ヴェルディ等サッカー、漫画、アイドル 他
ペップ・シティについての現在の心境
2017年10月25日 (水) | 編集 |
@szakekovci、またはsakekovic_14さんからの"私信"に答えて。

2016/17 マンチェスター・シティの振り返り, part2:ほぼ私信編 より

元は僕のこれね。

ペップと"常識"の狭間で ~16/17ペップ・シティの1年(1)ペップの選手起用
ペップと"常識"の狭間で ~16/17ペップ・シティの1年(2)ペップのチーム運営

もう随分前に書いたものな気がするんですけど、6月だからまだ4カ月ちょいなんですね。
どうも日本式に「年度」で変わってくれないと、時間の感覚が曖昧になります。(笑)

17/18のプレミアはまだ始まったばかりですし、2年目のペップ・シティについてに特に何か結論が出ているわけでもないんですが、4カ月前からの心境の変化も含めて、現時点で思っていることを書いて返信にしようかなと。
・・・ぶっちゃけ最後までさしたる結論が出ない予感もしているので、ひょっとするとこれが僕が今季のシティに言える全てになる可能性も。(笑)

では行きます。


昨季のペップ・シティについて

>就任当時のシティファン界隈、リアル知り合いにはいないのでTwitterで、私がフォローしている人とそのRTに限定した話なのでサンプル数10程度の話ですが、まあとにかく界隈の反応として男性は歓迎、女性は懐疑的、という傾向が強かったように思います。前者は強いシティ、革新的なシティが見られるぞという反応で、後者は「なぜペップがシティかわからない(納得できない)」という反応が多かった。

これはシーズン中に僕も感じました。
ペップ・シティが(悪い意味で)煮詰まった試合をしている時に、「ペップだか屁っプーだか知らないけど、アタシの可愛いシティ(の選手たち)に妙な真似しくさったら許さんどー、どう落とし前つけるんじゃわれ、いてまうどー」(意訳)という"ストレート"なリアクションを女性サポたちがするのを見て、強ええと思ったことが何回かありました。(笑)
僕の場合は"歴"的にもそこまでシティというクラブやそこの選手たちに愛情があるわけではないんですが、一方で半分女性脳というか理論知に懐疑的な傾向のある人でもありますし、これペップ単に上手くいってないんじゃないの?駒の問題と猶予して済むレベルなの?と疑いつつも余り口に出せずにいたので、女性陣の反応にもっと言ってもっと言ってと卑怯な応援の仕方をしてたりしましたが。(笑)


>ポジショナルプレイの実践(攻守両面で効くような配置を取るためのプレーの反復)とか、その基礎としての速いパス回しを行う技術とか、そういうものは確実に向上していて、目に見えやすい”施策”よりはそちらを遂行させることの方にペップの手腕は現れていたんじゃないかと思います。

あのですね、それは分かるし、そういう監督だとも思ってはいたんですけどね。
ただ結果として「施策」として表れている一つ一つが、余りにバルサ&バイエルン時代のセルフコピー的というか、"発見"的なものに感じられない、「原理原則」との間の内的必然性が感じられないものが多いように思えたんですよね。バルサ時代やバイエルンの一年目の印象と比べて。
だからこそ逆に、"施策"の不発にも文句をつけやすくなる、成功不成功だけで語りたくなる、そういう感じですかね。
用意された結論の中から選択している感じで、"過程"を見守るわくわく感が薄かった。


だからszakeさんは"part1"の方で、

>もっと問題なのは、グアルディオラ自体が競争力を失うことだ。
>年をとっても、グアルディオラは(少なくとも素人目には)斬新なプレーを開発するだろう。(中略)ただし、今のようにタイトルを獲り続けられるかはわからない。


とペップの"賞味期限切れ"を危惧しておられますが、僕はその前に(昨季)"現在"の問題としての、ペップの情熱の枯渇を心配&疑っているところがありました。それで新鮮な思考が出来ずに、"セルフコピー"に陥っているのではないかと。
こんなのもありましたしね。

グアルディオラ「監督としてのキャリアは終わりに近づいている」 - Goal.com


先取り的に言うと今季に関してはそういう印象は無いんですが、昨季は実際にそういうところがあって、言い方はあれですが一年"休養"することで、セルフコピーでタイトルを獲れない経験をすることで、再び脳が活性化し出したのではないか、そう勝手に思っていたりします。(笑)

・・・そうそう、思い出しましたが、僕がペップのシティ監督就任に関して一番事前にもやっとしていたのは、バイエルンとの間でインターバルが無さ過ぎるだろうということでした。双方のシーズンの途中で、既に決まっちゃってましたしね。
これは同時にマンUに来たモウリーニョにも言えることですが、来てもいいけど働き詰めはどうだろうと、二人とも少しリフレッシュの期間が必要なのではないかと、そういうのはありましたね。
今季はめでたく二人とも、"有給"明けで元気ですが。(笑)
まあ"モウリーニョがマンUの監督になる"のも、"グアルディオラがシティの監督になる"のも、だいぶ前からの予定調和的な路線というところがありましたし。そういう意味での新鮮味もね。


>ペップの人間性、興味あります?機械みたいじゃない?失礼な言い方ですけど。

これに関してはむしろ僕的には、ペップの"面白"ポイントでした。
ペップのサッカーの「人間味」の無さには少し退屈していましたけど、その"退屈"なサッカーをさせているペップの「人間味の無さ」は、逆にペップの天才性の一つの表れとして興味深く見ていました。

誰よりもペップ自身がその「当たり前」を生きていて、言わば"無私"の状態で選手に接するので、普通の意味でのエゴとエゴのぶつかり合い的な"反抗"や"摩擦"はほとんど起きない
(中略)
別に"切り捨てて"いるのではなくて、最初から"見えて"いるものが違うという。
そういう、"天才"。
(ペップの選手起用編より)


ここらへんですかね。
いや、ほんとにね。
かつてはファーガソンやモウリーニョにさんざんその"優等生"性をからかわれていたベンゲルが、すっかり"味のある"人に見えて来てしまったくらいで。(笑)
実にこう、ケンカする意欲を湧かさせないパーソナリティですよね。(笑)


>で、アンリ、ヤヤ、アグエロに見る、選手の扱い。
>「陳腐化」するのは確かでしょうね。本当に「ニュアンス」に興味なさそうだから。一方で、それがつまんないかと言われると、個人的にはそうは思わないかな。


この"陳腐化"というのも、必ずしも悪い意味で言っているわけではないんですよね。結構価値中立的。
そもそもニュアンス、ないし細々とした「工夫」が意味を持つ、必要だったり効力を持つのは、あるレベルまでというか一定のスケールで見た場合であって、レベルが超越的だったり量的に圧倒的な差があったりする場合には、少なくともその優先順位は大きく下がる。
それこそ「日本代表の戦術的"工夫"」が、それ自体として世界的に大勢に影響を与えられないように。

ペップのやり方が細部では"陳腐"に見える時があるのも、あくまで絶対クオリティ(or基本構造)による正面突破を主眼としているからで、それが出来るのならせこせこ(笑)"工夫"するよりも、それは確かに話が早い。必ずいつも出来るとは、さすがに限らないとしても。
・・・例えば昨季から一貫しての僕のシティでの御贔屓選手であるケヴィン・デブライネのプレーも、ある意味では「陳腐」なんですよね。"意外性"よりはむしろ万事「模範的」なプレーを身上としている選手で、それは普通の意味で"面白い"プレーではないんだけど、しかしそれを「想定外」のクオリティでやってのけることによって小賢しい"意外性"の必要性自体をまとめて吹き飛ばすような、そういうプレーをする選手。
細かいテクニック自体は十分以上にあるんですけど、"細かい"印象は全然受けないですね。

多分この二人(ペップとデブライネ)の天才性には少し似たところがあって、相性がいいというか幸運なまたは運命的な出会いというか。ペップが来る前に、ある意味たまたま獲ってあった選手ですからね。

昨季についてはこれくらいで。
次は今季について。


今季のペップ・シティについて

最初に言ったように、そんなにまだ言いたいことも無いんですが・・・
先にszakeさんの方の意見を伺ってみると。(笑)

>で、今後。

来季は・・・どうなるんでしょう。あんまり変わらない気もするんですけど、それでもまた何か、驚きはあるのか。
いや、まあ、その前に勝ちますか(笑)。とりあえずどっちか下さい、発明か、勝利か。


>ひとまず後者の方でなんとかするという感じの今シーズン序盤ですが、末永いお付き合いを頂きたいもんです。

"引用"内は僕の文章です。
あれ?そうですか?なんか意外。「発明」の方は、まだあんまり信用していないんですか?(笑)
まあ「発明」というよりは、「カイゼン」に近いのかも知れませんがここまでやっていることは。
それでもあそこまで華々しければ、結構既に僕は満足してます。少なくとも昨季感じていたような"セルフコピー"の不満感は無い。その分ついて行くのは大変ですけど。

>何だかんだ、勝つだろうと。正直なところ、今でもちょっとある。ただ、大分説得力を持ってきたなというか、根拠のない感覚では無くなってはきたというところ。

なるほどね。評価していることはしているんだけど、"革新性"というよりは"根拠"性の方に重点を置いた評価なんですね。


さて、ほとんどろくに語っていない今季の中で、僕が辛うじて具体的(?)なことを言っているのが、szakeさんに当てたこの返信ツイート。


ふむ。
まあ文字通りに言えば、これは"間違い"だと思うんですけどね。
「オープン」にはやっていない。やっぱり色々と、細工は尽くしている。(笑)
ただにも関わらず、"間違い"だとは思いつつも、しかし実は未だに印象が変わっていないというところが、僕にはあります。

結局なぜ「オープン」にやってるのかなと思ったかと言えば、それは今季序盤(8/28時点)のシティのサッカーに、何とも言えない「大雑把」な印象を受けたから。初年度の昨季に比べても。
しかしより準備と選手に恵まれた今年のチームが、純粋に"完成度"という意味で昨季の同時期より大きく劣るというのは考え難いわけで、では何がその印象を与えたかというとその「大きさ」ですね。スケール感というか。それとより適材適所かつ強力な、今年の選手たちの躍動感。それがもたらす"荒々しさ"を、"粗さ"という方向に解釈すると、「オープン」という話になる。

と、僕の"誤解"の分析としては多分これでいいと思うんですけど、ではなぜ「変わらない」ものが残るのか。
問題はその"大きさ"なんだろうと思いますが・・・。どう言ったらいいのか。
上のツイートのちょうど一ヶ月前に、こんなことも言ってますね。


これはプレシーズン、インターナショナルチャンピオンカップで、駒落ちとは言えレアルをボコボコにした試合後の感想ですが。
この時もやり取りはしているんですが、後になってあれひょっとして誤解されてないかな?単にクラブとしてのシティが企業として優秀で、理に適った補強をしたとそういうことを言いたいわけではなかったんだけどなと少し心配していたんですが、先日のこのツイート


における「株主のためのフットボール」という言葉の使い方を見ると、概ね言わんとしていたことは伝わっていたようですね。(笑)

という前提で話を進めますが、僕が今年のシティに感じている「企業」感というのは、経営云々もまあそうなんですけどそれよりもっと直接的に、ピッチで繰り広げられていることそのものから受ける印象なんですよね。
企業、それも国際的大企業、更に言えばソニーとかトヨタとかそういうタイプの大きいけれどしかし結局は一つの"頑張ってる"企業というのではなくて、グーグルとかアマゾンとか、あるいはある時期以降のアップルとか、正に「世界制覇」「一人勝ち」を賭けて、最終段階の争いをしているようなタイプの「企業」。
そういう圧倒的に"優秀"な、その優秀さによって更に乗数的に成長するようなもう自分でもその成長が止められないような、次元の違う優秀さ。そういうビッグプロジェクト、巨大なマシンがが"動"いている様を眺めているような、その動きのいち"断面"をたまたま目撃しているような、そういう感覚。"サッカーチーム"を見ているというよりもね。本質的なのは関わっている人(たち)の"知性"の動きであって、それが"サッカー"であるのはたまたまであるというか。
"巨大企業"ではあるんですけど、もう嫉妬とか伝統的な意味での「非人間性」とかを(笑)、非難する対象になるレベルを越えてしまっている感じ。ただただ眺めている。

それは過去にペップが関わって来たそれはそれで"ビッグクラブ"たちともまた違って、巨大ではあるけれど中小企業的なバルセロナや、グーグル的トップランナーたちに"キャッチアップ"しようと「努力」している位置にあるローカル大企業的なバイエルンとは。
ペップ自身の成長や蓄積、それにシティの独特の「無色」な体質やそれこそ"経営"的な優秀さとの、色々掛け合わせなんでしょうけど。とにかく何か、見たことが無いタイプのスピード感スケール感。

ここまでにszakeさんが紹介してくれた何人かの方の今季のシティのサッカーの分析記事を読むと、だいたい共通して先進的な反面必ずしも「完成度」が高いわけではないということが書かれていた思いますが、それも何というか、「完成」の途上というよりも、動き続ける進み続けるビッグプロジェクトの、止まらないダイナミズムの、上で言ったいち「断面」性、そういう性格があるようにも感じます。ダイナミズム勝負なのであって、完成度自体はさほど問題にされていないというか。

時にはその「完成度」の問題などに付け込んで、敵チームは抵抗したり外野は文句をつけたりしかかるんだけど、それもええいうるさいという"巨象"のひと振るいでたいてい跳ね除けられてしまう(笑)。そういう「大きさ」。ある意味での「大雑把」さ。最初の話に戻るとそいうことになるかも知れませんが。

まあ見事ではあるんですよ、そのダイナミズムもバリエーションも多層性も連続性も。何らか"壮観"という意味で"スペクタクル"であるのは、間違い無い。
ただでは「見世物」なのかというと何か違う気がする、あくまで当事者の為のものというかその優秀性に導かれて自己目的的に動いている何かを、こちらはたまたま居合わせて眺めている感じ。
「応援」ということで言うならば、確かにグーグル製品は優秀でよく出来ていて、個人的に愛用したりもしているかも知れないですけど、ではそれによってグーグルという会社が"応援"の対象になるかというとどうも違う。「ソニー」製品とかならまだそういう対象にはなり得て、それが言わば従来のサッカークラブ的なものだったわけでしょうけど。極東のいち貧乏人が、グーグルを"応援"するという滑稽感というか。(笑)

こういう感覚は多かれ少なかれ、チェルシーあたりに始まるここ10数年に出て来た巨大資本注入型の"ビッグクラブ"には共通してあるものなのかも知れないですけどね。ただシティとペップという組み合わせは、それを更にもう1,2段階加速している感覚がある。追随しているのがパリSGとか、晴れて「アイデンティティ」を振り落としたマンUとかなんですかね、分からないですけど。
「経営」をバックに「サッカー」をやっているというよりも、「経営」と「サッカー」が同じ種類の"知性"でついに結び付けられてしまった感というか。

それがどこまで(トップレベルの)サッカー界自体の進化・変化なのか、どこまでペップの特殊な天才によるものなのか。さてという感じですが。


以上、取り留めの無いままかなりスペースを取ってしまったので、今回はこれくらいで終わりにしたいと思います。(笑)
何せまだ「全体像」が見えている感覚がまるで無いですしね、それゆえの"巨象"なのかも知れませんが。
言いたかったのは多分最後の、「経営的知性でサッカーが行われている」ということかな?
あるいは「サッカーではなく"知性"自体が、主役になっている」というか。
大変興味深くはある、ただ感情移入の対象にするのは難しい、だから黙るという。もっと根っからシティ・ファンの人には、あんまり関係ないことかも知れないですけど。
デブライネとメンディには、それでも大いに楽しませてもらってますけどね。(笑)

幸いまだいくつか言い足りないことが残ったので、季末にも何か書けるかも知れません。
その時は出来れば、もう少し全体像が見えていてもらいたいものですけど。(笑)


スポンサーサイト



テーマ:欧州サッカー全般
ジャンル:スポーツ
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック