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森保ジャパンの後始末
2022年12月29日 (木) | 編集 |
from footballista
自分なりのまとめは既に済ましてありますが、その後web版フットボリスタのまとめ読みをしていたら、既出記事の中に関係浅からぬっぽい記述が結構あったので、紹介/フォローしておこうかなと。
年の瀬大掃除的に。(笑)

いずれも有料記事なので引用は最小限にとどめるよう努力しますが、最初に参照記事一覧を。

【対談】五百蔵容×竹内達也(前編):似て非なる森保ジャパンとハリルジャパン
(足立真俊 2022.01.26)
【対談】五百蔵容×竹内達也(後編):すれ違う森保ジャパンと欧州サッカー
(足立真俊 2022.01.27)
本来の姿を現したコスタリカ。対する日本は、ドイツ戦と“本質的には”変わらなかった
(山口遼 2022.11.29)
リスク度外視のプレッシングはどこへ?日本に撤退を強いたクロアチアの無頓着さ
(らいかーると 2022.12.08)
日本代表のロールモデルはクロアチア?ドイツとスペインから学んだ「強固なゲームモデル」の表と裏
(川端暁彦 2022.12.16)

ではいきます。


仕組まれたカオス?

まずは前回出していなかった論点から。

上のまとめ記事のコメント欄で、僕はこんなことをコメント者に答えています。

ただあれなんですよね、効率が悪い、やたら走り回っている(個々の走力に依存している)ゆえのカオスが、結果的に爆発力に繋がっていた可能性も否定出来ないので、整備したら"強く"なるとも実際は限らないんですけどね(笑)。そこまで含めて計算していると感じられたらもっと評価はポジティブになると思いますが、当面はある種の怪我の功名含みである(中略)というのが、4年間の過程の観察含めてのここでの評価ですね。

意図の度合いはともかく、乱雑さも結果的に強さの一部であった可能性が高いという見立て。

そこら辺に関して、大会約10か月前('22.1.26)に語られた竹内達也氏の観察。

竹内「そもそも森保ジャパンは、例えばポジショナルプレーのように攻守のバランスを最優先したスタイルを目指していないと僕は考えていますね。西野ジャパンでコーチを務めた森保監督は、ベルギーに真っ向勝負で挑んで力負けしたロシアW杯ベスト16を経験していて、強度の違いに敗因を見出しているように思います。だからむしろ、サッカーの不確定要素を生かして速く正確な攻めで一瞬の隙を突き、格上を倒してベスト16の壁を越える狙いがあるのかもしれません。そのリスクを補完できる流動性、弾力性、液状性を高めるために、自由度を高く調整しているのではないかと」

竹内「柴崎の隣でプレーしていた遠藤にサウジアラビア戦後、話を聞きましたが当事者である選手もミスマッチが起きていること自体は理解しているんですよね。では、なぜピッチ上で解決できないのか。その理由を問うと『ミスマッチは利点もある』という答えがいつも返ってくるんです。だから選手も攻守のバランスを取るのではなく、そのズレを活用していく意識を持っているのは間違いないですね」

(【対談】五百蔵容×竹内達也(前編):似て非なる森保ジャパンとハリルジャパン)

面白い。漠然としたカオスというより、あえてシステム的なミスマッチを放置して、そのずれを利用して攻撃することをこの時点で既に考えていたように見えると。しかもそれは監督の頭の中だけの話ではなく、選手の間でも共有/意識されていたらしいという。
上のコメント欄では僕は森保監督の構造作りの能力のそもそもの低さとジャパンズウェイ的"委任戦術"の即興体質が孕まざるを得なかったカオスが、"怪我の功名"的に攻撃の瞬間風速を生んでいたのではという視点をメインに語っていますが、僕が思うよりはだいぶ仕組まれたものだったのかも知れませんね。
あえでずれで敵を誘い込んで逆を取るという、広義の擬似カウンター的な雰囲気もありますが。
問題はその"ずれ"がどういう性格のものかで、"ベルギー"云々というのはつまりまともに(ずれなく)マッチアップしたら"力負け"するので合わせない、合わせないことによって生ずるメリットを利用することの方を考えるというこれ自体は明らかに"戦略"な訳ですけど、全ての相手がベルギー(クラス)な訳ではないし4年間もそんなことばっかりやってられない(笑)と思うし、勿論いつもやってれば見抜かれるもするでしょうし、やはり基本戦略/看板戦術として積極的に掲げていたというよりも(それこそ"接近・展開・連続"的に)チーム構造的に致し方なく生じて"しまう"ずれの事後的な有効利用、そのメリットも含めての全体の損益のマネジメントと、そういうものだったのかなとは。・・・"本番用の奇策"としてはありだとは思いますけど、それをアジアでサウジ相手に練習していたのだというのは、ちょっとふてぶてし過ぎる想定で余り僕は信じられません(笑)。やはりどこが相手でも基本ずれちゃうんでしょう、森保ジャパンは。


森保ジャパンの構造性とバランス

ではその"ずれ"の元でもある森保ジャパンの構造性やバランスはどういうものとして見ることが出来るのか。

森保ジャパンの非"欧州"性と"欧州"性

竹内氏の"ずれを利用している"という話を起点として。

五百蔵「サッカーはイタリアで『丈が短い毛布』にたとえられるように、『あちらを立てればこちらが立たず』が様々な局面や場所で起こるので、そうしたミスマッチを森保監督は利用しようとしているのかもしれません。でも欧州では両立を目指す方向に進んでいて、例えば以前は(中略)攻撃を有利にするには守備で不利にならざるを得ませんでしたが、グアルディオラ監督のポジショナルプレーが浸透した。攻撃的に振る舞ってもチーム全体で配置を整えているので攻守のバランスが崩れにくくなり、その振れ幅は一定になったんです。」
(【対談】五百蔵容×竹内達也(前編):似て非なる森保ジャパンとハリルジャパン)

五百蔵「Jリーグではリードされている時に守備的なポジションの選手を削って、攻撃的なポジションの選手を増やしてオープンな展開に持ち込み、一発逆転を狙うような交代策も少なくないですけど、森保監督は絶対にしないですよね。だから批判を浴びている側面もありますが、考え方としては欧州の監督に近いなと。ヨーロッパでは、もはやバランスを維持するのはどんな状況でも必要という認識になっていると思います。サッカーで勝つ確率を一番上げる方法は、相手はバランスを崩しても自分たちはバランスを崩さない状況をいかに長時間担保できるかにあるという考え方で、ペップ・グアルディオラ監督のポジショナルプレーが強いのはそれを一番やれているからです。試合を静的にできるチームが勝つゲームになりつつある。」
(【対談】五百蔵容×竹内達也(後編):すれ違う森保ジャパンと欧州サッカー)

"グアルディオラ""ポジショナルプレー"という同じ論拠・論法を引き合いに出して、同日に行われたろう対談の(前編)では森保ジャパンの非欧州性を言い、(後編)では欧州性を言う五百蔵氏。(笑)
どっちも本当なんでしょうけどね。語り口が似過ぎててネタみたいになってて少し笑えます。(笑)
簡単に言えば、基本構造は非欧州的だけど、その運用やゲームプランに関しては欧州的な面もあるという話か。

そしてこれ自体もやはり10か月前の時点の分析な訳ですが、本番の森保ジャパンはどうだったのか。同じだったのか変わったのか。


カタールでの森保ジャパン

「本来の姿を現したコスタリカ。対する日本は、ドイツ戦と“本質的には”変わらなかった」(山口遼)

この試合の展開だけで考えれば、日本にとってもコスタリカにとっても「このゲームプランで勝てる」と思って臨んだ試合だったのだろう。もともと得意な戦術で戦えるコスタリカはもちろんだが、日本にとっても選べる戦術、プランの中ではドイツに勝ったのとほとんど同じ展開を生み出すことができるからだ。すなわち、クローズドに守られた相手に対してボールを前進させることも、プレッシングでボールを取り上げることも難しい日本が必勝を期するには、勝利が必須のため必ずどこかで攻勢に出てくるコスタリカの動きを待ち、オープンな展開の中で先にゴールを奪ってしまう以外に選択肢がなかったと言える。

 つまり、ドイツに対するあの劇的な勝利と、コスタリカに対する停滞感あふれる敗戦は、本質的にはほとんど変わらない構造を持っている。不確実性が高いがスペースが生まれる展開で足下の技術とスピード、運動量に優れる日本人選手の良さを活かす、そういう“サイコロ”を2回振ったに過ぎない。1回目は我われにとって良い目が出たが、2回目の今回は残念ながら悪い目が出て、相手に先にゴールが決まってしまった。

攻勢に転ずる際には『“サイコロ”を振った』という山口氏。では日本は本番では五百蔵氏の言う後者の"欧州"的な方の側面は捨ててしまったのか。
確かに(4バックから3バックへの)一気のシステムチェンジで攻勢に出ていたのは確かですが、攻勢モード"内"だけで見れば基本的に人を変えていた更新していただけで、"バランス"は崩れて/崩していなかったようにも見える(あれをバランスと呼べればですけど)。むしろリスクの取り方を注意深く限定していたとも。・・・"一気呵成"ではあったけど、"一か八か"にはあんまり見えなかったかなという僕にはドイツ戦は。"リスク"用のスペースで"リスク"をかけていただけで。コスタリカ戦の終盤のほんとにどうなるか分からないような感じとは異質に見えたというか。
そもそものゲームプランに関しては、どうなんですかね。"オープン"になる時間帯を待って"いなかった"からこそ、相手に誘われてしまった面が強かったからこそ、ふわっとしてしまったようにも僕には見えましたが。どこまでが"プラン"だったのか。先制されてしまってからは少なくとも、モードチェンジしたのは確かでしょうが。

一方で"成功"したドイツ戦/スペイン戦にも共通する森保ジャパンの構え方(3バック)について。

「日本代表のロールモデルはクロアチア?ドイツとスペインから学んだ「強固なゲームモデル」の表と裏」(バル・フットボリスタ 浅野×川端対談)

川端「やってきたのは予想の範囲内ですが、やり方は予想の範囲外でした(笑)。スペインみたいなチームに対する防衛手段としての3バック(5バック)はあるだろうと思っていたんですが、森保監督は攻勢の布陣としても運用してきたので。まさか後ろ同数を受け入れ、前から狩りに行く手段としての3バックを見せるとは!」

浅野「俺もやるとしたら専守防衛の5バックと言っていて、川端さんは後ろを固めながら、前田や浅野、三笘といったスピードのある選手たちを生かして刺すやり方を想定していましたよね。ドイツ戦やスペイン戦での森保監督の選択は前からハメて行く[3-4-3]でした(笑)」

つまりこの"攻勢"用システム自体は、攻守の配分に思い切って偏りを作ったもので、そういう意味では五百蔵氏の言う"欧州性"からは外れているものなのかもしれない。ただし予めワンセットで用意されたもので、逐次投入でスクランブル化させて博打を打った("Jリーグ的"に)のとは少し違う訳ですが。


森保監督の"構造"観

話戻してそもそもの構造問題。
森保監督のサッカー観に一定の欧州性は認めつつも、

五百蔵「ただ、森保監督は欧州と比べると仕組みでサッカーをしていない。」

五百蔵「ポジションバランスを意識するというテーゼはありながらも、それはゲームモデルレベルで落とし込まれてはいないし、落とし込んでもいないです。試合の中でバランスを崩すような局面が出てきても、それは竹内さんのおっしゃっているように『ズレる部分を自分たちに有利に用いる』姿勢も含め許容する。バランス崩してヤバいところは、選手のロングスプリントで頑張って補完する。」

という五百蔵氏。(【対談】五百蔵容×竹内達也(後編):すれ違う森保ジャパンと欧州サッカー)
走力が構造(代わり)になっているというのは、僕も言ったことですね。

ここら辺に関しても、竹内さんの視点が面白い。

竹内「森保監督自身はベトナム戦後に、『特にヨーロッパのマンマークで責任をはっきりとさせながら組織的に戦っていくところは参考にさせていただいている』という言い方をしていたんですよね。おそらくシステムのかみ合わせが『人対人』という形で浮かび上がっているという文脈からだと思うんですけど、選手には『人についとけよ』と言わなければ伝わらないので、『マンマーク』という言葉で抜き出して表現している。そこは森保監督らしいですよね」

同上。"ヨーロッパ"を見る際にも、森保監督には既に"人""個人"の方が濃く見えているのかも知れないという。
であるならば森保ジャパンは、"個人"と"組織"で"個人"を取っている訳ではなく、あれはあれで"組織"的なつもりなのかも知れない。『まとめ』で僕は、「"個人"と"作戦"だけで構成されていて真ん中が無い」「(その)真ん中の構造部分の詰めを思い切って諦めてそれでもトータルで"イケる"だろうと計算して勝負に臨んだ(そして勝った)森保監督のクソ度胸は凄い」という意味のことを書きましたが、それは過小評価にして過大評価だったのかも知れない(笑)。森保監督的には、もっと普通にやったつもりなのかもしれない。


その他

森保監督の"奇人"性

竹内「森保監督は僕たち報道陣にも挨拶を欠かさないくらいマメですからね。そこまでやるかというくらいです。選手にもコミュニケーションを頻繁に取っていて、練習でもよく森保監督が歩み寄って選手を選びながら一対一で話している姿を見かけます。そのため『お気に入りの選手ばかりを……』と誤解されている部分がありますが、決して打ち解けているわけではなさそうなんです。実際に笑っているのは森保監督だけで、選手は真剣そうに話を聞いているという光景もよく見られます。おそらく戦術的な指示をその場でしたり、『クラブでのプレーを見ているぞ』ということを伝えたりと、課題を与えている可能性が高いです。実際に選手の口からも恩師というような位置づけで『森保監督のために』という言葉が出てきたことはなく、求められている課題に焦点が行っていることが多いです」
(【対談】五百蔵容×竹内達也(前編):似て非なる森保ジャパンとハリルジャパン)

"実際に笑っているのは森保監督だけ"。(笑)
なんか浮かぶ。(笑)
当たりは柔らかいんですけどね。なんかね。怖いよねこの人。
"極端な合理主義者""ラップトップ監督の類ともある意味共通する、サッカー外思考の持ち主"と僕は評してみてましたが。浅野川端対談でも、その"クレイジーメンタル"については話題に上ってますね。


決勝トーナメントの勝ち方

リスクを考えれば、クロアチア戦で日本の取った作戦(プレッシングを控えてクロアチアのロングボールには撤退守備や同様のロングボールで対応する[要約アト])を否定することはできないだろう。しかし、今大会の日本はそれを度外視したことで波乱を巻き起こしてきたのも忘れてはいけない。グループリーグをある意味では決勝トーナメントのように戦ってきた姿勢を、本当のラウンド16でも貫き通すことが今後は必要になってくるのかもしれない。

(リスク度外視のプレッシングはどこへ?日本に撤退を強いたクロアチアの無頓着さ[らいかーると])

ほぼ最後の部分だけ。らいかーさんが同じようなこと("グループリーグのような戦いを決勝トーナメントになると出来ていないのが「ベスト16の壁」の正体"?)言ってらあという。(笑)
具体的にあのクロアチアにどう戦えば良かったのかは難しいところはありますが、でもなんかそう言いたくなる部分はありますよね、ここまでの4回のベスト16戦を見ていると。
どうなんですかね、仮にドイツなりスペインなりと"決勝トーナメントで"(初めて)当たっていたら、今回やったような戦いを出来たんでしょうか。


これくらいにしておきますか。
特に「五百蔵竹内対談」は本当に情報量が多くて、書きたいことはまだまだ沢山あるんですが、全文引用みたいになりかねないので頑張って控えました。(笑)
未読で興味がある人は会費を払ってどうぞ。(&是非)
とにかく、まだ分かりませんが森保体制継続ということならば、今回出たような問題意識を差し当っての注目点として、また4年間の苦行(それは確定なんかい)に耐えて行くことにします。(笑)

では皆さん良いお年を。


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コメント
この記事へのコメント
ドイツ、スペインとトーナメントで当たってても日本としては同じように戦えたのかなぁという気がしています、選択の余地がないというか。
同じ展開になったとして終盤にあるはずの猛攻に耐えられるかはわかりませんが。
森保監督は戦術三笘くらいは仕込んでおいて欲しかったなぁ、という感想です。
2022/12/29(Thu) 19:07 | URL  | 匿名 #-[ 編集]
今回に関しては割と僕もそっち寄りかもしれません。確かに選択肢は決まってそうですし、森保さんならやってくれそうというのも。クロアチアはほんと、相手が悪かったというところはあるかなと。(それでも不満は残りますが)
ただ(グループリーグと違って)対戦が事前に決まってなかった場合にどうなってたかというのと、監督はともかく選手のメンタル的な実行性はどうなってたのかなという疑問も。
2022/12/29(Thu) 19:20 | URL  | アト #/HoiMy2E[ 編集]
そう言えば三笘に関しては、ブライトンでWBやるようになってたからそのままやらせた(守備の負担かけてもいけると踏んだ)のではないかという話が、バルだったっけな?出てましたね。
2022/12/29(Thu) 19:24 | URL  | アト #/HoiMy2E[ 編集]
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