![]() | 知と熱―日本ラグビーの変革者・大西鐵之祐 文春文庫 (文春文庫) (2003/11/08) 藤島 大 商品詳細を見る |
から、『接近・展開・連続』に直接関連する部分だけを抜き書き。
賞味期限の切れない内に。(笑)
土日にかけての久しぶりの徹マン明けの疲労の残る頭には、ちょっと沸き立つものを探すのが厳しい試合でしたし。本は面白かったです。
早稲田の”ゆさぶり” 〜原点
一九三二年に「ゆさぶり」が生まれる経緯と解説は、『日本ラグビー物語』に詳しい。
相手の強引な押しまくり戦術に巻き込まれて、力を浪費することなく、一秒でも早く密集部隊からボールを移動させ、素早くオープンに回して、比較的単純な明大バックスの虚を衝くにある。(中略)
もし敵のバック・アップにより一気に抜き切れぬ場合は、再び休むまもなく今度は反対にそれを繰り返す−−−三度でも四度でも左右に繰り返す−−−これは形の上で相手をユサブルことになるので、ここにユサブリという熟語が生まれてきた。
伝統的に体格で押す明大ラグビーに対する、早稲田の対抗策。明治:早稲田の対比が、外国人:日本人の対比に重なっている。
この文章の限りでは、まずは「展開」と「連続」の話に見えます。
1952年、全早大対オックスフォード大戦の戦術 〜雛型
同年朝日新聞『ラグビー回顧』より、要約的抜粋。
1.オックスフォード大の合理的原則的エイトのオープンプレーに、テンポの早いスイングプレーと組織力で対抗。
2.FWは(日本人の身体的特徴をを生かした)低いスクラムによって体力的劣勢を支え、早い散開とシャープな突込みによってラックを支配、相手FWを疲労と混乱に陥れる。
3.バックスは接近戦を主体とし、日本人特有のスタートダッシュと巧妙なパスと接近時の鋭敏な勘を働かして、ラインプレーで相手ラインを突破する。
4.FW、バックス共に、スイングプレー独特の組織的活動を活かすことに行動の統一を行う。
5.防御は体力的走力的劣勢を補う為に、統一された迅速なラインにより必ずアドバンテイジ・ラインを越えて倒すことに専念する。
6.相手ゴール前では、有効なサインプレーにより一気に突破する。
(注)
”オープンプレー”
フィールド上でスクラム、ラック、モール等を起点にスペースの広い方へボールを展開させるプレー。
”スイングプレー”
フォワードが獲得したボールを、バックスにまわし、タックルされると再びフォワードがすばやくボールを獲得して、相手の防御ラインができないうちにボールをバックスにまわして、左右の方向にゆさぶるように攻撃する戦法。(≒”ゆさぶり”)
”ラック”
スクラムやモールなどと共に密集戦の一つ。ボールが地面にある状態で行われるという点ではスクラムに類似しているが、いったん静止状態から再開されるスクラムと異なり、プレー中に始まる点が異なる。
”ラインプレー”
バックスが組織的にラインを活動させるプレー。
”アドバンテイジ・ライン”
スクラム、ラインアウト又はラック、モールが形成されたとき、その中心を通るゴールラインに平行な想定線。一次攻撃でこのラインを超えることによって二次攻撃のボール獲得が有利になる。
(≒サッカー的には”ファースト・ディフェンスのライン”?)
・・・・大きな意義としては、「接近」が中心的概念として明示的に入って来たことか。それとスイングプレー=早稲田のゆさぶりとの結合。
1953年、ダニー・クレイブンの『ON RUGBY』との出会い ・・・・理論的補強
それは確かに革新的な内容であった。
浅いラインから方向を変えて攻める。敵に背中を向けながら球を確保する。球の獲得−展開−方向転換−連続プレーの流れで示されるモダンな攻撃ラグビーが、ページいっぱいに解説されていた。
・・・・「敵に背中を向けながら球を確保する」というのは、要するにポストプレーか。
いっぽうで大西は、クレイブンの書に没頭するうちに、「昭和十年ごろには完成していた早稲田の理論」との共通性を知り、自信を深めてもいた。
・・・・早稲田=日本基準が世界基準で通用する可能性。
展開・接近・連続 ・・・・確立 (1967年、”大西ジャパン”結成)
理論的根拠 (『スポーツ作戦講座』より)
「速やかな展開。そこからの巧緻性を充分に生かすプレーは日本人のお家芸である」
「接近とはこの巧緻性を最高に利用したプレーである」
「外人は間合いを持ってスピードに乗ると強いが日本人は短い距離での加速に優れている。彼らは長い槍を得意とする。我々は短刀であり、相手の懐に入る以外に制する方法はない」
「連続とは全員によるフォローを意味する。その根源は、体が小さくても身につけられる持久力である」
典型
体格に劣るフォワードのもみ合いの時間を極力短縮し、外へ球を「展開」、相手防御に「接近」のバックスが、動き出しのタイミングでタックルを外して縦横に突破、スタミナの優位を駆って、「連続」攻撃を仕掛ける。
・・・・「接近」のディテールについては明日。
ボール「奪取」への注目 ・・・・理論的発展 (’71年、イングランド代表との対戦に向けて)
ニュージーランドでの戦い(’67年の遠征、オールブラックス・ジュニアを破る大金星を挙げる)を通じて、大西は「まず球をとること」の重みを噛み締めていた。
「奪取−展開−接近−奪取−連続展開」
標語はこう、改められた。球さえ奪取できれば、「展開、接近、連続」の効果は実証済みだった。
・・・・ここで言う「奪取」とは、読む限り”空中のルーズボールを拾うこと”のよう。
(補足)語順は結構どうでもいい?!
オールジャパンが外国チームを相手に戦うときは、「展開・連続・接近」で行くのだと。
・・・・大西著『闘争の倫理』より。
横井はいきなり言った。
「いま順番、違うてきてるんや。展開、接近、連続は、大西さんが最後のほうに言われたことで、やっぱりあれは接近、連続、展開なんですよ。」
ちょっと不満そうであった。
・・・・2001年、元大西ジャパンの中心選手、横井章氏の言。
「展開」は上で示したように、広い意味では「オープンプレー」というラグビーの基本の一つ(の応用)であるし、「連続」はプレーの特に運用面を示すとも言えるわけで、真に独創的であり大西戦術の中心は、やはり「接近」ではあるようです。
だから岡田監督が「接近・展開・連続」という語順で説明したのは、「接近」という肝を強調する為と、本来語順はさほど重要ではないということを踏まえてのことかも。特に僕も最初は素朴にそう受け取ったように(笑)、「”接近”の後に”展開”して、更にその後に”連続”する」式の杓子定規の理解は必要無い模様。
より具体的なサッカーの実際とのすり合わせ、および本全体の感想はまた明日。
今回はともかく、理論的文脈の整理に集中してみました。



