奪取力に多くを負っているという意味でも、そうかも。
オフェンスもまあ、何というか、"長くないカウンター"というくらいの意味での(笑)、"ショートカウンター"。ほんと妥協的なチームでした。器用なもんだなという、逆に。中央突破性も、人材的に明らかにサイドアタック向きではないからという、消去法的な評価。"稲本"は戦術なのか?あれは。(笑)
持続可能性は、バランス的には結構ありだと思うんですけど、いかんせんもう、独立した「型」とは言えない感じになってたので、引き継げと言われても困るよなという。やるならトルシエもう4年やって、落とし前つけろよという感じ。
ただ粘り強い妥協(笑)でバランスは十分に取れているので、"アベレージ"型だという評価は賛辞と言っても、満更嘘ではないです。"トップ"型の戦術の"ボトム"型の運用?足して2で割る。(笑)
サンプル6 小野U-21('02トゥーロン国際)・・・プレー動画。
基本メンバー(4-2-1-2-1)
GK藤ヶ谷 DF石川直・茂庭・富澤・駒野 MF鈴木啓・阿部・森崎和・松井・山瀬 FW中山悟
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (高)
2.オフェンス戦術 (ボゼッション)
3."中央突破"性 (高)
4.持続可能性 (中)
5."基準"性 ("トップ"型)
ここもサンプル4同様、やや趣味というか贔屓入ってます(笑)。年代的には対象ギリギリ、ユース以上五輪未満。対戦相手は問題なく世界クラスですが、大会の規模としてはそこまでではない。
このチームの詳しいことは、とりあえずはリンクのコラムを。後で僕も少し書くかも。
とにかく今のところ究極の前がかり攻めダルマショートパスポゼッション(接近?)スタイルで、しかもそれで(一応)世界大会3位という好成績を収めたチーム。
本田は知ってたのかなあ、これ。逆にこれくらいやってくれるなら、いくらでも応援したんですけどね。
まあこんな完成度を選手主導ではどだい無理なので、そういう意味では、本田を責めるわけにも行かない。
1,2,3,5は、だからその通りです。そしてその"完成度"ゆえに、更に言えばそれ以前からの協会の継続強化の結実でもあったという性格ゆえに、「型」としての持続可能性は結構あったのではないかと思っています。だからかなりエキセントリックではあっても、4の評価は"中"。
ぜーんぶ、次の山本人間力がぶち壊しましたけど。
・・・'04アテネ五輪本大会(検討の価値無し)
・・・'06ドイツW杯本大会(検討の価値無し)
・・・'06-'07オシムジャパン(検討の材料無し)
オシムジャパンの"世界"挑戦と言えば、強いて言えばラス前のスイス戦とかなんでしょうけど・・・
ちょーっと弱い、材料としては。乏しいというか。加茂ジャパンの時代ならともかく。
ほんとの壁には当たってないので、要するにどれが基本スタイルでどれが基本メンバーなのかも決めかねますし、今回は検討外とさせていただきます。
サンプル7 反町U-23('08トゥーロン国際)
基本メンバー(4-2-3-1)
GK西川 DF中村北・青山直・水本・森重 MF本田拓・青山敏・梶山・本田圭・谷口 FW森本
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (中)
2.オフェンス戦術 (ショートカウンター)
3."中央突破"性 (低)
4.持続可能性 (高)
5."基準"性 ("アベレージ"型)
またトゥーロンですが(笑)、今回は少なくとも、年代的には五輪(本大会)年代です。
メンバーも戦い方も結構大会中に変わってるので、僕がベストマッチだと思っている決勝トーナメントイタリア戦のものを採用しています。
リンク先の記事でも説明したように、この大会この試合での日本は、"中盤全員ボランチ"のような独特な編成で、相手の攻守に即座に対応する柔軟自在な戦いぶりを見せて、無理に攻めないという意味では"攻撃的"ではないんですけど、さりとて最初から守備的に構えるでもなく、必要な分だけ下がって必要な分だけ上がるという実にタフな試合運びで、イタリアをギブアップ寸前まで追い込みました。・・・ブラジルW杯で強そうなスタイルというか。(笑)
"下がり過ぎないチャレンジャー"という意味では、コスタリカに少し似てるか。
ただそれよりはポイントは平均して高かったと思うので1は"中"、ポゼスは特にせずにサイドの攻防の中からの反転速攻がメインだったので2と3は上のように。
更に中盤に同レベル同タイプの"ちょっと上手いでも真面目な選手"が沢山いる日本の(当時の)選手層に合ってるという意味で高い持続可能性を感じましたし、"基準性"については上のように、"アベレージ"の極みのバランスの良さだったと思います。
そうは思わなかったらしい反町監督が、次の北京では"攻撃的"に行って惨敗して、このチームのことも忘れられてしまいましたが。
・・・'08北京五輪本大会(検討の価値無し)
サンプル8 第二次岡田ジャパン('10南アW杯本大会)
基本メンバー(4-1-4-1)
GK楢崎 DF駒野・田中マ・中澤・長友 MF阿部・長谷部・遠藤保・松井・大久保 FW本田圭
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (低)
2.オフェンス戦術 (ロングカウンター?)
3."中央突破"性 (低)
4.持続可能性 (中)
5."基準"性 ("ボトム"型)
記憶に新しいですし語られ尽している感もあるので、あんまり言うこともないですが。
(当時の)本田圭という、前線で互角に踏ん張れる選手の存在によって、何とか"戦術"と言い得るロングカウンターらしきものが成立していたのが、新味でしたかね。
後は勿論、闘莉王・中澤という史上屈指の"強"CBコンビの存在と、当時の流行ではありましたが4-4ブロック(+アンカー)というディフェンスシステムを岡田監督が意外なほど(笑)上手く使いこなしたことにより、かなりはっきり、"構えて"守る印象のあったチーム。
その安定性を加味して、"日本人には無理"と言われがちなリトリート・スタイルではありますが、持続可能性は"中"の評価を与えてもいいのではないかと。
持続したくはないとしても。(笑)
サンプル9 関塚五輪代表('12ロンドン五輪本大会)
基本メンバー(4-2-3-1)
GK権田 DF酒井宏・鈴木大・吉田麻・徳永 MF山口蛍・扇原・清武・東・大津 FW永井
(理由)1.ディフェンスのポイントの位置 (高)
2.オフェンス戦術 (ショートカウンター)
3."中央突破"性 (中)
4.持続可能性 (高)
5."基準"性 ("アベレージ"型)
まあ、これもあんまり言うことはないですね。
"分かり切ってる"戦い方という意味で、うっかり基準性に"ボトム"の評価を与えそうになりますが(笑)、そこはそれ体力の限り必死にプレスにチャレンジしていた、選手たちに免じて。(笑)
ただ攻撃戦術も実はよく分からないところがあって、トップ下がいてかつ大津が中に入って来る選手なので"中央"的ではあるんですが、でもパスワークやドリブルで崩してる感じでもないし、かつハイプレスではあるんですけど(このチームでの)永井のプレイスタイル自体からの連想としては、"距離の短いロングカウンター"みたいな言い方もしたくならなくはない(笑)。
一応全部ひっくるめて"ショートカウンター"のバリエーションと、今回は収めておきましたけど。
・・・'14ブラジルW杯本大会(検討の価値なし)
最後にポロッと酷いこと書いてる気もしますが(笑)、とりあえずは以上です。
これらの変遷の意味や今後の展望については、また次回。