2020年02月12日 (水) | 編集 |
「最終回」と言い切れるのは、今後も続けるだろう電子書籍漫画生活(ハマったあ)を、Kindle、コミックシーモア等各サイトで提供される"無料・試し読み"本を「入り口」として利用しながら回せるというめどが立ったからで、(定額)"読み放題"システムを今後利用する予定はほとんど無いからという、そういう理由によります。
・・・話飛んでるかな?(笑)、つまり"うっかり"有料期間も含めて二カ月の読み放題徹底利用を経て、次の「入り口」としてたまに目にしていた最初の数巻"無料"という本の渉猟をしてみたところ、少なくともKindleに関してはその多くが"読み放題"のラインアップと被っているのでどちらかを利用すれば良く、その場合ラインアップの更新があちら頼みな読み放題よりも当然自分で選べる"無料"本の方が分かり易いわけで、今後はこちらを中心に生活することになるだろうという、そういう話です。
ちなみにコミックシーモアにも"読み放題"システムはありますが、こちらは(コミックシーモアの)"無料"本とはがらりと違う、そこから外れた古い本ばかりで全く読む物が無く、無料期間終了を待たずに解約してしまいました。
その一方"無料"本のラインアップはKindleとほとんど共通しているので、なるほど"無料"というのはサイト側の設定ではなくて発行側出版側の設定なのだな、その証拠にKindleでもシーモアでも、無料対象の巻数は全く同じだしと、ここらへんが現在までに分かったところです。
まだこの二つ以外は確認していないので、何か新たな情報があれば、またお知らせするかもしれません。(笑)
とにかく最終回。
まずは「作家」編。作品単体で興味深いというよりも、その作家さん自体に面白みを感じる人特集。
「作家」編
岡田索雲




『メイコの遊び場』『マザリアン』
超能力幼女殺し屋の話と、そこに巻き込まれると生物無生物問わず巻き込まれた複数の物体・存在が融合してしまう("混ざりあん")怪現象が頻発するようになった世界の話。どらも超常現象設定で、かつどちらもぶっ飛んだ暴力展開が中心になっています。前者は幼女が罪の意識無く殺し屋稼業を(対象も基本犯罪者ではありますが)営んでいますし、後者の特に「ノミ」と融合した女の子のジャンプ力とキック力の描写は衝撃的でした。ノミのそれを人間スケールで見ると、どれくらい凄いものなのか。
「超常」と「暴力」というのは深夜アニメなどでも多数派を占める、ある意味若い世代のエンタメのお決まりのスタイルではあると思いますが、ただこの作者の力量&筆致の奥行きは、そうした"流行"という次元を遥かに遥かに凌駕するもので、驚かされました。
まず二作のスタイルが全然違います。前者は絵から文体から、戦後間もなく的なノスタルジック・レトロな"怪奇"的なもので、また"文学"的でもあり美学的でもあり、てっきりそういう作家さんなんだと思いました。ところが後者はほぼほぼヤンキー漫画的な直情性と下世話なユーモアセンスに満ち溢れていて、読んでいる最中は『メイコの遊び場』の人だとは全く/一切気が付かなくて、後で照らし合わせて仰天しました。どちらかがつまらない、"失敗"作とかならともかく、どちらもとんでもなく面白かったのに、このバリエーションは驚異的です。なんなんだという感じです。
「超常」と「暴力」についても、それぞれ非常に魅力的で熱の入った設定・描写ではあるんですが、印象的なのはそれらを扱うある種の"余裕"ですね。どうだこの設定凄いだろう、この暴力衝撃的だろうという上記"流行"作品でありがちな耽溺・陶酔が、全く無い。
併せて現時点で何者なのかどれだけ奥があるのか、僕には掴めない人です(笑)。今後も注目して行きたいと思います。
林麦






『デンセツノ魔キュウ』『ツグミリミテッド』『ウインディ、サニー』
最初のは男女、残り二つは女女の、それぞれうっすら"恋愛"的な関係を魔法・超能力・霊力(?)といったファンタジー設定と日常性をさりげなく重ね合わせて描いた"青春"系作品。(それぞれ副題「魔女と野球と空飛ぶホウキ」「百合と団地と超能力」「海と団地と雨乞いの巫女」)
なんかいかにも同人的というか、年少作家によくある感じであんまり読む気しないかも知れませんが、スタイルがいいのかスタイル関係無いくらい作者の才能がわがままな程有り余っているのか、"スタイル"で到底定義できないレベルに面白いです。読者は楽しんでればいいわけですけど、多分同業者は嫉妬で死にそうになるタイプの作家だと思います。(笑)
ちょっと批評が難しいですね。真似することに意味の無い、孤高の才能。とにかく止める蹴るポジショニングするパスするドリブルするシュートする、全ての動作がハイレベルで簡潔で効果的という感じの人。それ以外に言いようが無いというか。まあ違うスタイルだとどうなるのか、見てみたいような別にどうでもいいような。(笑)
若林稔弥




『僕はお姫様になれない+』『幽子さんは見られたい』
既にアニメ『徒然チルドレン』で僕を篭絡済みの作家さんの、なんかアウトテイク的なもの。
やっぱこの人凄かったんだあと、確認・再認識。幸福。(笑)
ストーリーというよりひたすら人間"関係"、感情の"ひだ"を描く人ですが、なんかとにかく達人ですね。言ってみれば高精度の"関節技"の嵐なんですけど、それが同時に"エンタメ"としての分かり易さ、"華"も持っているという。桜庭和志的な?(笑)
既に名は知れているはずの人なので、こういうのがUnlimitedで読めますよと言う、紹介まで。
大久保ニュー






『テツコの幕は今上がる』『名悶☆オラオラ高校~男の園に女教師ひとり~』『マヨイ姫』
なんか予想外に面白かったアングラ人情系作家(?)さん。
人生落伍しかかり女が行きがかりで小劇団を立ち上げてそこから復活して行く『テツコの幕は今上がる』を読むと、恐らく作者の背景は"演劇""劇団"なんだろうと思うんですが、そこから想定されるこってりした人間関係や市民社会斜め見的なマイナーアングラ価値観の"味わい"という需要を満たしつつも、そういう「ジャンル」に収まらない、でも何と言うのは難しい独特の抜けの良さを持っている人。浸りつつ抜けているというか。
『名悶☆オラオラ高校』もタイトル・副題からエロティックコメディかと思いきや、エロティックでないことはないしコメディでないことも無いんですが、どうにもそれで説明した気になれないそれ以上の手応えのある作品。ひねりはそんなに無いんですけど、設定とストーリーから想定される受け取れる感動が、常に最大値以上にある感じ。受け止めたつもりが倒されているというか。"林麦"さんと少し似た批評の難しさのある人かも。
『マヨイ姫』は方向がやや逆で、マッチョな肉体きっかけで始まった恋の真剣さを描いているようで、最終的に"肉体"の魅力の否定し難さが印象に残る感じの作品。(笑)
坂木原レム






『フルイドラット』『モンスターキネマトグラフ』『リサイクル』
色々描いてますが基本的には"異形"好きというか多分特撮(&日本軍?)マニアというか、そういう感じの人。そういうものに向ける視線の独特の湿気を含んだ"優しさ"というのが、特徴かな?
『フルイドラット』はドイツを中心にヨーロッパに点在するらしい、"鼠人間"の伝説を軽く踏まえた、現代の遺伝子操作人間の話。鼠女の妙なエロさ可愛らしさが印象的なこれが代表作の本格長編ですが、より秀逸なのは短編の『モンスターキネマトグラフ』の方。妙齢女性が(性を中心に)"興奮"すると怪獣に変身してしまうお馬鹿設定で、しかもそれが密かに戦時中日本軍の秘密兵器として使われていたというおいおいな話なんですが、いいんですね。
着衣引きちぎって怪獣に変身してしまうのも恥ずかしいですし、しかも"変身"したという事は"興奮"したという事もバレバレ(笑)でそれも恥ずかしいですし、そこに「秘密兵器」の悲哀がかぶさってかつしかしそれを支える人々の優しさや国から派遣された管理官との意外な恋愛展開なども重なりやたらめったらエモーショナルです。そして最終的に優しいです。趣味的ですがいい作品です。
こういう妙なユーモアセンスと優しさの随所に生きた、短編集『リサイクル』も良いです。今後の活躍が予想される、新進の作家さん。
イトイ圭


『海辺のオルランド』
アートな絵とアートな人間関係とアートなストーリーのアートな作品なんですが、物凄く読み易くてちゃんとストーリーが楽しめます。
読み易さは正義というか、結局のところ何よりの力量の証明というか。
特に漫画の場合は、ほぼそれで判断していいと思います。読み難いのは個性や作風ではなくて、単なる力量不足クオリティ不足。面白いものは、読み易いはず。
中山ユキジ


『絶対不発アトミックガール』
投げやりに描いているとしか思えない(笑)なかなかに"壊れた"ドタバタギャグストーリーなんですけど、他の同種の作品とは何か一線を画す体幹の強さを感じます。"逃げ"や"気取り"のドタバタではないというか。
こういうのはたいてい最初だけ面白くてすぐ飽きるんですけどもっと読みたかったですし(1巻で完結)、今後どういう作品を描いて来るのか凄く楽しみな新人。
とりあえずめっちゃ笑いました。(笑)
森もり子


『さよなら、ハイスクール』
web作家によるスクールカースト逆転知能犯ストーリー。
凄く今時な感じですが、こちらも"類型"と切り捨てられない確かなものを感じます。
・・・"類型"ではあるんですけど。(笑)
若い人は頭がいいなあという感じで正直ちょっとよく分からないんですけど、他の作品も評価は高いようですね。いずれ読んでみます。
・・・続いては「職業」編。
「職業」編
僕の作品チョイスの基準を大きく分けると、一つは前半で扱ったような作者のセンス自体に感じるものがあるもの、それからある種定番のスポーツもの、それからこれは"気が付くと"という感じなんですが、自分が興味があったり馴染みが薄かったりする業界の職業生活を描いたものと、この三つでだいたいまとめられる感じがします。
その三つ目。
・漫画家と編集


『マンガに、編集って必要ですか?』 青木U平
売れないオッサン漫画家が主人公という事で、土田世紀『編集王』


的な暑苦しい感じかなと思いましたが、違いました。女性誌から来た使えない新人女性編集との意外な心の交流と裏切り、アシスタントについている"編集不要"論を持論とする新世代漫画家の冷静な描き方と、一つ一つ丁寧に吟味された感じの素材で構成された、かなり面白そうな漫画家漫画。奥さんとの関係や今は出世した古参担当の描き方も面白かったです。要するに全部(笑)。先が読みたいです。




『なのはなフラワーズ』 青木俊直
こちらは女性専用アパートに住む男に免疫の無い女性漫画家の、男性編集との関係を描いた話。主人公はその編集に恋心を抱いているわけですが、それにほだされてその編集の"無能"に文句が言えなくなっている悲惨な話かと思ったら案外そうでもなくて・・・という。上の作品同様、「そう簡単に無能と断じてはいけない」という話で、漫画家と編集の単純には行かない関係を窺わせて興味深いです。
・IT業界


『チェイサーゲーム』 松山洋, 松島幸太朗
ゲームソフト業界の話なので「漫画」と並べて「コンテンツ」「クリエイティブ」という括りでも良さそうなものですが、何せゲームをほとんどやらない人なのでその距離感が"IT業界"という愛の無い括りに。(笑)
漫画自体はなかなか面白かったです。大物ゲーム会社社長(らしい)原作による、自社の具体的環境を大いに利用したかなりリアルらしいゲーム開発現場のあるある。特に企業訪問&新人研修編の、"新しい"業界にも関わらずやはり存在する大きめのジェネレーションギャップの話は興味深かったですね。"新人類"は常に新人類というか。変に勇気付けられました。(笑)


『フォレンジック刑事』 猿山長七郎
ITセキュリティの専門家の話。
大した漫画ではないですしノリはギャグっぽいですが、ほとんどの人は知らない業界でしょうから読む価値はあるかなと。
・webマーケティング






『マンガ版Webマーケッター瞳の挑戦!』 星井博文, ソウ, トレンド・プロ, 村上佳代


『マーケ企画部 四葉幸のハッピーオウンドメディア』 トレンド・プロ, 藤島昭, akino, インフォバーン




『Web担当者の悩み・問題を解決!価格交渉人ネギリエ』 星井博文, ソウ, トレンド・プロ
自社サイトやSNS等を駆使したwebマーケティングの現場で実際にどのようなことが行われているかを描いた漫画たち。
一種の「学習漫画」ですけど、意外と"漫画"としても面白かったです。特に最後の"価格交渉人"の女の人のキャラは良い。(笑)
全体としては、凄く地道な作業ばかりで、にも関わらずどうしても「壮大な詐欺」のような悪印象(社内の他部署から正にそういう目を向けられがち)もなかなかぬぐい切れずに、何をやってるかは一応分かったしそれなりに筋も通っているけど、出来れば自分ではやりたくないなと感じる仕事でした。(笑)
・その他の(怪しい)仕事たち


『うさぎさんのおしごと』 poko
"バニーガール"という非常に古典的な「女」売り仕事の話で、そう言えば何やってるんだろう、風俗とかキャパとかは、もうだいたいみんな知ってるけどという感じで興味深かったです。
基本的には「ウェイトレス」であって、お客さんの隣に座ったりもしないんですね、へえ。だからバニーとお話ししたい客は、結構工夫してその"時間"を作っている。それでもやはり、"お誘い"は色々とあるみたい。(笑)
エッセイ漫画として純粋にいい出来なので、"ついで"に読んでみてもいいのではという感じです。


『霊感保険調査員 神鳥谷サキ 漆黒の墓標』 ひとみ翔, 紫陽
「保険調査員」の話、ではありますがまあ、"霊感"です。(笑)
ただ"保険調査"の話としてもちゃんと出来ていて、やはり死亡事故等を扱う関係でどうしてもそういうネタは付きまとうようで、社内でそういう"案件"が得意な人振られやすい人というのがいるという話は、なるほどなと。その中にずばり"霊感"がある人も一定数いるという説明は、説得力がありました。


『霊能師・音羽マリアの浄霊ファイル(2)霊能師が教えるお墓マニュアル』 ひわときこ, 音羽マリア
こちらはもっとずばり"霊能師"ですけど、「墓」業界の話としても読めます。
今年のお盆からは一応墓参りくらい自発的に行っておこうかなと、改めて思ったりしました。すっかり親戚が集まらなくなったので、ご無沙汰してましたが。
この前のもそうでしたが、こういう"宗教"まではいかない緩い"霊能者"ものの世界観道徳観に、変に共通性があるのが面白いというか、説得的だなあという。ほんとにこうなのかもしれないというか、こうであるなら別にそれでいいかなという感じになります。
まあなんか散々お世話になっておいて「不要」論みたいなことを言ってしまった"Unlimited"ですけど(笑)、"無料"本より作品数自体は多いですし今回紹介した中にも"無料"化されていないものは結構ありますし、とりあえず一巡二巡利用してみるのは、特に普段そこまで漫画を読んでない人には十分に価値があると思います。
僕はもう、三巡四巡してしまったので(笑)、当分いいですが。
ではまた、今度は「無料本」紹介の時にでも。
・・・話飛んでるかな?(笑)、つまり"うっかり"有料期間も含めて二カ月の読み放題徹底利用を経て、次の「入り口」としてたまに目にしていた最初の数巻"無料"という本の渉猟をしてみたところ、少なくともKindleに関してはその多くが"読み放題"のラインアップと被っているのでどちらかを利用すれば良く、その場合ラインアップの更新があちら頼みな読み放題よりも当然自分で選べる"無料"本の方が分かり易いわけで、今後はこちらを中心に生活することになるだろうという、そういう話です。
ちなみにコミックシーモアにも"読み放題"システムはありますが、こちらは(コミックシーモアの)"無料"本とはがらりと違う、そこから外れた古い本ばかりで全く読む物が無く、無料期間終了を待たずに解約してしまいました。
その一方"無料"本のラインアップはKindleとほとんど共通しているので、なるほど"無料"というのはサイト側の設定ではなくて発行側出版側の設定なのだな、その証拠にKindleでもシーモアでも、無料対象の巻数は全く同じだしと、ここらへんが現在までに分かったところです。
まだこの二つ以外は確認していないので、何か新たな情報があれば、またお知らせするかもしれません。(笑)
とにかく最終回。
まずは「作家」編。作品単体で興味深いというよりも、その作家さん自体に面白みを感じる人特集。
「作家」編
岡田索雲
『メイコの遊び場』『マザリアン』
超能力幼女殺し屋の話と、そこに巻き込まれると生物無生物問わず巻き込まれた複数の物体・存在が融合してしまう("混ざりあん")怪現象が頻発するようになった世界の話。どらも超常現象設定で、かつどちらもぶっ飛んだ暴力展開が中心になっています。前者は幼女が罪の意識無く殺し屋稼業を(対象も基本犯罪者ではありますが)営んでいますし、後者の特に「ノミ」と融合した女の子のジャンプ力とキック力の描写は衝撃的でした。ノミのそれを人間スケールで見ると、どれくらい凄いものなのか。
「超常」と「暴力」というのは深夜アニメなどでも多数派を占める、ある意味若い世代のエンタメのお決まりのスタイルではあると思いますが、ただこの作者の力量&筆致の奥行きは、そうした"流行"という次元を遥かに遥かに凌駕するもので、驚かされました。
まず二作のスタイルが全然違います。前者は絵から文体から、戦後間もなく的なノスタルジック・レトロな"怪奇"的なもので、また"文学"的でもあり美学的でもあり、てっきりそういう作家さんなんだと思いました。ところが後者はほぼほぼヤンキー漫画的な直情性と下世話なユーモアセンスに満ち溢れていて、読んでいる最中は『メイコの遊び場』の人だとは全く/一切気が付かなくて、後で照らし合わせて仰天しました。どちらかがつまらない、"失敗"作とかならともかく、どちらもとんでもなく面白かったのに、このバリエーションは驚異的です。なんなんだという感じです。
「超常」と「暴力」についても、それぞれ非常に魅力的で熱の入った設定・描写ではあるんですが、印象的なのはそれらを扱うある種の"余裕"ですね。どうだこの設定凄いだろう、この暴力衝撃的だろうという上記"流行"作品でありがちな耽溺・陶酔が、全く無い。
併せて現時点で何者なのかどれだけ奥があるのか、僕には掴めない人です(笑)。今後も注目して行きたいと思います。
林麦
『デンセツノ魔キュウ』『ツグミリミテッド』『ウインディ、サニー』
最初のは男女、残り二つは女女の、それぞれうっすら"恋愛"的な関係を魔法・超能力・霊力(?)といったファンタジー設定と日常性をさりげなく重ね合わせて描いた"青春"系作品。(それぞれ副題「魔女と野球と空飛ぶホウキ」「百合と団地と超能力」「海と団地と雨乞いの巫女」)
なんかいかにも同人的というか、年少作家によくある感じであんまり読む気しないかも知れませんが、スタイルがいいのかスタイル関係無いくらい作者の才能がわがままな程有り余っているのか、"スタイル"で到底定義できないレベルに面白いです。読者は楽しんでればいいわけですけど、多分同業者は嫉妬で死にそうになるタイプの作家だと思います。(笑)
ちょっと批評が難しいですね。真似することに意味の無い、孤高の才能。とにかく止める蹴るポジショニングするパスするドリブルするシュートする、全ての動作がハイレベルで簡潔で効果的という感じの人。それ以外に言いようが無いというか。まあ違うスタイルだとどうなるのか、見てみたいような別にどうでもいいような。(笑)
若林稔弥
『僕はお姫様になれない+』『幽子さんは見られたい』
既にアニメ『徒然チルドレン』で僕を篭絡済みの作家さんの、なんかアウトテイク的なもの。
やっぱこの人凄かったんだあと、確認・再認識。幸福。(笑)
ストーリーというよりひたすら人間"関係"、感情の"ひだ"を描く人ですが、なんかとにかく達人ですね。言ってみれば高精度の"関節技"の嵐なんですけど、それが同時に"エンタメ"としての分かり易さ、"華"も持っているという。桜庭和志的な?(笑)
既に名は知れているはずの人なので、こういうのがUnlimitedで読めますよと言う、紹介まで。
大久保ニュー
『テツコの幕は今上がる』『名悶☆オラオラ高校~男の園に女教師ひとり~』『マヨイ姫』
なんか予想外に面白かったアングラ人情系作家(?)さん。
人生落伍しかかり女が行きがかりで小劇団を立ち上げてそこから復活して行く『テツコの幕は今上がる』を読むと、恐らく作者の背景は"演劇""劇団"なんだろうと思うんですが、そこから想定されるこってりした人間関係や市民社会斜め見的なマイナーアングラ価値観の"味わい"という需要を満たしつつも、そういう「ジャンル」に収まらない、でも何と言うのは難しい独特の抜けの良さを持っている人。浸りつつ抜けているというか。
『名悶☆オラオラ高校』もタイトル・副題からエロティックコメディかと思いきや、エロティックでないことはないしコメディでないことも無いんですが、どうにもそれで説明した気になれないそれ以上の手応えのある作品。ひねりはそんなに無いんですけど、設定とストーリーから想定される受け取れる感動が、常に最大値以上にある感じ。受け止めたつもりが倒されているというか。"林麦"さんと少し似た批評の難しさのある人かも。
『マヨイ姫』は方向がやや逆で、マッチョな肉体きっかけで始まった恋の真剣さを描いているようで、最終的に"肉体"の魅力の否定し難さが印象に残る感じの作品。(笑)
坂木原レム
『フルイドラット』『モンスターキネマトグラフ』『リサイクル』
色々描いてますが基本的には"異形"好きというか多分特撮(&日本軍?)マニアというか、そういう感じの人。そういうものに向ける視線の独特の湿気を含んだ"優しさ"というのが、特徴かな?
『フルイドラット』はドイツを中心にヨーロッパに点在するらしい、"鼠人間"の伝説を軽く踏まえた、現代の遺伝子操作人間の話。鼠女の妙なエロさ可愛らしさが印象的なこれが代表作の本格長編ですが、より秀逸なのは短編の『モンスターキネマトグラフ』の方。妙齢女性が(性を中心に)"興奮"すると怪獣に変身してしまうお馬鹿設定で、しかもそれが密かに戦時中日本軍の秘密兵器として使われていたというおいおいな話なんですが、いいんですね。
着衣引きちぎって怪獣に変身してしまうのも恥ずかしいですし、しかも"変身"したという事は"興奮"したという事もバレバレ(笑)でそれも恥ずかしいですし、そこに「秘密兵器」の悲哀がかぶさってかつしかしそれを支える人々の優しさや国から派遣された管理官との意外な恋愛展開なども重なりやたらめったらエモーショナルです。そして最終的に優しいです。趣味的ですがいい作品です。
こういう妙なユーモアセンスと優しさの随所に生きた、短編集『リサイクル』も良いです。今後の活躍が予想される、新進の作家さん。
イトイ圭
『海辺のオルランド』
アートな絵とアートな人間関係とアートなストーリーのアートな作品なんですが、物凄く読み易くてちゃんとストーリーが楽しめます。
読み易さは正義というか、結局のところ何よりの力量の証明というか。
特に漫画の場合は、ほぼそれで判断していいと思います。読み難いのは個性や作風ではなくて、単なる力量不足クオリティ不足。面白いものは、読み易いはず。
中山ユキジ
『絶対不発アトミックガール』
投げやりに描いているとしか思えない(笑)なかなかに"壊れた"ドタバタギャグストーリーなんですけど、他の同種の作品とは何か一線を画す体幹の強さを感じます。"逃げ"や"気取り"のドタバタではないというか。
こういうのはたいてい最初だけ面白くてすぐ飽きるんですけどもっと読みたかったですし(1巻で完結)、今後どういう作品を描いて来るのか凄く楽しみな新人。
とりあえずめっちゃ笑いました。(笑)
森もり子
『さよなら、ハイスクール』
web作家によるスクールカースト逆転知能犯ストーリー。
凄く今時な感じですが、こちらも"類型"と切り捨てられない確かなものを感じます。
・・・"類型"ではあるんですけど。(笑)
若い人は頭がいいなあという感じで正直ちょっとよく分からないんですけど、他の作品も評価は高いようですね。いずれ読んでみます。
・・・続いては「職業」編。
「職業」編
僕の作品チョイスの基準を大きく分けると、一つは前半で扱ったような作者のセンス自体に感じるものがあるもの、それからある種定番のスポーツもの、それからこれは"気が付くと"という感じなんですが、自分が興味があったり馴染みが薄かったりする業界の職業生活を描いたものと、この三つでだいたいまとめられる感じがします。
その三つ目。
・漫画家と編集
『マンガに、編集って必要ですか?』 青木U平
売れないオッサン漫画家が主人公という事で、土田世紀『編集王』
的な暑苦しい感じかなと思いましたが、違いました。女性誌から来た使えない新人女性編集との意外な心の交流と裏切り、アシスタントについている"編集不要"論を持論とする新世代漫画家の冷静な描き方と、一つ一つ丁寧に吟味された感じの素材で構成された、かなり面白そうな漫画家漫画。奥さんとの関係や今は出世した古参担当の描き方も面白かったです。要するに全部(笑)。先が読みたいです。
『なのはなフラワーズ』 青木俊直
こちらは女性専用アパートに住む男に免疫の無い女性漫画家の、男性編集との関係を描いた話。主人公はその編集に恋心を抱いているわけですが、それにほだされてその編集の"無能"に文句が言えなくなっている悲惨な話かと思ったら案外そうでもなくて・・・という。上の作品同様、「そう簡単に無能と断じてはいけない」という話で、漫画家と編集の単純には行かない関係を窺わせて興味深いです。
・IT業界
『チェイサーゲーム』 松山洋, 松島幸太朗
ゲームソフト業界の話なので「漫画」と並べて「コンテンツ」「クリエイティブ」という括りでも良さそうなものですが、何せゲームをほとんどやらない人なのでその距離感が"IT業界"という愛の無い括りに。(笑)
漫画自体はなかなか面白かったです。大物ゲーム会社社長(らしい)原作による、自社の具体的環境を大いに利用したかなりリアルらしいゲーム開発現場のあるある。特に企業訪問&新人研修編の、"新しい"業界にも関わらずやはり存在する大きめのジェネレーションギャップの話は興味深かったですね。"新人類"は常に新人類というか。変に勇気付けられました。(笑)
『フォレンジック刑事』 猿山長七郎
ITセキュリティの専門家の話。
大した漫画ではないですしノリはギャグっぽいですが、ほとんどの人は知らない業界でしょうから読む価値はあるかなと。
・webマーケティング
『マンガ版Webマーケッター瞳の挑戦!』 星井博文, ソウ, トレンド・プロ, 村上佳代
『マーケ企画部 四葉幸のハッピーオウンドメディア』 トレンド・プロ, 藤島昭, akino, インフォバーン
『Web担当者の悩み・問題を解決!価格交渉人ネギリエ』 星井博文, ソウ, トレンド・プロ
自社サイトやSNS等を駆使したwebマーケティングの現場で実際にどのようなことが行われているかを描いた漫画たち。
一種の「学習漫画」ですけど、意外と"漫画"としても面白かったです。特に最後の"価格交渉人"の女の人のキャラは良い。(笑)
全体としては、凄く地道な作業ばかりで、にも関わらずどうしても「壮大な詐欺」のような悪印象(社内の他部署から正にそういう目を向けられがち)もなかなかぬぐい切れずに、何をやってるかは一応分かったしそれなりに筋も通っているけど、出来れば自分ではやりたくないなと感じる仕事でした。(笑)
・その他の(怪しい)仕事たち
『うさぎさんのおしごと』 poko
"バニーガール"という非常に古典的な「女」売り仕事の話で、そう言えば何やってるんだろう、風俗とかキャパとかは、もうだいたいみんな知ってるけどという感じで興味深かったです。
基本的には「ウェイトレス」であって、お客さんの隣に座ったりもしないんですね、へえ。だからバニーとお話ししたい客は、結構工夫してその"時間"を作っている。それでもやはり、"お誘い"は色々とあるみたい。(笑)
エッセイ漫画として純粋にいい出来なので、"ついで"に読んでみてもいいのではという感じです。
『霊感保険調査員 神鳥谷サキ 漆黒の墓標』 ひとみ翔, 紫陽
「保険調査員」の話、ではありますがまあ、"霊感"です。(笑)
ただ"保険調査"の話としてもちゃんと出来ていて、やはり死亡事故等を扱う関係でどうしてもそういうネタは付きまとうようで、社内でそういう"案件"が得意な人振られやすい人というのがいるという話は、なるほどなと。その中にずばり"霊感"がある人も一定数いるという説明は、説得力がありました。
『霊能師・音羽マリアの浄霊ファイル(2)霊能師が教えるお墓マニュアル』 ひわときこ, 音羽マリア
こちらはもっとずばり"霊能師"ですけど、「墓」業界の話としても読めます。
今年のお盆からは一応墓参りくらい自発的に行っておこうかなと、改めて思ったりしました。すっかり親戚が集まらなくなったので、ご無沙汰してましたが。
この前のもそうでしたが、こういう"宗教"まではいかない緩い"霊能者"ものの世界観道徳観に、変に共通性があるのが面白いというか、説得的だなあという。ほんとにこうなのかもしれないというか、こうであるなら別にそれでいいかなという感じになります。
まあなんか散々お世話になっておいて「不要」論みたいなことを言ってしまった"Unlimited"ですけど(笑)、"無料"本より作品数自体は多いですし今回紹介した中にも"無料"化されていないものは結構ありますし、とりあえず一巡二巡利用してみるのは、特に普段そこまで漫画を読んでない人には十分に価値があると思います。
僕はもう、三巡四巡してしまったので(笑)、当分いいですが。
ではまた、今度は「無料本」紹介の時にでも。
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