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読書日記(’14.10.7) ~伝奇・時代・歴史
2014年10月07日 (火) | 編集 |
割りと軽い内容ばかりですが、数だけは溜まっちゃったのでここらで放出。
読んだ順。


妖剣・蒼龍伝―中国怪奇譚妖剣・蒼龍伝―中国怪奇譚
(2003/01)
岡本 好古

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名哲をもって鳴る名君の心にも、讒言というものはくり返されるうちしだいに現実感をおびる。
不幸なことに頭の切れる人ほど想像力が豊かで、虚像も実像に転じかねない。
(中略)
古来、多くの名君が讒言に動かされたのも、こうした疑心暗鬼の力学である。
(p.51)

古めの中国物の、伝奇短編集。
"前半名君後半暗君"というのは、唐の玄宗皇帝(楊貴妃のダンナ)などが、例としては有名ですが。
あの例は割りと、要は玄宗が政治に飽きた、理想に燃えて始めたものの、思うようには行かない改革と思うように応えてはくれない国民にうんざりして放り出したと、そういう文脈で書かれることが多いかな?
「頭の切れる・・・」に似た観点としては、例えば宮城谷昌光さんなんかは、高名な中国の"暴君"のはしりである"夏の桀王""殷の紂王"を、共に「度外れた天才児が自己の客観視を失った」結果として自覚なく暴君になったと、そういう描写の仕方をしてますね。

ネロやヒトラーが芸術愛好家だなんて例もありますが、こうした"不幸"には、一つは「政治」などという舞台が文字通りの頭の良さや感性の豊かさなどとはどだいそぐわない、うっかり組み合わせると破滅的な発想を生み出してろくなことにならない、ある程度凡庸で鈍感なくらいでちょうどいい(笑)と、そういう領域に属したものだということかも知れません。・・・鳩山由紀夫さんとか?(笑)
もう一つはまあ、もっと単純に権力そのものの人を狂わせる怖さというか、そこにうっかり"天才"なんかを座らせると、どうぞ自尊心を肥大させて下さいと言わんばかりであるし、その場合"濫用"自体も天才的に芸術的に大胆に行うものだからえらいことになると、それがまあ、伝説的な桀や紂の例という。

・・・この作者が直接言いたかったのは、讒言の"効く"仕組みというか、なぜ「名君」も讒言から逃れられなかったのかという歴史の悲劇の一つの説明と、そういうことでしょうけどね。

いま一つ重要な資格は、道義心を萌(きざ)さないことである。仏心や自責の感情は何よりも大敵である。
つまり、あまり若からず、また、悔いの時代である老年でもない、壮気さかんな中年が適役とされた。
(p.225)

こっちの方が面白い。
これは先祖代々"墓荒らし"を生業とするある村の、リーダーの資質について書いたところですが。
年若いと潔癖で理想主義的なところが残るから、"道義心"に囚われがち。
一方で老年は勿論、身近に死を感じてどうしても内省的になる。
だから"墓荒らし"という悪行を割り切って大胆に生業として率いるのは、その狭間の壮年がいいという、そういう伝統の知恵。
おっさんは恥知らずという、そういう話です。(笑)
ツイッターなどでもよく流れて来ますね、「マナーが悪いのは若者ではなくて、むしろ大人だ」という証言。
別な観点から言うと、老年より「壮気さかん」でかつ若年に無い「自信」に満ちた状態だと、まず何よりもそうしたパワーを振るいたい、目的の善悪よりも"活動"欲求がとにかく優るから、恥ずかしげもなく何でもやってしまうと、そういう構造はあるでしょうね。
逆にある行動を"しない"理由として道義的理由を(特に)男が挙げる場合は、少なくない確率で単に(成功する)自信が無いからであることが多いというのは、自分自身を振り返っても残念ながら言えると思います(笑)。かくしてマッチョイズムは止まらない。
上の件と合わせて、元気な人は政治やっちゃ駄目と、そういうことにしてみましょうか(笑)。でも鈍感力も必要なんだよなあ、その為には恥知らずも歓迎な面が、ううむ。(笑)


人斬り剣奥儀 (新潮文庫)人斬り剣奥儀 (新潮文庫)
(1992/09/30)
津本 陽
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自顕流の組太刀の特徴は、攻め太刀があって防ぎ太刀がないことである。
流儀の内容を知らない者はそれならば、攻め損じたときは敵に斬られるという懸念を持つが、相手の剣尖をおさえ、わたりこんでゆく技は、八十をこえる種類があり、敵を倒すまで攻撃を連続して反撃に転じさせない、巧緻な内容であった。
(p.41)

"自顕流"というのは、高名な"第一撃に全てを懸ける"薩摩の示現流の、近親流派とそう理解しておいて下さい。
連想したのはやはりというか何というか(笑)、ハイプレス専、あるいはバルサ的な支配率100%を目指すタイプのポゼッションサッカー。"防ぎ太刀"、守備の為の守備メソッドが存在しない戦術という意味で。
サッカーと違う、あるいは越えているようなのは、そこはやはり一度の失敗で実際に命まで取られる(笑)剣術の厳しさで、ボールを取られない、カウンターを受けない為のメソッドがかなり細かく設定されていたらしいことで、"玉砕覚悟"なんてとんでもないということですね、どこぞのざっく・じゃぱんみたいに。(笑)

"わたりこんでゆく"という表現が、面白いなと思いますね。攻撃中の前線の狭い地域での、いなしと出し入れ。
サッカーで言えばそれはバルサ的なバックパスの活用とかなのか、それとも取られた直後の取り返し、ゲーゲンプレスの方なのか。"剣尖をおさえ"るという行為は"圧迫"という意味ではゲーゲンプレスっぽいですが意外と"おさえ"てる間に態勢を立て直す、時間を稼ぐみたいなニュアンスも、感じられるんですよね。
だとすると・・・という。(笑)

実際示現流の"攻撃特化"は、強かったらしいですね。やはり"トータル"オランダのプレッシングや攻めっ放しに似た、剣術史上の常識破壊ではあったのではないかなという。



進々堂世界一周 追憶のカシュガル進々堂世界一周 追憶のカシュガル
(2011/04)
島田 荘司

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「あれ、恋じゃなかったの?」
ぼくは訊いた。御手洗さんは横を向いていた。そしてこう言う。
「君が今死ねば恋さ。あらゆる判断は、比較から生じる。材料が多いほど、その精度も上がるんだ。」
(p.29)

この場面は全然関係無いですが(笑)、作中には(世界の)"歴史"をめぐるエピソードも、豊富に出て来ます。
"本物"の恋は最新の恋という話。あるいは"本物"と"偽物"があるのではなくて、経験を繰り返して"本物"に近付くのだという、そういう話。その永遠の、"材料"蒐集。(としての人生)

思考とは、比較である。
だからアナロジーはロジックよりも、"思考"として本源的なのである。
・・・とまでは、言ってませんが。(笑)

今死ねば恋、と言われて、満足は出来ませんね。(笑)
やっぱり、悔しい。(笑)
もっと、生きてやる


星籠の海 上星籠の海 上
(2013/10/04)
島田 荘司

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「あなたが持っている言葉の範囲で、私を説得するのは無理。これは考えに考え抜いたすえのこと」
言われて、小坂井は絶望した。
(p.104)

ここの場面のように女に男(小坂井)が言われる場合は特にそうでしょうが、これも随分、悔しい突き放され方でしょうね。
しかしこうしたある種の「格」の差というのは、しばしば存在していると思います。
単に言葉が上手いとか下手とかいう、問題ではなくてね。
人としての格、思考・経験の深さの差が、言葉が"届く"限界を定める。
まあ単に"関係性"としてそうであるという、場合もあるでしょうけどね。
それこそ誰かが誰かを"口説けない"でいる状態では、常にそうかも(笑)。必ずしも相手が、一般的に言って知的・精神的に優れているわけではないとしても、少なくともその二人の間での"優劣"としては、そうなっている。


星籠の海 下星籠の海 下
(2013/10/04)
島田 荘司

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「アメリカは、本国イギリスと独立戦争をした。その時、アメリカはやはり海軍を持っていなかった。幕末の日本と同じです。」
(p.379)

この作品全体は、幕末の黒船来航にほとんど独力で対応したという、時の老中阿部正弘の苦心の史実を、背景として書かれています。
アメリカはそもそも"国"ではなかったわけですから、自前の海軍を持ってなかったのは当たり前と言えば当たり前ですが。
そのアメリカが独立後持った"海軍"の刺激・外圧により、日本も海軍設置のドライブがかかったというのは、何か歴史のめぐりとして面白く感じます。
ちなみにこの両者はだから、敵(アメリカにとってのイギリス、日本にとってのアメリカ)の海軍に対して、ほとんど同じ戦術を試していて、その遺産についてのミステリーが、作品のモチーフです。それ以上はネタバレ。(笑)

島田さんは最近は他に『アルカトラズ幻想』

アルカトラズ幻想アルカトラズ幻想
(2012/09)
島田 荘司
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なんかも読みましたが、まあ何というか、相変わらずインスピレーションは豊かに与えてくれるんですが、"小説"としての緊張感はなかなか見る影も無い感じになっていますね。(笑)
別に手を抜いているわけでも驕ってるわけでもないんでしょうけど、何かもう、生理的な限界がある感じ。
富野レコンギスタも、生温かい目で見てあげるべき?(笑)
・・・まあ富野さんの場合はむしろ、構成は整っているけど圧やインスピレーションが不足気味という、そっちの問題だと思いますが。
年の取り方も、色々ということで。(笑)


僕(の年の取り方)はどっちだろう。
島田型か、富野型か。(笑)
根本は結局どちらも、リビドーの枯渇ではあるんでしょうけどね。まとめるパワーとぶつけるパワー。(の不足)


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テーマ:読んだ本の感想等
ジャンル:小説・文学
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