ヴェルディ等サッカー、漫画、アイドル 他
『サッカーで燃える国 野球で儲ける国』 その2
2008年01月11日 (金) | 編集 |
その1

第3章 「サッカーが世界中に普及した理由」 より

「イギリスのFAは希望者すべてを会員に受け入れてサッカーの普及を後押しし、アマチュアのエリート層は試合をしに世界中のイギリスの植民地や投資の前哨基地を訪れている。」

「これに対して、アメリカの野球のプロモーターは閉鎖的で独占的なスポーツリーグをどうやって成功させるかとか、利益追求にかかるコストをどう負担するかについて、たえず考えていたのだ。」 (p.62)


・・・・アメリカの野球は閉鎖的で独占的だからこそ商業的に成功し、イギリスのサッカーは開放的で儲からなかったが、儲けを度外視していたからこそ普及活動が出来た。


「ちょうど今日のゴルフが仕事の獲得に役立つように、一九世紀のビジネスエリート層がプレーしたサッカーは、商売の円滑な成功を後押ししたのである。」 (p.63)


・・・・前提として”大英帝国”の全世界的経済支配があるのは言うまでもありません。それにしてもゴルフの代わりにサッカーとは、昔のシャチョウさんたちは随分アクティヴだったんですね。(笑)


(参考)サッカーの非ビジネス性の一例

「野球は常にビジネスであったのに対して、サッカークラブはもっと社会的および政治的な目的を動機としていることが多い。(中略)スタジアムの環境よりも勝つことが重要であり、オーナーは施設よりも選手への投資に関心がある。」

「野球とサッカーの試合における座席、食べ物、飲み物の質の差は、歴然としている。野球場のオーナーは観客がお金を使う機会を最大化しているのに対して、サッカー場のオーナーはそのような機会を最小化しているようだ。」 (p.97)


・・・・”客単価”の問題は、ちょっと前にサポティスタなどでも話題になりましたね。ケースバイケースでしょうが、その1で出ていた(スタジアムの真の所有者である)「自治体に対するサッカークラブの立場の弱さ」も関係しているだろうというのは予想出来ます。施設の利用法を、なかなか自由には出来ない。


第4章 「サッカー選手と野球選手、どちらが儲かるか」 より

伝統的には野球選手。以下理由。


(サッカーの総収入の限界の問題) ・・・・国際リーグ、”メジャーリーグサッカー”の不在

「サッカーは二〇世紀前半には世界中に普及していたが、国内のリーグ戦が現在に至るまで中心となっている。」
「FIFAは(開催予定の)ワールドクラブ選手権をワールドカップと同等のものにするという野心を抱いているが、(中略)各国リーグの独占という細分化された体制の後塵を拝するしかない。」 (p.121)


・・・・何を言ってるんだろうという感じでしょうが、次で分かると思います。

「これを野球で比較すれば、NL(ナショナル・リーグ)がニューヨーク州所在のチームだけで始まり、他のすべての州もそれぞれ独自のリーグを維持するという全国的な体制下で、まったく別のリーグを創設するといった事態を想像すればいい。」
「仮にサッカーが(実際のNLと)同じように(拡大的に)発展していたとすれば、単一のヨーロッパリーグとか、単一の南米リーグとかが出現して、さらにグローバルなメジャーリーグサッカーが登場していたかもしれない。」 (p.122)


・・・・イングランドの”FL”が、漸次加盟クラブを増やしながらワールドリーグ(少なくともヨーロッパリーグ)に成長する、というような事態を考えているんですかね。
あえて言えば、野球かサッカーかというより、「広い国の(スポーツの)人」の発想だなとは思います。例えばサッカーでも同じく広大なブラジルなら、”州選手権”と”全国選手権”に分かれていたりするわけで。

とにかくサッカーの常識が野球(MLB)ファンの目からは奇妙に見える、ということですが、実はその話の前提には「アメリカ合衆国」がそれ自体として完結した一つの”世界”である、”ワールドシリーズ”は文字通り”ワールド”であるという、それはそれで奇妙な「常識」があるわけです。だから野球は世界(リーグ)性を達成していると。
これは別に傲(おご)っているのではなくて、野球の広がりの限界を受け入れているということと、現実としてあるアメリカ人の世界意識に倣って言っているわけですね。


「(サッカーにおいて)各国の有力クラブは各国のプロリーグ内にしっかりと閉じ込められている。(有力クラブは)非常に小さな地元クラブと競争することを余儀なくされ、海外チームとプレーする機会が奪われている。」
「大きなチームを国内リーグに縛りつけることによって、各国のサッカー当局は大きなチームを犠牲にして小さなチームに利益を与えているのである。」 (p.122)


・・・・これが経済学的に筆者の言いたいことで、同時に恐らくはヨーロッパの”G14”などの本音でもあるんでしょうね。その背景にはそれによる総収入の限界、つまり

(”G14”的な)「トップチームを観戦するファンの総数が少なく、平均的な入場料が低い」


という問題意識がある。
まとめて言うと”金持ち欧州リーグ”(またはその妥協案としてのUEFACL)は、「特別な」リーグではなくてむしろ「正常な」構想だと、野球(MLB)ファンの観点からはなる。


(サッカーの給与システムの問題)

「一九〇〇年から六〇まで、FLは上限賃金を設定して選手の給与を管理していたが、その上限は熟練肉体労働者の賃金を大きく上回ることはなかった。」 (p.123)


・・・・サッカー選手もまぎれもなく、”熟練肉体労働者”ではあるわけですけどね実際。別に北澤やガットゥーゾじゃなくても。(笑)

「(それは)FAのアマチュア紳士たちがサッカーにおける商業主義の台頭に反対だったためだ。」 (p.123)

「他国の選手の給与も、総じてイングランドよりも大幅に高いとは言えなかった。ほとんどの国ではリーグクラブはしばしばFAの紳士連が輸出したアマチュア『倫理』を盾に、共謀して賃金を低めに抑えていた。」 (p.126)


・・・・ある時期まではほとんどの国では”FA”と”FL”のような明確な分担システム(またはプロの独自組織)がなく、各国協会が「アマ」だと言えばそれで通ってしまっていた。


プロ(クラブ/リーグ)側にも賃金抑制の動機はあり、その結実が「残留・移籍」制度と呼ばれる選手のクラブによる専有システム。

・賃金高騰の最大の契機は、高給を餌にしたクラブ間の選手の引き抜き
・それを防止する為に、まず選手の現所属クラブによる専有権を絶対化する。
・他クラブはJでいう「移籍リスト」のようなものに載せられた選手に対してのみアプローチ出来る。
・また獲得には元クラブの言い値で設定された”移籍金”を支払わなければならない。
・移籍そのものに選手の意思は関係無いので、賃金も特には上げられない。

選手組合運動の不発などによりこのシステムはイングランドでしっかりと確立し、FAがFIFAと結んだ国際協定に従い、運用は様々だが各国も基本的にそれに倣った。(つまり国際間の引き抜き→賃上げもかなり抑制された。)
この状況はEUの成立→ボスマン判決で決定的に崩されるまで、基本的に続いた。

なお詳細は省きますが(かなりややこしい)、サッカーと違いしばしば競合リーグが相争ったこともあり、アメリカの野球に同様の厳格な制度は確立しませんでした。


その3へ。


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コメント
この記事へのコメント
こんにちは。サポティスタで紹介されてますね。
http://supportista.jp/news/index_trackback.html?id=372

ところで、これで、どれくらいアクセス数増えたんでしょうか?
2008/01/13(Sun) 18:41 | URL  | ロビー #JalddpaA[ 編集]
あ、ほんとだ。
まあ別に僕が書いた本ではないので(笑)、皆さんそれぞれ読んでね?という感じですが。

>ところで、これで、どれくらいアクセス数増えたんでしょうか?

いずれ『1月のブログ拍手』エントリーの時にでも、好奇心を満たして差し上げましょう。(笑)
2008/01/13(Sun) 23:32 | URL  | アト #/HoiMy2E[ 編集]
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