「接近」のディテール
攻撃
バックスは、深く勢いをつけるのではなく浅い位置から攻撃を仕掛ける。
最大の特色は球を受けるより先にポジショニングを変えて、防御をかわす「すれちがい」である。
タックラーに体当たりするのではなく、触れられずに突破。(”接近は接触ではない”)
あらかじめ予測された拠点にフォワードがすかさず寄って、さらに攻撃方向を変えて展開する。
大枠はこうだ。浅い攻撃ラインから、「ためて」(前の選手がパスを受ける前後まで走り出さず)スタート、横流れせず、必ず一度はゴールラインに垂直のコースをとり、複数のコンビネーションで抜いていく。
(中略)
球を受けながら「すうっと」前へ出る。自分をマークする選手に、触れるか触れないか。
外側の者は、球を持つ者に合わせて動く。防御のマーカーもつられて動く。その瞬間、裏をとり、そこへパスは放たれる。
防御
防御では、極度のダッシュをかけ、球が空中にある間に思い切り距離を詰める。
裏に生じるスペースは、体重は軽くともそれだけ俊敏なフォワードが計画に沿って埋めた。
・・・・青・紫・赤で色付けした部分はそれぞれ何かのキーワード、または示唆的なイメージだなと僕が考える部分ですが、何のキーワードなのか何を示唆しているのかは、今日は言いません。(笑)
いや、だいたいは分かると思うんですけど。まあちゃんと最後に予告編を書きますから。(笑)
ダニー・クレイブンの「ため」の理論
当時世界最新のラグビー理論と早稲田戦術との共通性。(前回参照)
「接近」戦術の前提の一つ。攻撃編。
バックスの浅いラインで出ていくときに、一斉にスタートせず、タメてラインの深さを作っていくという。
タメの理論でやれば浅いラインで充分だという、それがまさに早稲田では昭和の五、六年頃にできあがって、全国制覇しています。
(大西『闘争の倫理』より)
分かりにくいかもしれませんが、要するに攻撃時パスを受けに行く時
・(深い位置から)助走距離を取ってスピードをつけることをしない
・少しずつ時間差をつけてスタートして、最短の時間で変化のあるパスコースを作る/パスワークをする
ということでしょうか。
体力/走力で優位なら、それを活かす為に助走をつけてトップスピードに乗ることを重視する。
そうでない早稲田/日本人は、手早くかつ有効な攻撃を始めることを重視する。
ダニー・クレイブンは南アフリカの人で、必ずしも日本人のように体力的ハンデからこれを考えたわけではないでしょうが、イギリス本国らの伝統勢力の鼻を明かす為の発想の転換という意味では、共通性があったということでしょうね。
「シャロー」守備
横井章氏が語る、「接近」の極意。守備編。
「相手が動く前に、つまりMV2(二乗)が増大する前に、こちらが動いて、追い込んで、弱い形にしておいて潰す。シャローでしょう。」
・・・・パッと見て誰もが連想するだろう、サッカーの”プレス”。関連性や、最近の日本ラグビー的な事情については、こちらなど。
尚も横井翁(笑)の当事者ならではの話は続きます。
近年のジャパンがいわゆるシャロー防御に躊躇するのは、前に飛び出した接点でサインプレイのパスを通されて、大きくゲインを許すのがこわいからだ。(中略)
「本当に前へ出たのを見たことない。知らないからでしょう。これはいいものだと感じたこともない。伝えられなかった私(横井)の責任でもありますが」
その「本当」を支えたものは・・・・
「スタートダッシュの鋭さ。私なんか百メートル走ったら十三秒台、(当時の相棒の)藤本も決して俊足ではない。でもクラウチングのスタートと同じで、飛び出しだけは練習で速くできる。」
ディフェンスも(中略)アタックも、ただ前へ出たのではなく、鍛え上げた格別なスタート力で、極度に前へ出たのである。
話が訓練の方に傾いてきましたが・・・・
「でも外国人には絶対できへんのやから。彼らのは、ただのショートで縦に来るだけ。」
横井翁の熱にアテられて(笑)、分かるような分からないような断片的な話を引用して来ましたが、とにかく当時の日本に、ならではの活きたノウハウやディテールがあった様子は伝わって来ると思います。
「ため」にしろ「シャロー」にしろ、理論として文字通りオリジナルであると言うよりは、それを日本人が日本人の資質を目一杯活かしてやり切った時に、諸外国の常識からは意想外の効果が生まれたという。
さて次回の予告ですが、今日(及びここまで)の内容からも既にうっすら見えて来ているだろう大西ラグビーとサッカー戦術との関連性、特に近年の日本の代表サッカー史に大きな影響を残している、「加茂ゾーンプレス」と「オシム・トータルフットボール」の2つのスタイルとの関係について考察して、それを踏まえて改めて岡田サッカーの性格や歴史的意味を絞り込んでみたいと思います。
昨日の予告は全く果たされてませんけど。(笑)


