2017年08月01日 (火) | 編集 |
図書館でてきとうに借りた本だったんですけど、なかなかいい本でした。買っちゃいました。(笑)
「戦術」が書いてあるというよりは、「戦術」を論じる為にベースとなるだろう基礎概念を、改めて現代的な意識で、系統立てて説明・整理した本。
2008年刊。
"半年"の勉強の甲斐あって、ほんとに細かい技術的現場的なこと以外は全く知らないことというのは無かったんですけど、それだけにちょうどいい感じの本でした。そういう意味でそれなりには専門的な本で、「入門書」としては少し難しめか。
その中から現時点で書いておいた方がいいだろうと思われる、特に興味深い点について抜粋してみます。
「レセプション」と「ディグ」
サーブレシーブ(レセプション)とスパイクレシーブ(ディグ)、二つの"レシーブ"それぞれについて、この人が必要だとする能力・資質は。
レセプション
ディグレセプションのときはサーバーをしっかり見ることが大切です。打たれたボールに反応するだけでなく、しっかりとした予測のもとに反応する準備をしておきましょう。
狙っているコースや場所、サーブの種類によって打ち方も異なります。(p.76)
はっきり言ってそんなに厳密な言葉遣いではないとは思いますが、"比べる"ことによってそれなりに見えて来るものはあるのかなと。ディグではレセプションのときのようにボールが届くまでの余裕がないため、ポジショニングと「読み」が大切です。(中略)
思考がはたらき過ぎてしまうと体に力みが生じます。(中略)
無理な態勢になることも多いので、敏捷性や体の柔軟性も大切ですが、最後は個人のあきらめない気持ちがどれだけ強いかで決まります。
ポジショニングに関しては戦術的な部分もありますが、すべてが予定通りになることはありません。(p.78)
レセプションに必要なのは「反応」より「予測」であり、それはサーバーを「見る」ことに依拠している。
具体的に何を見るのかというと、その後の文章から察すると要するにサーブの"打ち方"を見る、それによって球質やコースを「予測」するという、そういうことですかね。まあ"一例"だろうとは思いますが。
一方でディグに必要なのは「読み」だというんですけど、それは「予測」とどう違うのか。
その後の部分を見ると"考え過ぎるな"とわざわざ言ってますから、より直感的なものだということでしょうね。
「ポジショニング」についても同様で、サッカーで言えば"こぼれ球"に対する勘の良さのような、どちらかというと名人芸的なもののよう。最近流行りの(?)"ポジショナル"な組織サッカーの方ではなくて。
冷静な予測のレセプションと、勘と気持ちのディグ。一応は分かる気がします。
僕がこの前特に問題にしたのは"レセプション"の方で、ディグに関しては日本人は伝統的に優れている。"考える"のは苦手な日本人バレー(スポーツ)選手ですが、無心な反応とひたむきなガッツなら任せろと。(笑)
さてこれでレセプションの出来る選手と出来ない選手の違いが、明確になるのか。
例えばリベロを除けば近年の日本の女子バレーのレセプションの二大名人と言えばそれは「木村沙織」と「新鍋理沙」と言われるわけですが。
二人ともインタビュー対応などはお世辞にも"冷静""理知的"には見えませんが(笑)、それは日本の女子バレー選手全般に言えることなので置いておくとして。
まあ新鍋が"理知的"だというのは、スパイクの打ち方を見ても分かる気はしますね。一方で木村沙織は"多彩"ではありますが明らかに感覚的な選手で、不調に陥った時も自分では理由が分からなかったりするらしいんですけど、しかしレセプションは上手い。
ただディグの方も同程度かそれ以上に上手い感じで、一方の新鍋はディグに関してはレセプション程には、相対的に突出した存在ではないらしい。
ここからすると新鍋は根っからレセプションに向いた選手で、木村の方はむしろディグの"天才"に後天的にレセプション能力を学習・加味して、レセプションについても名人になったという、そういうイメージ。ある時期までは下手だったという証言も、よく聞かれるますし。
現役の他の選手を見てみると、現代表で他にレセプションが"上手い"とされる選手は内瀬戸真実選手ですが、なるほど彼女は、スパイクの打ち方もかなり理知的な感じはしますね。パワーヒッターではあるんですけど、身長が低い(171cm)こともあってむしろ"コースの打ち分け"の冷静さの印象の強い選手。
同様に身長が低くても、「エイッ」と打っちゃう思い切りの良さが持ち味の選手は、Vリーグにも結構沢山います。古賀紗理那のNECの同僚の、柳田光綺選手とか(168cm)。彼女なんかは、"レセプションが出来ない"ことで知られていますね。(笑)
問題はその古賀紗理那選手で、彼女も白痴的なインタビュー対応で知られてはいますが(笑)、プレーはむしろ計算ずくというか、理詰めもいいとこというか。高さはあるけれど(180cm)パワーも俊敏性も余り無いので、その分を「理」でカバーする。(それが間に合わない時は大破する。(笑))
だからレセプションも出来そうなタイプではありますし、出たての頃(2015年)は結構出来る方だったという話もありますが、何かと"諸説"の渦巻く選手なので改めて自分で確認してみた方がいいかなと、思っている今日この頃。
で、僕が現時点であんまり(古賀のレセプションの成長に)期待していないのは、やはり最低限必要な俊敏性に疑問があるからで、逆に石井優希選手なんかは運動能力の高さは明らかなので、出来るはずというか出来ないと困るという注文になっているわけで。ただ一方で"能力"任せの傾向もあるので、そこの「理」の不足が出来そうで出来ないという、ここまでのプレーになってるのかなとも。
うーんこうして見ると、やはり見えづらい知性や判断力の問題が、大きい分野なのかなとは改めて思いますが。
一応言っておくと、基本的には全日本まで行くようなレベルのスパイカーは、育成年代ではほとんどが守備免除でとにかく点取れという育て方をされているので、実業団や全日本に入ってから初めて練習を始めるというケースがむしろ普通らしいです。そういう意味で、"スタート"は同じなわけですけど。
まだすっきりとはしてませんね。引き続き検討事案。(笑)
ハレーボールのルールの歴史と戦術の変遷
1. おもなルール改正 (p.139より)
結構歴史が浅いというか、重要なルール変更が割りとつい最近行われてるんだなという印象。1947年 6人制国際ルールの制定
1965年 (ブロック時の)オーバーネットの許容
1970年 アンテナの設置
1977年 ブロックにおけるワンタッチをノーカウント
1989年 サーブブロックの禁止
1995年 腰から下でのプレーの許容、ファーストコンタクトのドリブル廃止
1998年 リベロ制の導入、サーブネットインの許容
1999年 ラリーポイント制の導入
元々はアメリカのスポーツだということを、今回初めて知りました。(1895年、W・G・モーガン)
ブロックだけオーバーネットしていいというのは、なんかすっきりしないなと初めて聞いた時は思いました。
今でも少し思います。大きい選手に有利過ぎるし。
ブロックのタッチを"3回"に入れないというのも変なルールには感じましたが、ただあれをカウントしてしまうと(つまり残り2回で返さないといけないとなると)明らかに攻撃の組み立てが単調になって"羽根突き"みたいになりかねないので、これは必要かなと。逆にそれ以前はどうしてたんだろうと思うくらい。
サーブブロックは体育の時に知らないでやっちゃって、いけないと言われてえーとなりました。(笑)
"腰から下"のプレーは、実際に見てるとどうしても取れない時に仕方なく足で蹴ってみるみたいなプレーがほとんどで、たいてい上手く行かなくて選手が照れ臭そうにしてるのが、変に可愛いです。(笑)
2. ルールと戦術 (p.150-151より)
1965年 (ブロック時の)オーバーネットの許容
・ブロックの"攻撃"手段化
・選手の長身化
↓
・「高いブロック」に対抗する為に、複雑な「コンビバレー」が発達。
・バックアタック登場。
・オフェンス優位に。
1977年 ブロックにおけるワンタッチをノーカウント
・ディフェンス側の盛り返し
1998年 リベロ制の導入
1999年 ラリーポイント制の導入
・バレーの単純化
・・・ルールの改正によるバレーボールの変化については、こちらのサイトなども詳しいです。
最後の"リベロ"と"ラリーポイント"によってバレーボールが「単純化」したというのは、比較的著者高梨泰彦さん独自の見解のよう。
意味としては"役割分担の単純化"(リベロ)と、"展開の単調化"(ラリーポイント)みたいなことでしょうね。
"リベロ"そのものは小柄な選手の活躍の機会を増やす為に、むしろ日本発で定められたルールのようですが(Wiki)、結果として「みんながレシーブ出来る」日本の優位を削ってしまった面は否めないと思います。
最近見てて面白いなと思ったのは、中南米の黒人主体の国のチームで、しばしば「リベロだけが白人」というメンバー編成が見られることで、つまりレシーブの得意不得意には人種的体格的理由が大きく影響していて、恐らく黒人の長い手足は特にレシーブには向かないんだろうなという、そういう感じ。
他にも色々と書いてはあって、特にブロック戦術の変化についてはかなり細かく解説されているんですが、それは今後僕の書くものに反映するよう心掛けるという感じで、今日のところはここまでです。
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