特に何ということではないんですが、図書館で見かけたので。
みんな好きでしょ?"ベスト10"企画。(笑)
他にも色々となかなか記事の充実した特集でした。
30人の批評家が投票!日本アニメベスト10
専門家/批評家による投票の総計ということで、"記者投票"のバロンドールと、少し似た形式と言えるでしょうか。
出題の仕方としては、「日本アニメ100年の歴史の中で、もっとも重要だと思われる10作品をお挙げください」というもの。集計結果と、合わせてそれぞれの批評家の"ベスト10"及び選考理由がちゃんと載せてあるので、かなり透明性の高いランキングとは言えるでしょうね。
まずはとりあえず、集計結果を。
ベスト作品ランキング
1位 新世紀エヴァンゲリオン(テレビ)['95] ・・・14票
2位 機動戦士ガンダム(テレビ)['79) ・・・11票
3位 宇宙戦艦ヤマト(テレビ)['74] ・・・9票
4位 AKIRA(映画)['88] ・・・8票
5位
くもとちゅうりっぷ(短編)['43]
鉄腕アトム(テレビ)['63]
風の谷のナウシカ(映画)['84]
魔法少女まどか☆マギカ(テレビ)['11]
この世界の片隅に(映画)['16] ・・・以上7票
10位
天空の城ラピュタ(映画)['86]
GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊(映画)['95] ・・・以上6票
12位
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(映画)['84]
火垂るの墓(映画)['88]
君の名は。(映画)['16] ・・・以上5票
15位
白蛇伝(映画)['58]
伝説巨神イデオン 発動編(映画)['82]
少女革命ウテナ(テレビ)['97]
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(映画)['97]
千と千尋の神隠し(映画)['01]
ほしのこえ(短編)['02] ・・・以上4票
21位
わんぱく王子の大蛇退治(映画)['63]
長靴をはいた猫(映画)['69]
アルプスの少女ハイジ(テレビ)['74]
未来少年コナン(テレビ)['78]
となりのトトロ(映画)['88]
機動警察パトレイバー2 the Movie(映画)['93]
マインド・ゲーム(映画)['04]
かぐや姫の物語(映画)['13] ・・・以上3票
ふむ。
「重要」な作品ということで、やはり有名作品が中心にはなりますね。
『エヴァ』『ガンダム』『ヤマト』の並びは、さながら「メッシ」「マラドーナ」「ペレ」のよう。(笑)
まあ「ホンダ」「ナカタ」「カマモト」でもいいんですけど。(嫌?)
ただ映画『AKIRA』の4位は意外ですね。解説の氷川竜介さんも、意外だと言ってました。(笑)
確かに歴史的な作品ではあるんでしょうけど、"3強"の次に来るような存在感は、普通のこのテのランキングでは無い。うっかりすると、ああそれもあったねという感じの"傍流"感。
以下様々有名作品が続きますが、その中で僕が初耳だったのはこの3つ。
くもとちゅうりっぷ(短編)['43]
わんぱく王子の大蛇退治(映画)['63]
長靴をはいた猫(映画)['69]
色々とあるもんですね。特に『くもとちゅうりっぷ』はその群を抜いた古さと裏腹の順位の高さで、興味を惹かれます。皆さんも機会があればどうぞ。『長靴』は聞いたことがあるような気もするなあ。
僕的な今回のランキングの目玉は・・・15位にランクされた『少女革命ウテナ(テレビ)['97]』です!
いやあ、ウテナがこんなちゃんと"評価"を受けてるのって、初めて見ました。
ありていに言って、あらゆるクラスタからほぼ相手にされてない感じの作品に見えていた(笑)ので、ファンとしては感涙です。(笑)
続きまして。
ベスト監督ランキング
1位
宮崎駿『未来少年コナン』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』 ・・・38票
2位
高畑勲『アルプスの少女ハイジ』『火垂るの墓』『かぐや姫の物語』
富野由悠季『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン 発動編』
庵野秀明『新世紀エヴァンゲリオン』『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』 ・・・20票
5位
押井守『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『機動警察パトレイバー2 the Movie』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』 ・・・19票
6位
政岡憲三『くもとちゅうりっぷ』
松本零士『宇宙戦艦ヤマト』
新海誠『ほしのこえ』『君の名は。』 ・・・10票
9位
片渕須直『この世界の片隅に』
新房昭之『魔法少女まどか☆マギカ』 ・・・9票
11位
大友克洋『AKIRA』 ・・・8票
12位
手塚治虫『鉄腕アトム』 ・・・7票
13位
杉井ギサブロー
湯浅政明『マインド・ゲーム』 ・・・6票
15位
藪下泰司『白蛇伝』
出崎統
幾原邦彦『少女革命ウテナ』 ・・・5票
18位
芹川有吾『わんぱく王子の大蛇退治』
今敏
矢吹公郎『長靴をはいた猫』
細田守
大隅正秋 ・・・3票
青は劇場用アニメを、赤はテレビアニメを主な活躍の舞台にしている監督。どっちとも言えない人もいます。
"ベスト作品"で作品の挙がらなかった監督の代表作を補足しおくと、
杉井ギサブロー・・・『どろろと百鬼丸』('69)、『タッチ』('85)、『銀河鉄道の夜』('85)
出崎統・・・『あしたのジョー』('70)、『ガンバの冒険』('75)、『ベルサイユのばら』('79)
今敏・・・『千年女優』('02)、『東京ゴッドファーザーズ』('03)、『パプリカ』('06)
細田守・・・『時をかける少女』('06)、『サマーウォーズ』('09)、『おおかみこどもの雨と雪』('12)
大隅正秋・・・『ムーミン(1969年版)』、『ルパン三世(1st)』('71)、『ラ・セーヌの星』('75)
今回挙がった中で僕が思い入れのある監督は、富野・出崎・幾原の3人ですかね。
『この世界の片隅に』も好きですけど、何せ一本しか知らないので。
その他面白かったところ
高畑勲監督の功績
p.27-28
氷川
高畑さんが日本のアニメに与えたいちばん大きな影響は、演出家がすべてをコントロールしなければ、アニメーションを映画にできない、ということを考え、実現したことです。
高畑さん以前の長編作品では、基本的にアニメーターが役者で、演出家はその演技をもらってフィルムを繋いでいく、ということをやっていました。だから、映画としてのカットの切り替えのリズムなどは、コントロールされていないんですね。
それが高畑さん以降、全部きちんと理詰めで作られるようになりました。
なるほど。
とにかく「監督」(という名の誰か特定個人)の意思が隅々まで行き渡っている作品を好む僕の嗜好からすれば、これが本当なら高畑監督は大恩人になるわけですが。
ただ多少疑問なのは、ならばそれこそ上で挙げられたような高畑監督以前の"名作"群は、どうなっていたのか、例外的に作家的監督主義的に作られていたのか、それともその限定の下でしかし別の意味で"名作"になっているのか。
結局は見てみるしかないんですけど、僕の予想としてはここで言われているのは、むしろ"高畑革命"の割りと直前の業界的な事情なのではないかなと。孤立した名作ではなく"業界"がそれなりの活況を伴って形成していく中で、なし崩しに確立していた慣習と、高畑監督は戦ったのだろうというか。
まああくまで予想です。
それとまた別なことですが、これは現在に至るまで少なからぬ割合のある種のディープなアニメファンは、むしろ「アニメーターの"演技"」をこそ望むというか、それこそがアニメーションの中核だとみなしている面が多分にあって、比べると「監督」の総合的な支配力にさほど興味があるようには見えない。
"板野サーカス"の名声などはやや極端な例ではあるでしょうが、二言目には「作監(作画監督)誰?」と気にする人は沢山いますよね。(笑)
逆に言うと、アニメーションという表現形態には確かにそういう本質もあって、だからこそ逆に"高畑以前"の状況もあったのかもしれないなと、思ったりもします。
ディズニーの"フォトリアル"型3DCGアニメ VS 日本の"セルルック"アニメ
p.54
氷川
特に日本の場合、大量に供給される原作マンガが白黒だし、アウトライン(輪郭線)主体で描かれているキャラクターなので。
さやわか
なるほど。原作モノを考えると、いきなり3Dになると確かに違和感があるかもしれませんね。
日本のアニメーションがアメリカのように3D一本槍化することはあるのかまたはなぜなっていないのか、それはそれとして業界的には世界市場におけるむしろ差別化の為に、日本的な"セルルック"なCG使用、2Dアニメの味をなるべく損なわない方向を今のところは向いているという話の後に。
「漫画原作のアニメ化」がアニメ制作のド王道である現状で、勝手にアニメだけが変わるわけにもいかないという、超業界的な説明。
ただ例えば今期の『宝石の国』なんかは原作との相性的にかなり特権的な成功例ではあるでしょうが、それにしても目が眩むほど魅力的かつリラックスしたCG表現で、近年の"3Dアニメ"表現の急激な進歩というものを感じざるを得ません。技術的には既に、やろうと思えば「3DCGだけの」"世界"(独立ジャンル)というものは、作れるんだと思うんですよね、2Dアニメとほぼ同等の表現の多様性を持って。
とはいえ2Dアニメ、ないし"セルルック"アニメが無くなってしまうことを想像すると、寂しくて死にそうになるので(笑)、まあ何とかどうにかこうにか、みんなが幸せになれるようなバランスを考えてもらいたいものです。(無責任(笑))
p.54
さやわか
そこで、(ディズニーの3DCG作品に対する)対抗馬として出てきたのが、新海誠さんでした。
氷川
新海さんはどちらかと言うと芸術家肌で、知る人ぞ知るクリエイターのイメージでしたが・・・・・・。
さやわか
まさかのダークホース、みたいな感じでしたね。
とはいえ既に、子供たちはピクサーのフル3DCGアニメに慣れ切っていて、特にそれと市場的にまともにぶつかる"劇場版アニメ"の世界では、日本的(製)アニメは最終的な敗北の可能性を抱えているという話の後に。
そう、僕も一応『ほしのこえ』
を知ってはいたので、最初に『君の名は。』が大ブレイクしているという話がtwitterで流れて来た時は、「え?新海誠ってあの新海誠?」と作品の内容以前にそっちの方に驚いたものでした。
さぞかし思い切ったんだろうなあと思ったら、本当に"思い切った"作品でしたが。ここまでやるかと。
ただ後出しになりますが、実は『ほしのこえ』を見た時にも既に、良くも悪くも違和感というか、過剰なさっぱり感とそれを可能にする精神の新しさ、逞しさみたいなものは感じてはいたんですよね。
単に"芸術家肌"で作られている作品ではないというか。
勿論ここまでブレイクする未来は予想出来ませんでしたけど。
とりあえずこんなところですかね。
他にも片淵監督新房監督らが自らのアニメ論を語る記事なども載っている充実した特集なので、興味がある人は読んでみて下さい。
僕もまた全然全部読んでないんですけど(笑)。全然全部。