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趣味としての海外ドラマはもう死んだのかも知れないという話 ~Part1 地上波/BS/CS/ネット、海外ドラマの視聴環境の歴史まとめ
2022年07月14日 (木) | 編集 |
倍速視聴問題番外編。
"倍速視聴"そのものには肯定的な僕は、しかし一方でやはり今日の状況に、ある面絶望も感じているというそういう話。


「Netflixとアマプラに絶望した」人気アニメ脚本家が明かした「本音」(稲田豊史/作り手が語る倍速視聴 後編)

小林 多くの映画ファンはNetflixAmazonプライムビデオが普及しはじめたときに喜んだと思うんですけど、僕は絶望の方が大きかったんです。
稲田 なぜですか?
小林 「ああ、これで観たい映画やドラマやアニメを一生かけても全部観きれなくなった……」って。
稲田 (笑)。
小林 あともうひとつ感じたのは、「自分がこれから脚本を書く新作も、この膨大な作品群の中に埋もれていくんだな」という絶望です。


筆者の稲田氏は、専ら後半の"作り手としての絶望"の方から、これを文章全体のタイトルとして引っ張ったんだと思いますが("作り手が語る倍速視聴"ですし)、アニメ脚本家小林雄次氏の"絶望"本体、より体重が乗っているのは、あくまで前半の"視聴者としての絶望"の方だと思います。
より面白く、より一般には奇妙(笑)で、より僕に刺さったのも。(笑)

どういうことか。
日本における「海外ドラマ」視聴という趣味(の置かれた環境)の歴史を振り返ることで、説明したいと思います。


地上波オンリー期(1950年代後半~'80年代)

「NHK放送史」というNHKオフィシャルのサイトによると、日本の地上波テレビで初めて「海外ドラマ」が放送されたのは1956年のNHKによるアメリカドラマ『口笛を吹く男』(原題:The Whistler)だそうで、放送時間は日曜の20:30、その後も続々とNHKは海外ドラマを放送して行き、民放もそれに続いて行きます。
最初期の有名なところでは
 日本テレビ ヒッチコック劇場('57放送。以下全て日本での放送年)、トワイライト・ゾーン('60)
 テレビ朝日 ローハイド('59)、ララミー牧場('60)
 TBS ブロンコ('61)
あたり。

以下各年代の代表的な作品を、知名度メインで挙げてみます。(参考:僕が見た作品リスト[米][英他])

'60年代(本国放送が)作品
 コンバット('62TBS)
 奥様は魔女('66TBS&毎日放送)
 刑事コロンボ('72NHK)

'70年代作品
 刑事コジャック('75TBS)
 大草原の小さな家('75NHK総合)
 チャーリーズ・エンジェル('77日本テレビ)
 ルーツ('77テレビ朝日)

'80年代作品
 将軍 SHOGUN[米日合作]('81テレビ朝日)
 ナイトライダー[米]('85テレビ朝日)
 シャーロック・ホームズの冒険[英]('85NHK総合)
 特捜刑事マイアミバイス('86テレビ東京)
 L.A.ロー 七人の弁護士('86以降[不明]TBS系)
 冒険野郎マクガイバー('88TBS)
 名探偵ポワロ[英]('90NHK総合)
 天才少年ドギー・ハウザー('92NHK教育)

'80年代になると'70年代までのような"国民的""お茶の間"作品は無くなりますが、個性的で見応えのある作品の数は増えて来ますね。


地上波メイン期(+レンタルビデオ期)(1990年代~2000年代初頭)

1989年にはNHKBSが、1991年にはWOWOWがそれぞれ衛星放送(BS)を始めますが、NHKBS(2)の海外ドラマの多くは時間差で地上波に下りて来てましたし、海外ドラマ目的でWOWOWにお金払って加入するというのは当時はまだまだ相当にマイナーな行為だった(僕は実際に会ったことが無い(笑))ので、ほとんどの海外ドラマファンにとって依然として海外ドラマは地上波で見るものだったように思います。
・・・下で見るようにWOWOWも一般レベルの話題作を出してはいるんですけど、だからWOWOWに加入するというよりもその作品だけを、既に映画とAVを中心に'80年代に定着していたレンタルビデオで見るという方が、行動としてはより一般的だったかと。
そんな時期の作品群。

'90年代前半作品(全てアメリカ)
 ツイン・ピークス('91WOWOW)
 ビバリーヒルズ高校白書('92NHKBS2)
 Xファイル('95テレビ朝日)
 フレンズ('95WOWOW)
 ER 緊急救命室(96NHKBS2)

・・・Xファイルはレンタルビデオでのヒットが先だったそうで、なるほどそういう時代か。

'90年代後半作品
 犯罪捜査官ネイビーファイル('95以降[不明]、テレビ東京)
 アリーmyラブ('98NHK総合)
 ザ・ホワイトハウス('02NHK総合)

・・・'90年代"後半"と時代がより新しくなっているのに微妙に作品の層が薄く見えるのは、地上波&BS初出の作品に絞ってのピックアップだからです。前後して始まっているCS放送作品については、次の項で。


CS放送(スカパー)本格化期(1990年代後半)

CSの歴史は少しややこしくて、そのほとんどイコールとも言える代名詞的存在のスカパー自体が統合合併を繰り返して出来上がった会社であるのは勿論ですし、"NHKBS"や"WOWOW"が自社で買い付けたり制作した番組を流しているBSと違って、スカパーは言わば小さなNHKや小さなWOWOWのような各チャンネル/制作局を束ねて提供しているサービスなので、それぞれのチャンネルにもそれぞれの歴史がある訳ですね。・・・実際スカパーで見られるチャンネルの多くが、各地方の"ケーブル"局や"ひかりTV"などといった別の形で現在も提供されている訳で。
ただまあ"CSと言えばスカパー"ということが誰の目にも分かるように確定して、スカパーと契約すれば大量のありとあらゆるCSチャンネルが視聴出来るとなって初めて一般への普及が始まったので、結局はスカパーについてだけ考えれば足りると、今回の文脈では言っていいかと思います。

ということでかいつまんだ年表。(出典)
 '96.10月 パーフェクTV!本放送開始
 '97.12月 ディレクTV本放送開始
 '98.5月 パーフェクTV!とJスカイBが正式に合併。スカイパーフェクTV!誕生
 '00.3月 スカイパーフェクTV!とディレクTVが事業統合を発表
   9月 ディレクTVが放送終了

ディレクTVの終了に関しては、CS未使用者の僕の耳にも何かしら大きいニュースとして入っては来てましたね。それだけ業界的なインパクトはあったんでしょう。
とにかく"何やら色々ある"(ってめんどくさそう)から"スカパー一択"という分かり易い状態が、ここで確立した訳ですね。

それでもそれなりに時間的幅はあったので、パーフェクTV&ディレクTV期も含めて、各人のCSデビューの時期はそれぞれだろうと思いますが、僕自身は'01年の中田英寿のパルマ移籍を契機にスカパーに加入しました(その前のローマと違ってレギュラー確定が予想されたので、それならば"英雄"の活躍を金払ってでも見たいなと(笑))。・・・今見るとスカパーの"王座"が確定した割と直後で、道理で駅前でガンガン営業していた訳だと。(笑)
当時のタイム感としては"先取り"というより"満を持して"という感覚の方が強かった記憶ですから、"CSを見る"という行為自体は日本でもそれなりに既に行われてはいたんでしょうね。
入ってみたら定額ではなくて見たいチャンネルを見れば見る程(契約すればする程)お金がかかるというそれまでの"テレビ"では知らなかったシステムで、営業のおっちゃん曖昧な説明しやがってと恨んだりしながら(笑)、パルマの試合が見られるセットと海外ドラマチャンネルをまとめた安めのセットを、契約したんだと思います。後は"無料開放デー"のチラ見。長尺シリーズだと月1話ずつでも、まあまあ見た感じにならないでもないんですよね(笑)。(LaLaTVの『ギルモア・ガールズ』とか)

そんなCS/スカパー契約者だけの、"裏"'90年代後半ドラマたち。(各チャンネルエンドレスで再放送を行っていて地上波ほど初出年にこだわる必要が無いので、本国の初放送年でカウントします)

 ザ・プラクティス ボストン弁護士ファイル('97FOXチャンネル)
 バフィー 恋する十字架('97FOXチャンネル)
 OZ オズ(''97スーパーチャンネル[現・スーパー!ドラマTV])
 スターゲイト SG-1[米・加合作]('97AXN)
 ザ・ソプラノズ('99年作品。日本ではWOWOW→スーパー!ドラマTV)

どの作品もCS起点でそんなに一般レベルでヒットしたわけではないので、今までより主観的と言えば主観的なチョイスにはなってしまいますが。
ソプラノズはWOWOW初出ではあるんですが、本国/世界各国での絶賛をよそに(この前見たスウェーデンドラマでも『ソプラノズ見てるから出迎えに行かないよ』と世相を表す作品として登場していました)その段階では日本でほとんど話題になっていなかったと記憶しているので、CS移植で本格的に認知された作品として勝手に分類。


スカパー全盛期(2000年代~2010年代中頃)

スカパーが主役の座に躍り出たことによって、独自の品揃えを誇るNHKはともかく、民放地上波で海外ドラマを見るという習慣は一部例外を除いてほぼ廃れてしまった時期ですね。ほとんどがスカパーで見尽くされた作品の、しかも吹き替え版のみというラインアップで、"意識低い"人(しかもかなり)専用という正直位置づけ。むしろMX等のUHF局の方が、お金の無い怪我の功名でマイナーな作品を買って来るのか、「これ知らないなあ」みたいな作品をたまにやっていて侮れない存在でした。
この間(かん)もWOWOWは安定して良質な作品をスカパーより平均して早く供給し続けていたようですが、スカパーの普及によって存在自体はますますニッチ化して、作品自体も多少遅れてですがたいていスカパーでより安く見られるので(そもそも当時の僕も含めてスカパー視聴者はWOWOW初出作品だということは普通知らないし。本国での系列は意識しても)、2010年スカパーの1チャンネル(3チャンネルセット)として見られるようになった時はやはり若干"軍門に下った"感はありましたね。それによって認知は上がった筈ですが、でもスカパーの海外ドラマセットや単独チャンネルと比べて高くてね。ドラマだけ見たいのに"スポーツ"と"映画"の2チャンネルがもれなくついて来るのも気に入らなくて、僕は手は出さなかったですね。(元はと言えばスカパーで安く見られていたリーガエスパニョーラの放映権を2003年にWOWOWが強奪した出来事から、だいぶ反感が前提にあった気はしますが(笑))
そんな時期の作品群。

[地上波&BS系]
CSI 科学捜査班('02WOWOW→'03テレビ東京22:00)
冬のソナタ[韓]('03NHKBS2→'04NHK総合)
24 TWENTY FOUR('04フジテレビ)
プリズン・ブレイク('06日本テレビ)
ダウントン・アビー[英]('11スターチャンネル→'14NHK総合)

[スカパー系]
LOST('05AXN)
HEROES('07スーパー!ドラマTV)
ウォーキング・デッド('10FOXムービー→'11FOXチャンネル)
ゲーム・オブ・スローンズ('13スター・チャンネル)
オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム[トルコ]('17チャンネル銀河)

・・・チョイスしっ。
地上波や一般メディアレベルで"現象"的に話題になった作品を集めるとこんな感じになりますが、スカパーがもたらしたそれまでの時代とは一線を画する、一定品質の作品の大量安定供給の"成果"は、なかなかこういう作品数では反映できないというか逆に挙げ出すと切りがないというか。↑のようなラインアップを時代の"代表"的な作品と言われると、「海外ドラマファン」としてはん?と首をひねって黙ってしまう部分もあるというか。
まあサッカーの代表戦(だけ見る人)とJを筆頭とする各国リーグ戦(を日々見ている人)との距離感みたいなものですかね。どちらを"サッカーファン"とあえて呼ぶかと問われれば、やはり後者になる訳で。

一応参考までに(本国での放送年代)'00~'14年の間のスカパー目線での代表的な作品を挙げてみると。
 NCIS ネイビー犯罪捜査班(2003)
 Dr.HOUSE(2004)
 ブレイキング・バッド(2008)
 SUITS スーツ(2011)
 ブラックリスト(2013)

とかか。
うーん、なんかどうも結局人気に寄せただけの中途半端なチョイスだな(笑)。やるならシンプルに自分が好きなものだけ挙げるかもっと大量に挙げないと意味が無い気がする(やらないけど)。それとスカパーの場合は上でも言ったように常時過去の作品の再放送を大量にやってるので、年代的には行きつ戻りつ楽しんでいてだから初出年代で区切ってピックアップしちゃうとあれ?という感じになるんですよね。"自分が見るのが初めてなら新作"という感覚なので。音楽特にロックの聴き方に近いかも。歴史と古典の尊重。それこそ高名なスタートレックシリーズなんて、リアルタイムでブームになったことは多分一度も無い。僕も"図書館"に通う感覚で各シリーズを追体験しました。

という訳で"紹介"としては色々と不全感を抱えながら、ともかく次の時期に行きます。


ネット配信/ストリーミングドラマの興隆期(2010年代中頃以降)

主な(海外特に米欧ドラマの)ネット動画配信サイト日本での営業開始時期

 2009年 GyaO!・・・ヤフー株式会社の「Yahoo!動画」と株式会社GyaOの「GyaO」が統合
 2011年 Hulu
 2012年 U-NEXT(PC向け動画配信サービス提供開始)
 2014年4月 Hulu、事業を日本テレビに売却
 2014年10月 GyaO!→GYAO!に改名
 2015年2月 Netflix
 2015年9月 Amazon Prime Video
 2018年 Paravi

これくらいかな。
Abemaは韓中アジア作品のみで、所謂伝統的な"海外ドラマ"ファンは相手にしてないので除外。最近話題のDisney+も、作品・客層が特殊なので将来的には分かりませんが(会員数は既に膨大なので方向転換したら影響は大きそう)今はカウントせず。
GYAO!の"改名"までわざわざ取り上げていますが、ここはちょっと歴史が長くて最大遡ると2003年まで遡れるらしい(Wiki)ですが、その分事業内容も転変してて正直よく分からない所が多い。ただ僕の周辺の"海外ドラマ"界隈で話題になるようになったのはそんなに古くないので、僕が知るような"海外ドラマ(無料)配信サイト"としてのギャオはせいぜいが2014年"GYAO!'になってからなのではないかと思って、書いておきました。
元は同じUSENを母体とするU-NEXTも事業開始は2007年らしいですが(Wiki)、今日知られるような形態になったのは恐らく2012年頃。

ちなみにそのU-NEXTHuluのサービスが始まった頃のことは一つ記憶があって、当時よく使っていた"ポイントサイト"(今は某銀行との絡みでのGポイントだけ)の「案件」の一つとしてそれらの「無料会員登録」というものがあって、ポイント目当てに登録してみたものの今でいう"サブスク"とか"作品都度課金"("チャンネル"ではなく)というシステムに馴染みが無くて、新手の詐欺かなという感じで(笑)及び腰に。かつそもそもネット動画を見る習慣自体が無く、またその理由の一つでもありますが回線速度や僕が買うような廉価PCの性能も今より頼りなくて、結局登録だけして一回も使わないまま放置してしまったんですよね。後年今度は明確に作品を見る為に登録しようとしたら、前のIDがまだ残っていてびっくりして、あああの時のあれかあとようやく思い出したみたいな。(笑)
"海外ドラマ好き"の僕ですらそんな状態だったので、進出して来たHuluも立ち行かなくて日テレに事業譲渡するしかなかったと、そういうことですね。
ネトフリも鳴り物入りで日本進出して来た割には、結構しばらく苦戦したと聞きますね。アマプラはそれ以前から"Amazonビデオ"等の名前で似たようなサービスをやっていた筈ですが、プライムになるまでは正直"DVDを買う所"という認識でしかなかったですよねAmazonは。月額制の頃はいっとき僕もよく使ってましたが、年額制になったタイミングで使わなくなってしまいました(その後月額プランも復活したらしい)。依然としてスカパーメインなので、"暇な時に集中して"使うものですねサブスクは、僕にとって。勿論ネトフリも含めて。
Paraviはややマイナーですが、僕が実際に使ったことがあってその時のラインアップも割と良かったので、応援の意味も含めて(笑)入れておきます。

というわけでまた作品紹介ですが・・・。どうしましょうね。韓流を除けば正直何がヒットしてるのか、ヒットしてると言えるのか、余程の作品でない限りさっぱり分からない今日この頃。一般の人と海外ドラマファンとの間だけでなく、スカパー/テレビ派と配信派の間にも溝があるし、何ならある配信サイトのユーザーは隣の配信サイトで何がやってるのかほぼ知らないでしょうし(笑)。"アメリカで賞を受けた"的なものと日本でのメジャー度の繋がりも、以前よりかなり薄まってる気がしますし、基準がどうにも。いい作品自体は、無数に近くあるんですけどね。ただ"シーン"的なものが随分稀薄に。

仕方ないのでほとんどヒットしている"らしい"、人気が高い"らしい"、評価が高い"らしい"という程度の基準で、何とか選んでみます。

 ハウス・オブ・カード 野望の階段[米]('16.3月Netflix、10月フジテレビ)
 ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班[英]('12BBC→'17(?)Netflix)
 ペーパー・ハウス[スペイン]('17(?)Netflix)
 ハンドメイズ・テイル 侍女の物語[米]'(17Hulu)
 Harlots/ハーロッツ 快楽の代償[英米合作]('17(?)U-NEXT)

今回はせっかくなので、(日本では)配信初出のもののみ(というか実際問題地上波や衛星発のヒット作も特に見当たらない)。年代がはっきりしないものが多くて申し訳ないですが、特に配信サイトが"買って"来たものだと"放送"開始と"配信"開始の時期にずれが生じてしかも後者は特に明記されないことが多いので。
最初の3つは多分どこからも文句の来ない、国際的な人気作&傑作かと。『ハンドメイズ・テイル』と『ハーロッツ』はそのレベルのヒット作ではないだろうと思いますが、それぞれHuluとU-NEXT代表ということで。(笑)

僕も配信オンリードラマはそんなに見てないので、これくらいが限界。


歴史をまとめてるだけで結構な分量になっちゃったので、今回はここまでにします。
本論は次回です。(笑)


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