正確には中国製の"史劇"系ドラマを100本、最近では現代劇も結構見るようになりましたが、それはまた別の機会に。
史劇系ドラマ自体も実際には今日の時点で100本は既に越えてしまっているので、改めてもう言い直すとこれまでに見た中国史劇系ドラマ100本強となりますが(語呂が悪い(笑))、とにかくそれらを色々整理してみる試みです。
ただし"100本"と言っても平均して各々4~50話前後ある中国のドラマシリーズを100シリーズ見通しているわけではさすがに無くて、フルに見たor見ている最中なのは4分の1くらい、後は概ねお試しで最初の数話のみ見たか、途中で挫折したもの。まだまだ見ていないものも沢山ありますが、ある時期以降は数を稼ぐ為に無料ないし追加料金なしで見られるものは選り好みせずに全部見ているので、サンプリングとしてはそれなりに不作為で公平なものになっていると思います。
ともかくジャンルとして今こんな感じなんだそんな(に)作品があるんだと知ってもらって、少しでも興味を共有したいなというそういう企画です。(あと自分の頭の整理)
なお理由については今回は割愛しますが、僕は中国本土発のTVドラマのみに、見るべき特有の面白みを見出しているので、ジャンルの歴史的には先行する香港や台湾のドラマ、及びそれらとの合作系の作品は、今回は除外させてもらいます。
1.製作年代別
まずはシンプルに、製作年代順に。
( )は中国国内的に大きな出来事、[ ]内は参考までに同年の代表的なアメリカドラマを挙げておきました。
(1978~ 鄧小平体制)
1980年代 (3)
1984 西遊記 ・・・[特捜刑事マイアミバイス、超音速攻撃ヘリ エアーウルフ]
1987 紅楼夢 ・・・[新スタートレック、マックス・ヘッドルーム]
1988 ラストエンペラー
(1989 天安門事件→江沢民体制発足)
1990年代 (9)
1990
1991 楊家将、宋慶齢の生涯 ・・・[リーズナブル・ダウト 静かなる検事記録]
1992
1993 中国儒学の始祖 孔子 ・・・[NYPDブルー、Xファイル]
1994 三國志演義 ・・・[ER緊急救命室、フレンズ]
1995 司馬遷と漢武帝 ・・・[犯罪捜査官ネイビーファイル]
1996
1997 (香港返還)
東周列国 春秋篇、永遠なる梁山泊 水滸伝 ・・・[アリーmyラブ、OZ/オズ]
1998 秦始皇帝 奇貨居くべし ・・・[セックス・アンド・ザ・シティ]
1999 (マカオ返還)
大清帝國 雍正王朝 ・・・[ザ・ホワイトハウス、ザ・ソプラノズ]
2000年代 (23)
2000
2001 笑傲江湖 ・・・[24 -TWENTY FOUR-]
2002 (胡錦濤体制発足)
射鵬英雄伝/THE LEGEND OF ARCHING HERO ・・・[CSI:マイアミ]
2003
2004
天龍八部/HEAVEN DRAGON THE EIGTH EPISODE、漢武大帝、龍票 清朝最後の豪商、五月に香る槐の花 ・・・[LOST、Dr.HOUSE]
2005 大敦煌 西夏来襲、プロット・アゲインスト(S1盲目の少年)、神馬英傑伝 ・・・[プリズン・ブレイク]
2006
大秦帝国、復讐の春秋 臥薪嘗胆、大明帝国 朱元璋、北魏馮太后、神雕侠侶/Condor Hero-The Savior Of The Soul、封神演義 ・・・[HEROES]
2007
2008 (北京五輪)
クィーンズ 長安、後宮の乱、江湖の薔薇、射鵬英雄伝(新版)、遥かなる北の大地へ ・・・[ブレイキング・バッド]
2009 倚天屠龍記/Heaven Sword and Dragon Sabre、孔子、白蛇伝 転生の妖魔、我が弟 その名も順溜 ・・・[グッド・ワイフ]
2010年代 (70)
[前半42]
2010 (上海万博)
三国志/Three Kingdoms、紅楼夢 愛の宴、四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)、美人心計 一人の妃と二人の皇帝、聊斎志異 梅女、茶館 激動の清末と北京の変遷 ・・・[ウォーキング・デッド]
2011
宮 パレス 時をかける宮女、宮廷女官 若曦(じゃくぎ)、恕の人 孔子伝、則天武后 美しき謀りの妃、武則天秘史、風にはためく五星紅旗 ・・・[ゲーム・オブ・スローンズ、HOMELAND]
2012 (習近平体制発足)
大秦帝国 縦横 強国への道、宮廷の諍い女、隋唐演義 集いし46人の英雄と滅びゆく帝国、項羽と劉邦/King's War、曹操、絢爛たる一族 華と乱、女たちの孫子英雄伝、ムーラン、紫檀(したん)王 ・・・[ARROW/アロー]
2013
月下の恋歌、イップ・マン、フビライ・ハン、岳飛伝/THE LAST HERO、謀(たばか)りの後宮、画皮2 真実の愛、名家の妻たち/The War of Beauties、賢后 衛子夫、天命の子 趙氏孤児、後宮の涙、二重スパイの男、闖関東外伝 ・・・[ハウス・オブ・カード 野望の階段]
2014
武則天/The Empress、歓楽無双 恋する事件帖、鹿鼎記 ロイヤル・トランプ、秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛、トキメキ!弘文学院、金蘭良縁、風中の縁(えにし)、名家の恋衣、24の急カーブ 救援物資輸送の大動脈 ・・・[GOTHAM/ゴッサム、FARGO/ファーゴ]
[後半28]
2015
瑯琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす、武僧伝、雲中歌 愛を奏でる、花千骨 舞い散る運命、永遠の誓い、ミーユエ 王朝を照らす月、皇貴妃の宮廷、ハンシュク 皇帝の女傅 ・・・[Empire 成功の代償、MR. ROBOT/ミスター・ロボット]
2016
擇天記(たくてんき) 宿命の美少年、射鵬英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー、三国志 趙雲伝、王女未央 BIOU、皇帝の恋 寂寞の庭に春暮れて、蘭陵王妃 王と皇帝に愛された女、女医明妃伝 雪の日の誓い、百錬成鋼、長征大合流 ・・・[ウエストワールド、MARS 火星移住計画]
2017
琅邪榜<弍> 風雲来る長林軍、月に咲く花の如く、昭王 大秦帝国の夜明け、酔麗花 エターナル・ラブ、永遠の桃花 三生三世、花と将軍/Oh My General、孤高の花/General&I、開封府 北宋を包む青い天、麗王別姫 花散る永遠の愛、寵妃の秘密 私の中の二人の妃、神の手を持つ医師!喜来楽、清の能臣 于成龍 ・・・[ビッグ・リトル・ライズ、ハンドメイズ・テイル/侍女の物語]
2018
2019
アメドラのチョイスは僕の好みというより、"時代"感のあるもの、当時"新し"かったり話題になったもの。
あくまで日本で普通に(DVD等で)見られる作品の範囲ではありますが、やはり鄧小平の「改革・開放」に導かれた1980年代に入って、いよいよ中国でも商業的テレビドラマが作られるようになったという、そういう流れではあるようですね。
1990年代までは、誰もが知っているような国民的伝統的ストーリー(『西遊記』『三国志』『水滸伝』等)の映像化と、映画の翻案(『ラストエンペラー』『新・少林寺』)やアメリカで言うところの"ミニシリーズ"ないし"テレビ映画"のような数話で完結する形式(『ラストエンペラー』『宋慶齢の生涯』『秦始皇帝 奇貨居くべし』)が主で、言わば独立ジャンルとしての「テレビドラマ」はまだ確立し切っていない印象があります。
2000年代に入って作品数もまあまあ増えて、(僕の見るところ)後の流れを決定するような先駆的な作品もいくつか作られていますが(『大敦煌』『大秦帝国』『クィーンズ 長安、後宮の乱』等)、やはり中国ドラマブームが本格化する、日本で見られる中国ドラマの数が爆発的に増えるのは、2010年代に入ってから。
ただ現在に至るも多くのドラマチャンネルや配信サイトでは、「韓流ドラマ」の副ジャンル、「アジアドラマ」の一種というような位置づけにとどまっていて、内容の充実に見合う認知は得られていませんね。そういう意味ではこれからですが、内容的には"黄金時代""最盛期"を、そろそろ「過ぎた」サインが出て来てもおかしくないのではないか、そんな風に思ったりもしている今日この頃です(逆に言えばそれくらい今が既に充実・成熟しているということです)。その日が来ることがなるべく遅れてくれるよう、英米と比べてもやはり分厚さが桁違いの中国の「文化」力に、日々祈りを捧げていますが。(笑)
2.対象時代別
次は視点を変えて別の種類の"歴史"、それぞれのドラマがどの「時代」(王朝)を描いているかで、分類してみたいと思います。
ちなみに同じ趣旨のことを過去にやっている人はやはりというか既にいて(「電視劇一覧」by小魚さん)、先輩!!(または師兄)という感じです。
神話時代&架空
超古代~架空
西遊記(1984)、紅楼夢(1987)、紅楼夢 愛の宴(2010)
架空・偽史
神馬英傑伝(2005)、白蛇伝 転生の妖魔(2009)、聊斎志異 梅女(2010)、画皮2 真実の愛(2013)、瑯琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす(2015)、花千骨 舞い散る運命、永遠の誓い(2015)、擇天記 宿命の美少年(2016)、琅邪榜<弍> 風雲来る長林軍(2017)、酔麗花 エターナル・ラブ(2017)、永遠の桃花 三生三世(2017)、寵妃の秘密 私の中の二人の妃(2017)
殷~周
封神演義(2006)
歴史時代
春秋
中国儒学の始祖 孔子(1993)、東周列国 春秋篇(1997)、復讐の春秋 臥薪嘗胆(2006)、孔子(2009)、恕の人 孔子伝(2011)、女たちの孫子英雄伝(2012)、天命の子 趙氏孤児(2013)
戦国
大秦帝国(2006)、大秦帝国縦横 強国への道(2012)、ミーユエ 王朝を照らす月(2015)、昭王 大秦帝国の夜明け(2017)
戦国~秦
秦始皇帝 奇貨居くべし(1998)
秦~前漢
項羽と劉邦/King's War(2012)
前漢
司馬遷と漢武帝(1995)、漢武大帝(2004)、クィーンズ 長安、後宮の乱(2008)、美人心計 一人の妃と二人の皇帝(2010)、賢后 衛子夫(2013)、風中の縁(えにし)(2014)、雲中歌 愛を奏でる(2015)
新~後漢
秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛(2014)
後漢
ハンシュク 皇帝の女傅(2015)
後漢~三国
三國志演義(1994)、三国志/Three Kingdoms(2010)、曹操(2012)、三国志 趙雲伝(2016)
十六国
孤高の花/General&I(2017)
南北朝
北魏馮太后(2006)、後宮の涙(2013)、蘭陵王妃 王と皇帝に愛された女(2016)、王女未央 BIOU(2016)
隋
ムーラン(2012)
隋~唐
隋唐演義 集いし46人の英雄と滅びゆく帝国(2012)
唐
則天武后 美しき謀りの妃(2011)、武則天秘史(2011)、謀(たばか)りの後宮(2013)、武則天/The Empress(2014)、トキメキ!弘文学院(2014)、麗王別姫 花散る永遠の愛(2017)
北宋
楊家将(1991)、永遠なる梁山泊 水滸伝(1997)、天龍八部/HEAVEN DRAGON THE EIGTH EPISODE(2004)、大敦煌 西夏来襲(2005)、岳飛伝/THE LAST HERO(2013)、武僧伝(2015)、花と将軍/Oh My General(2017)、開封府 北宋を包む青い天(2017)
南宋
射鵬英雄伝/THE LEGEND OF ARCHING HERO(2002)、神雕侠侶/Condor Hero-The Savior Of The Soul(2006)、射鵬英雄伝〈新版〉(2008)、射鵬英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー(2016)
元
倚天屠龍記/Heaven Sword and Dragon Sabre(2009)、フビライ・ハン(2013)
元~明
大明帝国 朱元璋(2006)
明
笑傲江湖(2001)、四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)(2010)、絢爛たる一族 華と乱(2012)、月下の恋歌(2013)、歓楽無双 恋する事件帖(2014)、金蘭良縁(2014)、女医明妃伝 雪の日の誓い(2016)
清[前・中期]
大清帝國 雍正王朝(1999)、宮 パレス 時をかける宮女(2011)、宮廷女官 若曦(じゃくぎ)(2011)、宮廷の諍い女(2012)、鹿鼎記 ロイヤル・トランプ(2014)、皇貴妃の宮廷(2015)、皇帝の恋 寂寞の庭に春暮れて(2016)、清の能臣 于成龍(2017)
近・現代
清[後・末期]
龍票 清朝最後の豪商(2004)、江湖の薔薇(2008)、闖関東外伝(2013)、月に咲く花の如く(2017)、神の手を持つ医師!喜来楽(2017)
清~中華民国
ラストエンペラー(1988)、五月に香る槐の花(2004)、遥かなる北の大地へ(2008)、茶館 激動の清末と北京の変遷(2010)、イップ・マン(2013)、名家の恋衣(2014)
清~中華民国~中華人民共和国
宋慶齢の生涯(1991)
中華民国
我が弟 その名も順溜(2009)、紫檀(したん)王(2012)、名家の妻たち/The War of Beauties(2013)、二重スパイの男(2013)、24の急カーブ 救援物資輸送の大動脈(2014)、百錬成鋼(2016)、長征大合流(2016)
中華人民共和国
プロット・アゲインストS1盲目の少年(2005)、風にはためく五星紅旗(2011)
『西遊記』も『紅楼夢』も、本編に当たる部分は"歴史時代"的描写が主なんですが、オープニングに神話的な起源話ががっつり入っているので、こういう分類に。『封神演義』も天界ありきの話ではありますが、一方で「殷末」「紂王」という人間界の具体的状況と大きく絡んだ話でもあるようなので、また少し別な扱いに。西遊記も"唐"と言えば唐なんでしょうけど・・・
それはそれとして、いいでしょ?(笑)この扱い範囲の広さ、細かさ。それだけでも楽しい。「大河は結局戦国と幕末ばっかり」(最近はそうでもないのか)と、お嘆きの貴兄に。(笑)
「史劇」「時代劇」の定義は、僕は少し広く取っているかも知れません。具体的には"近・現代"として示した舞台設定のものは、中国側では「古装」(時代劇の中国での言い方)とは分類されない場合もあるようですが(というか多分、単純に「古」い「装」いかどうかで分けてるっぽい)、ただ日本を含む西側ドラマと基本的には同じような作りになっているずばり"現代劇"と比べると、やはり"昔"の話であるしその時代の中国ならではの日本人には馴染みの無い状況や描写が見られる、それゆえに独自の見る価値も見出せるいい意味での「歴史」(劇)作品と、実用的には定義していいように思います。
多少の偏見込みで言うと、「改革開放」以前の中国は、ひっくるめて"昔"というか。(笑)
挙げた中で一番新しい時代設定のものは、第二次大戦終結後の共産中国の核開発に貢献した中国人科学者たちを描いた『風にはためく五星紅旗』ですが、製作は2011年ともう十分に新しいにも関わらず、やはり「現代劇」として見るのは少し難しいところがありました。日本の同様に"戦後"を描いた作品と比べてもね。"現代"との連続性の薄さを感じるというか。
面白いんですよね、抗日戦争(日中戦争)前後の時代の話とかも。日本も関わっている他人事ではない(笑)深刻な状況を描いているにも関わらず、やはりその「時代」そのものを見る、その時代ならではのリアリティ・生活感を味わえる、正に「時代劇」の楽しさがある。所謂西側的な「戦争映画」(ドラマ)とは、絶対年代的には重なっていても、明らかに何か違う性格・内実を持っている。もっと余裕があるというか。
やはりいい意味で「距離」感があるからではないかと思いますが、時間的に。"近代化"が遅れた恩恵と言ってしまうと、ちょっとあれですが(笑)。歴史が抽象化されていない、単純化されていない。
3.ジャンル別
最後は作品の内容やスタイルによる分類。
伝統小説系
伝奇・古典(を基にしたもの)
西遊記(1984)、紅楼夢(1987)、楊家将(1991)、三國志演義(1994)、永遠なる梁山泊 水滸伝(1997)、封神演義(2006)、白蛇伝 転生の妖魔(2009)、三国志 Three Kingdoms(2010)、紅楼夢 愛の宴(2010)、聊斎志異 梅女(2010)、画皮2 真実の愛(2013)、開封府 北宋を包む青い天(2017)
金庸・武侠
笑傲江湖(2001)、射鵬英雄伝 THE LEGEND OF ARCHING HERO(2002)、天龍八部 HEAVEN DRAGON THE EIGTH EPISODE(2004)、神馬英傑伝(2005)、神雕侠侶 Condor Hero-The Savior Of The Soul(2006)、江湖の薔薇(2008)、射鵬英雄伝〈新版〉(2008)、倚天屠龍記 Heaven Sword and Dragon Sabre(2009)、月下の恋歌(2013)、イップ・マン(2013)、鹿鼎記 ロイヤル・トランプ(2014)、射鵬英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー(2016)
リアル史劇系
国家・軍事・政治もの
ラストエンペラー(1988)、宋慶齢の生涯(1991)、司馬遷と漢武帝(1995)、東周列国 春秋篇(1997)、秦始皇帝 奇貨居くべし(1998)、大清帝國 雍正王朝(1999)、漢武大帝(2004)、大敦煌 西夏来襲(2005)、大秦帝国(2006)、復讐の春秋 臥薪嘗胆(2006)、大明帝国 朱元璋(2006)、北魏馮太后(2006)、風にはためく五星紅旗(2011)、項羽と劉邦 King's War(2012)、大秦帝国 縦横 強国への道(2012)、絢爛たる一族 華と乱(2012)、隋唐演義 集いし46人の英雄と滅びゆく帝国(2012)、曹操(2012)、フビライ・ハン(2013)、天命の子 趙氏孤児(2013)、賢后 衛子夫(2013)、ミーユエ 王朝を照らす月(2015)、昭王 大秦帝国の夜明け(2017)
孔子もの
中国儒学の始祖 孔子(1993)、孔子(2009)、恕の人 孔子伝(2011)
商人・民衆もの
龍票 清朝最後の豪商(2004)、五月に香る槐の花(2004)、遥かなる北の大地へ(2008)、茶館 激動の清末と北京の変遷(2010)、紫檀王(2012)、闖関東外伝(2013)、名家の恋衣(2014)、神の手を持つ医師!喜来楽(2017)、清の能臣 于成龍(2017)、月に咲く花の如く(2017)
スパイもの(共産党対国民党)
プロット・アゲインストS1盲目の少年(2005)、二重スパイの男(2013)
後宮・宮廷もの
クィーンズ 長安、後宮の乱(2008)、則天武后 美しき謀りの妃(2011)、武則天秘史(2011)、宮廷の諍い女(2012)、謀(たばか)りの後宮(2013)、名家の妻たち The War of Beauties(2013)、後宮の涙(2013)、武則天 The Empress(2014)、皇貴妃の宮廷(2015)
抗日戦争(&国共内戦)もの
我が弟 その名も順溜(2009)、24の急カーブ 救援物資輸送の大動脈(2014)、百錬成鋼(2016)、長征大合流(2016)
ファンタジー史劇系
ヒーロー史劇
四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)(2010)、岳飛伝 THE LAST HERO(2013)、武僧伝(2015)、三国志 趙雲伝(2016)
ラブ史劇(ヒロイン史劇)
美人心計 一人の妃と二人の皇帝(2010)、宮廷女官 若曦(じゃくぎ)(2011)、宮 パレス 時をかける宮女(2011)、ムーラン(2012)、女たちの孫子英雄伝(2012)、秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛(2014)、雲中歌 愛を奏でる(2015)、王女未央 BIOU(2016)、皇帝の恋 寂寞の庭に春暮れて(2016)、蘭陵王妃 王と皇帝に愛された女(2016)、女医明妃伝 雪の日の誓い(2016)、孤高の花 General&I(2017)、麗王別姫 花散る永遠の愛(2017)、寵妃の秘密 私の中の二人の妃(2017)
:亜種 風中の縁(えにし)(2014)、ハンシュク 皇帝の女傅(2015)、花と将軍 Oh My General(2017)
ポップ史劇
歓楽無双 恋する事件帖(2014)、金蘭良縁(2014)、トキメキ!弘文学院(2014)
ハイブリッド
瑯琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす(2015)、琅邪榜<弍> 風雲来る長林軍(2017)、酔麗花 エターナル・ラブ(2017)
純ファンタジー
花千骨(はなせんこつ) 舞い散る運命、永遠の誓い(2015)、擇天記(たくてんき) 宿命の美少年(2016)、永遠の桃花 三生三世(2017)
「伝統小説系」とは、"テレビドラマ"以前の時代にフィクションとしての地位が既に確立していたもの。(のドラマ化)
"伝奇・古典"はまあ、そのままの意味です。"武侠"(小説)は日本で言えば少年漫画のバトルものやそれ以前の"忍法小説""剣豪小説"などにも通じるカンフー・ファンタジー小説ジャンルで、その近代における代表者である金庸のデビュー作が1955年ですから、"テレビドラマ"の遥か以前から中華圏の大衆娯楽文化の中で確固たる人気を得ていた小説ジャンルです。テレビドラマの原作としても早くから有力であった一つであり、またそこで発明された様々な表現スタイルは今もって多くの中華圏ドラマの中で使われています。
「リアル史劇系」というのは、あえて名前を付けるのもあれな感じですが、要は所謂時代劇です。むしろその後の「ファンタジー時代劇」との差別化として、"リアル"という形容詞を付けてみました。
"国家・軍事・政治もの"は言わば王道で、さすがに数も多いですね。"孔子もの"が繰り返し作られるのはさすがに中国ですが、ある意味それ以前にならではだなと感じるのが"商人・民衆もの"の充実。「国家」や「軍事」に負けない具体性に満ちた細部で商人たちの生活・戦い(商戦)を描くことが、ジャンルとして完全に確立している感じです。"商売"への関心が常に身近にあるというか。
"スパイもの"は二つともが、対外国ではなくて中国人どうしの暗闘を描いているせいか、欧米ものに付き物の"スタイリッシュ"とか"アクション"みたいなトーンとは全く違い、ひたすら陰鬱でえげつなくてそれはそれで面白いです。その流れで上でも触れた"抗日戦争もの"も、日本軍と戦う一方でそれと同じかそれ以上のボリュームで、中国人どうしの戦いが必ず描かれます。引っくるめてこれも日本では余り作られないタイプのドラマですね。NHKのドキュメンタリーくらい?
韓国のも含めて"アジアドラマ"の良くも悪くも代表的なイメージのあるかもしれない"後宮・宮廷もの"(女同士のドロドロ権力争いもの)ですが、それに特化したタイプの作品が作られるようになったのは意外と最近なんだなというのは、今回の個人的な驚き。いずれ王朝を描く時には付き物な描写なので、上の"国家・軍事・政治"ジャンルでも部分的にはちょいちょいは出て来るんですが、全面展開したものが出て来るのは見た範囲では2008年の『クィーンズ 長安、後宮の乱』が最初。結果好評だったんでしょう、それ以後は"付き物"性が更に強化された印象で、"専門"ジャンル以外の作品でもいやにしつこくそういう描写が展開されて、うんざり感というか迷惑感(笑)を覚えることも、個人的にはままありますね。(笑)
さて問題の「ファンタジー史劇系」。最近中国や韓国のドラマ・時代劇が紹介される時によく使われる言葉
【中国時代劇トリビア】第3回:ファンタジー<前編>(Cinem@rt )
これも韓国時代劇がおもしろい理由!ファンタジー系時代劇大集合!(韓国ドラマ@dtv)
ですが、別に"正式"な定義があるものではないでしょう。要は"ファンタジー"要素の強い、異界天界設定や魔術・妖術がバンバン出て来て、格闘シーンもリアリティとかはハナから無視で空くらい結構普通に飛びますみたいなそういう"時代劇"ですね。タイムスリップものなども大流行りで、その場合はそれ以外の部分は普通に進んだりしますが。
これらは見た目の映像の派手さや、歴史の知識などは余り必要としないストーリーの当たりの柔らかさで、中国(韓国)ドラマの普及や新たなファン層の開拓に少なからぬ貢献をしているのだろうと思われますが、僕が注目したいのはむしろそれに伴うないし同時並行する、"キャラ"立てや"人物描写"の質的変化ですね。
リアリティや重厚な人間味よりは、美男美女性、(スーパー)ヒーロー性、所謂"マンガ的"なデフォルメされた極端な性格やあるいは"少女漫画"的なメロドラマのヒロイン性、こういったものが強調されるようになりました。総じて言えば、「二次元(キャラ)化」とまとめると、多分分かり易いかなと思いますが。(笑)
僕の分類も、そういう基準で行っています。それと狭義の"ファンタジー"要素の合わせ技というか。
そういう前提で見て行くと、僕が見た中で最初期にそういう"変化"を感じさせたのは、2010年の『四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)』ですね。四人の"異能"義賊が活躍する、美男美女のスタイリッシュ時代劇です。以下庶民の大英雄岳飛をほとんどアニメキャラ化した『岳飛伝 THE LAST HERO』、拳法の達人の偏屈名探偵の活躍をコミカルかつスタイリッシュに描いた『武僧伝』、趙雲in少女漫画の『三国志 趙雲伝』と、ここらへんをまとめて"ヒーロー史劇"とてきとうに(笑)命名してみました。
それ以前だと2005年の『大敦煌 西夏来襲』なども先駆的に思い切った華やかなキャラ立てをしていましたが、こちらは「敦煌」文明の長大なサーガというテーマが勝ってるので、一応別に。
さてもう一つ中国ドラマの"ジャンル"として最近よく使われるのが、「ラブ史劇」というラベリング。
これも別に"定義"というほどのものはないでしょうが、読んで字のごとく、(所謂"恋愛ドラマ"と比較して)それなりに大掛かりな史劇設定の中で、時代や表のストーリーも動きはするんですが結局はヒロインをめぐるたいていは三角関係以上(笑)の恋愛模様を描くことを目的としているタイプの作品。ラブアフェアはラブアフェアなんですが、「昼ドラ」ではなくて「少女漫画」の方ですねトーンとしては。(「昼ドラ」は"後宮・宮廷もの"の方)
これらは必ずしも魔術天界的"ファンタジー"要素が入っているわけではないんですが、キャラ立て人物描写の特徴、「二次元化」という意味で、「ファンタジー史劇系」の一部として僕は整理しておきたいです。
具体的な作品としては、上に挙げた通り。中には『宮 パレス 時をかける宮女』のような秀逸な演出センスの光る作品などもありますが、基本的にはその種の嗜好ないし免疫の無い男性視聴者は、近づかない方が無難なジャンルです。"後宮・宮廷もの"と共に。少なくとも中国ドラマデビューとしては、お勧めしません。
その後に挙げている"亜種"や"ポップ史劇"も、大きくは「ラブ史劇」と紹介されることの多いだろう作品。
ただ"亜種"に分類した作品のヒロインたちは単なる恋愛の「駒」という以上の積極的な能力・個性を有したキャラクターで、一緒にするのは少し可哀想というか、やろうと思えば"ラブ史劇"以外のストーリー展開も可能なように思うので、一応別に。
"ポップ史劇"という言葉も全く僕の独創ですが(笑)、振り切ったコメディ性で"ラブ"の気恥ずかしさを吹き飛ばしてくれる作品で、"亜種"共々男が見ても大丈夫そうな(笑)ラブ史劇です(ただし『弘文学院』は薦めない)。これから増えるんじゃないかなという気もします。
"ハイブリッド"は敬意を込めて、「分類不能」としたい作品。
架空設定と"武侠"的格闘シーンを満載しつつも、どんな"リアル史劇"よりもリアルに国家を歴史を人間を描き切っている『瑯琊榜』(ろうやぼう)とその続編、女性主人公をめぐる三角関係"ラブ史劇"展開を内包しつつも、「国家」や「統治」をめぐる骨太のストーリーと完成度の高いファンタジー設定魔法合戦で魅せる『酔麗花』。どちらも現在の中国ドラマの"到達点"の一翼を担う作品だと思います。
最後に意外と少ない"純ファンタジー"。
ただどれもクオリティはかなり高いので、これはこれで一つの"凝縮"されたジャンルというか、西遊記や武侠で始まった中国ドラマ、中国的ストーリー、"ファンタジー"体質が、めぐりめぐって2010年代後半的に結実したのがここに挙げたような作品群なのだろうと、そんな風にまとめておこうかなと。
何となく「リアル史劇系」の肩身が狭くなるようなまとめ方をしてしまいましたが(笑)、"ファンタジー"と言っても前提には中国ならではの「歴史」への深い関心とそれをめぐる語りの文化の蓄積があるわけで、やはりその"両輪"あってこその中国(史劇系)ドラマの醍醐味と、そういうことです。ただ現在のブームを牽引しているのは明らかに"ファンタジー"サイドの方、あえて言えば「二次元」的な性格で、それがどこまで行くのかなと天井知らずのクオリティ含めて、見守っている感じです。
もっと色々書く予定だったんですが、いかんせん長くなったので今回はここまで。
本格的な"論"やガイダンスは、次回以降にご期待下さい。(笑)