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女子バレーワールドカップ2019 雑感
2019年10月08日 (火) | 編集 |
一週間遅れですが。

いやあ、(ゲストの)木村沙織綺麗になってましたね。
"変わった"とか職業的に"女子"アピールを上げたとかではなくて、引退してリラックスしてほぼ一般人生活を送っていて、そのリラックスが自然に引き出している本来の綺麗さという感じで、見ていて幸せな気持ちになってしまいました。

木村沙織 ワールドカップ 2019

でもバレー自体は今も素直に好きな感じで、現役選手たちへのリアリティのある思いやりの言葉、特に苦境の古賀紗理那にテレビ的な流れ関係無くあえて名前を挙げて言葉をかけたのは、ちょっとウルっと来ました。
まあ古賀の苦境自体は、変わらないわけですけど。

大会全体しては、「人事は尽くした、多分」という、去年の世界バレーと同じ言葉で、結局まとめられる感じだったかなと。
やることは一通りやってるけどねえ、中田監督。


1.戦術変更?

今年のネーションズリーグ(毎年春に行われる世界各国が集まる公式プレシーズンマッチ)は見ていなかったのでそこまでの流れは知らないんですが、自分的には去年の世界バレー以来1年ぶりに見た中田ジャパンの解説で、「トスをゆっくり上げる」「シンクロ攻撃」、挙句の果てに「新鍋にもバックアタックに入って欲しい」などという言葉が飛び交っていたのは、かなり驚きました。

え、それ本当に"中田ジャパン"の話?いつから宗旨替えを?
新鍋って、あの新鍋?(笑)

つまり以前紹介したように、中田ジャパンの基本戦術は「枚数」ではなく「精度」、一つの狙った攻撃を限界的な精度と速度で遂行することで敵の防御を破ることにあったはずで、(バックアタックを打たないことで定評のある)「新鍋のバックアタック」すら可能的選択肢に入れる程攻撃枚数(参加人数)を増やすことにこだわり、それを「ゆっくり上げたトス」で多少のずれを吸収しながらの「シンクロ攻撃」(多人数同時参加攻撃)に結び付けるなんて方向性は、ほとんど真逆というかむしろ前任者の眞鍋監督的というか。

1.ブロックが整わない内に打つ
整ってしまうと邪魔なので、整わない内に早く打ってしまう。
(中略)
レシーブから繋げてトスを上げてそのトスをアタッカーが打つ、この3段階の動作を速く正確に、出来ればサッカーで言うセットプレーの"サインプレー"的な感じで一気にやってしまう
(中略)
これは、他ならぬ現女子全日本、中田久美監督が採用している戦術・思想(中略)
中田ジャパンは、職人的精度を命綱とする守備型のチーム

2.攻撃枚数の多さでブロックに的を絞らせない
(中略)
攻撃態勢に入る、"打つぞ"という気配を見せる選手の人数をなるべく多くして、マークを分散させてその隙を突くというのが、第二の方法です。
具体的にはフロントだけではなくバックからのスパイクも多用する、バックアタックを打てる選手を常時用意する(中略)
前と後ろのアタックを打つ可能性のある選手全員がサボらずに同時に攻撃態勢に入ることで、相手を幻惑する
(中略)
中田監督はと言うと、バックアタック自体も余り重視しない慎重派で、飽くまで仕組んだ一本の攻撃のラインの精度で、ピンポイントで勝負するタイプ。


確かに"バックアタック"自体は、これを書いた後の2018世界バレーではより重視する方向に向かっていましたが、それもそれ用の専用のシフトを用意するという慎重なやり方で、チームの基本の枠組みは変わっていないように、その時点では見えました。(『女子世界バレー2018まとめ』)

そこからすると、「シンクロ攻撃」や「新鍋のバックアタック」のような軽薄な(笑)言葉が飛び交い、就任当初あれほどこだわっていた低く速いトスの縛りも、セッター自身(佐藤美弥)の口からはっきり「高く緩いトス」の意識が語られるくらい"寛容"になっているのは、かなり大きな変化に思います。


では中田監督は宗旨替えしたのか、眞鍋方式に屈した(笑)のかというと・・・一応違うんじゃないですかね。
相変わらずベストメンバーのファーストチョイスには、"バックアタックの打てない"新鍋がきっちり入っていますし、あくまで「上積み」「バリエーション」、原点である職人精度一本釣りバレーの土台の"上"に、そういう要素を乗せているつもり。別な言い方をすると、それまでのやり方が行き詰まったから変えたのではなく、当初から4年間の予定の中では"発展形"としてそういうことは考えていたんだと思います。

ただそうは言っても要求されるサーブレシーブの精度やその為の人選、セッターの選択や意識付けという中核部分で小さくない違いのある二つの戦術なので、そう簡単に「上積み」は出来ない、足し算は出来ない、うっかりすると「バリエーション」の域を越えてやはり"宗旨替え"になってしまう、そういう理論的危険は常に潜在していて、今回"新しい"やり方はそれなりに機能して"やれること"自体は増えましたが、それで「強く」なっているのかというと疑問というか、同程度のチームが二種類出来ただけみたいなところはあると思います。"最高到達点"は目に見えて上がってはいない。
残り一年で"この先"を考えるにしても、それは"どの"チームの先なのか、4年の上積みなのか2年の上積みなのかというもやもやしたところがあって、余りクリアな展望は持ち難い。

良いところとしては「新鍋・内瀬戸頼み」で使える人材のタイプも人数も限定されてしまっていたオリジナルチームに対して、サーブレシーブ至上主義が緩んだことによってぐっとそこらへんの選択肢が増えた、思い切った若手選手の大量起用も可能になったと、そういうことはあると思います。
ただその中で残り一年で大きく状況を変える大エースが生まれるかというとそれは望み薄なので、"保険"は利くようになったしその都度フレッシュな選手を使うことによる"活性化"くらいは期待出来ますが、やはり「最高到達点」が上がる見込みは特に見えないなという感じ。平均レベルが上がるのかどうかすら。
眞鍋監督なんかは、"大量起用"そのものを状況打開に結び付けようと、「MB1」や「ハイブリッド6」などという新戦術ないし奇策に挑戦していたわけですけどね。


というわけでどこから見ても"ブレイクスルー"の希望は持ちづらい中田ジャパンですが、常識の範囲内では、やれることはやっていますね中田監督は、相変わらず。一つ一つの仕事は丁寧だし、本番に向けて、"穴"や"偏り"自体は極小化はしていくんだろうなと、そういう見込みは持てます。
後はまあ、天命を待つのみという。(笑)
でも「シンクロ攻撃」まで考えているとは思っていなかったので、驚いたというかどういう理論的一貫性が中田監督の中にあるのか、ちょっと聞いてみたいところではあります。


2.ボールとサーブ

今大会の一つのトピックスとして、公式試合球の変更というものがありました。
詳しいことは分かりませんが言われていることをまとめると、それによってボールに変化が付きにくくなった、ないし強く打たないと変化しなくなったらしく、強く打つジャンピングサーブの価値が高まって、日本では唯一それを得意としている長内に脚光が当たったりしていました。

逆に言うとそれまでのボールでサーブの"名手"の定評のあった選手たちが苦戦する様子が随所で見られ、日本だと宮下は割りと早めに適応していましたが鍋谷は最後の最後でようやく間に合ったという感じで、途中まではピンチサーバーとして出て来てもむしろ相手にチャンスボールを提供する一方みたいなところがあって、結構いらいらさせられましたね。
新鍋も見たことの無いような変なオーバーの仕方をちょいちょいしていましたし、逆にどちらかというと"不安定"な印象の強かった古賀のサーブが今大会では安定していたのは、それも相性の問題なのかなあと思いながら見ていましたが。
どのボールでも変わらず"変"なサーブを打つ岩坂って、ひょっとして凄いのかなとか。(笑)

推測するに、この国際規格の変化自体は、近年変化し"過ぎる"、それによってサーブが凶悪化し過ぎてバランスがおかしくなっていると、そういう批判もあったところへの対応なのではないかと思うんですが。
ただサッカーのそれとは比べ物にならないくらい、バレーのボールの品質というのは重要・繊細で、戦術にも必要とされる選手にも大きな変化を与えかねないので、あんまりころころ変えて欲しくないなという気持ちはありますね。

日本の事情で言うと、「サーブの凶悪化」自体は中田戦術の「サーブレシーブ精度至上主義」の壁になっていたわけで、そういう意味では有利な変更に思えなくもないんですが、一方で日本側の"凶悪"サーブもそれはそれで命綱でもあったので、もし新ボールが「変化し難い」というより「パワーサーバー有利」の方に作用するなら、こちらはかなり苦しい変更になってしまいそう。
実際に試合を見ている範囲では、各国適応期間で分からない部分もありつつ、そんなに攻守それぞれの状況は最終的に変わらないような感じもしましたけどね。上手い選手はやっぱり上手いという感じで。サーブを打つコツ、ボールを変化させるコツは、結局同じというか。一部前のボールに特化した打ち方をしていた選手などには、影響が出るかも知れないですけど。鍋谷がそれに当たってしまうのかどうか。


3.その他選手

その他個別に目に留まった選手としては、まずは長内ですかね。Vリーグでもパワー、特に二段トス(乱れたアバウトなトス)を打ち切れる能力自体は目立ってましたけど、日立リヴァーレというチーム自体がポンコツなのと、慣れないサーブレシーブ(高校時代はミドルだそうで驚き)をやらされていたのもあって総体的に全然"一流"感が無くて、まさか代表レベルでこれだけやれるとは、本人の成長と共に中田監督の眼力にも感心しました。まあ年代別代表での活躍とかも、前提としてあったようですけど。もう二回くらい(笑)化けたら、局面を変える大エースになれる可能性のある、実は唯一の選手なのではないかと思っています。(石川妹より)

もう一人は芥川。スピードと身体能力では日本のミドルでは抜けた選手なのは誰が見ても分かると思いますが、僕が知る限り所属のJTでは基本クイックしか打たない選手で、中田ジャパンのミドルの主武器であるブロードを練習し出したのは17/18シーズンあたりから、代表招集後も余り目立ったプレーはしていなかったと思いますが、今大会ではようやく"本物"になった感じの、少し一本調子だったスピードをブロード/サイドでも器用に活かすようになって、それを中心に全てのプレーの完成度が高くなっていて、随分中田監督に仕込まれたんだろうなという感じ。やや線の細い奥村と比べても国際的なスケール感はあって、これはもう外せないというか日本の武器にしないとなという感じになって来たと思います。

その奥村は奥村で完全に中田構想の中心のようですし、勿論荒木もいるし、登録12人のオリンピックで果たして現状でも"キャプテン"特典でメンバー入りしている感のある岩坂の扱いをどうするんだろうと、そこらへんは嫌な意味(笑)で注目点。上で言ったようにサイドの選手は誰が入るにしても多分質より量で、多めに連れて行くことが予想されますから。
確実に武器になる"スピード"タイプの上記二人は多分外せないとして、後は戦術上一人は欲しいけれど二人入れる程役に立つ当てはない高さタイプを、普通に考えたら一人。高齢の荒木を岩坂が追い越すなんてことがあれば理想なんですけど、余り現実的とは。かといって中田監督外すかなあという。でもじゃあ誰が外れるの?という。
ミドル4人連れて行くのかなあ、過密スケジュールの今大会ですら、実質岩坂の出番は無かったのに。

後は勿論、石井は立派だった、4年前は"文句の多いひね者の三女"みたいだったのに、すっかり"苦労を一人で背負い込む長女"みたいになっていて(笑)、おじさん感動したよと、それだけ言って終わりにしたいと思います。


最終成績は5位
まあ今回からは五輪出場権も何もかかっていないので、どうでもいいと言えばどうでも良かったですけどね。その割に試合自体は、ちゃんと面白かったと思います。各国概ね本気度高いというか。(全日本女子各試合結果)


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テーマ:バレーボール日本代表
ジャンル:スポーツ
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