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サカヲタ的はじめてのバレーボール/戦術編 ~"カウンター"と"ポゼッション"?
2018年03月14日 (水) | 編集 |
そろそろ終わりですかね、このシリーズも。
僕自身の、"成長期"が終わりかけているというか。バレーボールに関する。
ただこれは、書いておかないといけないだろうと。この後始まる(5月くらい?)、リアルタイムでは二度目の、代表シーズンに向けても。

テーマはバレーボールの攻撃戦術、の"大枠"
例によって一般人/サッカーファンに、分かり易いようにという視点で



焦点は"ブロック"の無力化

細かく言えば色々あるようで、でも要するに(トップレベルの)バレーボールというのは、このことをめぐって繰り広げられる争われるものだと、言えるように思います。ブロック

国際的なバレーボールの戦いの中で、常に言われるのが、白人や黒人、あるいは中国人に対する、日本人選手の「高さ」「パワー」の劣位。

それ自体はいかんともし難くその通りなわけですが、では日本のトップ選手(誰ということではなく代表に選ばれるような選手)のスパイク等の攻撃が、高さやパワーに相対的に劣るからと言ってそんなに易々と外国チームに拾われてしまうようなものかというと、そんなことはないわけです。どのみちバレーボール独特の至近距離からの全力アタックというものは、基本の部分で人間の反応限界を越えているものなので、確かに外国人選手が"200"の力で打って来るところを日本人は"120"しか出せないかも知れない、でもそもそも普通に拾える限界が"100"くらいだとすれば、200だろうと120だろうと、拾えないことに変わりはない(笑)わけです。
勿論200あるに越したことはないですが、120でも問題なく点は取れる。体育館の床板を壊す競争なら敵わないでしょうが、人間相手ならそれで十分。(笑)

・・・ブロックが無ければね。フリーで打てば。
そこにブロックがあることで、そのブロックの"上"から打つ高さや、"弾き飛ばす"パワーが必要となって来て、そこで大きな差が生まれるわけです。その"ブロック"自体の高さとパワーに、既に差があるので尚更。
勿論「高さ」と「パワー」において日本より優れている諸外国であっても、ブロックは邪魔には違いないので、いかにしてその邪魔を排除するかということをめぐって、簡単に言えばバレーボールの攻撃は工夫されているわけです。

ここまでの理屈は、分かりますね。


ブロックを無力化する二つの方法

歴史はよく知りませんが、今日(こんにち)見る限りブロックの対処策としては、大きく分けて二つの方法・方向があるようです。


1.ブロックが整わない内に打つ

整ってしまうと邪魔なので、整わない内に早く打ってしまう。
通常二人ないし三人の選手が息を揃えて隙間の無い、またアタックに対する物理的に有効な角度でのブロック体勢を作るには、やはりそれなりの準備や時間が必要なわけです。だからその暇を与えずに素早く攻撃する。
あるいはその二人や三人で壁を作るにしても、コート(ネット)の横幅はその倍くらいあるので、横移動が間に合わない速さで"余白"を狙って打てば、この場合もまたブロックを無力化出来るわけです。

と言ってもただアタッカーが急いで打てばいいという単純な話ではなく(笑)、バレーボールの攻撃というのは必ず相手の入れて来たボール(サーブかスパイク)を受ける/レシーブする状態から始まるので、そのレシーブから繋げてトスを上げてそのトスをアタッカーが打つ、この3段階の動作を速く正確に、出来ればサッカーで言うセットプレーの"サインプレー"的な感じで一気にやってしまう必要があります。

その為に「セッターに繋げるレシーブの速さ正確さ」、(それを受けて)「アタッカーに繋げるトスの速さ正確さ」の、二種類の"速さ正確さ"が必要となるわけです。
後者はより"正確"に(笑)言うと、セッターとアタッカーのコンビネーションの速さ正確さであって、トスそのものの絶対スピードとは必ずしも限らないんですけど、ただ後述する"2"との対比においては、やはり「速いトス」が上がるというイメージで概ね間違いはないと思います。
最後のアタッカーに関しては、それまでの"速さ"でフリーな状態を作ってもらっているので、そこからは相手の状況を見て、速く打とうが遅く打とうが、好きにすればいいという感じです。(基本速いですが)

今回はあくまで大枠、「思想」を説明する場なので細かい話はこれ以上しませんが、ここまで書いたことでピンと来る人もいるかと思いますが、これはサッカーで言えば、「カウンターアタック」に類似した攻撃方法&思想と言えると思います。
相手の攻撃を受けることを前提として、そこから反転して相手の"守備陣形が整わない内に"素早く攻撃する。素早いカウンターにはこちら側の予め準備した意思統一とコンビネーションが必要ですが、最終的に決める作業自体は敵の守備が整っていないので比較的楽。アタッカーにそこまでの能力も要求され難い。

サッカーだと「ショート」と「ロング」概ね二種類のカウンターアタックがありますが、バレーの場合は敵味方の陣地がネットではっきり区切られていて勝手にボール奪取の位置は設定出来ない(笑)ので、どちらかというとより受け身のロングカウンターのイメージの方が強いと思います。

そしてこれは、他ならぬ現女子全日本中田久美監督が採用している戦術・思想です。
中田監督の場合は特にサーブレシーブに対する要求が厳しくて("低く、速く")、初年度の昨季招集された全日本選手の中で、レシーブ専門職のリベロを除いて中田監督の要求水準を満たせたのは結局新鍋・内瀬戸の二選手だけでした。そして中田ジャパンが3人でサーブレシーブをするシステムである以上、コートにはリベロ+新鍋・内瀬戸の3人、言い換えると巧いけれど非力な新鍋選手と170cmの小柄な内瀬戸選手の2人が常時いることになって、ありていに言って非常に小じんまりとした、あえて言えばやや貧乏くさい(笑)チームに結果としてなってしまいました。
中田監督も最初からそうしようとしたわけではなくて、当初は古賀紗理那や石井優希、サーブレシーブはしませんが堀川といった日本人の中では"大型"なスパイカーの同時起用でスタートしたんですが、そのサーブレシーブの精度の問題等で、徐々に上記の手堅い一方の選手起用に落ち着いてしまいました。それでも一人世界的エースがいれば、攻撃はドログバに任せられれば(笑)守備的なりにチームは成り立つんですけど、そういう選手はおらず。・・・いないからこそ(古賀ら)"準エース"の複数起用でそれをカバーする、彼女たちで守備も間に合わすつもりだったわけでしょうけど。

こういう非常に苦しい選手層なりには、去年は各大会で見せ場は作った方だったと、そういう総括が正しいのではないかと思います。
それを可能にしたのが、この前V・プレミアの久光(中田監督の前担当チーム)について言った、中田監督特有の"職人的"緻密さ、"名選手"的現場感覚、プレーのディテールの細かさだったろうと思います。その細かさが逆に、対応出来る選手の幅を狭めてもいたわけでしょうが。

以上をまとめて言うと、中田ジャパンは、職人的精度を命綱とする守備型のチーム、サッカーで言えばW杯におけるパラグアイやウルグアイ、CWCにおける欧州代表相手にジャイアントキリングを狙う南米代表のクラブのような、まとめて南米系のカウンターチーム、割り切ったアンダードッグチームと、そういうイメージでいいのではないかと思います。
Vの久光だと戦力優位でもあるので分かり難かった中田監督の本質が、代表だとより露わになったというか。

あくまで「南米」だと思いますね、「欧州」ではない(サッカー基準)。「組織」というよりは「連係」、「戦術」というより「コンビネーション」。ベースは個人の技術精度。
次2つ目の方法。


2.攻撃枚数の多さでブロックに的を絞らせない

バレーのブロックの参加人数は最大で3人なので、"1"で言ったようにカバー出来るコートの幅は、物理的に限界があるわけです。だからブロックする側はある程度相手の攻撃を予測して、的を絞って、ブロック体勢を作るわけです。
それに対して攻撃態勢に入る、"打つぞ"という気配を見せる選手の人数をなるべく多くしてマークを分散させてその隙を突くというのが、第二の方法です。

具体的にはフロントだけではなくバックからのスパイクも多用する、バックアタックを打てる選手を常時用意する、そして『ハイキュー』(のアニメ)でもやっていた"シンクロ攻撃"のように、前と後ろのアタックを打つ可能性のある選手全員がサボらずに同時に攻撃態勢に入ることで、相手を幻惑するというようなこと。
と言ってもセッターとリベロ(ないし後衛ローテーションにいるミドルブロッカー)はアタックに参加出来ませんから、普通は最大でも6マイナス2で4人ですけどね。ただ実際の現場では、マークする相手が2人か3人かはたまた4人かというのは、大きな違いのようです。

特殊な例としては、中田監督の前の女子全日本監督の眞鍋政義氏は、「MB(ミドルブロッカー)1」「ハイブリッド6」("MBゼロ")と称して、単に攻撃枚数を増やすだけではなく選手のタイプも極端に同タイプ、具体的にはMBの枠を削って所謂"スパイク"を打つウィングスパイカー、エースアタッカータイプ(木村沙織、迫田さおり、長岡望悠、江畑幸子、新鍋理沙、石田瑞穂ら)に寄せて構成したチームを作って、"幻惑"効果の極大化を狙って一時的には成功しました。"トータル"バレーボールと言えば、トータルバレーボールかも知れない。

一方の中田監督はと言うと、バックアタック自体も余り重視しない慎重派で、飽くまで仕組んだ一本の攻撃のラインの精度で、ピンポイントで勝負するタイプ。"人数"勝負ではない。ほぼ真逆
つまり・・・サッカー男子代表同様(笑)、バレー女子代表においても、代表監督のタイプ、戦術の方向性は、逆から逆に振れてしまっているというわけですが。まあそもそも"方向性"で選んでるとすら、余り見えないですけど。

"世界"的にはどうかというと、これは基本受け売りですが、後者の"人数"勝負の方が、標準的なようです。
それには一つ重要な理由があって、近年ボール(日本製!)の進化や各チームの技術の向上で、バレーボールのサーブの強度(凶悪度)が劇的に上がってしまったらしいんですね。まあ、ブレ球?
当然サーブレシーブの難易度も上がってしまって、余りそこに精度を求めるのは難しくなっている。であるならばサーブレシーブはある程度アバウトに、ボヨンと上げていいから、その代わりその"ボヨン"で出来る余裕の時間を利して攻撃に参加する人数の方を増やす、そちらで攻撃力を確保するというのが現実的であると、そういう文脈。まあそれとは別に"戦術史"自体の流れもあるようですが、最も単純に説明するとこういうことのようです。

中田監督は言わばその流れに逆らって、単に"流行"でないというだけでなく、難しくなったサーブレシーブの精度自体をあえて生命線とするやり方を採っているわけで、勿論中田監督には中田監督の言い分("枚数"攻撃に必要な運動量による消耗等)や脈絡はあるんでしょうが、一方でやはり前時代的だとか無理筋だという批判も、当然あるわけですね。
実際結果として、去年は使える攻撃(というかサーブレシーブもするウィングスパイカー)の駒が、極端に、恐らく想定以上に限定されてしまったわけで、そこらへんお悩みのことだろうとは思います。
ただ・・・変わらないんじゃないかなと、僕は思ってますが。やはり自身名選手であり、職人であり、ある種の"美意識"に基づいてバレーをやっているようですから、「アバウト」とか、最初から無駄や紛れも折り込んだ「人数」勝負とか、感覚的に許せないんじゃないでしょうか。

最後に再びサッカーとの比較ですが、"1"の「カウンター」に対して、"人数"をかける、攻撃関与枚数を多く取る"2"は、当然「ポゼッション」という比喩になります。
ただバレーの場合は「3回で返す」というのは決まっているので、いつまでもボールキープしているわけには行かないので(笑)、そこまでの類似性は難しいですが。ただ多少守備の備えを薄くしても攻撃参加人数を増やすという意味では、バレーのシンクロ攻撃もサッカーの多人数アタックも共通しています。多彩で"華麗"な攻撃をし易いという点でも。中田監督のは、男(?)は黙って一発必中ですけどね。(笑)


ホットトピックス : 「低く速いトス」とは何か。

バレーの攻撃戦術の二分法としては、以上ですが。
しかしもう一つ、眞鍋ジャパン以来のしばしばバレー論壇を騒がせるトピックスとして、「低く速いトス」、ないし「低くて速過ぎるトス」という問題があります。
これがなぜ問題かというと、低くて速いことでポイントとタイミングが限定されてしまい、スパイカーに余裕が与えられない、合わせるのに精一杯でそれぞれの能力や個性が十分に発揮されない、威力の無い窮屈なアタックになってしまうことがままあるからです。

特に地上波中継の解説者は古い人が多いので、セルジオ越後よろしく(笑)「奇をてらわず選手のやり易いようにすべきだ」論がどうしても主体となってしまいます。また若くても大山加奈氏のようにバレー界の一大勢力下北沢成徳高校出身の人は、校風を反映してそちらに寄りがち。
まあ解説は解説でいいとしても、実際問題眞鍋ジャパンのエース木村沙織も中田ジャパンのエース候補古賀紗理那も、共にゆったりした間合いから状況を見た柔軟なスパイクを持ち味としている選手なので、そうした"エース"の持ち味を殺しがちなトスはどうなのだという議論などは、当然起こります。
まあ戦術か個人かみたいな話ではありますが。

ただ、今「戦術」と言いましたが、中田ジャパンの場合は確かに"速さ"を生命線としていて、その分意図的な速さでもあり、整合性はあるわけです。例えある程度スパイカーの個性を犠牲にしても。・・・それこそサッカー界の「中田」(英寿)の"キラーパス"のように(笑)、合わせるのは大変だけど合えば即1点ものという、そういうトスではある。(少なくとも理想的には)
しかし一方の眞鍋ジャパンの場合、まあ2期8年もやってたので色んな時期はありますが、どちらかと言えば「枚数」派、多彩なスパイカーの個性をむしろ存分に使おうという"派"なはずで、それがなぜ速さにこだわった神経質で狭いトスになるのか。筋が通らないですよね。

しかし、僕がリアルタイムでは見ていない、2期の眞鍋ジャパン時代を詳しく追った例えばこちらの有名ブログなどを読むと、眞鍋監督は常に「低く速い」にこだわっているわけではないんですよね。
例えばこちらの記事では、時期によって選手の能力によって、"高速化"を施したり施さなかったりしているのが窺えます。要は"足りない"と思ったら、高速化を足しているわけです。

 木村沙織の3年間の急成長その1:クロススパイク


最終的には筆者は、少なくとも木村・江畑クラス(ないしタイプ)には高速トスは必要ないという結論に至っています。

 高速セットの必要性

基本的に僕も同じ意見です。"戦術"と"個人"のどちらを取るかという問題ではなくて、「戦術+個人」つまりは相手に与える脅威自体の最大化が、あくまで問題なのだと思います。中身はケースバイケースでいい。
そもそもサッカーに比べても、バレーは遥かに個人競技ですし。


ただ言いたいのはそのことではなく、眞鍋監督にとっての「高速トス」の位置づけ
上の記事はロンドン五輪前のものですが、思えば2期目のリオ五輪前にも、間際になって俄かにトスの高速化が導入されて、そのせいもあって前年にはエース級の活躍をした古賀紗理那は本大会に漏れてしまいました。
ただ全体として見ると別に眞鍋監督は根本的な戦術変更をしたわけではなくて、前年のウィングスパイカー主体のある意味オーソドックスなスタイルのまま、トスだけ低く速くなったわけです。

ここで非常に素朴(笑)な視点に立ち返ると、相手の立場からすれば当然遅いよりは速い方が、対応は難しいわけです。だから戦術云々とある意味別次元の問題として、速いなら速いに越したことはないわけです。
サッカーで言えば強いチームは普通弱いチームよりパススピードが速いですが、それはたいてい戦術というよりはむしろ技術の問題ですよね。同じことを、強いチーム上手いチームは、より速くやれる。それによってより相手は対応困難になる。

眞鍋監督の"トススピード"も同じことで、戦術は戦術として、あるいは戦術で足りない不安を埋める為に、"なるべく"の問題としてトスの高速化を求めた。ロンドン前も、リオ前も。
ロンドンの時は、よく知りませんが最終的に色々と最適化されて銅メダルまでたどり着いたわけでしょうが、リオの時は"高速"への依存がチームバランスを崩して、本大会ではなかなかに酷い状態でした。

とにかく言うところの眞鍋ジャパンの「低く速いトス」問題は、戦術タームというより技術タームであるというのが、僕の意見です。戦術に"足された"ものというか。
中田ジャパンについては、やはり高速「トス」というより高速「コンビネーション」なのでまた違う話だとは思いますが、ただ最終的に"アタッカーの打ち易さ"との折り合いをどうするかという問題は、古賀も含めた今後本番までに中田監督が手にするタレントの個性との関係で、最後まで綱引きが続くのかなと。


・・・以上、2つないし3つの視点が、これから中田ジャパンを見る上でとりあえず押さえておくべきと、僕が特に考えるポイントです。精度か枚数か、速さにどこまでこだわるか。
どうなるんですかねえ。(笑)


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テーマ:バレーボール
ジャンル:スポーツ
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